この記事の要点
- 相続関係説明図は、相続登記の申請書に添えて出す図です。これを出しておくと、一緒に提出した戸籍・除籍の原本を、登記の調査が終わった後に返してもらえると法務局が案内しています
- 法定相続情報一覧図は、法務局に申し出て登記官の認証文が付いた写しを無料で交付してもらう証明書です。戸籍の束そのものの代わりとして、他の法務局・金融機関・年金の手続にも使えます
- ひとことで言うと、相続関係説明図=戸籍を返してもらうための添え物/法定相続情報一覧図=戸籍の束の代わりになる証明です。似た形の図ですが、位置づけがまったく違います
- 相続関係説明図には決まった様式はなく、法務局が相続登記の申請書の記載例のなかで見本を公表しています(被相続人は住所・死亡年月日、相続人は住所・出生年月日を書く形)
- 一覧図そのものの書き方(様式・記載例・不備で戻される例)は法定相続情報一覧図の作り方にまとめています。**この記事は「2つの図の役割の違い」と「相続関係説明図の書き方」**を扱います
相続登記を自分で進めようとすると、「相続関係説明図」と「法定相続情報一覧図」という、名前も見た目も似た2つの図が出てきます。どちらも家系図のような形をしていて、亡くなった方と相続人を線でつないだものです。
しかし、この2つは目的がまったく別のものです。
- 相続関係説明図……登記の申請書に添えて出す。集めた戸籍の原本を返してもらうために出す
- 法定相続情報一覧図……法務局に申し出て、認証文の付いた写しをもらう。その写しが戸籍の束の代わりになる
先に結論を書くと、1か所の法務局に相続登記を1件出すだけなら、一覧図を作らずに相続関係説明図を添えるだけで足りることが多いです。一方、不動産が複数の管轄にまたがっている、銀行や証券会社の手続も並行する、というときは法定相続情報一覧図を作っておくと戸籍の束を出し直さずに済みます。
以下、それぞれの中身と書き方を順に見ていきます。
1. 相続関係説明図は「戸籍を返してもらう」ための図
相続登記を申請するとき、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍・除籍と、相続人の戸籍を法務局に提出します。これらは登記の原因(相続が起きて、この人が相続人である)を示す書類として提出するものです。
ところが、この戸籍の束は銀行の解約手続や年金の手続でも使います。提出したきり返ってこないと、また市区町村で取り直すことになってしまいます。
そこで使うのが原本還付(げんぽんかんぷ)という手続です。不動産登記規則55条1項は、書面で登記を申請した人は、申請書に添えた書類の原本の返却を請求できると定めています。同条2項は、その請求をするには原本と相違ない旨を書いたコピー(謄本)を出すことを求めています。原本の代わりに、そのコピーを法務局に残していく、という仕組みです。
そして戸籍については、法務局が次のように案内しています。
相続登記申請(2-1)及び配偶者居住権設定登記申請(8 配偶者居住権設定(遺産分割)の場合)に関しては、「相続関係説明図」を戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)、除籍全部事項証明書(除籍謄本)等と一緒に提出された場合には、登記の調査が終了した後に、戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)等の原本をお返しすることができます (法務局「不動産登記の申請書様式について」)
法務局が公表している相続登記の記載例にも、同じ趣旨の注記が付いています。
「相続関係説明図」が提出された場合には、申請書に添付した登記原因証明情報として提出された戸籍全部(個人)事項証明書(戸籍謄抄本)、除籍事項証明書(除籍謄本)を、登記の調査が終了した後にお返しすることができます(これを原本還付の手続といいます。) (法務局「所有権移転登記申請書(相続・法定相続)」記載例・注14)
つまり、戸籍の束を1枚ずつコピーして「原本と相違ない」と書き添える代わりに、相続関係説明図を1枚作って出せばよい、というのが実務上の使い方です。戸籍が10通20通になることは珍しくないので、この差は小さくありません。
なお、原本還付という手続そのものについては相続登記で出した戸籍は返してもらえる?でも短くまとめています。
戸籍以外の書類はどうなるか
相続関係説明図が代わりを務めるのは、上の案内に挙がっている戸籍・除籍についてです。
遺産分割協議書や印鑑証明書、住民票の写しなどそれ以外の書類の原本も返してほしい場合は、規則55条2項どおり、原本と相違ない旨を記載したコピーを添えて原本還付を請求することになります。
