この記事の要点
- 転籍とは本籍地を移すことで、他の市町村に移すと転籍先で新しい戸籍が作られる
- 新しい戸籍には、すでにその戸籍から抜けている人(除籍された人)の記載が引き継がれない
- そのため、転籍後の戸籍だけを見ても相続人が分からず、出生まで遡って戸籍を集める必要がある
本文
他の市町村へ転籍すると、その戸籍からすでに抜けた人の記載は、新しく作られる戸籍に引き継がれません。相続手続きで「いま手元にある戸籍だけでは足りない」と言われるのは、これが理由のひとつです。
転籍とは、本籍地を別の場所に移すことをいいます。戸籍法108条1項は、転籍しようとするときは新しい本籍を届書に記載して届け出る、と定めています。引っ越しに合わせて移す方もいれば、住まいとは関係のない土地に移す方もいます。
他の市町村に転籍すると、移した先で新しい戸籍が作られます。このとき、元の戸籍の内容がそっくりそのまま写されるわけではありません。戸籍法施行規則は、新しい戸籍に引き継がれるのは新しい戸籍に入る人についての事項とし、戸籍の筆頭に記載した者以外で除籍された者に関する事項などは記載を要しない、と定めています(同規則39条、37条ただし書)。
「除籍された者」とは、その戸籍からすでに抜けている人のことです。たとえば、結婚して自分たちの戸籍を作って出ていった子、先に亡くなって戸籍から除かれた子、養子縁組で他の戸籍に移った方などが当てはまります。こうした方の記載は、転籍後の新しい戸籍には現れません。
そのため、転籍後の戸籍だけを見ると、その方にお子さんがいたことすら読み取れない、ということが起こります。相続では、亡くなった方のお子さんは原則として全員が相続人です。先に亡くなったお子さんがいればそのお子さん(孫)が代襲相続しますし、結婚して戸籍を出たお子さんも相続人になります。転籍後の戸籍しか確認していないと、相続人をまるごと見落とすおそれがあります。
似たことは、法律の改正で戸籍の様式が作り替えられる改製のときにも起こります。きっかけは本人の届出と法令の切り替えで異なりますが、「新しい戸籍にすべてが写るわけではない」という点は共通しています。
だからこそ相続手続きでは、亡くなった方の死亡時の戸籍から出生時の戸籍まで、切れ目なくつなげて集めることが求められます。
執筆時点(2026年07月)の制度に基づく一般的な解説です。
まとめ
転籍によって新しく作られた戸籍には、すでに除籍された方の記載が引き継がれません。手元の戸籍が新しいものだけだと、相続人の一部が見えないまま手続きを進めてしまうおそれがあります。どこまで遡れば足りるのか、集めた戸籍がつながっているのか判断がつかない場合は、お近くの司法書士にご相談ください。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年7月・いずれも一次情報です)。
- 戸籍法 第108条・第120条の8(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000224
- 戸籍法施行規則 第37条・第39条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40000010094