この記事の要点

  • 代襲相続が起こる原因は「死亡・相続欠格・廃除」の3つで、相続放棄は原因に含まれない
  • 死亡と廃除は戸籍の身分事項欄に記載されるため戸籍で確認できるが、相続欠格と相続放棄は戸籍に記載が残らない
  • 「戸籍を見ても代襲相続が起きているかどうか判断できない」ケースがあり、その場合は証明書や家庭裁判所への照会など戸籍以外の資料で確認する必要がある

戸籍を読み進めていると、「この人は代襲相続の対象になっているのだろうか」と立ち止まる場面があります。結論から言うと、戸籍だけを見れば代襲相続の有無がすべてわかる、というわけではありません。代襲相続の原因のうち、戸籍に記載が残るものと、まったく記載が残らないものがあるためです。

代襲相続の原因は3つ、しかも戸籍への出方が違う

代襲相続とは、本来相続人になるはずだった人が一定の事情で相続権を失っているとき、その人の子が代わりに相続人となる制度です。民法887条2項は、その原因を次の3つに限定しています。

  1. 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき
  2. 民法891条の相続欠格に該当したとき
  3. 被相続人による廃除によって相続権を失ったとき

代襲相続の基本ルール(相続分の計算や、子の系統は再代襲があり兄弟姉妹の系統は甥・姪までの一代限りである点など)は、代襲相続の基本を解説した記事で整理しています。本記事では、この3つの原因を戸籍を読み解く場面でどう見分けるかに絞って書きます。

死亡は戸籍でわかる

死亡に関する事項は、戸籍法施行規則35条6号により、死亡者の身分事項欄に記載することとされています。記載の様式は同規則33条と附録第七号の記載例によることとされており、死亡年月日や届出の年月日が記載されます。したがって、被代襲者(先に亡くなった相続人)の戸籍を確認すれば、死亡の事実と日付は読み取れます。ここで実務上のポイントになるのが、死亡年月日と被相続人の相続開始日(死亡日)の前後関係です。民法887条2項が定める代襲原因は「相続の開始以前に死亡したとき」なので、被代襲者の死亡が被相続人の死亡より先か後かを、戸籍上の日付で1件ずつ突き合わせる必要があります(条文が「以前」となっているため、事故などで同時に死亡したものと推定される場合〔民法32条の2〕も代襲の原因に含まれます)。

廃除も戸籍でわかる

廃除(民法892条・893条)は家庭裁判所の審判で確定しますが(廃除は家事事件手続法の別表第一に掲げられた審判事件で、調停の対象にはなりません〔同法244条〕)、確定後は届出を経て戸籍に反映されます。戸籍法施行規則35条8号は「推定相続人の廃除に関する事項」を、廃除された者の身分事項欄に記載すべきものと定めています。したがって、廃除された推定相続人の戸籍にその旨が記載されます(被相続人が後から廃除の取消しを請求した場合〔民法894条〕も、取消しの裁判の確定後に届出がされ〔戸籍法97条〕、同じく身分事項欄に記載されます)。したがって廃除も、届出がされていれば戸籍から代襲原因に該当するかどうかを読み取れます。ただし遺言による廃除(民法893条)では、被相続人が亡くなった後に遺言執行者が家庭裁判所へ請求し、審判が確定してから届出がされるため、確認する時点によっては戸籍にまだ記載が現れていないことがあります。

相続欠格は戸籍に載らない

これに対して相続欠格(民法891条。故意に被相続人や先順位・同順位の相続人を死亡させて刑に処せられた場合、詐欺・強迫によって遺言をさせたり遺言を妨げたりした場合など)は、該当事由があれば裁判や届出を経ずに法律上当然に効力が生じます。役所への届出も戸籍への記載も予定されていないため、戸籍を見ただけでは欠格の有無は一切わかりません。実務では、欠格に該当する事実を証明する確定判決の謄本や、欠格者本人が実印を押した「相続欠格証明書」など、戸籍以外の書類で証明する必要があります。

相続放棄はそもそも代襲原因ではない

「子が相続放棄をしたら、孫が代わりに相続するのでは」と考える方が少なくありませんが、これは誤りです。相続放棄は民法887条2項が挙げる3つの原因のいずれにも含まれていません。理由は民法939条にあります。相続放棄をした人は「その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす」と定められており、最初から相続人でなかった扱いになるため、代襲の前提として想定されている「相続人であった者が相続権を失う」という状態が生じない、と説明されています。相続放棄は家庭裁判所への申述という形をとる手続きで、これも戸籍には一切記載されません。放棄の有無を確認するには、家庭裁判所に相続放棄・限定承認の申述の有無についての照会をするか、申述をした本人から相続放棄申述受理証明書の提出を受ける必要があります。

まとめ

代襲相続の原因のうち、死亡と廃除は戸籍の身分事項欄に記載されるため、戸籍を1通ずつ読み進めることで確認できます。一方で、相続欠格は戸籍に記載されず、相続放棄はそもそも代襲相続の原因に含まれないうえ戸籍にも記載されません。戸籍を読んで「先順位の相続人がいない」と分かっても、それだけで代襲相続の全体像が確定するとは限らないという点は、相続人確定の作業で見落としやすい落とし穴です。戸籍で読み取れる範囲と、証明書・家庭裁判所への照会が必要になる範囲を意識して切り分けることが、正確な相続人確定の第一歩になります。個別の事案でどの書類が必要かは、お近くの司法書士にご相談ください。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年09月)。

※ 次の資料は一次情報ではなく、解説などの二次資料ですが、相続欠格者がいる場合の相続登記の添付書面(登記先例 昭和33年1月10日民事甲第4号)の内容確認の参考にしたため一次情報と区別して掲載しています。

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