会社名義と個人名義の不動産を整理する──社長個人の土地に会社の建物がある場合

この記事の要点 社長個人名義の土地に会社名義の建物がある場合、社長が亡くなると土地は相続人に引き継がれ、建物は会社の財産のまま残る。土地と建物の持ち主が「社長の相続人」と「会社」に分かれる 会社がその土地を使い続けられるかは、地代を払う「賃貸借」か、無償の「使用貸借」かで大きく変わる。建物を持つための土地の賃貸借は「借地権」として借地借家法の保護を受けるが、使用貸借にはその保護がない 土地を相続した人には、自分のために相続が開始したことと、その土地を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する義務がある(不動産登記法76条の2) 生前の整理方法には、①賃貸借契約を書面にする、②土地を会社に売る、③土地を会社に現物出資する、などがある。税金の扱いは税理士、相続人どうしの争いの見通しは弁護士の領域 最初の一歩は、土地と建物それぞれの登記事項証明書で名義を確かめ、会社が地代を払っているかどうかを確認すること 経営者の方に知っておいてほしいのは、「社長の土地の上に会社の建物が建っている」という状態は、社長がお元気なうちは何も問題が起きないように見えても、相続をきっかけに会社の足元が揺らぐことがある、という点です。結論から言うと、まず確認すべきは「会社がその土地をどういう権利で使っているのか」であり、あいまいなままなら、社長がお元気なうちに契約を書面にするか、土地の名義そのものを整理しておくことが考えられます。 ...

2026年10月20日 · ひぐらしさとし

「推定相続人」「法定相続人」「共同相続人」の違い──民法の条文に「法定相続人」は出てこない【相続の条文で解説】

この記事の要点 民法の条文は、相続が始まったあとに実際に相続する人を「相続人」、相続が始まる前の段階で「相続が開始した場合に相続人となるべき者」を「推定相続人」(民法892条のかっこ書きで定義)、相続人が複数いるときのそれぞれを「共同相続人」と使い分けています よく聞く「法定相続人」という言葉は、民法にも相続税法にも出てきません(2026年10月時点のe-Gov法令検索の現行条文の全文で確認)。民法900条の見出し「法定相続分」、不動産登記規則247条の「法定相続情報」、国税庁の案内の「法定相続人の数」のように、周辺で使われている言葉です 相続税法15条の基礎控除で数える「相続人の数」は、相続放棄をした人がいても放棄がなかったものとして数えます。相続放棄をした人を「初めから相続人とならなかったものとみなす」民法939条とは数え方が違うので、同じ「相続人」でも、どの法律の条文で数えているかを確かめることが大切です 相続の説明では「法定相続人」という言葉がよく使われます。ところが、民法の相続のきまり(第五編)の中で相続人を定めている章(第二章)の見出しは「相続人」で、その条文を読んでも「法定相続人」という言葉は出てきません。この記事では、民法が使い分けている言葉のうち「相続人」「推定相続人」「共同相続人」の三つを取り上げます。それぞれが何を指すのかを、条文の文言で確かめます(執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です)。 ...

2026年10月14日 · ひぐらしさとし

家族を亡くしたばかりで気持ちが追いつかないときの相続相談──つらさを伝えてよいこと、一度に全部話さなくていいこと

この記事の要点 気持ちの整理がつかないまま相続の相談に行ってもかまいません。つらさや「今日はあまり話せないかもしれない」ことは、最初に伝えてよいことです 一度に全部を話したり決めたりする必要はありません。ただし、相続放棄の3か月のように期限のある手続きがあるかどうかだけは、早めに確かめておきたいところです 家族に代わりに話してもらう方法もありますが、手続きを正式に依頼するときは、原則として相続人本人の意思確認が欠かせません 家族を亡くしてまだ日が浅いうちは、手続きの話を聞くだけで涙が出たり、説明が頭に入ってこなかったりすることがあります。「こんな状態で相談に行ってよいのだろうか」とためらう方もいるかもしれません。結論からいえば、気持ちが追いついていないまま相談に行くことは、少しもおかしなことではありません。 ...

