戸籍に出てくる「戸主」とは?──家督相続と、いまの相続との違い

この記事の要点 古い戸籍には「戸主」「前戸主」という記載が出てくることがあり、これは家制度のもとで一家の代表者とされた人を指す かつては「家督相続」という制度があり、戸主の地位や財産は、原則として一人の相続人に単独で引き継がれる仕組みだった 家督相続は、昭和22年(1947年)5月3日=日本国憲法の施行日以降に開始した相続には適用されなくなっており、相続がいつ開始したかによって適用される制度が変わる(ただし、切り替わりの前後については経過規定による例外も置かれている) 本文 数次相続が絡む案件で、被相続人の出生まで戸籍を遡っていくと、明治・大正・昭和初期に編製された戸籍にたどり着くことがあります。そこに記載されている「戸主(こしゅ)」「前戸主」という文字を見て、いまの戸籍にはない言葉に戸惑う方は少なくありません。この記事では、戸主とは何か、そして戸主制度と結びついていた「家督相続」という古い相続の仕組みについて整理します。 ...

2026年9月2日 · ひぐらしさとし

戸籍の旧字体・異体字とは?──相続登記で氏名の字が戸籍ごとに違うときの考え方

この記事の要点 明治・大正期の手書き戸籍には、旧字体や異体字で書かれた氏名が数多く残っている 相続で複数世代の戸籍をつなげていくと、同じ人物なのに戸籍ごとに氏名の字体が違って見えることがある 字体の違いだけで別人・誤記と決めつけず、生年月日・父母の氏名・本籍の変遷など他の記載事項を突き合わせて同一人物かどうかを確認する 相続の手続きでは、亡くなった方の戸籍を死亡時から出生時までさかのぼって集める必要があります。何代分もの戸籍を並べていくと、同じ人物のはずなのに、戸籍ごとに氏名の漢字の形が違って見えることがあります。「高橋」の「高」が古い戸籍では「髙」(はしごだか)になっている、「澤田」が後の戸籍では「沢田」になっている――このような食い違いに気づいたとき、誤記や別人ではないかと不安になる方は少なくありません。 ...

2026年8月29日 · ひぐらしさとし

戸籍の「筆頭者」とは?──亡くなっても変わらない理由と、戸籍を請求するときの使い方

この記事の要点 筆頭者とは、戸籍の最初に記載される人のことで、その戸籍を特定するための「見出し(索引)」の役割を持ちます 筆頭者が亡くなっても筆頭者は変わりません。戸籍から除かれた後も、見出しとしてそのまま使われ続けます(戸籍法9条) 戸籍を請求するときは「本籍地+筆頭者の氏名」のセットで戸籍を特定します。相続の戸籍集めでは、この2つを押さえることが出発点になります 相続の手続きで戸籍を集めようとすると、請求書に「筆頭者」という欄があって手が止まる──よくあるつまずきです。結論からいうと、筆頭者とは戸籍のいちばん最初に記載されている人のことで、その戸籍を探し当てるための「見出し」にすぎません。世帯主のような役割でも、家族の代表でもありません。 ...

2026年8月25日 · ひぐらしさとし

戸籍謄本と戸籍抄本の違い──相続の手続きで「抄本では足りない」と言われる理由

この記事の要点 戸籍謄本は「その戸籍に載っている全員分の写し」、戸籍抄本は「その戸籍のうち一部の人だけの写し」です 相続の手続きでは、誰が相続人かを戸籍全体で確認する必要があるため、原則として謄本(全部事項証明書)が必要です コンピュータ化後の正式名称は「全部事項証明書」「個人事項証明書」ですが、窓口では今も「謄本」「抄本」で通じます 結論からいうと、相続の手続きで使う戸籍は、原則として謄本(全部事項証明書)をそろえます。抄本を取ってしまい、あとで取り直しになるのはよくあるつまずきです。なお、本記事は執筆時点(2026年8月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年8月21日 · ひぐらしさとし

本籍地がわからないときの調べ方──相続の戸籍集めで最初につまずいたら

この記事の要点 本籍地がわからないときは、まず「本籍地の記載を希望した」住民票の写し(または除票)を取り寄せる 自分の本籍地は自分の住民票、亡くなった方の本籍地はその方の最後の住所地の住民票の除票からたどれる 除票の保存期間は延長されているが、古い除票はすでに廃棄されている場合もある 本文 戸籍を集めようとして最初につまずくのが、「そもそも本籍地がどこかわからない」という壁です。結論から言うと、本籍地を調べる最も確実な方法は、本籍地の記載を希望した住民票の写し(亡くなった方の場合は住民票の除票)を取り寄せることです。 ...

