この記事の要点
- 改製原戸籍は「戸籍事項欄 → 筆頭者・戸主 → 各人の身分事項欄」の順に見ると読みやすくなります。最初に見るのは名前ではなく日付です。
- 線が引かれて消してある記載こそ読んでください。 その線は「この人はこの戸籍から抜けました」という印で、消された内容自体は有効な情報です。
- 改製のときに新しい戸籍へ書き写されるのは、決められた事項だけです。すでに終わった婚姻・養子縁組などは書き写されません(戸籍法施行規則39条1項)。だから改製原戸籍を見ないと相続人が漏れます。
- 手数料の標準額は改製原戸籍謄本1通750円(実際の額は各市区町村の条例によります)。
- 読めない、つながっているか分からない、と感じたらお近くの司法書士にご相談ください。
この記事は「読み方」の話です
結論から書きます。改製原戸籍(かいせいげんこせき)は、上から順に読もうとすると必ず迷子になります。見る順序を決めて、日付から入るのが早道です。
そもそも改製原戸籍とは何か、なぜ相続手続きで必要になるのか、という基礎の部分は改製原戸籍とは?相続登記で必要になる「コンピュータ化前の戸籍」の基礎知識にまとめてあります。「取り寄せたけれど、何が書いてあるのか分からない」という段階の方は、そのままこの記事を読み進めてください。
なお、実務では改製原戸籍を「はらこせき」と読むことがあります。「原」を音読みにすると現在の戸籍(現戸籍)と聞き分けにくいため、訓読みで「はら」と呼び分ける慣行だと説明されることが多いようです。窓口で「はらこせきもお取りになりますか」と聞かれても、特別な書類のことではありません。
まず様式を見分ける──昭和の改製と平成の改製
手元の1通が「いつの様式か」で、読みにくさの種類が変わります。相続手続きでよく出てくるのは次の2つです。
平成の改製原戸籍(コンピュータ化の前の戸籍)
平成6年の戸籍法改正によって、戸籍を磁気ディスクで扱えるようになりました。これを受けた改正省令(戸籍法施行規則の一部を改正する省令・平成6年法務省令第51号)の附則2条1項は、対象となる市町村長は従来の戸籍をコンピュータ化された戸籍に改製しなければならない、と定めています。実際にいつ切り替えたかは市区町村ごとに違います。
このときの改製原戸籍は、縦書きで、多くは活字またはタイプ印字です。字そのものは読めます。読みにくさは、縦書きの中に日付と事由がぎっしり詰め込まれていることから来ます。
昭和の改製原戸籍(旧民法の「家」単位の戸籍)
昭和32年法務省令第27号(戸籍法附則第三条第一項の戸籍の改製に関する省令)による改製です。同省令2条1項は、市町村長は昭和33年4月1日に改製の事務に着手し、すみやかに完了しなければならない、と定めています。これによって、戸主を中心とした「家」単位の戸籍から、夫婦と氏を同じくする子を単位とする現在の形へ移りました。
こちらは縦書きの毛筆・手書きで、旧字体やくずし字が混じります。「戸主」「前戸主」「隠居」「家督相続」といった、現在は使われない言葉も出てきます。さらに遡ると明治・大正期の様式のものが出てくることもあります。
見分け方のコツ:戸籍の右端(または冒頭)にある戸籍事項欄を見て、「改製」の文字と日付を探してください。平成6年より後の日付なら平成の改製、昭和33年前後なら昭和の改製です。
見る順序①──戸籍事項欄で「カバー期間」を押さえる
改製原戸籍を手にしたら、名前より先に戸籍事項欄を見ます。ここには、その戸籍がいつ作られ、いつ閉じられたかが書かれています。戸籍法施行規則34条は、戸籍事項欄に記載する事項のひとつとして「戸籍の再製又は改製に関する事項」を挙げています。
見るのは次の2つの日付です。
- 編製の日(この戸籍が作られた日)
- 改製・転籍・消除の日(この戸籍が閉じられた日)
この2つの日付の間が、その1通がカバーしている期間です。集めた戸籍をすべて並べて、亡くなった方の出生日から死亡日までがこの期間の連なりで埋まっていれば、切れ目なく集まったことになります。1日でも空白があれば、その期間の戸籍が抜けています。
「何通集めれば足りますか」という質問をよく受けますが、答えは通数では出ません。日付でつながっているかどうかが判断基準です。
見る順序②──筆頭者(戸主)と、そこにいる人の顔ぶれ
次に、戸籍の最初に記載されている人を確認します。平成・昭和の新しい様式なら「筆頭者」、旧民法下の古い戸籍なら「戸主」です。
ここで押さえたいのは、その戸籍に誰が入っていて、誰が入っていないかです。昭和32年省令5条1項は、旧法の戸籍にいる人のうち、①筆頭者、②筆頭者の配偶者、③筆頭者またはその配偶者の子で氏を同じくする者、以外の人については新しい戸籍を編製する、としていました。つまり昭和の改製の前後で、同じ家に記載されていた人が別々の戸籍に分かれています。「祖父の戸籍に叔父の名前が見当たらない」というのは、それだけでは異常ではありません。
