この記事の要点
- 一覧図に必ず書くのは「亡くなった方の氏名・生年月日・最後の住所・死亡年月日」と「相続開始のときの同順位の相続人の氏名・生年月日・続柄」(不動産登記規則247条1項1号・2号。このほか作成の年月日と記名が必要)。相続人の住所や被相続人の最後の本籍は、任意で記載できる項目です(ただし住民票の除票が市区町村で廃棄されていて最後の住所を確認できないときは、住所に代えて最後の本籍を記載します)
- 様式は法務局が公表しているひな型から、相続人の組み合わせに合うものを選べばよい(配偶者と子/子のみ/配偶者と父母/配偶者と兄弟姉妹/代襲相続/旧民法下の相続/養子を含む場合/列挙形式)
- 相続分や遺産分割の結論は記載事項に入っていないので、書き込まない
- やり直しになりやすいのは「戸籍が出生時までそろっていない」「続柄を『子』とだけ書いた」「住所を書いたのに住所を証する書面を付けていない」の3つ
- 制度そのもののしくみ・申出先・メリットは法定相続情報証明制度をやさしく解説にまとめています。この記事は「図を実際にどう書くか」の実践編です
法定相続情報一覧図は、書く項目が法令で決まっている書面です。家系図のように見えますが、自由に情報を足していい図ではありません。不動産登記規則247条1項各号に挙げられた項目を正確に書き、そこに挙げられていない事情(相続分や遺産分割の結論)は足さないのが基本です。相続人の住所や被相続人の最後の本籍、作成者の住所のように、法務局の様式・記載例が記載を認めている(または求めている)項目は別です。各号の項目を外すと、登記官から直すよう求められて出し直しになります。
以下では、記載できる項目、法務局が公表している様式の選び方、続柄と住所をどう書くかの判断、そして不備で戻されやすい例を順に見ていきます。
1. 一覧図に書く項目は法令で決まっている
不動産登記規則247条1項は、一覧図に記載する「法定相続情報」を次の2つに限定しています。
- 1号 被相続人(亡くなった方)の氏名、生年月日、最後の住所、死亡の年月日
- 2号 相続開始のときにおける同順位の相続人の氏名、生年月日、被相続人との続柄
これに加えて、同条3項1号が、一覧図には作成の年月日を記載し、申出人が記名すること、そして作成をした申出人またはその代理人が記名することを求めています。
なお、法務局が公表している記載例の注記では、被相続人の最後の本籍を申出人の任意で記載することもできるとされています。書かなくてもかまいませんが、住民票の除票などが市区町村で廃棄されていて被相続人の最後の住所を確認できない場合は、最後の住所の記載に代えて最後の本籍を必ず記載するとされています。
逆にいえば、次のようなものは1項各号の法定相続情報に含まれていません。
- 各相続人の相続分(「2分の1」「4分の1」など)
- 遺産分割協議の結論(「不動産は長男が取得」など)
- 誰が相続放棄をしたか
この制度は、法務局の案内では「戸除籍謄本等の記載に基づく法定相続人を明らかにするもの」と説明されています。そのため法務局は、相続放棄や遺産分割協議の結果として実際には相続分を有しない方がいる場合も、その方の氏名等は一覧図に記載されると案内しています。他方、推定相続人から廃除された方については、相続権がはく奪されているため一覧図に記載されない、とも案内しています。「実際の取り分」を書き込む書面ではないと理解しておくと、迷いが減ります。
列挙形式で書くとこうなる
図を描くのが難しければ、法務局が公表している「列挙形式」の様式を使う方法もあります。記載事項を並べると、おおむね次のような姿になります。
被相続人 ○○ ○○ 法定相続情報
【被相続人】
氏名 ○○ ○○
生年月日 昭和○年○月○日
最後の住所 ○○県○○市○○町○丁目○番○号
死亡年月日 令和○年○月○日
【相続人】
氏名 ○○ ○○(申出人)
生年月日 昭和○年○月○日
続柄 妻
氏名 ○○ ○○
生年月日 昭和○年○月○日
続柄 長男
作成日:令和8年7月31日
作成者:住所 ○○県○○市○○町○丁目○番○号
氏名 ○○ ○○(作成した申出人が記名します)
実際に提出するときは、この形を自分で組み立てるより、法務局のホームページで公表されている様式(エクセル)をそのまま使うのが確実です。項目の抜けが起きにくく、登記官の確認もスムーズになります。