2026年10月5日 · ひぐらしさとし

おひとりさまのお墓と死後事務──誰が納骨してくれるのか

この記事の要点 おひとりさまが亡くなった後の納骨を誰かに託すには、生前に永代供養墓・納骨堂を契約しておく方法と、死後事務委任契約で納骨を頼む相手を決めておく方法を組み合わせて備える考え方があります 死後事務委任契約は、葬儀や納骨などの死後の事務を第三者に頼んでおく契約で、こうした事務を委任する条項を入れておくことができる仕組みです 引き取る方がいないご遺体については、「墓地、埋葬等に関する法律」9条により、市区町村が火葬・埋葬を行う仕組みがあります(火葬後の遺骨の扱いは自治体の運用によります) 祭祀承継者(お墓や仏壇を引き継ぐ人)が決まっていない場合の備えについても、あわせて知っておくと安心です 次の一歩として、お近くの司法書士に相談してみましょう 「自分が亡くなったとき、誰が火葬や納骨の手続きをしてくれるのだろう」──配偶者や子どもがいない、頼れる親族が近くにいないという、いわゆるおひとりさまの方から、こうした不安の声を聞くことがあります。結論から言うと、この不安に備える方法は主に2つあります。ひとつは生前に永代供養墓・納骨堂を契約しておくこと、もうひとつは納骨を含む死後の事務を頼む相手を、死後事務委任契約で決めておくことです。この記事では、それぞれの制度の一般的な仕組みと、引き取り手のない遺骨がどう扱われるかを整理します。 ...

2026年9月20日 · ひぐらしさとし

永代供養・樹木葬・散骨の法律知識──「お墓を持たない」という選択肢

この記事の要点 永代供養は「契約の中身」、樹木葬は「墓地としての許可」、散骨は「明文の禁止はないが規制あり」と、それぞれ法律上の注意点が異なります 樹木葬は「墓地、埋葬等に関する法律」上の許可を得た区画かどうかで扱いが大きく変わるため、契約前の確認が欠かせません どの方法を選ぶ場合も、契約や手続きで疑問があれば早めに専門家へ相談することが手戻りを防ぎます 「お墓を持たない」という供養の形を選ぶ方が増えています。継承者がいない、子どもに管理の負担をかけたくない、自然に還りたいといった理由から、永代供養・樹木葬・散骨という3つの選択肢が注目されていますが、契約さえすれば安心というわけではなく、永代供養・樹木葬・散骨では「確認すべきポイント」がそれぞれ異なるという点を、まず押さえておく必要があります。 ...

2026年9月17日 · ひぐらしさとし

相続したマンションを売る・貸す・手放す──戸建てと違う判断ポイント

この記事の要点 マンション(区分所有建物)は、土地の権利(敷地権)と建物を切り離して売ったり分けたりすることができない 「貸す」場合も、管理規約による用途制限や管理組合への届出が絡み、戸建ての賃貸より制約が多い 名義を持っている限り、使っていなくても管理費・修繕積立金の負担は続く 売却の具体的な流れや、相続放棄・国庫帰属といった「手放す」ための制度そのものは、それぞれ別の記事で解説している 親から相続したマンションを「売るか、貸すか、それとも手放すか」を考えるとき、一戸建ての実家を相続した場合と同じ感覚で判断すると、思わぬところでつまずくことがあります。理由は単純で、マンションの一室(区分所有建物)は、一戸建てとは登記の仕組みそのものが違うためです。 ...

2026年9月17日 · ひぐらしさとし

相続の相談後に「やることリスト」を作る──聞いた話を行動に変える4つの区分と書き方

この記事の要点 初回相談で聞いた話は、帰宅後その日のうちに「①期限があること ②自分で集める書類 ③家族と決めること ④次に相談する日までに確認すること」の4区分でメモに書き分けると、行動に変わります 各項目に「誰が」「いつまでに」を添え、分からないことは空欄にせず「分からない」と書き残します このリストを2回目の相談に持っていくと、前回の説明をなぞり直す時間が減り、話が早く進みます 相続の初回相談を終えて帰宅すると、「いろいろ聞いたけれど、結局まず何をすればいいのか」がぼんやりしている、ということがよくあります。相談で聞いた内容は、そのままでは「情報」であって「行動」ではありません。この記事では、聞いた話を帰宅後に行動の形へ整理する、ごく一般的なメモの作り方を紹介します。同席しなかった家族への伝え方は聞いた話を同席しなかった家族にどう伝える?で扱っていますので、この記事は「自分たちが次に動くためのリスト」に絞ります。 ...

