この記事の要点
- 戸籍の附票は「住所の履歴」を証明する書類で、市区町村をまたいだ転居も一枚で追えるのが強み
- 使いどころは大きく2つ。登記簿の住所と今の住所がつながらないときの住所変更登記と、行方のわからない相続人の住所をたどるとき
- 附票でも追えないときは、家庭裁判所の不在者財産管理人(民法25条)や失踪宣告(民法30条)が受け皿になる
戸籍の附票(こせきのふひょう)は、「住所の履歴をたどるための書類」です。使う場面はいろいろありますが、実際によく効くのは次の2つに絞られます。
- 登記簿に載っている住所と、今の住所がつながらないとき(住所変更登記や相続登記の前提として)
- 行方のわからない相続人がいて、その人の住所をたどりたいとき
この記事は、この2つの「使いどころ」に絞って解説します。附票とはそもそも何か、戸籍謄本とどう違うのか、といった基礎の部分は 戸籍の附票とは?相続登記で「亡くなった方の住所」を証明する書類の基礎 にまとめてありますので、先にそちらをご覧いただくとスムーズです。
附票の強みは「市区町村をまたげる」こと
まず、附票がなぜ役に立つのかを一言で押さえておきます。
住所を証明する書類には、住民票(と、その人が抜けたあとの住民票の除票)と、戸籍の附票があります。両者の違いは管理している単位です。
| 書類 | 管理の単位 | 追える範囲 |
|---|---|---|
| 住民票・住民票の除票 | 市区町村ごと | その市区町村にいた間の住所だけ |
| 戸籍の附票 | 戸籍ごと(本籍地の市区町村が管理) | その戸籍に入っている間の住所(他の市区町村への引っ越しも記録される) |
住民票は市区町村単位なので、A市からB市へ引っ越すと、A市の住民票にはB市の住所は載りません。一方、附票は戸籍に紐づいているため、戸籍が変わらない限り、何度県をまたいで引っ越しても住所の履歴が一本の線で残ります。「住所の点と点をつなぐ」場面で附票が呼ばれるのは、この性質があるからです。
裏を返すと、戸籍が変われば附票も切り替わります。転籍(本籍地を移すこと)や婚姻で新しい戸籍が作られると、新しい戸籍の附票には、その戸籍ができたあとの住所しか記録されません。転籍を何度もしている方の住所をたどるには、古い戸籍の附票(附票の除票)まで順にさかのぼって集める必要があります。ここが実務でつまずきやすい点です。
使いどころ①:登記簿の住所と今の住所がつながらないとき
住所変更登記は2026年4月から義務になりました
2026年4月1日から、不動産の所有者の住所・氏名が変わったときは、2年以内に登記も直すことが義務になりました。2026年4月より前の未登記分にも経過措置として2028年3月31日までの期限が設けられています。制度の全体像は 引っ越し・結婚したら登記も更新を──住所変更登記の義務化が始まりました をご覧ください。
ここで問題になるのが、「登記簿の住所」と「今の住所」が離れている場合です。
登記簿には、不動産を取得したときの住所がそのまま記録されています。その後に3回引っ越していれば、登記簿の住所と今の住民票の住所は、まったく別のものになっています。法務局からすると、その2つが同じ人であるとは、住民票を1枚見ただけでは確認できません。
そこで必要になるのが、**登記簿の住所から今の住所までの「橋渡し」**です。
- 同じ市区町村内での引っ越しだけなら → 住民票(住所の履歴が記載されたもの)で足りることが多い
- 市区町村をまたいで引っ越している → 戸籍の附票の出番
「登記簿の住所 → 引っ越し先 → 引っ越し先 → 今の住所」という鎖が、書類の上で切れずにつながっていることが確認できれば、住所変更登記の前提は整います。
つながらないときにどうするか
古い住所までさかのぼれない場合もあります。附票の除票には保存期間があり、住民基本台帳法施行令の改正(令和元年6月20日施行)で保存期間は5年から150年に延ばされましたが、改正より前にすでに廃棄されてしまった古い附票は取り戻せません。市区町村の案内では、平成26年(2014年)6月19日以前に消除・改製された附票は、改正の時点ですでに5年の保存期間が過ぎているため発行できない、と説明されています。
その場合は、不動産の権利証(登記済証・登記識別情報)や、不在住証明書・不在籍証明書といった別の書類を組み合わせて、同一人物であることを説明する運びになります。どの書類でよいかは登記官の個別の判断によるため、事前に法務局へ確認しておくと二度手間を防げます。
そもそも附票を集めなくて済むしくみもあります