2. 様式は「相続人の組み合わせ」で選ぶ
法務局は「主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例」として、相続人の組み合わせごとのひな型と記載例を公表しています。2026年7月時点で公表されているのは、次の類型です。
| 相続人の組み合わせ | 公表されている様式 |
|---|---|
| 配偶者と子 | 配偶者・子(1人〜4人まで対応)/嫡出でない子がいる場合(平成25年9月4日以前に相続が開始しているケースに限る)/子が多数で一覧図が複数枚にわたる場合 |
| 子のみ | 子(1人〜4人まで対応) |
| 配偶者と親 | 配偶者・親1名(父または母)/配偶者・親2名(父および母) |
| 配偶者と兄弟姉妹 | 配偶者・兄弟姉妹(1人〜3人まで対応)/父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹がいる場合 |
| 代襲相続がある | 代襲相続が生じている場合/再代襲が生じて複数枚にわたる場合 |
| 旧民法下の相続 | 隠居による家督相続および死亡による遺産相続/死亡による家督相続 |
| 養子がいる | 配偶者・子(実子2人、養子1人) |
| 図にしない | 列挙形式 |
このほか、委任による代理人が申出をする場合の委任状の様式・記載例も公表されています。
自分のケースにぴったり合う類型がないときは、近い類型の様式を土台にして行を増やす、あるいは列挙形式を使う、という組み立てになります。相続人が多くて1枚に収まらない場合の「複数枚にわたる場合」の様式が用意されているので、無理に小さな字で詰め込む必要はありません。
なお、旧民法(明治31年法律第9号)下の相続の様式が用意されていることからも分かるように、昔の相続が未処理のまま残っているケースも想定されています。ただし、この類型は誰が相続人になるかの判断自体が難しいので、図を書く前に相続人の範囲を固める作業が必要です。
3. 続柄は「戸籍どおり」か「子」か
一覧図の続柄には、**戸籍に記載される続柄(長男・長女・養子など)**を書くのが原則ですが、法務局は、申出人の選択により続柄を単に「子」と記載することも可能だと案内しています。
ただし同時に、続柄を「子」と記載した場合は、相続税の申告など、これを利用することができない手続があるとも明記されています。
つまり、
- 相続登記や預貯金の解約に使うだけなら「子」でも足りる場面がある
- 相続税の申告に添付する可能性があるなら、戸籍どおりの続柄で作るほうが安全
という判断になります。迷ったら戸籍どおりに書いておけば、後で使えないという事態は避けられます。
ただし、法務局が明記しているのは「続柄を『子』と記載した場合は、相続税の申告等、これを利用することができない手続があります」という点までで、それ以外の手続なら必ず使えるとまでは書かれていません。写しが使えるかどうかの詳細は提出先となる各機関にたずねるよう案内されているので、使い道が決まっているなら先に確認しておくのが確実です。
なお、相続税の申告そのものは税理士の業務です(税理士法52条)。申告が必要かどうか、税額がいくらになるかはこの記事では扱いません。申告書に何を添付するかは提出先の税務署または税理士に確認してください。
4. 住所を書くかどうかは任意。ただし書いたら証明書が必要
相続人の住所を一覧図に記載するかどうかは相続人の任意とされています。法務局は、記載しておくとその後の手続(相続登記の申請、遺言書情報証明書の交付請求など)で各相続人の住所を証する書面(住民票の写し)の提供が不要となることがあると案内しています。
ここで見落としやすいのが、不動産登記規則247条4項です。
前項第一号の法定相続情報一覧図に相続人の住所を記載したときは、第二項の申出書には、その住所を証する書面を添付しなければならない。
つまり、住所を書いた分だけ、申出のときに住民票の写しなどを添える必要が出てきます。「あとで楽になるから書いておこう」と決めたら、その場で用意する書類も増える、という関係です。
もうひとつの注意点として、法務局は、一覧図の写しの交付を受けた後に住所が変わったことを理由とする再申出はできないとしています。転居予定があるときは、住所を記載するかどうかを含めて考えておくとよいでしょう。