また、規則55条1項ただし書は、当該申請のためにのみ作成された委任状その他の書面や、一定の規定にもとづく印鑑に関する証明書については原本還付の対象外としています。どの印鑑証明書がこれにあたるかは書類の種類によって変わるので、返してほしい書類があるときは、申請前に管轄の法務局に確かめておくのが確実です。
2. 相続関係説明図の書き方
相続関係説明図には、法令で決められた様式はありません。実際、「相続関係説明図」という言葉は、不動産登記法・不動産登記令・不動産登記規則の条文には出てきません(本記事の作成時点で条文を検索して確認しました)。法務局が申請書の記載例のなかで見本を示している、という位置づけです。
法務局が公表している記載例(相続・法定相続の場合)の形は、次のようなものです。
図の形は横書きの家系図ですが、大事なのはそれぞれの人の欄に何を書くかです。記載例では、次の内容の「欄」を線でつないでいます(例は、夫が亡くなり、妻と子2人が法定相続分にもとづいて相続した場合です)。
被相続人 ○○太郎 相続関係説明図
[被相続人の欄] [相続人(妻)の欄]
住所 ○○市○○町○番地 住所 ○○市○○町二丁目12番地
死亡 令和7年6月20日 出生 昭和30年4月5日
(被相続人) (相続人)
○○ 太郎 ○○ 花子
[相続人(長男)の欄] [相続人(長女)の欄]
住所 ○○郡○○町○○34番地 住所 ○○市○○町三丁目45番6号
出生 昭和55年6月7日 出生 昭和57年8月9日
(相続人) (相続人)
○○ 一郎 ○○ 貴子
※ 被相続人と妻の欄を二重線で、
そこから子2人の欄へ線を引いてつなぎます。
書き方のポイントを整理します。
(1) 表題は「被相続人 ○○○○ 相続関係説明図」
誰の相続についての図なのかが一目で分かるようにします。
(2) 亡くなった方(被相続人)には「住所」と「死亡年月日」を書く
住所は、最後の住所です。ここは住民票の除票(または戸籍の附票)の記載と合わせます。
(3) 相続人には「住所」と「出生年月日」を書く
記載例では、相続人側は死亡年月日ではなく出生年月日になっています。被相続人と相続人で書く項目が入れ替わる点は、写し間違えやすいところです。
(4) 氏名の上に「(被相続人)」「(相続人)」と役割を書く
記載例はこの形になっています。
(5) 続柄の線でつなぐ
配偶者は二重線、親子は縦線でつなぐのが一般的な書き方です。ただし線の引き方まで法務局が指定しているわけではありません。戸籍からたどれる関係が、図の上で正しく読み取れるように書くことが大事なところです。手書きでもかまいません。
(6) 申請人には「(申請人)」と書き添えるとわかりやすい
登記を申請する人が誰かを示しておくと、申請書との対応が取りやすくなります。
不動産を取得しない相続人がいるとき
遺産分割協議をして、特定の相続人だけが不動産を取得する場合はどう書くか。法務局は、遺産分割の記載例のなかで不動産を取得しなかった相続人の氏名の下に「(分割)」と書く例を示しています。記載例に登場する「法務花子」「法務温子」は、法務局が見本に使っている架空の名前です。
「法務花子」及び「法務温子」の下にある(分割)とは、同人らが遺産分割協議の結果、相続財産中の不動産を相続しなかったという意味です (法務局「所有権移転登記申請書(相続・遺産分割)」記載例・注16)
この記載例では、不動産を取得しない相続人については住所と出生年月日を書かず、氏名と「(分割)」だけを書く形になっています。ただし、登記名義人にならない人の欄はどれも省略してよい、と一般化できるわけではありません。相続が重なった場合の記載例(数次相続)では、登記名義人にならない先に亡くなった方の欄にも住所と死亡年月日が書かれています。どの欄に何を書くかは、自分のケースにあてはまる記載例を確かめて合わせるのが確実です。
なお、相続放棄をした方がいる場合の書き方については、本記事で参照した法務局の記載例(法定相続・遺産分割・数次相続)には見本がありません。放棄があるケースは、書き方を含めて管轄の法務局に確認してから作るのが安全です。
3. 法定相続情報一覧図との違い
ここまでが相続関係説明図です。これに対して法定相続情報一覧図は、平成29年5月に始まった法定相続情報証明制度で使う書面です。
流れはこうなります。
- 相続人(またはその相続人)が、戸籍・除籍の束と、自分で作った一覧図を法務局に提出して申し出る
- 登記官が、戸籍の記載と一覧図の内容が合っているかを確認する
- 合っていれば、認証文・作成年月日・職氏名・職印を付けた写しを交付する(不動産登記規則247条5項)
- その写しは、他の法務局の相続登記、金融機関の手続、相続税の申告、年金の手続などに使える
