この記事の要点

  • 山林を相続すると、期限の異なる2つの手続きが並行して走ることがある。相続登記は3年以内(不動産登記法第76条の2第1項)、森林法の届出は相続開始の日から90日以内(届出義務の根拠は森林法第10条の7の2第1項、90日という期限を定めているのは同法施行規則第7条第1項)
  • 森林法の届出先は「市町村の長」。ただし対象は地域森林計画の対象となっている民有林に限られ、相続した山林がすべて届出の対象になるわけではない。まず市町村の林務担当窓口で対象かどうかを確認する
  • 届出をせず、または虚偽の届出をすると10万円以下の過料(森林法第213条)。相続登記を怠った場合の10万円以下の過料(不動産登記法第164条第1項)とは別の制度
  • 固定資産税は課税標準額が30万円未満なら課されないのが原則(地方税法第351条)。ただし「税金がかからない」ことと「管理の責任がなくなる」ことは別
  • 手放す方法は国庫帰属・売却・自治体への寄付だが、いずれもハードルがある。特に境界が明らかでない土地は国庫帰属の申請そのものができない(相続土地国庫帰属法第2条第3項第5号)

親から山林を相続した、という相談は珍しくありません。ここで最初に押さえておきたいのは、山林の相続には、宅地の相続にはない別ルートの手続きが加わることがあるという点です。法務局への相続登記とは別に、市町村への届出が必要になる場合があり、しかもその期限は相続登記よりずっと短い90日です。

以下、届出の中身、持ち続けるときの負担、そして手放したいときの現実的な選択肢の順に整理します。

期限の違う2つの手続きが同時に走る

山林を相続したときに気をつけたいのは、登記の話と森林行政の話が別々に動くことです。

ひとつは相続登記です。所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ所有権を取得したことを知った日から3年以内に所有権移転の登記を申請しなければならないとされています(不動産登記法第76条の2第1項)。正当な理由なくこれを怠ると10万円以下の過料の対象です(同法第164条第1項)。相続登記そのものの流れは、亡くなった父名義の家、どうやって名義変更する?相続登記の流れを最初から最後までやさしく解説 で解説しています。

もうひとつが、この記事の主題である森林の土地の所有者となった旨の届出です。こちらの期限は90日。相続登記の3年に比べると、はるかに短い期間です。相続の手続きに追われているうちに過ぎてしまいやすい期限といえます。

森林法の届出──対象・期限・届出先

誰が、いつまでに、どこへ

森林法第10条の7の2第1項は、地域森林計画の対象となっている民有林について、新たにその森林の土地の所有者となった者は、農林水産省令で定める手続に従い、市町村の長にその旨を届け出なければならないと定めています。

ここでいう「民有林」とは、国が所有する国有林以外の森林のことです(森林法第2条第3項)。個人が相続した山林は、通常この民有林にあたります。ただし民有林であれば全部が届出の対象になるわけではなく、地域森林計画の対象に入っているものに限られます。

そして「農林水産省令で定める手続」の中身が、森林法施行規則第7条第1項です。同項は、この届出は「地域森林計画の対象となつている民有林について新たに当該森林の土地の所有者となつた日から九十日以内に届出書を市町村の長に提出してしなければならない」と定めています。

つまり、

  • 対象:地域森林計画の対象となっている民有林
  • 義務を負う人:新たにその土地の所有者となった者(相続で取得した相続人を含む)
  • 期限:所有者となった日から90日以内(相続の場合は相続開始の日が起算点)
  • 届出先:市町村の長(実際の窓口は市町村の林務・農林担当課)

という整理になります。ここで注意したいのは、90日という期限は森林法の本体ではなく施行規則に置かれている点です。森林法第10条の7の2第1項は「農林水産省令で定める手続に従い」届け出るようにとだけ定め、具体的な日数は施行規則第7条第1項が定める、という二段構えになっています。

では、起算点の「所有者となつた日」は、相続の場面で具体的にいつを指すのでしょうか。条文の文言だけでは判然としませんが、この点は林野庁長官通知「森林の土地の所有者となつた旨の届出制度の運用について」(平成24年3月26日付け23林整計第312号。最終改正・令和8年3月31日付け7林整計第559号)が明らかにしています。同通知は、「土地の所有者となった日」とは、売買等の契約に定められた土地の所有権の移転日、相続開始の日など森林の所有権が移転することとなった日とする、としています。

