この記事の要点

  • リゾートマンションや別荘は、使わなくても管理費・修繕積立金・固定資産税が毎年かかり続けるため、「もらっても困る不動産」になりやすい
  • それでも相続登記は義務で、取得を知った日から3年以内に申請しないと過料の対象になり得る(不動産登記法第76条の2、第164条第1項)
  • 亡くなった方が管理費を滞納していた場合、その支払義務は原則として相続人に引き継がれる。売買などで部屋を取得した人にも請求できる仕組みがある(建物の区分所有等に関する法律第8条)
  • 「いらない土地を国に引き取ってもらう制度」は土地だけの制度で、建物であるリゾートマンションは対象にならない

リゾートマンションや別荘を相続することになったとき、多くの方が最初に直面するのは「使う予定がないのに、費用だけが出ていく」という現実です。結論から言えば、受け取らないという判断(相続放棄)をしない限り、名義を引き継いだ人が、手放すまで費用を負担する立場になります。そして相続登記は義務であり、「使わないから放っておく」という選択は、法律上は用意されていません。

この記事では、リゾートマンションや別荘を相続したときに何が起きるのか、そして現実に取り得る選択肢は何かを、登記手続きの観点から整理します。なお、売却先を探す仲介は宅地建物取引業者の業務、税額の計算や節税の相談は税理士の業務であり、それぞれ役割が分かれます。

なぜ「いらない不動産」になってしまうのか

使っていない別荘やリゾートマンションでも、所有している限り、おおむね次の負担が続きます。

  • 管理費・修繕積立金(区分所有のリゾートマンションの場合)。使用の有無にかかわらず、毎月発生します。温泉権利や共用の大浴場・プールなどを備えた物件では、一戸建ての別荘より高額になることもあります。
  • 固定資産税・都市計画税。その年の1月1日時点の所有者として課税されます。
  • 水道・電気などの基本料金、庭木や建物の維持管理費用。
  • 別荘地の場合は、道路や上下水道を管理する団体への管理費・組合費が定められていることがあります。

バブル期に分譲されたリゾートマンションのなかには、市場価格が大きく下がった一方で、建物の老朽化に伴って修繕積立金の負担が重くなっている物件もあります。「売値はつかないのに、費用だけは毎年出ていく」という状態が、いわゆる負動産(ふどうさん)と呼ばれる問題の中身です。

なお、リゾートマンションは1棟の建物を部屋ごとに区切って所有する区分建物で、登記簿の作りが一戸建てとは異なります。土地(敷地)を使う権利が部屋とセットで登記されている「敷地権」の仕組みについては、マンションの登記簿はなぜ一戸建てと違う?──区分建物と「敷地権」のきほん をご覧ください。この仕組みは、後述する国庫帰属制度を考えるうえでも関わってきます。

それでも相続登記は避けられない

「使わないし、価値もないから、名義はそのままでいい」と考えたくなるところですが、相続登記は2024年(令和6年)4月1日から義務化されています。

不動産登記法第76条の2は、相続によって不動産の所有権を取得した相続人に対し、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する義務を定めています。正当な理由なくこれを怠った場合、10万円以下の過料の対象になり得ます(同法第164条第1項)。この義務は、価値の高い不動産に限られるものではなく、山林でも別荘でもリゾートマンションでも同じように及びます。

施行日より前に相続が発生していたケースの取扱い(経過措置)については、相続登記の義務化、あと1年で「経過措置」が終わります で整理しています。

登記の申請先は不動産の所在地を管轄する法務局です。遠方のリゾート地にある物件でも、郵送やオンラインでの申請方法があるため、現地へ出向かなければ手続きできないというわけではありません。

なお、2026年(令和8年)4月1日からは、登記名義人の氏名や住所が変わったときも、変更があった日から2年以内に変更の登記を申請することが義務づけられています(不動産登記法第76条の5)。正当な理由なく怠った場合は5万円以下の過料の対象になり得ます(同法第164条第2項)。相続登記を済ませたあとに引っ越したときも対象になりますし、施行日より前に住所が変わっていて登記に反映していない場合は、2028年(令和10年)3月31日までに申請する必要があります。