つまり、相続関係説明図は自分が作ってそのまま添える紙、法定相続情報一覧図は法務局が内容を確認して「証明書」に仕立ててくれる紙です。ここが決定的な違いです。
主な違いを並べると次のようになります。
| 相続関係説明図 | 法定相続情報一覧図 | |
|---|---|---|
| 何のために出すか | 提出した戸籍・除籍の原本を返してもらうため | 認証文の付いた写しをもらい、戸籍の束の代わりに使うため |
| 誰が作るか | 申請人(またはその代理人) | 申出人(またはその代理人) |
| 法務局の確認 | 登記の調査のなかで見るのみ。認証はされない | 登記官が戸籍と突き合わせて確認し、認証文を付す |
| 様式 | 決まった様式はない(記載例のみ公表) | 記載する項目が不動産登記規則247条1項各号で決まっている。法務局が様式・記載例を公表 |
| 費用 | かからない(自分で作る紙) | 交付は無料。戸籍等の取得費用は別途かかる |
| 使える場面 | その登記申請のなかだけ | 相続登記のほか、預貯金の払戻し、相続税の申告、年金等の手続 |
| 遺産分割の結果 | 「(分割)」の注記例が公表されている | 記載事項に含まれないので書かない |
| 再利用 | できない(申請ごとに作る) | 申出日の翌年から5年間保管され、その間は再交付を受けられる |
遺産分割の結果を書けるかどうかは、2つの図の性格の違いがよく表れている部分です。相続関係説明図は登記申請の添え物なので、その申請の内容に合わせて「この人は不動産を取得しない」と示せます。一方、法定相続情報一覧図は戸籍から読み取れる法定相続人が誰かを証明する書面なので、相続分や遺産分割の結論は書きません。法務局も、相続放棄や遺産分割の結果として実際には相続分を有しない方がいる場合も、その方の氏名等は一覧図に記載されると案内しています。
4. どちらを使えばいいか
判断の目安を整理します。
相続関係説明図だけで足りることが多いケース
- 不動産が1か所の法務局の管轄内にしかない
- 相続手続が相続登記だけで、銀行や証券会社の手続はほとんどない
- 相続人が少なく、戸籍の通数もそれほど多くない
この場合、一覧図を作るために別途申し出をする手間のほうが大きくなります。相続関係説明図を1枚作って戸籍を返してもらえば足ります。
法定相続情報一覧図を作っておくと楽になるケース
- 不動産が複数の管轄にまたがっている(それぞれの法務局に戸籍の束を出すことになる)
- 銀行・証券会社・年金など、並行して進める手続が多い
- 戸籍の通数が多く、束が分厚い
一覧図の写しは無料で必要な通数の交付を受けられるので、手続の数だけ用意しておけば、束を回す順番待ちがなくなります。
両方を使う場合もある
一覧図の写しを添えて相続登記をする場合、戸籍の束そのものは提出しないので、戸籍を返してもらうための相続関係説明図は要りません。ただし、遺産分割協議による登記では、一覧図の写しとは別に遺産分割協議書や印鑑証明書を出すことになります。この場合に相続関係説明図を添えることを妨げるものではありません。ただし、遺産分割協議書や印鑑証明書の原本を返してもらうために相続関係説明図が使えるわけではありません。戸籍以外の書類については、規則55条2項どおり、書類ごとに原本と相違ない旨を記載したコピーを添えることになります。必要かどうかは申請の内容によって変わるので、迷ったら管轄の法務局に確認してください。
なお、令和6年4月1日以降は、一覧図の写しの右肩に付される法定相続情報番号を登記申請書の添付情報欄に書くことで、写しの原本の添付を省略できるようになりました。根拠となる条文は不動産登記規則37条の3です(もともと一覧図の写しについて定めていた同条に、法定相続情報番号を加える改正が令和6年法務省令第7号でされ、令和6年4月1日から施行されています)。ただし法務局は、この番号が使えるのは不動産登記の申請等の手続のみで、金融機関など他の機関の手続には使えないと案内しています。
まとめ
相続関係説明図は、集めた戸籍の原本を返してもらうために相続登記の申請書に添える図です。決まった様式はなく、法務局が申請書の記載例のなかで見本を示しています。被相続人は住所と死亡年月日、相続人は住所と出生年月日を書き、遺産分割で不動産を取得しない相続人には「(分割)」と注記する、というのが公表されている形です。
法定相続情報一覧図は、法務局の登記官が戸籍と突き合わせて確認し、認証文を付した写しを無料で交付してくれる証明書です。その写しが戸籍の束の代わりになるので、複数の法務局や金融機関の手続を並行するときに効いてきます。