つまり相続の場面では、被相続人が亡くなった日が起算点です。遺産分割協議がまとまった日でも、相続登記が完了した日でもありません。ここは実務上とても大事なところで、「誰がその山林を継ぐか」を話し合っているうちに90日が過ぎてしまう、ということが起こり得ます。

添付する書類

森林法施行規則第7条第2項は、届出書に次の書類を添えなければならないと定めています。

  1. 当該土地の位置を示す地図
  2. 当該土地の登記事項証明書その他の届出の原因を証明する書面

相続の場面では、2の「届出の原因を証明する書面」として、相続関係がわかる書類が求められることになります。前記の林野庁長官通知は、この書面について、登記事項証明書のほか、その写し、森林の土地の売買契約書の写し、遺産分割協議書の写し、登記済証の写しなど、届出者が森林の土地の所有権を有することを証明することができる書面とする、としています。登記事項証明書そのものでなくてもよい、という整理です。もっとも、実際にどの書面で受け付けるかは市町村の運用によって差がありますので、窓口での確認が要ります。

令和8年4月から、届出書の記載事項が増えました

届出書の様式は、令和8年(2026年)4月1日から改正されています。従来の記載事項(所有権移転年月日、移転の原因、前所有者の氏名・住所、届出人の氏名・住所・連絡先、土地の所在場所・面積、土地の用途等)に加えて、新たに届出人の国籍等を記載することになりました。届出人が法人であれば代表者の国籍等も、届出人が国外に居住している場合は国内の連絡先を別紙で、それぞれ提出します(林野庁「森林の土地の所有者届出制度」の案内および前記通知の令和8年3月31日改正による)。

相続で山林を引き継ぐ方の多くは日本国内にお住まいでしょうから、実務上は記載欄がひとつ増える程度の話です。ただし、手元にある古い様式や、改正前に作られた記載例をそのまま使うと記載漏れになります。届出書は市町村の窓口か林野庁のホームページから、最新の様式を入手してください。

なお、届出書そのものの作成を業として代行するのは行政書士の業務です。この記事は「市町村への届出が必要になる」という制度のご案内までで、届出書の作成代行についてはお近くの行政書士にご相談ください。司法書士が担うのは、法務局への相続登記の部分です。

届出をしなかったら

森林法第213条は、「第十条の七の二第一項の規定に違反して、届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、十万円以下の過料に処する」と定めています。相続登記を怠った場合の過料(不動産登記法第164条第1項・10万円以下)とは根拠も手続きも別ですので、「登記さえしておけば大丈夫」とはなりません。逆に、届出を済ませても相続登記の義務が消えるわけでもありません。

届出が不要になる場合

森林法第10条の7の2第1項には、ただし書があります。国土利用計画法第23条第1項の規定による届出をしたときは、森林法の届出は要しないとされています。これは一定面積以上の土地について売買等で権利を取得した場合の届出制度で、相続の場面で問題になることは多くありません。

また、届出の対象はあくまで「地域森林計画の対象となっている民有林」です。登記記録の地目が「山林」であっても地域森林計画の対象になっていない場合もあれば、地目が「原野」「雑種地」などでも対象になっている場合もあり得ます。登記地目だけで判断せず、市町村の窓口で対象かどうかを確認するのが確実です。地目そのものの考え方は土地の「地目」とは?田・畑・宅地・雑種地で何が変わる?相続・売買の登記への影響 をご覧ください。

山林を持ち続けるときの負担

届出と登記を済ませたあと、現実に効いてくるのが管理の負担です。

固定資産税は「かからないこともある」

地方税法第351条は、同一の者について市町村の区域内に所有する土地の固定資産税の課税標準となるべき額が30万円に満たない場合には、固定資産税を課することができないと定めています(免税点)。山林は評価額が低くなりやすいため、この免税点に届かず課税されないケースが少なくありません。

ただし、同条にはただし書があり、財政上その他特別の必要がある場合には、市町村の条例の定めるところにより、免税点未満でも課税できるとされています。また、同一市町村内に他の土地を持っていれば合算されます。実際に課税されるかどうかは、市町村からの納税通知書で確認してください。なお、具体的な税額の計算や有利不利の判断は税理士の領域ですので、この記事では立ち入りません。

