この記事の要点
- 分籍とは、成年に達した人が自分の意思で届け出て、それまでの戸籍から抜けて新しい戸籍を単独で作ること
- 分籍をすると、転籍や改製のときと同じく「戸籍が区切られる」。新しい戸籍に、それ以前の戸籍の記載がそのまま引き継がれるわけではない
- 被相続人が生前に分籍していた場合、死亡時の戸籍だけでは兄弟姉妹の有無が分からず、分籍前の戸籍まで遡って集める必要がある
本文
分籍をしたことがある方が亡くなった場合、相続の戸籍集めでは死亡時の戸籍だけでは足りません。分籍する前の戸籍まで、さらに遡って取り寄せる必要があります。
分籍とは、成年に達した人が自分の意思で、それまで在籍していた戸籍から抜けて、自分を筆頭者とする新しい戸籍を単独で作ることをいいます。戸籍法21条は「成年に達した者は、分籍をすることができる」と定めています。ただし、戸籍の筆頭に記載されている人本人と、その配偶者は分籍の対象になりません。分籍の届出をすると、新しい戸籍が編製されます。
似た言葉に転籍がありますが、性質は異なります。転籍は本籍地という「場所」を移す手続きで、戸籍に載っている家族はそのまま新しい本籍地に移ります。一方、分籍は「戸籍の構成員」を分ける手続きで、それまで親や兄弟姉妹と同じ戸籍に載っていた人が、単独で新しい戸籍を作ります。結婚など身分関係の変動を伴わなくても、成年に達していれば届出だけで戸籍を分けられるのが、分籍の特徴です。
相続の場面で見落としやすいのはここからです。被相続人が生前に分籍していた場合、死亡時の戸籍、つまり分籍後の戸籍には、分籍した本人についての記載しかありません。両親のもとにいた頃の兄弟姉妹の記載までは載っていないのです。転籍のときと同じように、分籍で新しく作られた戸籍にも、それ以前の戸籍の内容がそっくり引き継がれるわけではありません。分籍前の戸籍、つまり親の戸籍まで遡って取得しなければ、被相続人に他に兄弟姉妹がいないかどうかを確認できず、相続人の範囲を見誤るおそれがあります。
また、いったん分籍すると、元の戸籍に戻ることはできません。転籍や改製、婚姻・離婚と並んで、生涯で経由する戸籍の数が増える要因のひとつです。分籍で新しい戸籍が編製されると、その戸籍に対応する新しい戸籍の附票も作られます。住所の履歴についても、分籍後の附票だけでは分籍前の住所までは追えないことがあります。
なお、戸籍の集め方については、令和6年3月1日から戸籍証明書の広域交付という仕組みが始まっています(令和元年法律第17号による戸籍法改正、戸籍法120条の2)。本籍地が遠方であっても、最寄りの市区町村の窓口でまとめて請求できるため、分籍などで本籍地が移っている場合の戸籍集めの負担は以前より軽くなりました。ただし、この方法で請求できるのは本人・配偶者・直系尊属(父母や祖父母)・直系卑属(子や孫)に限られ、郵送や代理人による請求はできません。また、コンピュータ化されていない一部の戸籍・除籍は対象外とされており、その分は従来どおり本籍地の市区町村に請求することになります。分籍前の古い戸籍まで遡るときは、この対象外に当たる可能性がある点にご注意ください。
執筆時点(2026年8月)の制度に基づく一般的な解説です。
まとめ
分籍は、成年に達した人が自分の意思で戸籍を分ける制度で、転籍や改製と同じく戸籍が区切られる場面のひとつです。被相続人が生前に分籍していた場合、死亡時の戸籍だけでは足りず、分籍前の戸籍まで遡って集める必要があります。どこまで戸籍を遡れば足りるのか、ご自身での判断が難しいときは、お近くの司法書士にご相談ください。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年8月・いずれも一次情報です)。
- 戸籍法(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000224
- 戸籍法施行規則(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40000010094
- 法務省「戸籍法の一部を改正する法律について(令和6年3月1日施行)」: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji04_00082.html