「どちらを作ればいいのか」で迷ったら、手続の数を数えてみるのがいちばん分かりやすい目安です。1件で済むなら相続関係説明図、いくつも並ぶなら一覧図、と考えると整理しやすくなります。
ただし、そもそも誰が相続人になるかの判断が難しいケース(代襲相続がある、養子がいる、昔の相続が残っている、数次相続が絡む)では、図を書く前に相続人を確定する作業が必要です。ここを間違えると、どちらの図を作っても通りません。判断に迷う点があれば、お近くの司法書士にご相談ください。
よくある質問
Q. 相続関係説明図を作るのに費用はかかりますか?
図そのものは自分で作る紙なので、作成に費用はかかりません。手書きでもパソコンでもかまいません。かかるのは、図の元になる戸籍・除籍の謄本や住民票の写しを市区町村で取得する費用です。法定相続情報一覧図のほうも、法務局での保管の申出と写しの交付は無料とされています。専門家に依頼した場合の報酬は、依頼先によって異なります。
Q. 期限はありますか。作らずに放置するとどうなりますか?
図の作成そのものに期限はありません。ただし、相続登記の申請には期限があります。不動産登記法76条の2第1項は、所有権の登記名義人について相続が開始したときは、相続によりその所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その所有権を取得したことを知った日から3年以内に所有権移転の登記を申請しなければならないと定めています。法務局は、正当な理由がないのに期間内に申請をしなかった場合、10万円以下の過料が科されることがあると案内しています。令和6年4月1日より前に開始した相続で登記をしていないものも義務化の対象です。詳しくは相続登記の義務化と経過措置をご覧ください。
Q. 自分で作れますか。どこに相談すればいいですか?
相続人が配偶者と子だけといった単純なケースなら、法務局が公表している記載例を見ながらご自身で作ることは十分できます。難しくなるのは図の書き方ではなく、その前段の戸籍集めと相続人の確定です。代襲相続や数次相続がある、戸籍が途中で追えなくなった、といった場面では、図を書く手前で止まります。法定相続情報一覧図の申出を委任できる代理人は、申出人の親族のほか、弁護士・司法書士・土地家屋調査士・税理士・社会保険労務士・弁理士・海事代理士・行政書士に限られます(不動産登記規則247条2項2号、戸籍法10条の2第3項)。相続登記そのものの申請代理は、司法書士法3条1項1号が司法書士の業務として定めています。判断に迷ったら、お近くの司法書士にご相談ください。
【さらに深掘り】数次相続・代襲相続の書き方と、原本還付・添付情報の省略範囲
ご注意 以下は執筆時点(2026年8月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。
ここまでは、法務局が公表している記載例(法定相続・遺産分割)にそった基本の形を見てきました。実際に詰まりやすいのは、記載例だけでは書き方を判断しにくい場面と、図を出した後に続く手続です。ここでは3つの論点を取り上げます。
1. 代襲相続・数次相続があるときに、図をどう書くか
代襲相続の場合
親(被相続人の子)が被相続人より先に亡くなっていて、その子(被相続人の孫)が相続人になるケースです。
法務局が公表している相続登記の記載例には、法定相続・遺産分割のほか、遺産分割(数次相続)や遺言による相続などのパターンもありますが、本記事の作成時点で確認した範囲(法定相続・遺産分割・数次相続の各記載例)では、代襲相続の相続関係説明図の見本は含まれていません。ただ、図の役割は「戸籍から読み取れる相続関係を、登記の調査をする側がそのままたどれるようにすること」なので、先に亡くなった子(被代襲者)の欄を飛ばさず、死亡年月日を記載したうえで、そこから代襲相続人へ線をつなぐ形になります。
被代襲者の欄に住所まで書くかどうかは、見本がない以上、こうすれば正しいと言い切れる話ではありません。ここで手がかりになるのが、次に見る数次相続の記載例です。そこでは、登記名義人にならない先に亡くなった方(中間で亡くなった相続人や、被相続人より先に亡くなった配偶者)の欄にも、住所と死亡年月日が書かれています。「登記名義人にならないのだから住所は要らない」と決めてかかるより、この記載例にならって書いておくほうが安全です。
戸籍の側も同じ考え方で動きます。法定相続情報一覧図の申出について、不動産登記規則247条3項2号は添付する戸籍を「被相続人(代襲相続がある場合には、被代襲者を含む。)の出生時からの戸籍及び除かれた戸籍の謄本又は全部事項証明書」と定めています。代襲相続があると、被代襲者についても出生から死亡までの戸籍が必要になるという建て付けです。相続登記で相続を証する情報として集める戸籍の範囲も、実務上ここと重なります。図が1本線増えるだけに見えて、集める戸籍は目に見えて増える部分です。