税金がかからなくても、責任は残る

見落とされやすいのが、課税されないことと、管理の責任を負わないことは別という点です。所有者である以上、倒木や土砂の流出などで他人に損害が生じた場合の責任の問題は残ります。遠方に住んでいて現地を見たこともない、という状態は、この意味でリスクを抱えたままということになります。

境界がわからない、隣地の所有者がわからない

山林でとりわけ多いのが、境界の問題です。宅地のようにブロック塀や側溝で区切られているわけではなく、目印になっていた古い杭や立木が失われていることもあります。隣地の所有者が代替わりして所在がわからない、というケースも珍しくありません。

この「境界が明らかでない」状態は、後述する国庫帰属制度を使おうとするときに、決定的な障害になります。売却を考える場合も同じで、境界が確定していない土地は買い手がつきにくいのが実情です。

手放したいときの選択肢

「使い道がなく、管理もできない」となったとき、選択肢は大きく3つです。

1. 相続土地国庫帰属制度

一定の要件を満たせば、土地の所有権を国庫に帰属させることを法務大臣に申請できる制度です。制度の全体像は相続で「いらない土地」が出てきたら──国に引き取ってもらう制度の基本 で解説しています。山林も対象になり得ますが、要件は決してゆるくありません。

まず、申請できるのは相続等によりその土地の所有権の全部または一部を取得した者に限られます(相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律第2条第1項)。土地が数人の共有に属する場合は、共有者全員が共同して申請するときに限られます(同条第2項)。

そして、申請できない土地として、建物がある土地、担保権や使用収益を目的とする権利が設定されている土地、境界が明らかでない土地その他の所有権の存否・帰属・範囲について争いがある土地などが挙げられています(同条第3項各号)。境界がわからない山林は、この段階でつまずくことになります。

さらに、申請が受け付けられても、崖があって通常の管理に過分の費用や労力を要する土地、通常の管理や処分を阻害する工作物・車両・樹木その他の有体物が地上にある土地などは、承認されないことがあります(同法第5条第1項各号)。

費用面では、審査手数料が土地1筆あたり14,000円(法務省の案内による)。承認された場合には負担金の納付が必要で、主に森林として利用されている土地については、面積の区分に応じた計算式で算定されます(同法施行令第5条第1項第3号)。「原則20万円」という説明を目にすることがありますが、これは同項第4号の「前三号に掲げる土地以外の土地」の額であり、主に森林として利用されている土地は、この区分には入りません。

なお、この制度の承認申請は、法定代理人による場合を除き、申請者が任意に選んだ第三者に手続きのすべてを依頼することはできないとされています。書類の作成代行を業として行えるのは弁護士・司法書士・行政書士に限られる、というのが法務省の案内です。司法書士に依頼できるのは書類作成の代行までで、「申請を丸ごと代わってもらう」ことはできない、という点は誤解されやすいところです。

2. 売却

買い手が見つかれば、それが最も自然な解決です。ただし、境界が確定していない、接道がない、といった事情があると、買い手を探すこと自体が難しくなります。

なお、売却先を探す・価格を査定する・条件を交渉するといった仲介は宅地建物取引業者の業務です。立木の処分も同様に、専門の事業者や森林組合の領域になります。司法書士が担うのは、売買契約が成立したあとの所有権移転登記です。

3. 自治体への寄付

「市町村に寄付すればいい」と考える方は多いのですが、現実には簡単ではありません。自治体は公共の用途に使う見込みのない土地を無条件に受け入れるわけではなく、寄付を受け付けない、あるいは個別に判断するとしている自治体が一般的です。まずは所在地の自治体に問い合わせて、受け入れの可否と条件を確認するところからになります。

まとめ

山林を相続したときは、相続登記(3年以内・不動産登記法第76条の2第1項)と、森林の土地の所有者となった旨の届出(相続開始の日から90日以内・森林法第10条の7の2第1項、同法施行規則第7条第1項)という、期限の異なる2つの手続きが並行します。届出の対象は地域森林計画の対象となっている民有林で、届出先は市町村の長です。届出を怠れば10万円以下の過料(森林法第213条)の対象になります。

持ち続けるにも、手放すにも、それぞれ負担があります。特に境界が明らかでない山林は、国庫帰属制度の申請ができず、売却も難しくなります。相続した山林をどう扱うかは、相続登記・森林行政・境界・税務と複数の分野にまたがるため、早い段階で整理を始めるのが安全です。まずはお近くの司法書士にご相談ください。