令和6年4月からの「法定相続情報番号」
一覧図の写しの右肩には、登記官が付す法定相続情報番号(11桁の番号)が記載されます。令和6年4月1日以降、不動産登記の申請書の添付情報欄にこの番号を記載することで、一覧図の写し(証明書の原本)の添付を省略できるようになりました。一覧図に相続人の住所が記載されている場合は、番号を提供することで住所を証する書面の添付も省略できます。
この取扱いを定めているのは不動産登記規則37条の3です。法定相続情報番号による省略の取扱いは「不動産登記規則等の一部を改正する省令」(令和6年法務省令第7号)で加えられ、令和6年4月1日から施行されています。同条1項が相続があったことを証する書面の代わりに、2項が住所を証する書面の代わりに、番号(または一覧図の写し)を使えることを定めています。いずれも、番号を提供する場合は「登記官が法定相続情報を確認することができるときに限る」というただし書が付いています。
ただし、法務局は次の注意点を挙げています。
- 番号が使えるのは不動産登記の申請等の手続のみ(金融機関など他の機関の手続には使えない)
- 保管の申出から5年以上経過している場合は使えないことがある(すでに交付された紙の証明書の原本は使える)
- 一覧図に記載されている情報を超える事項(記載された相続人にさらに相続が発生した、住所が変わった、遺産分割や相続放棄を伴うなど)は、別途それを証する書面が必要になることがある
5. 図とセットで出す書類
一覧図だけを持って行っても手続は進みません。不動産登記規則247条3項は、申出書に添付する書面として次のものを挙げています。
- 一覧図(1項各号の情報と作成年月日を記載し、申出人が記名し、作成をした申出人またはその代理人が記名したもの)
- 被相続人の出生時からの戸籍および除かれた戸籍の謄本または全部事項証明書(代襲相続がある場合は、被代襲者の分も含む)
- 被相続人の最後の住所を証する書面
- 相続人の戸籍の謄本、抄本または記載事項証明書
- 申出人が相続人の地位を相続により承継した者であるときは、それを証する書面
- 申出書に書いた申出人の氏名・住所と同一の氏名・住所が記載された、市町村長その他の公務員が職務上作成した証明書(原本と相違がない旨を記載した謄本を含む)
- 代理人によって申出をするときは、その代理人の権限を証する書面
加えて、前述のとおり一覧図に相続人の住所を書いた場合は、その住所を証する書面も必要です(同条4項)。
登記官は、上記2号から4号までの書面によって法定相続情報の内容を確認し、その内容と一覧図の記載内容が合致していることを確認したときに、認証文を付した写しを交付します(同条5項)。逆にいえば、戸籍から読み取れる内容と図の内容がずれていれば、そこで止まります。
なお、交付のときに返却されるのは2号から5号までの書面と4項の住所を証する書面です(同条6項)。6号の本人確認書類(運転免許証の両面コピー、マイナンバーカードの表面コピーなど)は、6項の返却の対象に挙げられておらず、法務局も返却しないと案内しています。住民票の写しの原本を別の手続に使いたい場合は、原本とコピー(原本と相違がない旨を記載し、申出人が記名したもの)を併せて提出するよう法務局が案内しています。
6. やり直しになりやすい例
登記官から不備を直すよう求められる典型的なパターンを整理します。
(1) 戸籍が出生時までそろっていない
3項2号は「出生時からの戸籍および除かれた戸籍」です。転籍・改製・婚姻で戸籍が移り変わっている場合、途中の1通が抜けていることに気づきにくく、差し戻しの原因になりやすい部分です。集め方は戸籍の広域交付と戸籍の収集で止まっている人向けの記事にまとめています。
(2) 代襲相続なのに被代襲者の戸籍がない
3項2号のかっこ書きは、代襲相続がある場合には被代襲者(先に亡くなったお子さんなど)の戸籍も含むとしています。孫が相続人になるケースでは、亡くなった子の出生から死亡までの戸籍が別途必要です。
(3) 相続開始「のとき」を基準にしていない
1項2号は「相続開始の時における同順位の相続人」です。相続放棄をした方についても、法務局は一覧図に記載されると案内しています(第1節参照)。放棄の事実は戸籍に表れないため、「放棄したから外そう」と判断して省くと、登記官が確認する戸籍の記載と合致しなくなります。