数次相続の場合
被相続人が亡くなった後、遺産分割や登記をしないうちに相続人の1人も亡くなった、というケースです。相続が二段(三段以上のことも)重なります。
図の上では、中間で亡くなった相続人の欄に死亡年月日を書き、その下にさらにその相続人をつなぐ形になります。この形は法務局も示しており、「所有権移転登記申請書(相続・遺産分割)(数次相続)」の記載例には数次相続の相続関係説明図例が載っています。そこでは、中間で亡くなった相続人の欄は住所と死亡年月日、最終の相続人の欄は住所と出生年月日を書く形になっています。中間の人は、最初の相続については「相続人」、次の相続については「被相続人」という二重の立場になるので、欄の中でその両方が読み取れるようにしておくと、調査する側が追いやすくなります。1枚の図にまとめるか、相続ごとに図を分けて作るかについて決まりはありません。相続の回数が多いときは、分けたほうが読みやすいこともあります。
中間省略登記との関係
数次相続で問題になるのが、登記を何件出すかです。相続が起きた回数だけ所有権の移転が生じているのが原則で、登記もその回数だけ必要になるのが基本です。
ただし、中間の相続人が1人だけになる場合には、中間の登記を省略して、最初の被相続人から最終の相続人へ直接1件で移転登記ができるという取扱いが、古くからの登記先例によって認められているとされています(昭和30年12月16日民事甲第2670号として引用されるものです。※この先例の本文はオンラインでは公表されておらず、原典は確認できていません)。現在の法務局の記載例もこの取扱いを前提にしています。上で触れた遺産分割(数次相続)の記載例は、第1の相続の登記が済まないうちに第2の相続が開始した事案を1件の申請で登記する形を示したうえで、最終の相続以外の相続について共同相続人数名が権利を取得している場合には、一件の申請では登記することができないと明記しています。
この「中間の相続が単独相続であれば1件で足りる」という枠組みそのものは、実務の解説でも確立した取扱いとして説明されています。複数の解説が一致して同じ説明をしているところです。
分かれ目になるのはその先で、ここでいう「中間の相続人が1人」に、もともと相続人が1人だった場合だけでなく、遺産分割や相続放棄の結果として中間の段階で1人になった場合も含まれるかという点です。この点は、1人になった原因を問わず含まれると説明されるのが一般的ですが、条文に書かれているものではなく、先例の読み方として実務で共有されている理解にとどまります。
そのため、どこまでがこの取扱いの範囲に入るかは先例の解釈にわたる論点で、事案の形によって結論が変わります。1件にまとめられるかどうかで登録免許税の負担も申請書の作り方も変わるので、図を書き始める前に、その事案が対象になるかを整理しておく必要があります。判断が微妙なときは、管轄の法務局に確認しておくのが安全です。
2. 原本還付の実務──コピーに何を書き、何を付けるか
本文で触れた不動産登記規則55条を、実務の手順にそって分解します。
- 1項本文……書面申請をした申請人は、添付書面の原本の還付を請求できる
- 1項ただし書……当該申請のためにのみ作成された委任状その他の書面と、条文に列挙された一定の印鑑に関する証明書は対象外
- 2項……還付を請求する申請人は、原本と相違ない旨を記載した謄本を提出しなければならない
- 3項……登記官は調査完了後に原本を還付する。このとき謄本と原本を照合して内容が同一であることを確認し、謄本に原本還付の旨を記載して登記官印を押印する
- 4項……登記官印を押した謄本は、登記完了後、申請書類つづり込み帳につづり込まれる
「原本と相違ない」と書いて記名押印する意味は、この3項・4項から見えてきます。提出したコピーは、その場限りの控えではなく、原本の代わりとして法務局に綴じ込まれて残ります。だからこそ、内容が原本と同じであることを申請人(代理人が申請するときは代理人)が自分の名前で表示する、という建て付けになっています。書式としては、コピーの余白に「原本と相違ありません」と記載し、申請人(または代理人)の記名押印をするのが一般的な形です。
書類が複数枚にわたるときは、ホチキスで綴じたうえで各用紙のつづり目に契印をしておくのが実務上の通例です。もっとも、規則46条1項が契印を定めているのは「申請書が二枚以上であるとき」で、原本還付のために提出する謄本の契印について直接定めた条文は、本記事の作成時点で確認した範囲では見当たりませんでした。明文がないぶん取扱いに幅が出やすいところなので、綴じ方まで含めて管轄の法務局の運用を確認しておくと戻されずに済みます。