続柄の欄の読み方には別の注意点があります。実子と養子の書き分けや、時期による記載ルールの違いについては戸籍の「続柄」欄の読み方で整理しています。
見る順序③──身分事項欄と、消してある記載
各人の名前の下(または横)にあるのが身分事項欄です。出生、婚姻、離婚、養子縁組、認知、死亡といった出来事が、日付とともに書かれています。相続人を探すうえで最も大事な欄です。
そして、ここが最大のポイントです。
線が引かれた記載は「無効」ではありません
古い戸籍を見ると、人の名前や記載に線が引かれ、あるいは×印のように消されていることがあります。これを見て「間違いを消した跡だろう」と読み飛ばしてしまう方がいますが、そうではありません。
戸籍法施行規則40条1項は、戸籍から人を除くときは、除籍される者の身分事項欄にその事由を記載して、戸籍の一部を消除しなければならないと定めています。つまりあの線は、「この人はこういう理由でこの戸籍から抜けました」という手続き上の印です。事由(婚姻、死亡、養子縁組など)はきちんと書かれています。
線が引かれているのは、次のような方です。
- 結婚して新しい戸籍を作り、出ていったお子さん
- 先に亡くなって除籍されたお子さん
- 養子縁組で他の戸籍に移った方
この全員が、相続人または代襲相続人の候補です。 線が引かれている記載こそ、丁寧に読む必要があります。
なお、その戸籍にいた全員が抜けた場合は、戸籍の全部が消除されます(同条2項)。これが「除籍」と呼ばれる状態です。
改製で「引き継がれなかった情報」を見抜く
改製原戸籍をわざわざ取る理由は、ここに尽きます。
戸籍法施行規則39条1項は、新しい戸籍を編製するときや他の戸籍に入るときに、従前の戸籍から書き写す(移記する)事項を9つ列挙しています。相続で効いてくるのは、その書きぶりです。
- 養子については、現に養親子関係の継続するその養子縁組に関する事項
- 夫婦については、現に婚姻関係の継続するその婚姻に関する事項
- 現に未成年者である者についての親権または未成年者の後見に関する事項
- 推定相続人の廃除に関する事項でその取消しのないもの
「現に継続する」「取消しのないもの」という限定がついています。書き写すよう求められているのは、この限定に当てはまるものだけです。ですから、離婚で終わった婚姻、離縁で終わった養子縁組は、新しい戸籍には書き写されません。改製の場面でも、平成6年改正省令附則2条2項が規則37条ただし書に掲げる事項を省略できるとしており、同ただし書は「戸籍の筆頭に記載した者以外で除籍された者に関する事項」などを移記しなくてよい事項として挙げています。
具体的には、次のような事実が現在の戸籍からは消えます。
- 前の結婚と、その結婚で生まれたお子さんの存在
- 改製の時点ですでに亡くなっていたお子さんの存在
- すでに解消されている養子縁組
前の結婚で生まれたお子さんは、法律上の相続人です。先に亡くなったお子さんについては、そのお子さん(=孫)がいれば代襲相続人になります。現在の戸籍だけを見て遺産分割の話し合いを進めてしまうと、後から相続人が現れて協議のやり直しになります。似た仕組みは転籍のときにも働きます(転籍があると戸籍の記載は引き継がれない)。
どこまで遡ればよいか
相続手続きでそろえるのは、亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍です。
判断の目印はシンプルで、遡っていった戸籍の身分事項欄に、その方の出生に関する記載(出生日と届出)が現れたら、そこが終点です。出生の記載がある戸籍にたどり着くまでは、まだ手前にもう1通あります。
遡り方は、いま持っている1通の記載を手がかりにします。
- 戸籍事項欄の「改製」の記載 → 改製前の戸籍(=改製原戸籍)を請求する
- 「○○から転籍」の記載 → 転籍前の本籍地に請求する
- 身分事項欄の「従前戸籍」の記載 → 婚姻などで抜ける前の戸籍(多くは親の戸籍)に請求する
取り寄せるときの根拠と手数料
ご自身で請求する場合の根拠は、戸籍法10条1項です。同項は、戸籍に記載されている人(その戸籍から除かれた人を含みます)、またはその配偶者、直系尊属、直系卑属が、戸籍謄本等の交付を請求できると定めています。そして同法12条の2が、10条から10条の4までの規定を、除かれた戸籍の謄本等の交付請求に準用しています。改製原戸籍もこの枠組みで請求します。
窓口では「改製原戸籍も含めて、出生から死亡まで全部ください」と伝えるのが確実です。「現在の戸籍をください」だけでは、改製原戸籍は出てきません。