滞納していた管理費は、どう扱われるのか

リゾートマンションの相続で見落とされやすいのが、亡くなった方が管理費や修繕積立金を滞納していた場合の扱いです。

区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)は、管理費などの債権について、区分所有者の特定承継人に対しても行使することができると定めています(同法第8条)。特定承継人とは、売買や贈与などによってその部屋を個別に取得した人のことです。つまり、滞納のある部屋を買った人は、自分が滞納したわけではなくても、管理組合から支払いを求められる立場になり得るという建てつけです。

相続の場合はこれとは別の道筋になります。相続人は亡くなった方の権利義務を包括的に引き継ぐため(民法第896条)、滞納していた管理費の支払義務も、原則として相続分に応じて相続人に承継されます。経路は異なりますが、いずれの場合も、相続が起きたからといって滞納の負担がなくなるわけではないという点は共通しています。

また、管理費などの債権については、区分所有法第7条第1項が、債務者の区分所有権(共用部分に関する権利および敷地利用権を含みます)と建物に備え付けた動産の上に先取特権(さきどりとっけん。他の債権者に優先して弁済を受けられる権利)を認めています。

したがって、リゾートマンションを相続する見込みがある場合、管理組合に滞納の有無と金額を確認することが実務上の出発点になります。なお、金額の妥当性を争ったり、管理組合と支払方法を交渉したりする場面は弁護士の業務範囲であり、司法書士が代理して交渉することはできません(弁護士法第72条)。この記事も、制度上どのような仕組みになっているかの一般的な説明にとどめています。

現実的な選択肢を整理する

1. 売却する

もっとも素直な出口は売却です。ただし、売却するには前提として相続登記を済ませ、名義を相続人に移しておく必要があります。亡くなった方の名義のままでは、買主へ所有権移転登記をすることができないためです。

売却先を探す仲介は宅地建物取引業者の業務で、司法書士が担うのは売買契約成立後の登記手続きです。売却価格が管理費の滞納額や仲介手数料を下回るような場面もあり得るため、金額面の見通しは早い段階で不動産会社に確認しておくとよいでしょう。譲渡所得など税金の計算は税理士の領域です。

2. 相続人のうち1人の単独名義にまとめる

兄弟姉妹の共有のままにすると、将来の売却や修繕の場面で全員の関与が必要になり、そのうちの誰かに次の相続が起きるとさらに関係者が増えていきます。管理の手間や意思決定のことを考えると、誰か1人の単独名義にまとめるほうが動かしやすくなる場面は少なくありません。持分の扱い方については「あわせて読みたい」の記事で整理しています。

3. 相続放棄する

プラスの財産よりも負担のほうが大きいと判断する場合、相続放棄という選択肢があります。ただし次の点に注意が必要です。

  • 相続放棄は、原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内にしなければならず(民法第915条第1項)、家庭裁判所へ申述して行います(同法第938条)。
  • 放棄すると、その相続に関して初めから相続人でなかったものとみなされます(民法第939条)。リゾートマンションだけを放棄して預貯金は受け取る、という選び方はできません。
  • 放棄した後も、放棄の時にその財産を現に占有していた場合には、相続人などに引き渡すまで保存義務が残ることがあります(民法第940条)。
  • 相続人全員が放棄すると、財産の管理を引き継ぐ人がいなくなり、家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立てる必要が生じる場合があります。申立てにあたって予納金を求められることがあり、その額は事案によって異なります。

4. 国に引き取ってもらう制度は使えるのか

「いらない不動産は国が引き取ってくれる制度がある」という話を耳にすることがありますが、ここは正確に理解しておく必要があります。

相続土地国庫帰属制度は、その名のとおり土地を対象とする制度です。相続等により土地の所有権を取得した人が、法務大臣に対してその土地を国庫に帰属させる承認を申請できる、という仕組みになっています(相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律第2条第1項)。建物はこの制度の対象ではありません。 建物だけを国に引き取ってもらう制度は用意されていません。

さらに、同法第2条第3項第1号は、建物の存する土地については承認申請をすることができないと定めています。リゾートマンションの敷地には当然マンションという建物が建っているため、その敷地はこの規定に当たります。加えて、区分所有法第22条第1項は、敷地利用権が数人で有する権利である場合、専有部分(部屋)と敷地利用権とを分離して処分することができないと定めています(規約に別段の定めがあるときを除きます)。つまり、区分所有マンションの敷地利用権だけを切り離して国庫帰属を申請することも、原則としてできません

