この記事の要点
- 除籍謄本とは、記載されていた人が全員その戸籍から抜けて閉鎖された戸籍の写し
- 「今も誰かが在籍している戸籍」の写しである戸籍謄本とは別の書類で、保存の仕方も呼び方も異なる
- 相続登記では、被相続人の死亡から出生までを切れ目なくたどる必要があり、その過程で除籍謄本や改製原戸籍が必要になる
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相続の手続きを進めていると、市区町村の窓口や案内文で「戸籍謄本」だけでなく「除籍謄本」という言葉に出会います。結論から言うと、除籍謄本とは、記載されていた人が全員その戸籍から抜けて、戸籍としての役目を終えたものの写しです。
戸籍法12条1項は、「一戸籍内の全員をその戸籍から除いたときは、その戸籍は、これを戸籍簿から除いて別につづり、除籍簿として、これを保存する」と定めています。婚姻して新しい戸籍に移る、養子縁組で他の戸籍に入る、死亡する、転籍するなど理由はさまざまですが、記載されていた人が一人残らずいなくなった戸籍は「除籍簿」に移されて保存されます。この除籍簿の写しを取り寄せたものが除籍謄本です。
これに対して、まだ誰かが在籍している現在の戸籍の写しは「戸籍謄本」(コンピュータ化後の正式な名称は「戸籍全部事項証明書」)と呼ばれます。この二つは、同じ「戸籍の写し」でも、在籍者がいるかどうかで名称と保存のされ方が変わる、と考えると整理しやすくなります。
なぜ相続登記でこの除籍謄本が必要になるのでしょうか。相続人の範囲を確定するには、被相続人に前の婚姻や認知した子がいないか、養子縁組をしていないかなど、現在の戸籍だけでは分からない事実を確認する必要があります。戸籍のつながりに空白があると、その期間に生じた身分の変動を確かめられません。そのため実務上、被相続人が死亡した時点の戸籍から出生した時点の戸籍まで、切れ目なくさかのぼって集めることが求められます。戸籍は、転籍でその戸籍の全員が新しい本籍地に移ったときや、婚姻・死亡で在籍者が一人ずつ抜けて最後の一人もいなくなったときに除籍となります。過去にさかのぼるほど、そうして閉じられた戸籍に行き当たりますから、この作業では除籍謄本を何通も取り寄せることになります。あわせて、戸籍の様式そのものが法令の改正で作り替えられた場合は、作り替え前の戸籍である改製原戸籍も必要です。除籍謄本と改製原戸籍はどちらも「今の戸籍より前の記録」という点で似ていますが、除籍謄本は在籍者がいなくなったことで閉じられたもの、改製原戸籍は様式の切り替えで閉じられたものという違いがあります。
除籍謄本は、本籍地の市区町村役場で請求します。窓口や郵送での請求方法は現在の戸籍と共通ですが、本籍地以外の市区町村窓口でも請求できる広域交付制度(令和6年3月1日施行)は、除籍謄本について取得できる範囲に制限がある点に注意が必要です。
保存期間にも触れておきます。戸籍法施行規則5条4項は、「除籍簿の保存期間は、当該年度の翌年から百五十年とする」と定めています。この150年という定めは、平成22年(2010年)5月6日に公布された「戸籍法施行規則等の一部を改正する省令」(平成22年法務省令第22号)によるもので、同年6月1日から施行されています。それ以前の保存期間の定めのもとで期間が満了し、すでに廃棄されてしまった除籍簿は、市区町村から取得できません。その場合は、請求先の市区町村で、廃棄により除籍謄本を交付できない旨の証明書の交付を受けます。相続登記の実務では、残っている戸籍・除籍の謄本にこの証明書を添えて申請すれば相続登記ができる取扱いが示されています(平成28年3月11日付法務省民二第219号通達)。
執筆時点(2026年8月)の制度に基づく一般的な解説です。
まとめ
除籍謄本とは、記載されていた人が全員抜けて閉鎖された戸籍の写しで、今も誰かが在籍する戸籍謄本とは別の書類です。相続登記では、被相続人の死亡から出生までを切れ目なくたどる必要があるため、除籍謄本や改製原戸籍を何通も集めることになります。どこまで集めれば足りるか、手元の戸籍がつながっているか判断がつかないときは、お近くの司法書士にご相談ください。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年8月・いずれも一次情報です)。
- 戸籍法 第12条・第120条の2(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000224
- 戸籍法施行規則 第5条・附則(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40000010094
- 戸籍法施行規則等の一部を改正する省令(平成22年5月6日法務省令第22号)(国立国会図書館 日本法令索引): https://hourei.ndl.go.jp/simple/detail?lawId=0000120396
- 除籍等が滅失等している場合の相続登記について(通達)(平成28年3月11日付法務省民二第219号)(法務省): https://www.moj.go.jp/content/001378575.pdf