住所変更登記の義務化に先立ち、2025年4月21日から検索用情報の申出という制度が始まっています。氏名のフリガナ・生年月日・メールアドレスなどをあらかじめ法務局に申し出ておくと、住所が変わったことを法務局が把握し、本人に確認したうえで職権により登記を更新してくれるというものです。この職権による登記(スマート変更登記)が実際に動き出すのは、義務化と同じ2026年4月1日からです。すでに登記名義人になっている方が単独で申し出る場合、登録免許税などの費用はかかりません。対象は、国内に住所のある個人に限られます。
引っ越しのたびに附票を集めて申請する負担を減らしたい方は、こちらも検討してみてください。なお、自分で申請する場合の登録免許税は、不動産1個につき1,000円です。
使いどころ②:行方のわからない相続人を探すとき
「連絡先を知らない」の大半は、附票で解決します
遺産分割の話し合いは、相続人全員でしなければ成立しません。「何十年も会っていない兄弟がいる」「叔父の子どもの住所がわからない」というだけで、手続きが止まってしまいます。
ただ、ここで言う「行方不明」の多くは、単に連絡先を知らないだけです。住民票をきちんと移して普通に暮らしている方であれば、戸籍をたどって本籍地を特定し、その戸籍の附票を取れば、現在の住民票上の住所が判明します。相続人であることを示す戸籍を添えれば、他の相続人の附票も請求できます。
住所がわかったら、いきなり訪ねるのではなく、まずは事情を書いた手紙を普通郵便で送るのが一般的です。相手にとっては何十年ぶりの連絡になりますから、丁寧さが結果を左右します。
なお、これは興信所や探偵が行うような「調査」ではありません。公的な記録(戸籍と附票)に記載された住所を、法律で認められた手続きで確認するだけの作業です。附票に書かれている以上のこと(勤務先、生活状況、実際にそこに住んでいるかどうか)は、附票からはわかりません。
附票でも追えないケース
次のような場合は、附票をたどっても現在地にたどり着けません。
- 引っ越したのに住民票を移していない(附票は住民票の異動をもとに記録されるため、届出がなければ更新されません)
- 長期間所在が確認できず、住民票が職権で消除されている
- 海外へ転出しており、国内の住民票がない
- 附票に載っている住所へ手紙を出しても、届かない・まったく反応がない
追えないときの受け皿は「家庭裁判所」です
ここまで来ると、探す作業の延長では解決できません。次の一手は、家庭裁判所の手続きです。
- 不在者財産管理人(民法25条)……住所や居所を離れて連絡がつかない場合に、家庭裁判所がその人の財産を管理する人を選ぶ制度。選ばれた管理人が本人の代わりに遺産分割協議に加わります(協議に加わるには家庭裁判所の許可が別に必要です)
- 失踪宣告(民法30条)……生死が7年間まったくわからない場合などに、法律上「亡くなったもの」として扱う制度。効果が重いため、慎重に検討します
どちらを使うか、そして認めるかどうかを判断するのは家庭裁判所です。申し立てれば必ず通るというものではありません。2つの制度の違いや手続きの流れは、相続人の一人が行方不明──遺産分割はどう進める? で詳しく整理しています。
附票を取るときの注意点
本籍地の市区町村で取ります。 附票は本籍地の市区町村が管理しているため、請求先は住所地ではなく本籍地です。郵送請求やコンビニ交付に対応している自治体もあります。なお、戸籍謄本については本籍地以外の窓口でも取得できる広域交付のしくみ(2024年3月1日から)が始まっていますが、戸籍の附票はこのしくみの対象外です。広域交付で請求できる書類は戸籍謄本などの戸籍の証明書に限られており、住民基本台帳法にもとづく戸籍の附票は、その対象として定められていないためです。取得を予定している場合は、本籍地の市区町村の案内を確認してください。
古いものは残っていないことがあります。 前述のとおり、保存期間の延長は令和元年6月20日施行の改正によるものです。それ以前に廃棄された附票は取得できません。数十年前の相続を今から手続きする場合は、この壁に当たることがあります。
専門職が代わりに取る場合のルールは書類によって違います。 戸籍・住民票・戸籍の附票は、司法書士等が職務上請求という方法で取得できる書類です。一方、固定資産評価証明書などはこの対象ではなく、依頼者からの委任状にもとづいて取得します(登記事項証明書は、誰でも取得できる公開の証明書です)。「専門職に頼めば何でも取れる」わけではない点は、あらかじめ知っておくと話が早くなります。
執筆時点(2026年7月)の制度に基づく一般的な解説です。
まとめ