制度の全体像は 相続で「いらない土地」が出てきたら──国に引き取ってもらう制度の基本 で解説しています。

一戸建ての別荘(土地と建物)の場合は、建物を取り壊して更地にすれば、その土地について申請を検討する余地は出てきます。ただし、この制度には建物の不存在以外にも複数の要件が定められており、承認されるかどうかは土地の状況次第です。また、申請時の審査手数料と、承認された場合の負担金の納付も必要になります。審査手数料は土地1筆あたり1万4,000円で、申請を取り下げたときや承認されなかったときも返還されません。負担金は、市街化区域内などにある宅地・農地と、森林(こちらは所在地を問いません)については面積に応じて算定され、それ以外の土地は20万円と定められています(同法施行令第5条)。取壊し費用を投じたうえで承認されない可能性もあるため、順序としては先に要件を確認することが大切です。

まとめ

リゾートマンションや別荘の相続で押さえておきたい点を整理します。

  • 使わなくても、名義を引き継げば管理費・修繕積立金・固定資産税の負担が続く
  • 相続登記は義務であり、取得を知った日から3年以内の申請が求められる(不動産登記法第76条の2)
  • 滞納管理費の支払義務は相続人に引き継がれ(民法第896条)、売買などで部屋を取得した人にも請求が及び得る仕組みがある(区分所有法第8条)
  • 出口は主に「売る」「単独名義にまとめて管理する」「相続放棄する」の3方向で、国庫帰属制度は土地の制度であり建物であるリゾートマンションには使えない
  • 相続放棄には3か月という期限があるため、負担が大きいと感じた場合は早い段階での見極めが必要

どの選択肢を採るにしても、判断の材料になるのは「滞納額はいくらか」「毎年いくらかかるのか」「売れる見込みはあるのか」という具体的な数字です。まずは管理組合や管理会社への確認から始めるのが現実的です。相続登記の要否や手続きの進め方でお困りのときは、お近くの司法書士にご相談ください。

よくある質問

Q. リゾートマンションの相続登記には、どれくらい費用がかかりますか?

登録免許税は、固定資産税評価額をもとに計算されます(相続による所有権移転登記の税率は1000分の4)。評価額が低い物件であれば、税額そのものは大きくならないことが多いです。ほかに戸籍謄本などの取得実費と、司法書士に依頼する場合の報酬がかかります。報酬額は事務所ごとに異なるため、見積りを取って確認してください。

なお土地については、不動産の価額が100万円以下である場合、相続による所有権移転登記の登録免許税が免税となる措置があります(租税特別措置法第84条の2の2第2項)。2027年(令和9年)3月31日までに受ける登記が対象で、適用を受けるには申請書にその根拠となる条項を記載する必要があります。

Q. 使っていないので、名義を変えずに放置してもよいですか?

放置は避けたほうがよいです。相続登記の申請義務があり、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になり得ます(不動産登記法第164条第1項)。また、名義が亡くなった方のままでは売却もできず、その間も管理費と固定資産税は発生し続けます。相続人がさらに亡くなると関係者が増え、手続きの負担が大きくなります。

Q. 相続放棄をすれば、管理費の支払いからは完全に解放されますか?

相続放棄が受理されれば、その相続について初めから相続人でなかったものとみなされます(民法第939条)。ただし、放棄の時にその財産を現に占有していた場合には、相続人などに引き渡すまで保存義務が残ることがあり(民法第940条)、相続人全員が放棄した場合は相続財産清算人の選任が必要になることもあります。放棄すれば何もかも終わり、とは限らない点に注意が必要です。個別の見通しについては、お近くの司法書士にご相談ください。

【さらに深掘り】区分建物の相続登記と、放置したときに生じる登記実務上の詰まり

ご注意 以下は執筆時点(2026年07月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。

敷地権付き区分建物の申請で押さえておく点

リゾートマンションの多くは、専有部分と敷地利用権が一体になった「敷地権付き区分建物」です。不動産登記法第44条第1項第9号は、専有部分と分離して処分することができない敷地利用権を「敷地権」と呼び、建物の表示に関する登記の登記事項に掲げています。

申請上まず押さえるのは、申請の単位です。同法第73条第1項は、敷地権付き区分建物についての所有権に関する登記は、敷地権である旨の登記をした土地の敷地権についてされた登記としての効力を有すると定めています。相続による所有権移転登記は建物について申請すれば土地の敷地権にも効力が及ぶ建てつけで、原則として土地について別に申請するものではありません。