(4) 相続分や遺産分割の結論を書き込んでいる
前述のとおり、相続分や遺産分割の結論は1項各号の法定相続情報に含まれません。これを書き足した図が直ちに不備として扱われるとまでは条文にも法務局の案内にも書かれていませんが、法務局が公表している様式・記載例にはこれらの欄がありません。親切心で足さず、様式どおりに書いてください。
(5) 続柄を「子」とだけ書いてしまった
相続税の申告に使えないことがあります(第3節参照)。使う予定があるなら戸籍どおりに。
(6) 住所を書いたのに住所を証する書面を付けていない
247条4項の見落としです。
(7) 作成年月日がない/記名が漏れている
247条3項1号が求める要素です。図の完成度に目が行って、日付欄と記名欄が空のまま提出されることがあります。
(8) 戸除籍謄抄本を提出できないケースだった
法務局は、被相続人や相続人が日本国籍を有しないなど、戸除籍謄抄本を提出することができない場合はこの制度を利用できないとしています。相続人に外国籍の方がいるケースの進め方は外国籍になった相続人がいるときで扱っています。
(9) 不備を直さないまま放置してしまった
法務局は、登記官が不備を直すよう求めたにもかかわらず必要な書類や正しい一覧図が提出されない場合、預かっていた書類一切を申出人に返戻するとしています。さらに返戻に応じない場合は、申出日から3か月を経過した後に書類一切を廃棄するとされています。集めた戸籍が失われることになるので、連絡が来たら早めに対応してください。
ここで挙げた点をつぶしておけば通りやすくなりますが、一覧図の内容を確認して交付するかどうかを判断するのは登記官です。「この書き方なら必ず通る」と言い切れるものではないことを、あらかじめご了承ください。
7. 代理人に頼めるのは誰か
申出は自分でできますが、代理人に頼むこともできます。ただし、不動産登記規則247条2項2号は、委任による代理人を「その親族もしくは戸籍法10条の2第3項に掲げる者」に限定しています。
戸籍法10条の2第3項に挙げられているのは、次の資格者です(海事代理士を除き、それぞれの資格の法人も含まれます)。
- 弁護士
- 司法書士
- 土地家屋調査士
- 税理士
- 社会保険労務士
- 弁理士
- 海事代理士
- 行政書士
法務局も、委任による代理人については親族のほか、これら8つの資格者に依頼することができると案内しています。
一方、相続登記そのものの申請代理については、司法書士法3条1項1号が「登記又は供託に関する手続について代理すること」を司法書士の業務として定めています。一覧図の申出だけを親族に頼むのか、登記まで含めて依頼するのかで、頼める相手が変わってきます。
この記事は制度と書き方の一般的な説明です。申出はご本人でもできますし、代理人に依頼することもできます(代理人になれるのは申出人の親族と、戸籍法10条の2第3項に掲げる資格者に限られます)。ご自身のケースで相続人の範囲に迷いがあるときは、お近くの司法書士にご相談ください。
まとめ
法定相続情報一覧図は、不動産登記規則247条1項各号の項目を、戸籍の記載どおりに書く書面です。各号に含まれない相続分や遺産分割の結論は書きません。様式は法務局が組み合わせ別に公表しているので、自作するより公表されたひな型を選ぶほうが確実です。判断が必要になるのは「続柄を戸籍どおりに書くか」「住所を書くか」の2点で、どちらも後の手続で何に使うかによって決まります。
気をつけたいのは、図そのものの書き方より戸籍の抜けです。出生時からの戸籍がそろっているか、代襲相続があるなら被代襲者の分もあるかを先に確かめてから、図の作成に入ってください。
相続人の範囲に迷いがある場合、旧民法下の相続が混ざっている場合、数次相続が絡む場合は、図の書き方より前に相続人の確定という作業が必要になります。判断に迷ったら、お近くの司法書士にご相談ください。
よくある質問
Q. 費用はいくらかかりますか?
一覧図の保管の申出と写しの交付は、法務局が無料で行うものとされています。追加で必要になった場合の再交付についても、費用がかかるという定めや案内は見当たりません(登記手数料令にも、法定相続情報一覧図の写しの交付についての手数料の定めはありません)。かかるのは戸籍・除籍の謄本や住民票の写しを市区町村で取得する費用、郵送を選んだ場合の郵便料金、代理人に依頼した場合の報酬です。