戸籍の附票は、住所の履歴を一本の線でつなぐための書類です。市区町村をまたいだ引っ越しも追える一方、戸籍が変われば附票も切り替わるため、転籍を重ねているケースでは古い附票までさかのぼる必要があります。
登記簿の住所と今の住所がつながらないときの住所変更登記、そして行方のわからない相続人の住所をたどるとき──この2つが附票の主な使いどころです。附票でも追いつかない場合は、権利証や不在住証明書での代替、あるいは家庭裁判所の不在者財産管理人・失踪宣告という別の道に切り替えることになります。
どの書類が必要か、どこで手が止まっているかの見極めがつかないときは、お近くの司法書士にご相談ください。
よくある質問
Q. 戸籍の附票は、いくらで取れますか? 手数料は市区町村が条例で定めており、1通あたり数百円程度が一般的です。金額は自治体によって異なるため、請求先の市区町村のホームページで確認してください。転籍を重ねている場合は複数の附票が必要になり、その分だけ通数がかさみます。郵送請求では定額小為替を使うのが通例です。
Q. 登記簿の住所が昔のままです。放っておくとどうなりますか? 2026年4月から住所・氏名の変更登記は2年以内の義務となり、正当な理由なく怠ると5万円以下の過料の対象になり得ます。2026年4月より前の変更分にも2028年3月31日までの経過措置期限があります。加えて、放置するほど住所の履歴が長くなり、必要な附票の通数も増えていきます。早めに手をつけたほうが、費用も手間も軽く済みます。
Q. 附票は自分で取れますか?どこに相談すればいいですか? ご自身やご家族の附票であれば、本籍地の市区町村に請求すればご自身で取得できます。他の相続人の附票も、相続人であることを示す戸籍を添えれば請求できます。難しいのは、転籍が多くて古い附票までさかのぼるケースや、附票をたどっても相続人が見つからず家庭裁判所の手続きを考える必要があるケースです。判断に迷うときは、お近くの司法書士にご相談ください。
【さらに深掘り】附票が途切れたときの登記実務──代替書面の位置づけと、家庭裁判所を経る場合の流れ
ご注意 以下は執筆時点(2026年07月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。
「これに代わるべき情報」という条文上の受け皿
住所変更登記の添付情報は、不動産登記令別表23の項で「当該登記名義人の氏名若しくは名称又は住所について変更……があったことを証する市町村長、登記官その他の公務員が職務上作成した情報」と定められています。附票や住民票はこの「公務員が職務上作成した情報」にあたります。
注目したいのは、同じ欄に置かれた括弧書きです。そこには「公務員が職務上作成した情報がない場合にあっては、これに代わるべき情報」と書かれています。附票が廃棄されていて住所の鎖がつながらないときに、権利証(登記済証・登記識別情報)の提供、不在住証明書・不在籍証明書、申請人の上申書といった書面を組み合わせる実務の運びは、この括弧書きを受け皿にしたものと理解されています。
ただし条文は「これに代わるべき情報」と書いているだけで、何をどう組み合わせれば足りるかまでは定めていません。登記審査は提出された書面の形式面から判断する建前ですが、その枠の中でどの書面をどこまで求めるかは、登記官の個別の判断になります。実務では、事前に管轄の法務局へ照会し、組み合わせを確認してから収集に入る進め方が一般的とされています。手当たり次第に集めるより、先に照会するほうが手戻りは少なくなります。
保存期間150年でも、遡れない領域は残ります
戸籍の附票の除票は、住民基本台帳法施行令34条1項により、消除・改製した日から150年間保存するものとされています。令和元年6月20日施行の改正で延びた期間ですが、延長の効果は将来に向かってのものです。改正の時点ですでに保存期間が過ぎて廃棄されていた附票は、150年の対象にはなりません。
ここが、不動産登記法76条の5による住所変更登記の義務化と交差します。施行日は2026年4月1日で、義務の対象には施行日前の変更分も含まれ、2028年3月31日までという経過措置の期限が設けられています。長く放置された住所変更ほど、鎖の古い側で附票が残っていない可能性が高くなります。期限に追われてから代替書面の相談を始めると、照会と収集で時間を取られます。期限そのものより、書類が揃うかどうかの見通しを先に立てておくほうが実際的です。
数次相続では「誰の住所の鎖か」を分けて考える
数次相続では被相続人が複数人になります。このとき要るのは一本の長い鎖ではなく、被相続人ごとの鎖です。