本籍地が遠い場合は戸籍の広域交付(戸籍法120条の2)で最寄りの窓口にまとめて請求できますが、コンピュータ化されていない一部の戸籍・除籍は広域交付では出てきません。古い改製原戸籍はまさにそこに当たることがあり、その分は本籍地の市区町村に個別に請求することになります。
手数料の標準額は、地方公共団体の手数料の標準に関する政令で、戸籍の謄本・抄本が1通450円、除かれた戸籍の謄本・抄本が1通750円とされています。改製原戸籍は後者の扱いです。実際の額は各市区町村の条例によります。
まとめ
改製原戸籍は、戸籍事項欄で編製日と消除日を押さえる → 筆頭者(戸主)と顔ぶれを見る → 各人の身分事項欄を、消してある記載も含めて読む、という順序で見ると格段に読みやすくなります。
線が引かれた記載は間違いの訂正ではなく、その人が戸籍から抜けた印です(戸籍法施行規則40条1項)。そして改製のときに新しい戸籍へ書き写されるのは決められた事項だけで、すでに終わった婚姻や養子縁組は写りません(同規則39条1項)。だからこそ、現在の戸籍だけでは相続人が確定できないのです。
集めた戸籍を日付で並べて空白があるか、消してある記載の中に見落とした相続人がいないか──ここは慎重に確認したいところです。読み取りに自信が持てないときや、集めた戸籍がつながっているか判断がつかないときは、お近くの司法書士にご相談ください。集めかけの状態のまま持ち込んで、足りない分を特定してもらう進め方もできます。
よくある質問
Q. 改製原戸籍の取得にはいくらかかりますか。
手数料の標準額は、除かれた戸籍の謄本・抄本として1通750円です(地方公共団体の手数料の標準に関する政令)。現在の戸籍は同政令で1通450円とされています。実際の額は各市区町村の条例によります。出生から死亡までをそろえるのに何通必要かは、転籍や改製の回数によって変わりますので、総額は事案ごとに異なります。郵送で請求する場合は、これに定額小為替の発行手数料と切手代が加わります。
Q. 読むのが大変なので、改製原戸籍は後回しにしてもよいですか。
おすすめしません。相続人が確定しないと、遺産分割の話し合いにも相続登記にも進めないからです。相続登記には申請義務があり、不動産登記法76条の2第1項は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつその所有権を取得したことを知った日から3年以内に登記を申請しなければならないと定めています。また、時間が経つほど相続人の一人がさらに亡くなって関係者が増えていきます。読みにくい部分だけを人に任せて、手続き自体は進めるほうが結果的に早く済みます。
Q. 自分で読めない場合、どこに聞けばよいですか。
まずは戸籍を発行した市区町村の戸籍係の窓口で、「ここは何と書いてありますか」と尋ねる方法があります。文字の判読について教えてもらえることがあります。そのうえで、集めた戸籍が出生までつながっているか、相続人が誰になるかという判断が必要な段階になったら、お近くの司法書士にご相談ください。相続登記や法定相続情報一覧図の作成まで見据えて、足りない戸籍を特定してもらえます。
【さらに深掘り】読み終えた戸籍が、相続登記の添付情報としてどう働くか
ご注意 以下は執筆時点(2026年7月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。
読み終えた戸籍は、相続登記では「相続を証する、公務員が職務上作成した情報」という名前の添付情報に変わります。本編で押さえた読み方が、そのまま登記が通るか通らないかに直結します。ここでは、集めて読んだ戸籍が登記手続のどこで働くのかを整理します。
相続登記で戸籍は何を証明しているのか
相続による所有権移転の登記は、売買のような当事者双方での申請ではなく、登記権利者が単独で申請できます(不動産登記法63条2項)。売主に当たる相手方が手続に関与しないぶん、「本当に相続が起きたのか」「その人が本当に相続人なのか」は、提出する書面だけで示すことになります。
その書面を定めているのが不動産登記令の別表です。同令別表22項は、法63条2項の相続による権利の移転の登記について、添付情報として「相続又は法人の合併を証する市町村長、登記官その他の公務員が職務上作成した情報(公務員が職務上作成した情報がない場合にあっては、これに代わるべき情報)及びその他の登記原因を証する情報」を掲げています。この「市町村長が職務上作成した情報」の中心が戸籍です。
戸籍が証明しているのは、大きく分けて次の2つです。
- 相続が開始したこと(被相続人の死亡の記載)
- 相続人が誰で、その人たちで全員であること(出生から死亡までの連続した記載)
本編で「何通集めたか」ではなく「日付でつながっているか」が基準だと書いたのは、この2つ目のためです。連続していない戸籍の束は、「これで全員です」を示せていません。