戸籍について相続関係説明図で足りるのはなぜか、という点も整理しておきます。規則55条2項が求めているのは「原本と相違ない旨を記載した謄本」で、相続関係説明図をこれに代えてよいと直接定めた条文は見当たりません。本文で触れたとおり、「相続関係説明図」という語自体が不動産登記法・令・規則には出てきません。実務でこの扱いができるのは、相続による権利の移転の登記について原本還付の請求があった場合に、相続関係説明図が提出されたときは戸籍謄抄本・除籍謄本に限りこの図を謄本として取り扱って差し支えない、とする通達上の取扱いによるものと説明されています(平成17年2月25日法務省民二第457号・第1の7として引用されるものです。※この通達の本文は法務省サイトの通達一覧には掲載されておらず、原典は確認できていません)。
もっとも、この扱いが現に行われていること自体は、通達の番号にたどり着けるかどうかとは別に、法務局が公表している案内文と記載例の注記(本文で引用したもの)から確かめられます。通達番号の引用は、その扱いの出どころを説明するものと受け取っておくのが正確です。
ここで押さえておきたいのは、この扱いが及ぶ範囲は戸籍・除籍に限られているという点です。法務局の案内も、戸籍全部事項証明書・除籍全部事項証明書等について原本を返せると書いており、対象を広げてはいません。
戸籍以外の書類、たとえば遺産分割協議書・印鑑証明書・住民票の写しは、相続関係説明図では代用できません。返してほしいものが含まれるときは、その書類ごとにコピーを作り、原本と相違ない旨を記載して添える必要があります。1項ただし書に当たる書面が混じることもあるので、どれが返ってくるかは申請前に確認しておくのが確実です。
もう2点、実務で効いてくる規定があります。
- 郵送で返してもらえる……規則55条6項は、原本の還付を、申請人の申出により原本を送付する方法によることができると定めています。この場合は送付先の住所も申し出ることになり、送付は書留郵便または引受け・配達の記録を行う信書便によるものとされ(7項)、その費用は郵便切手等を提出する方法で納付します(8項)。遠方の法務局に申請するときは、この申出を忘れると受け取りに行くことになります
- 返してもらえない場合がある……5項は、偽造された書面その他の不正な登記の申請のために用いられた疑いがある書面は還付できないと定めています
3. 一覧図の写しを使うとき、何がどこまで省けるか
相続による所有権移転登記の添付情報は、条文上は次の2本立てです。
- 不動産登記令別表22の項……相続を証する市町村長、登記官その他の公務員が職務上作成した情報およびその他の登記原因を証する情報
- 同別表30の項ハ……登記名義人となる者の住所を証する市町村長、登記官その他の公務員が職務上作成した情報
法定相続情報一覧図の写しは、このうち22の項の「相続を証する情報」として、戸籍の束の代わりに使えるというのが制度の中身です。その根拠は不動産登記規則37条の3第1項で、一覧図の写しまたは法定相続情報番号を提供したときは、その提供をもって「相続があったことを証する市町村長その他の公務員が職務上作成した情報」の提供に代えることができる、と定めています。
では30の項ハの住所証明情報はどうなるか。ここで効いてくるのが、一覧図に相続人の住所を書いたかどうかです。
規則247条1項2号が法定相続情報として挙げているのは、相続人については「氏名、生年月日及び被相続人との続柄」で、住所は入っていません。そのうえで同条4項が「法定相続情報一覧図に相続人の住所を記載したときは、……その住所を証する書面を添付しなければならない」と定めています。住所は必ず書かなければならない事項としては挙げられておらず、条文の側は住所が記載された一覧図と、記載されていない一覧図の両方があることを前提にした書き方になっています(すぐ後に見る規則37条の3第2項も、住所が「記載されている場合に限る」という条件を置いています)。書くのであれば申出の段階で住所を証する書面を出す、という組み立てです。
この選択が、後の相続登記に響きます。規則37条の3第2項は、相続人の住所が記載された一覧図の写しまたは法定相続情報番号を提供したときは、その提供をもって「登記名義人となる者の住所を証する市町村長その他の公務員が職務上作成した情報」の提供に代えることができると定めています。この第2項は、法定相続情報番号の追加とあわせて令和6年法務省令第7号で新たに設けられた規定です。法務局も、令和6年4月1日から使えるようになった法定相続情報番号について、次のように案内しています。