Q. 期限はありますか。作らずに放置するとどうなりますか?
申出そのものに期限はありません。ただし、法務局の案内では、一覧図は申出日の翌年から起算して5年間保管され、この間は再交付を受けられるとされています。また、不備を直すよう求められたのに応じないと書類が返戻され、返戻に応じない場合は申出日から3か月経過後に廃棄されるとされています。なお、令和6年4月1日から相続登記の申請は義務化され、不動産を相続した相続人は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、所有権を取得したことを知った日から3年以内に申請しなければならないとされています(不動産登記法76条の2)。一覧図を作るかどうかとは別に、この期限は動きます。
Q. 自分で作れますか。どこに相談すればいいですか?
相続人が配偶者と子だけといった単純なケースなら、法務局公表の様式を使ってご自身で作ることは十分できます。一方、代襲相続や再代襲がある、旧民法下の相続が残っている、養子や父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹がいる、といったケースでは、そもそも誰が相続人になるかの判断が先に必要です。申出の代理を頼めるのは申出人の親族と戸籍法10条の2第3項に掲げる8つの資格者で、相続登記の申請代理は司法書士法3条1項1号が司法書士の業務として定めています。判断に迷う点があれば、お近くの司法書士にご相談ください。
【さらに深掘り】一覧図を相続登記の添付情報として使うときの実務
ご注意 以下は執筆時点(2026年7月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。
一覧図の写しは相続登記でどの添付情報の代わりになるのか
一覧図の写しは、相続登記で提供すべき添付情報のうち、相続があったことを証する公務員が職務上作成した情報の提供に代えることができる書面です(不動産登記規則37条の3第1項)。条文の作りは「一覧図の写しがその情報そのものである」ではなく、「その提供をもって、その情報の提供に代えることができる」というものです。
相続による所有権移転の登記(不動産登記法63条2項による単独申請)で提供すべき情報は、不動産登記令別表22項が次のように定めています。
相続又は法人の合併を証する市町村長、登記官その他の公務員が職務上作成した情報(公務員が職務上作成した情報がない場合にあっては、これに代わるべき情報)及びその他の登記原因を証する情報
一覧図の写しは、登記官が内容を確認したうえで認証文・作成年月日・職氏名・職印を付して交付する書面です(不動産登記規則247条5項)。そして同規則37条の3第1項が、相続人が登記の申請をする場合に一覧図の写し(または法定相続情報番号)を提供したときは、その提供をもって、相続があったことを証する市町村長その他の公務員が職務上作成した情報の提供に代えることができると定めています。ここが、戸除籍謄本の束に代えて相続登記に使える明文の根拠です。法務局も、一覧図の写しは戸除籍謄本等の束の代わりに相続登記に利用できると明記しています。
令和6年4月1日以降は、写しの原本を添付する代わりに法定相続情報番号を申請書に書く方法も選べます。法務局が示している記載方法は、申請書(申請情報)の添付情報欄に
登記原因証明情報(法定相続情報番号(○○○○-○○-○○○○○))
と記載する形です。オンライン申請・書面申請それぞれの記載例が公表されており、1つの申請で2つ以上の番号を使う場合は併記するとされています。数次相続のように被相続人ごとに一覧図を作った場合を想定した取扱いです。
ただし番号が使えるのは不動産登記の申請等手続のみで、保管の申出から5年以上経過している場合は使えないことがあります(この場合でも、すでに交付された紙の原本は使えるとされています)。規則37条の3も、番号による省略ができるのは登記官が法定相続情報を確認することができるときに限るとしています(同条1項ただし書・2項ただし書)。
一覧図が証明するのは「法定相続人が誰か」までである
別表22項の条文には、公務員が職務上作成した情報に続けて「及びその他の登記原因を証する情報」と書かれています。ここが実務上の分かれ目です。
法定相続情報は規則247条1項各号に限られ、相続分も遺産分割の結論も入りません。したがって、
- 遺産分割協議によって特定の相続人が取得する登記をするなら、一覧図の写しとは別に、その分割の内容を証する情報が必要です