登記簿上の名義人と亡くなった方が同一人であることを示す資料が、それぞれの相続について必要になります。実務では、被相続人の最後の住所を示す住民票の除票または戸籍の附票の除票によって同一性を確認する扱いが一般的とされています。第一次相続の被相続人については登記簿上の住所からの鎖を、第二次相続の被相続人についてはその方が不動産を取得した時点の住所からの鎖を、と区切って考えると整理しやすくなります。
転居が多い方の場合、鎖が切れる位置は戸籍が変わった箇所と重なります。転籍・婚姻・戸籍の改製があれば附票も切り替わるため、必要な附票の除票は「戸籍が変わった回数+1」を目安に見積もることになります。
家庭裁判所を経る場合、登記に何を付けるか
不在者財産管理人が選任された場合(民法25条)、管理人が遺産分割協議に加わるには家庭裁判所の許可が必要です。これは民法28条の権限外行為の許可にあたります。相続登記では、管理人が加わった遺産分割協議書に、選任の審判書と権限外行為許可の審判書を添える運びが一般的とされています。協議書に押した管理人の印鑑証明書も併せて用意します。順序としては、許可を得ないまま成立させた協議は効力に疑義が生じますので、許可を先に取るほうが安全です。
失踪宣告(民法30条)の場合は、民法31条により、普通失踪では7年の期間が満了した時に、危難失踪ではその危難が去った時に、死亡したものとみなされます。注意したいのは、みなされる死亡の時点が「宣告が確定した日」ではないことです。失踪者の死亡とみなされる時点が他の相続人の死亡時点より前になるか後になるかで、相続関係の組み立てが変わることがあります。宣告の内容は戸籍に記載されますので、添付書面としては戸籍で相続関係をたどれるのが通常ですが、時点の読み違いは相続人の範囲そのものを動かします。書類を集める前に確認しておきたい部分です。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年07月・いずれも一次情報です)。
- 住民基本台帳法 第16条・第17条・第20条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/342AC0000000081
- 住民基本台帳法施行令 第34条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/342CO0000000292
- 民法 第25条・第28条・第30条・第31条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- 不動産登記法 第76条の5・第76条の6・第164条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123
- 不動産登記令 別表23の項(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/416CO0000000379
- 戸籍法 第10条の2・第120条の2(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000224
- 登録免許税法 別表第一(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/342AC0000000035
- 法務省「住所等変更登記の義務化について」: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00693.html
- 法務省「検索用情報の申出について(職権による住所等変更登記関係)」: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00678.html
- 法務省「戸籍法の一部を改正する法律について(令和6年3月1日施行)」: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji04_00082.html
- 松戸市「住民票の除票および戸籍の附票の除票の保存期間延長について」: https://www.city.matsudo.chiba.jp/kurashi/todokede/shoumeisho/hozonkikan.html
- 江東区「戸籍証明書の広域交付について」: https://www.city.koto.lg.jp/060303/kurashi/jumin/shome/koseki/5082.html