▣法定相続情報一覧図に法定相続人の住所が記載されている場合、法定相続情報番号を提供することで、相続登記に必要な「住所を証する書面」の添付も省略できます。 ただし、住所移転により法定相続情報一覧図に記載された住所と異なる住所で登記する場合や、別途売買等による所有権移転登記を併せて行う場合などでは、新たに現在の住所を証する書面として住民票等の添付が必要となることがあります。 (法務局「法定相続情報番号の提供による相続登記等における法定相続情報一覧図の写しの添付省略について」注意事項)
つまり、一覧図を作る段階で相続人の住所まで書いておくと、その後の相続登記で住民票の写しを出さずに済む可能性があるということです。逆に住所を省いた一覧図を作ってしまうと、この省略は使えません。一覧図を作るかどうかを検討する時点で、あわせて考えておきたいところです。
なお、被相続人の側については、規則247条1項1号により最後の住所が必ず記載されます。ただし一覧図に表れるのはあくまで最後の住所で、登記記録に記録されている住所からの移り変わりまでは示されません。登記記録上の住所と最後の住所が異なる場合、その人物が同一であることをどう示すかは別の問題として残ります。この点について法務局は、相続登記の申請書の記載例の注記のなかで、被相続人の最後の氏名・住所が登記記録上の氏名・住所と異なる場合や、被相続人の本籍が登記記録上の住所と異なる場合には、被相続人が登記記録上の登記名義人であることが分かる、本籍の記載のある住民票の除票の写し、または戸籍の表示の記載のある戸籍の附票の写し等が必要になると案内しています(「所有権移転登記申請書(相続・法定相続)」記載例・注6)。
保管期間との関係も押さえておく必要があります。規則28条の2第6号は、法定相続情報一覧図つづり込み帳の保存期間を「作成の年の翌年から五年間」と定めています。法務局の案内では「5年間(申出日の翌年から起算)保存されます」と説明されており、本文の対比表の「申出日の翌年から5年間」はこの案内の表現によっています。法務局も、保管の申出から5年以上が経過している場合は法定相続情報番号を使えないことがあると案内しています(ただし、すでに交付された紙の証明書の原本を添付書類として使うことは可能とされています)。番号だけ控えて写しを捨ててしまうと、年数が経ったときに手詰まりになりかねません。
4. 一覧図に「結論」は書かれない
最後に、実務でいちばん誤解が生まれやすい点です。
規則247条1項2号が法定相続情報として挙げているのは「相続開始の時における同順位の相続人の氏名、生年月日及び被相続人との続柄」です。書き取る内容がここで限られているので、誰がどれだけ相続するのか、遺産分割で何が決まったのか、といった事柄は、そもそも一覧図の記載事項に入っていません。
したがって、相続開始の後に生じた事情——相続放棄、遺産分割協議、相続分の譲渡——の結果は、一覧図の上には表れません。相続放棄をした方も、遺産分割で何も取得しないことになった方も、氏名等は一覧図に記載されたままです。法務局も、相続放棄や遺産分割協議の結果によって実際には相続分を有しない方がいる場合も、その方の氏名等は一覧図に記載されると案内しています。
ここは条文の文言だけで割り切れる部分ではない、という点は付け加えておきます。相続放棄をした人は初めから相続人とならなかったものとみなされる(民法939条)ので、「相続開始の時における相続人」という言葉だけを見れば、放棄した人は載らないという読み方もできてしまうからです。実際にどう扱われるかは、上の法務局の案内によります。同じ案内では、廃除された方は一覧図に記載されないとも説明されています。何が図に反映されて何が反映されないのかは、条文の文言から推し量るのではなく、法務局が示している扱いを確かめるところです。
この点について、法務局は添付省略の注意事項でも次のように述べています。
▣添付の省略が可能な情報は、法定相続情報一覧図に記載されている情報に限られますので、法定相続人として記載されている方にさらに相続が発生している場合、法定相続人の住所が変更されている場合、遺産分割や相続放棄を伴う場合などでは、各種相続関係手続において、別途これらの事項を証する書面の添付等が必要となることがあります。 (同上)
実務上の意味は明確です。一覧図の写しを添えれば戸籍の束は省けるが、「誰がその不動産を取得するのか」を示す書類は別に要る、ということです。遺産分割によって取得者を決めたのなら遺産分割協議書と印鑑証明書、相続放棄があったのならその事実を示す書面が、それぞれ必要になります。一覧図を1枚用意したから相続登記の添付書類がすべて揃った、と考えると足りません。
