この記事の要点
- 養子縁組をすると、養子は原則として養親の戸籍に入り(戸籍法18条3項)、それまでいた実父母の戸籍からは除籍される
- 被相続人の戸籍を死亡から出生までさかのぼる作業で「養子」の記載に行き当たったら、その戸籍だけでは足りず、縁組前に在籍していた実方の戸籍も別途取得する必要がある
- 普通養子縁組は実方との親族関係が続くため実方の血族も相続人になりうるが、特別養子縁組では原則として実方との親族関係が終了し、相続人の範囲が変わる(連れ子を特別養子とした場合の例外あり)
結論から言うと、養子縁組があると戸籍は「乗り換え」が起きます。養子は養親の戸籍に入るのが原則で(戸籍法18条3項「養子は、養親の戸籍に入る。」)、氏も養親の氏を称します(民法810条本文)。戸籍は一人につき一つの籍に在籍する仕組みですから、養親の戸籍に入るということは、それまで在籍していた実父母の戸籍からは除籍される、ということでもあります。なお、これには例外があり、婚姻によって氏を改めた人は、婚姻の際に定めた氏を称すべき間は養親の氏を称しません(民法810条ただし書)。戸籍はもともと、同じ氏を称する夫婦とその子を単位として編製される仕組みですから、縁組をしても氏が変わらないのであれば、養親の戸籍に入ることにもなりません。たとえば妻の氏を称して婚姻した夫が妻の父母の養子となる、いわゆる婿養子の縁組では、夫婦の戸籍に在籍したままとなり、縁組の事実はその戸籍の身分事項欄に記載されるだけで、戸籍の「乗り換え」は起きません。
これが相続人確定の作業にどう影響するかというと、被相続人の戸籍を死亡時から出生時までさかのぼって集めていく途中で、続柄欄に「養子」「養女」という記載が出てきた場合、そこで手を止めてはいけない、という点に現れます。その戸籍は養親の戸籍であり、養子縁組より前に被相続人がどこで生まれ、実父母が誰であったかという記載までは載っていません。転籍で戸籍の記載が引き継がれないのと同じように、養子縁組も戸籍が別の帳簿へ切り替わる場面のひとつであり、縁組前の記載を知るには、実父母の戸籍(除籍謄本や改製原戸籍であることが多い)を別途取得してさかのぼる必要があります。
ここで普通養子縁組と特別養子縁組の違いが実務上の分かれ目になります。普通養子縁組では、養親との間に新たな親子関係(法定血族関係)が生じますが、実父母やその血族との親族関係は途切れません。したがって、実方の血族も被相続人の相続人になり得る以上、実方の戸籍まで遡って相続人の範囲を確認する必要があります。これに対して特別養子縁組では、養子と実父母及びその血族との親族関係は特別養子縁組によって終了する、とされており(民法817条の9本文)、実方との親族関係自体がなくなります。そのため、実方の血族が相続人になる場面は原則として生じません。
ただし、この「親族関係の終了」には条文上の例外があります。夫婦の一方が他の一方の嫡出子(いわゆる連れ子)を特別養子とする場合、その他の一方(=実親のうち配偶者である側)及びその血族との親族関係は終了しません(民法817条の9ただし書)。この場合は特別養子縁組であっても実親の側の親族関係が残るため、「特別養子だから実方は関係ない」と一律に処理することはできません。また、実方の血族が相続人になるかどうかという問題と、被相続人の戸籍を出生までさかのぼって集める必要があるかどうかという問題は別のもので、後者は特別養子縁組の場合でも省略できるわけではありません。被相続人自身に子がいるかどうかを確認するには、いずれにしても出生までの連続した戸籍が必要になるからです。
普通養子と特別養子で相続への影響がどう違うかは、養子縁組と相続で扱っています。
実務では、実方の戸籍がどの市区町村にあるかは、養親の戸籍の身分事項欄(縁組前の本籍・筆頭者の記載)を手がかりに特定していくことになります。ご自身で集める場合はその市区町村へ直接請求する形になり、司法書士が事件処理として代行する場合は職務上請求書を用いますが、職務上請求書は司法書士が受任している事件の範囲内でのみ使用できるものであり、依頼の範囲を超えて戸籍を取得することはできません。
執筆時点(2026年8月)の制度に基づく一般的な解説です。
まとめ
養子縁組があると、養子は養親の戸籍に入り、実父母の戸籍からは除籍されます。相続人を確定するために被相続人の戸籍を出生までさかのぼる作業では、「養子」の記載を見つけたら、縁組前に在籍していた実方の戸籍も別途たどる必要があります。普通養子縁組か特別養子縁組かによって実方の血族が相続人になるかどうかも変わり、特別養子縁組にも例外があるため、戸籍の読み方や相続人の範囲に迷ったときは、お近くの司法書士にご相談ください。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年8月・いずれも一次情報です)。
- 戸籍法(昭和22年法律第224号)第18条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000224
- 民法(明治29年法律第89号)第810条・第817条の3・第817条の9(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089