出生まで遡ることが求められる、制度の側の理由
「戸籍は出生まで遡って集めてください」と言われる理由は、丁寧さの問題ではなく、登記所の審査の仕組みから来ています。
不動産登記法25条は、登記官が申請を却下しなければならない場合を1号から13号まで列挙し、ただし書で「不備が補正することができるものである場合において、登記官が定めた相当の期間内に、申請人がこれを補正したとき」は却下しないと定めています。列挙された却下事由を見ると、6号は申請情報の内容である不動産または権利が登記記録と合致しないとき、8号は申請情報の内容が登記原因を証する情報の内容と合致しないとき、9号は法令により申請情報と併せて提供しなければならないものとされている情報が提供されないときです。いずれも、提出された情報どうし、あるいは提出された情報と登記記録とを突き合わせれば判断がつく事柄が並んでいます。登記官が実際に調べた結果との食い違いを却下事由としているのは11号だけで、その11号も表示に関する登記の場面に限って置かれています。
一方、登記官が現地に出向いて調べる権限は、表示に関する登記について定められています(同法29条1項。同条2項では不動産の検査や関係者への質問も規定されています)。
そうすると、権利に関する登記において「他に相続人はいません」ということは、提出された戸籍の記載そのものから読み取れる形にしておく必要がある、ということになります。改製原戸籍を1通飛ばすと、その期間に何があったのかが書面の上で空白になります。本編で触れた「改製で書き写されなかった前婚の子」も、その空白のなかに入ります。
なお、戸籍が足りないことが分かった段階で直ちに却下されるわけではありません。25条ただし書のとおり、期間内に補正すれば申請は生きます。実務では、不足している戸籍を追加で提出して補うことになります。
戸籍と登記記録が住所でつながらないとき
もう一つ、戸籍を読めただけでは越えられない段差があります。戸籍と登記記録は、人を特定する情報の種類が違うという点です。
戸籍法13条が掲げる戸籍の記載事項は、本籍のほか、氏名、氏名の振り仮名、出生の年月日、戸籍に入った原因および年月日、実父母の氏名および続柄などで、住所はここに挙がっていません。なお、氏名の振り仮名(同条1項2号)は2025年5月26日施行の改正で加わった記載事項ですので、改製原戸籍には出てきません。これに対して登記記録の側は、権利に関する登記の登記事項として「登記に係る権利の権利者の氏名又は名称及び住所」が定められています(不動産登記法59条4号)。
そのため、登記記録に記録されている住所が古い時代のもので、亡くなった方が何度も引っ越していると、戸籍だけでは「登記名義人=この被相続人」がつながらない場面が出てきます。ここで住所の移り変わりをたどる書類として使われるのが、戸籍の附票と住民票の除票です。
戸籍の附票は、市町村長がその市町村の区域内に本籍を有する者について、その戸籍を単位として作成するものです(住民基本台帳法16条1項)。記載事項には戸籍の表示・氏名のほか、住所(同法17条3号)と住所を定めた年月日(同条4号)が含まれます。本籍を軸に住所の履歴が並ぶため、戸籍と登記記録の間を橋渡しする役割を果たします。
また、相続登記では新たに登記名義人となる相続人の側の住所も必要です。不動産登記令別表30項ハは、所有権の移転の登記の添付情報として「登記名義人となる者の住所を証する市町村長、登記官その他の公務員が職務上作成した情報」を掲げています。戸籍とは別に、住民票などを用意することになります。
なお、2026年4月1日からは、所有権の登記名義人の氏名・名称または住所に変更があったときは、その変更があった日から2年以内に変更の登記を申請しなければならないとされています(不動産登記法76条の5)。ご存命のうちに住所の変更が登記に反映されていれば、相続の場面で住所の変遷をたどる作業は、その分軽くなります。
古い時期の除票や附票が保存期間の関係で取得できない場合の取扱いは、事案ごとに変わります。そこに突き当たったら、お近くの司法書士にご相談ください。
法定相続情報一覧図を使っても、戸籍を読む作業は先に来る
戸籍の束を1枚の図にまとめられる法定相続情報一覧図は、不動産登記規則247条が定めています。ここで見落とされがちなのが、一覧図をもらうために戸籍一式が必要だという点です。
同条3項は、申出書に添付する書面として、1号で法定相続情報一覧図そのもの、2号で「被相続人(代襲相続がある場合には、被代襲者を含む。)の出生時からの戸籍及び除かれた戸籍の謄本又は全部事項証明書」、4号で相続人の戸籍の謄本等を挙げています。そして一覧図自体は、1号の括弧書きのとおり、申出人が記名するとともに、その作成をした申出人またはその代理人が記名するものです。