そして、この「結論」の部分を図の上に書き添えられるのが、相続関係説明図の側です。本文で見た「(分割)」の注記が公表されているのは、相続関係説明図が特定の申請の中身に合わせて作る図だからです。
ただし、書き添えられるといっても、それは調査する側が関係をたどりやすくするための注記であって、誰が何を取得したのかを証明する書面はあくまで遺産分割協議書などの側です。相続関係説明図に「(分割)」と書いたから協議書が要らなくなる、という関係ではありません。戸籍の束の代わりになる証明が一覧図、集めた戸籍を返してもらうために申請ごとに作る添え物が相続関係説明図——冒頭で書いた切り分けは、ここまで見てきた場面のいずれにも当てはまります。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年8月)。
- 不動産登記規則 第28条の2・第37条の3・第46条・第55条・第247条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/417M60000010018
- 不動産登記法 第76条の2(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123
- 不動産登記令 別表22の項・30の項(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/416CO0000000379
- 民法 第939条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- 戸籍法 第10条の2(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000224
- 司法書士法 第3条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC1000000197
- 法務局「不動産登記の申請書様式について」: https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/minji79.html
- 法務局 記載例「所有権移転登記申請書(相続・法定相続)」: https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001443977.pdf
- 法務局 記載例「所有権移転登記申請書(相続・遺産分割)」: https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001443980.pdf
- 法務局 記載例「所有権移転登記申請書(相続・遺産分割)(数次相続)」: https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001435600.pdf
- 法務局「「法定相続情報証明制度」について」: https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000013.html
- 法務局「法定相続情報証明制度の具体的な手続について」: https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000014.html
- 法務局「法定相続情報番号の提供による相続登記等における法定相続情報一覧図の写しの添付省略について」: https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_00025.html
- 法務省「不動産登記規則等の一部を改正する省令(令和6年法務省令第7号)」: https://www.moj.go.jp/content/001413812.pdf
- 法務省「不動産登記関係の主な通達等」: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00465.html
- 総務省 行政評価局「相続時に提出する戸籍謄本等の返却の推進」(勧告・抜粋): https://www.soumu.go.jp/main_content/000474157.pdf
※ 次の資料は一次情報ではなく、図書館のレファレンス記録(二次資料)ですが、登記先例の掲載先の確認の参考にしたため一次情報と区別して掲載しています。
- 国立国会図書館 レファレンス協同データベース「昭和30年12月16日民事甲第2670号民事局長通達の内容を知りたい」(鳥取県立図書館の回答): https://crd.ndl.go.jp/reference/entry/index.php?id=1000346082&page=ref_view