2026年8月17日 · ひぐらしさとし

養子縁組があると戸籍はどう動く?──相続で実方の戸籍までさかのぼる理由

この記事の要点 養子縁組をすると、養子は原則として養親の戸籍に入り(戸籍法18条3項)、それまでいた実父母の戸籍からは除籍される 被相続人の戸籍を死亡から出生までさかのぼる作業で「養子」の記載に行き当たったら、その戸籍だけでは足りず、縁組前に在籍していた実方の戸籍も別途取得する必要がある 普通養子縁組は実方との親族関係が続くため実方の血族も相続人になりうるが、特別養子縁組では原則として実方との親族関係が終了し、相続人の範囲が変わる(連れ子を特別養子とした場合の例外あり) 結論から言うと、養子縁組があると戸籍は「乗り換え」が起きます。養子は養親の戸籍に入るのが原則で(戸籍法18条3項「養子は、養親の戸籍に入る。」)、氏も養親の氏を称します(民法810条本文)。戸籍は一人につき一つの籍に在籍する仕組みですから、養親の戸籍に入るということは、それまで在籍していた実父母の戸籍からは除籍される、ということでもあります。なお、これには例外があり、婚姻によって氏を改めた人は、婚姻の際に定めた氏を称すべき間は養親の氏を称しません(民法810条ただし書)。戸籍はもともと、同じ氏を称する夫婦とその子を単位として編製される仕組みですから、縁組をしても氏が変わらないのであれば、養親の戸籍に入ることにもなりません。たとえば妻の氏を称して婚姻した夫が妻の父母の養子となる、いわゆる婿養子の縁組では、夫婦の戸籍に在籍したままとなり、縁組の事実はその戸籍の身分事項欄に記載されるだけで、戸籍の「乗り換え」は起きません。 ...

2026年8月13日 · ひぐらしさとし

亡くなった方の銀行口座を解約するには──凍結から相続手続き完了までの流れ

この記事の要点 銀行は名義人の死亡を知った時点で口座を凍結し、以後は相続人であっても自由に出金できなくなる 解約・払い戻しには戸籍一式や遺産分割協議書など複数の書類が必要で、金融機関への連絡から完了まで数週間から数か月かかることが多い 口座数が多い場合は法定相続情報証明制度を使うと、戸籍の束を出し直す手間を減らせる 銀行口座の名義人が亡くなると、口座は解約や払い戻しの手続きを経て初めて相続人が受け取れる状態になります。それまでの間、口座は「凍結」され、家族であっても自由に引き出すことはできません。ここでは、凍結が始まるタイミングから解約完了までの一般的な流れを整理します。 ...

2026年8月13日 · ひぐらしさとし

分籍とは?──自分の意思で戸籍を分けると、相続の戸籍集めはどう変わるか

この記事の要点 分籍とは、成年に達した人が自分の意思で届け出て、それまでの戸籍から抜けて新しい戸籍を単独で作ること 分籍をすると、転籍や改製のときと同じく「戸籍が区切られる」。新しい戸籍に、それ以前の戸籍の記載がそのまま引き継がれるわけではない 被相続人が生前に分籍していた場合、死亡時の戸籍だけでは兄弟姉妹の有無が分からず、分籍前の戸籍まで遡って集める必要がある 本文 分籍をしたことがある方が亡くなった場合、相続の戸籍集めでは死亡時の戸籍だけでは足りません。分籍する前の戸籍まで、さらに遡って取り寄せる必要があります。 ...

2026年8月9日 · ひぐらしさとし

「除籍謄本」とは?──戸籍謄本との違いと、相続登記で必要になる理由

この記事の要点 除籍謄本とは、記載されていた人が全員その戸籍から抜けて閉鎖された戸籍の写し 「今も誰かが在籍している戸籍」の写しである戸籍謄本とは別の書類で、保存の仕方も呼び方も異なる 相続登記では、被相続人の死亡から出生までを切れ目なくたどる必要があり、その過程で除籍謄本や改製原戸籍が必要になる 本文 相続の手続きを進めていると、市区町村の窓口や案内文で「戸籍謄本」だけでなく「除籍謄本」という言葉に出会います。結論から言うと、除籍謄本とは、記載されていた人が全員その戸籍から抜けて、戸籍としての役目を終えたものの写しです。 ...

2026年8月5日 · ひぐらしさとし

戸籍の「身分事項欄」の読み方──婚姻・養子縁組・認知の記載から相続人を読み取る

この記事の要点 続柄欄が「その人の立ち位置」を示すのに対し、身分事項欄は「その人にいつ何が起きたか」という出来事の記録を示す欄 認知は父と子の双方、普通養子縁組は養親と養子の双方、婚姻・離婚は夫と妻の双方の身分事項欄に記載される(戸籍法施行規則35条) そのため、被相続人自身の戸籍の身分事項欄をたどることで、認知した子・養子縁組した子・前の婚姻の存在といった相続人確定に直結する事実を拾える 本文 結論から言うと、相続人を確定する作業では、続柄欄と身分事項欄を役割分担で読み分けるのが基本です。戸籍の「続柄」欄の読み方で扱ったとおり、続柄欄はその人が父母や筆頭者から見てどの続き柄にあたるかという「立ち位置」を示す欄です。これに対して身分事項欄は、出生・婚姻・離婚・養子縁組・離縁・認知・死亡といった「その人の身の上に起きた出来事」を、日付とともに記録していく欄です。相続人の範囲を左右する事実の多くは、続柄欄ではなく身分事項欄に現れます。 ...

2026年8月1日 · ひぐらしさとし