よくある質問

Q. 費用はどれくらいかかりますか? 相続登記には登録免許税(固定資産税評価額をもとに計算します)と司法書士報酬がかかります。山林は評価額が低いことが多く、登録免許税も比較的小さくなる傾向があります。森林法の届出自体に手数料はかからないのが一般的ですが、添付する登記事項証明書の取得費用はかかります。国庫帰属制度を使う場合は、審査手数料が土地1筆あたり14,000円(法務省の案内による)、承認された場合はさらに負担金が必要です。司法書士報酬は事務所ごとに異なるため、依頼先で見積りを取ってください。

Q. 期限を過ぎたり、放置したりするとどうなりますか? 森林法の届出を怠ると10万円以下の過料(森林法第213条)、相続登記を怠ると正当な理由がない場合に10万円以下の過料(不動産登記法第164条第1項)の対象になります。両者は別々の制度なので、片方を済ませてももう片方の義務は残ります。加えて、名義を放置したまま世代が進むと相続人が増え、遺産分割の話し合いも境界の確認も一気に難しくなります。手放したいと思ったときに動けなくなる、というのが放置の最大のコストです。

Q. 自分でできますか?どこに相談すればいいですか? 相続登記は自分で申請することもできますが、山林は筆数が多くなりやすく、戸籍の収集や不動産の特定に手間がかかります。相談先は目的で分かれます。相続登記は司法書士、森林法の届出の受付は市町村の林務担当課(届出書の作成代行は行政書士)、境界の測量は土地家屋調査士、売却の仲介は宅地建物取引業者、相続税や譲渡所得税といった税金の計算は税理士です(登記のときに納める登録免許税は、登記手続きの一部として司法書士が計算します)。国庫帰属制度は法務局が窓口で、書類作成の代行は弁護士・司法書士・行政書士が担えます。どこから手をつけるか迷ったら、まずはお近くの司法書士にご相談ください。

【さらに深掘り】山林の相続手続きが実務でつまずく4つのポイント

ご注意 以下は執筆時点(2026年7月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。

山林の相続は、宅地の相続と手続きの骨格は同じでも、つまずく箇所が違います。以下、4点に絞って整理します。

1. 90日の届出は、相続登記の完了を待てない

森林法の届出期限は90日、相続登記の申請義務の期限は3年です。しかも90日の起算点は、本文で見たとおり相続開始の日(被相続人が亡くなった日)です。相続登記は、戸籍の収集から遺産分割協議を経て申請に至るまで、90日で完了しないことがむしろ普通ですから、「相続登記が終わってから届出をする」という段取りでは、まず間に合いません。

この点、林野庁は、本制度は森林法に基づく制度であって不動産登記とは別の制度であり、不動産登記の実施の有無にかかわらず届出が必要である、と明示的に案内しています(林野庁「森林の土地の所有者届出制度」)。

条文の建てつけも同じです。森林法施行規則第7条第2項第2号は、届出書に添える書類として「当該土地の登記事項証明書その他の届出の原因を証明する書面」と定めており、前掲の林野庁長官通知は、この受け皿に当たるものとして、登記事項証明書の写し、売買契約書の写し、遺産分割協議書の写し、登記済証の写しなどを挙げています。相続登記が完了していなくても、相続と所有権の帰属を示せる書面で届け出られる、ということです。

したがって、実務では「先に届出、登記は並行して進める」が基本形になります。もっとも、受付の運用や求められる書面の細部は市町村によって差がありますので、相続が起きた段階で市町村の林務担当課に確認しておくのが安全です。

なお、届出書そのものの作成を業として代行するのは行政書士の業務です。ここで扱っているのは、あくまで期限管理をどう組み立てるかという話です。

2. 「そもそも山林があることに気づかない」という入口の問題

実務でしばしば起こるのが、遺産の把握段階での漏れです。山林は評価額が低く、地方税法第351条の免税点(土地について課税標準となるべき額30万円)に届かないために固定資産税の納税通知書が届かないことがあります。相続人が「毎年の通知書に載っている不動産がすべて」と考えていると、山林だけが抜け落ちます。