さらに同条5項は、登記官が3項2号から4号までの書面によって法定相続情報の内容を確認し、その内容と一覧図に記載された内容とが合致していることを確認したときに、一覧図の写しを交付するとしています。
整理すると、順序はこうなります。
- 出生から死亡までの戸籍を集める(本編の作業)
- 戸籍を読んで相続人を確定し、一覧図を自分で作る
- 登記所が戸籍と一覧図を突き合わせ、合致すれば写しが交付される
一覧図は、戸籍を読む作業を省くものではありません。 省けるのは、その後です。銀行・証券会社・登記所と手続先が複数ある場合に、戸籍の束を持ち回らずに済むこと、申出書に交付を求める通数を書いて(同条2項4号)複数枚受け取れることが、この制度の利点です。なお、申出の際に添付した戸籍等は、写しの交付とあわせて返却されます(同条6項)。
原本還付──提出した戸籍は返してもらえる
最後に、集めた戸籍が手元に戻るかどうかの話です。
不動産登記規則55条1項本文は、書面申請をした申請人は申請書の添付書面の原本の還付を請求することができると定めています。ただし書で還付の対象から外れるのは、同項が挙げる印鑑に関する証明書と、「当該申請のためにのみ作成された委任状その他の書面」です。戸籍は、その登記申請のためだけに作成された書面ではありませんので、還付を請求できる書面に当たります。
手順としては、原本の還付を請求する申請人が「原本と相違ない旨を記載した謄本」を提出し(同条2項)、登記官が調査完了後に謄本と原本を照合したうえで原本を還付します(同条3項)。申出により送付の方法で返してもらうこともできます(同条6項から8項まで)。ただし、偽造された書面その他の不正な登記の申請のために用いられた疑いがある書面は還付されません(同条5項)。
ここで実務上の手間になるのが、2項の「謄本」です。戸籍が10通あれば10通分のコピーを作り、原本と相違ない旨を記載して提出することになります。相続手続が複数の窓口にまたがるときに法定相続情報一覧図が使われるのは、この作業を繰り返さずに済むという理由も大きいところです。
改製原戸籍を読むという作業は、それ自体が目的ではありません。読めた内容が、そのまま登記所に対する証明になる──本編の読み方は、その先の手続を見据えたものです。集めた戸籍がつながっているか、相続人の範囲がこれで確定と言えるか、判断に迷う場面が出てきたら、お近くの司法書士にご相談ください。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年7月・いずれも一次情報です)。
- 戸籍法 第10条・第12条の2・第13条・第120条の2(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000224
- 戸籍法施行規則 第34条・第37条・第39条・第40条/平成6年法務省令第51号 附則第2条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40000010094
- 戸籍法附則第三条第一項の戸籍の改製に関する省令(昭和32年法務省令第27号)第2条・第5条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/332M50000010027
- 民法 第887条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- 不動産登記法 第25条・第29条・第59条・第63条・第76条の2・第76条の5(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123
- 不動産登記令 別表22項・30項(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/416CO0000000379
- 不動産登記規則 第55条・第247条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/417M60000010018
- 住民基本台帳法 第16条・第17条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/342AC0000000081
- 地方公共団体の手数料の標準に関する政令(平成12年政令第16号)(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/412CO0000000016
- 法務省「戸籍法の一部を改正する法律について」(戸籍の広域交付): https://www.moj.go.jp/MINJI/minji04_00082.html