一方、登録免許税の課税価格には土地の分も入ります。登録免許税法第10条第1項は課税標準たる不動産の価額を「当該登記の時における不動産等の価額による」とし、同条第2項は、所有権の持分の取得に係るものであるときは、その価額に持分の割合を乗じて計算した金額によると定めています。実務では、専有部分の建物の価額と、敷地権の目的である土地の価額に敷地権の割合を乗じた額との合計を課税価格とする扱いがとられています。「土地は申請しないのだから土地の評価額は不要」と考えると課税価格を誤ります。敷地が複数の筆にわたる物件では、筆ごとに評価額を確認することになります。なお、古い物件には敷地権として登記されていないものもあるため、まず登記事項証明書で敷地権の登記の有無を確かめるのが出発点です。

添付情報については、不動産登記令別表22の項が「相続又は法人の合併を証する市町村長、登記官その他の公務員が職務上作成した情報」を、同別表30の項ハが登記名義人となる者の住所を証する情報を掲げています。遺産分割によるときは、その内容を示す書面が登記原因証明情報の一部になります。

相続人申告登記を使っても、義務が全部終わるわけではない

遺産分割がまとまらないときの受け皿が、相続人申告登記(不動産登記法第76条の3)です。同条第1項により、申請義務を負う者は、所有権の登記名義人について相続が開始した旨と自らがその相続人である旨を登記官に申し出ることができ、期間内に申出をした者は申請義務を履行したものとみなされます(同条第2項)。法定相続分を確定させなくても単独で使える点が実務上の利点です。

ただし限界が二つあります。第一に、条文上、義務を履行したとみなされるのは申出をした本人です。第二に、その後の遺産分割によって所有権を取得したときは、分割の日から3年以内に所有権の移転の登記を申請しなければならず(同条第4項)、これを怠った場合は10万円以下の過料の対象に含まれています(同法第164条第1項)。申告登記は権利の移転を公示するものではないため、これだけを済ませても売却の前提は整いません。

共有のまま置くと、どこで詰まるか

共有のまま次の相続が起きると、協議の当事者が枝分かれして増えていきます。協議が調わない、または協議をすることができない場合、共有物の分割は裁判所に請求することになり(民法第258条第1項)、現物分割も他の共有者に持分を取得させる方法もとれないとき、または分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、競売が命じられることがあります(同条第3項)。区分建物は現物分割になじみにくく、出口が限られます。

放棄の側にも留意点があります。民法第940条第1項は、放棄の時に相続財産に属する財産を「現に占有している」ことを要件として、引渡しまでの保存義務を定めています。遠方の物件で立ち入りも管理もしていない場合にこれに当たるかどうかは、個別の事情によって判断が分かれ得るところです。また、相続人全員が放棄して相続人のあることが明らかでなくなれば、利害関係人等の請求により家庭裁判所が相続財産の清算人を選任し(同法第952条第1項)、選任後の公告期間は6か月を下ることができないとされています(同条第2項)。時間も費用もかかる手続きであり、放棄を選ぶ場合もその先の流れまで見通しておく必要があります。

2026年4月に加わった、放置された住戸への手当て

老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律(令和7年法律第47号。2025年5月30日公布)による改正区分所有法が、2026年4月1日から施行されています。このなかに、放置された住戸に関わる仕組みがいくつか新設されました。

区分所有者が誰か分からない、またはその所在が分からない専有部分については、裁判所が利害関係人の請求により所有者不明専有部分管理人を選任することができます(区分所有法第46条の2第1項・第4項)。選任されると、その専有部分等を管理し処分する権利は管理人に専属し(同法第46条の3第1項)、保存行為などの範囲を超える行為をするには裁判所の許可が必要とされています(同条第2項)。あわせて、専有部分の管理が不適当で他人の権利等が侵害されるおそれがある場合の管理不全専有部分管理命令(同法第46条の8第1項)や、集会の決議の場面で所在等不明の区分所有者を除いて決議できる旨の裁判の制度(同法第38条の2第1項)も設けられました。

相続したリゾートマンションを、登記も管理組合への連絡先の更新もしないまま置いておくと、外から見て「所有者の所在が分からない住戸」という状態になりやすく、これらの手続の対象となり得ます。なお、滞納管理費の債権に関する規定(同法第7条・第8条)と、専有部分と敷地利用権の分離処分を禁じる規定(同法第22条)の内容は、この改正の後も変わっていません。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年07月・いずれも一次情報です)。

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