対策としては、市町村で名寄帳(固定資産課税台帳の登録事項を所有者ごとにまとめたもの)を取得し、課税されていない不動産も含めて出力してもらうことです。市町村によって様式や記載の範囲に差があるため、窓口で「免税点未満のものも含めて」と伝える必要があります。あわせて、被相続人の登記識別情報や権利証、古い公図の写しなどが自宅に残っていないかも確認します。

把握が漏れたまま相続登記を済ませると、山林だけが被相続人名義で残り、次の相続で相続人が増えてから発覚する、という展開になります。

3. 登録免許税は「ゼロ」になることがある

山林の相続登記では、登録免許税の免税措置に該当することが少なくありません。租税特別措置法第84条の2の2第2項は、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法の施行の日から令和9年3月31日までの間に、土地について相続による所有権移転の登記等を受ける場合において、その登記に係る登録免許税法第10条第1項の課税標準たる不動産の価額が100万円以下であるときは、登録免許税を課さないと定めています。

評価額の低い山林はこの100万円以下に収まりやすく、免税の対象になり得ます。免税の適用を受けるには申請書にその旨を記載する必要がありますので、記載漏れがないよう注意が必要です。詳しくは相続登記の登録免許税が「ゼロ」になる土地──100万円以下の免税措置を見落とさないために をご覧ください。

同条第1項には、相続により土地の所有権を取得した個人が、その相続による所有権移転の登記を受ける前に死亡した場合の免税措置も置かれています(平成30年4月1日から令和9年3月31日までの間)。数次相続で世代をまたいだ山林では、こちらが問題になることもあります。

4. 国庫帰属は「一筆ごと」──筆数がそのまま費用に効く

相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律第5条第2項は、「前項の承認は、土地の一筆ごとに行うものとする」と定めています。そして審査手数料は土地1筆あたり14,000円(法務省の案内による)です。

山林は、宅地と違って1つのまとまった土地が何十筆にも分かれて登記されていることがあります。「山を1つ引き取ってもらう」つもりでも、審査手数料は筆数分かかることになります。負担金の額は、主に森林として利用されている土地については、同法施行令第5条第1項第3号が地積の区分に応じた計算式を定めています(たとえば750平方メートル以下の区分では、地積に59円を乗じた額に21万円を加えた額)。同項第4号の「前三号に掲げる土地以外の土地」=20万円という定額とは別の扱いです。

ただし、負担金については緩和の仕組みがあります。同法施行令第6条第1項は、隣接する2筆以上の申請土地のいずれもが施行令第5条第1項各号の同じ区分に属するときは、これらを一筆の土地とみなして負担金を算定すべき旨を法務大臣に申し出ることができると定めています。森林のように地積の区分に応じて算定する土地では、申出をした2筆以上の面積を合算したうえで負担金額を算定することになります。一筆ごとに加算される定額部分が1回で済むため、筆ごとに算定するよりも負担金の総額は小さくなるのが通常です。土地の所有者が異なる場合は共同して申し出る必要があり(同条第2項)、区分が異なる土地どうし(たとえば市街化区域外の宅地と森林)は対象になりません。筆数の多い山林では、この特例を使えるかどうかで負担金の総額が変わってきます。

さらに手前の関門が、同法第2条第3項第5号の「境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地」です。山林はここに引っかかりやすく、境界の確認・確定は土地家屋調査士が扱う分野になります。国庫帰属を検討するなら、境界の状況の確認を最初に置くことになります。

補足:相続放棄をしても、責任が自動的に消えるとは限らない

「管理できないから相続放棄をすればよい」と考える方がいますが、民法第940条第1項は、相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人または相続財産の清算人に対して財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもってその財産を保存しなければならない、と定めています。

この条文は「現に占有しているとき」の保存義務を定めた規定であり、遠方の山林が常に「現に占有」に当たるかどうかは、個別の事情によります。条文がこう書かれているからといって、放棄さえすれば山林についての責任が一切なくなる、と読み切ることはできません。放棄後の扱いについては相続放棄しても管理義務が残ることがある──いつまで続く?改正民法940条で整理 を参照してください。

また、相続放棄は相続財産の一部だけを選んで放棄することができず、預貯金や自宅も含めてすべてを放棄することになります。「山林だけ手放す」目的で放棄を選ぶのは、通常は割に合いません。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年7月・いずれも一次情報です)。

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