2026年9月11日 · ひぐらしさとし

リバースモーゲージとは──自宅を担保に老後資金を借りるしくみ

この記事の要点 リバースモーゲージは、自宅を担保に入れて老後資金を借り入れ、存命中は利息のみを支払う仕組み 登記簿上は所有権を自分名義のまま維持し、担保として抵当権(または根抵当権)の設定登記が入る 借入金の元本は、死亡後に自宅を売却するか、相続人が一括返済するかたちで清算される 所有権が移転する「リースバック」とは、担保に入れるだけか売ってしまうかという根本的な違いがある 借入条件の有利不利や商品選びの相談は、取扱金融機関に確認する必要がある リバースモーゲージとは、自宅(主に持ち家)を担保に金融機関から老後資金を借り入れ、契約者が存命の間は利息だけを支払い、借入金の元本は契約者の死亡後にまとめて清算するしくみです。年金収入だけでは心もとない老後資金を、住み慣れた自宅に住み続けながら確保する手段の一つとして知られています。 ...

2026年9月5日 · ひぐらしさとし

使用貸借と賃貸借はどう違う?──タダで借りている実家・土地の法律関係

この記事の要点 使用貸借(民法593条)は「無償」で借りる契約、賃貸借(民法601条)は「家賃」を払って借りる契約。この対価の有無が最大の違い 賃貸借(とくに借家)は借地借家法で借主が手厚く保護されるが、使用貸借にはこの保護がなく、貸主の都合で終了しやすい 借主が亡くなったとき、使用貸借は原則として契約が終了する(民法597条3項)が、賃貸借の借りる権利は相続人に引き継がれる 実家や親の土地を無償で使っている場合は、口約束のままにせず、期間や条件を書面で整理しておくことが将来のトラブル防止につながる 「家賃を払っていないから、この関係は法律上どうなっているのか分からない」——親の家や土地を無償で使っている方から、こうした声をよく耳にします。法律上、対価を払わずに物を借りる関係は「使用貸借(しようたいしゃく)」、家賃などの対価を払って借りる関係は「賃貸借(ちんたいしゃく)」と呼ばれ、民法上まったく別の契約として扱われています。見た目は同じ「借りている」状態でも、存続期間の保障や相続時の扱いは大きく異なります。この記事では、使用貸借と賃貸借の違いを、実家や土地を無償で借りているケースを中心に整理します。 ...

2026年8月31日 · ひぐらしさとし

親の土地に家を建てるとき──「使用貸借」のままだと相続で何が起きるか

この記事の要点 親の土地を無償で借りて家を建てる関係は「使用貸借(しようたいしゃく)」といい、貸主(親)が亡くなっても、それだけで契約が当然に終わるわけではないとされています ただし「終わらない」は「ずっと続く」ではなく、使い道に従って使用・収益をするのに足りる期間が経過すれば、貸主の側から契約を解除できるとされています(民法598条1項) また、貸主が亡くなれば土地そのものは相続財産となり、きょうだいなど他の相続人との遺産分割の対象になり得ます 自分の家が建っている土地を、自分以外の相続人が取得する事態も制度上はあり得るため、早い段階で家族間の話し合いを始めておくことが大切です 「親の土地に家を建てさせてもらっている。地代も家賃も払っていない」——こうした関係は、法律上は「使用貸借(しようたいしゃく)」と呼ばれる契約にあたります。契約書を交わしていなくても、口約束や暗黙の了解だけで成り立っている使用貸借は少なくありません。 ...

2026年8月30日 · ひぐらしさとし