- 相続放棄があった場合、放棄をした方は民法939条により「初めから相続人とならなかったものとみなす」とされますが、放棄の事実は戸籍に表れないため一覧図には相続人として記載されます(法務局も、相続放棄や遺産分割協議の結果として実際には相続分を有しない方も一覧図に記載されると案内しています)。放棄を前提に登記をするには、家庭裁判所の手続を経たことを示す書面を別途用意することになります。どの書面が必要かは管轄の法務局に確認してください
- 相続人の欠格事由(民法891条)も、戸籍の記載から判明する事情ではありません。この場合に一覧図の記載をどう扱うかは、条文にも法務局の案内にも示されていないため、ここで断定はできません。他方、推定相続人から廃除された方については、相続権がはく奪されているため一覧図に記載されない、と法務局が案内しています。欠格事由にあたる方がいるかもしれないケースでは、一覧図を作る前に管轄の登記所に確認してください
法定相続情報番号による添付省略についても、法務局は省略できるのは一覧図に記載されている情報に限られると明記しています。記載された相続人にさらに相続が発生している場合、住所が変わっている場合、遺産分割や相続放棄を伴う場合は、別途それらを証する書面が必要になることがあります。「番号ひとつで添付書類が消える」わけではありません。
申請書の記載と一覧図の記載がずれると補正になる
申請書の内容と登記原因証明情報の内容が合致しないときは、却下事由にあたります(不動産登記法25条8号)。同条ただし書により、補正できる不備を登記官が定めた期間内に補正すれば却下されないため、実務では補正で処理されますが、日程は確実に遅れます。
ずれが生じやすいのは次の3か所です。
(1) 持分
登記名義人となる者が2人以上のときは、それぞれの持分が申請情報の内容になります(不動産登記令3条9号)。一覧図には相続分を書かないので、持分は申請書側で示すことになります。一覧図から読み取れる相続人・続柄と、申請書の持分の計算が食い違っていれば、そこで疑義が生じます。
(2) 氏名・生年月日の表記
一覧図は戸籍の記載どおりに作るのが基本です。申請書側で常用漢字に置き換えたり、生年月日を写し間違えたりすると、「合致していない」という指摘の対象になります。
(3) 住所
一覧図に相続人の住所を記載している場合、番号を提供することで住所を証する書面の添付も省略できます(不動産登記規則37条の3第2項。番号を提供する場合は、同項ただし書により、登記官が法定相続情報を確認することができるときに限られます)。ただし法務局は、住所移転により一覧図に記載された住所と異なる住所で登記する場合や、別途売買等による所有権移転登記を併せて行う場合などでは、現在の住所を証する書面として住民票等の添付が必要となることがあるとしています。一覧図を作った後に転居があったケースは要注意です。
通数と申出人は、一覧図を作る前に決めておく
一覧図の使い勝手は、誰を申出人にして、何通交付を受けるかでほぼ決まります。
申出書には「交付を求める通数」を記載します(規則247条2項4号)。交付は無料です。そして再交付には、次の制約があります。
- 再交付を受けられるのは、当初の申出書に「申出人」として氏名を記載した方です。法務局は、申出人とならなかった他の相続人は再交付を受けることができないとしています
- 再交付の申出は、当初の申出をした登記所(一覧図が保管されている登記所)で受け付けるとされています
- 保存期間は5年間です。法務局は、申出日の翌年から起算して5年間保存され、この間は再交付を受けられると案内しています。他方、条文が定めているのは一覧図をつづり込む帳簿の保存期間で、こちらは作成の年の翌年から5年間です(不動産登記規則28条の2第6号)。法務局の案内は再交付を受けられる期間、条文は帳簿の保存期間を示したもので、起算点の表現が違います。期間の終わりがぎりぎりになりそうなときは、保管されている登記所に確認してください
つまり、相続人のうち誰の氏名を申出人として書くかによって、後から追加交付を受けられる人が決まります。相続する不動産が複数の管轄にまたがっていて、金融機関の手続も並行するようなケースでは、この設計を先にしておくと後戻りがありません。
戸除籍謄本を直接添付する方式と比べると、手間の差もはっきりします。戸籍の原本を他の手続に使い回すには、原本還付請求(規則55条1項)をし、原本と相違ない旨を記載した謄本を提出する必要があります(同条2項)。一覧図の写しを必要通数そろえておけば、この作業が要りません。
なお、ここまで挙げた点を満たしていても、申請の受否を判断するのは登記官です。個別の事案で追加の書面を求められることはありますので、判断に迷う点があれば、お近くの司法書士にご相談ください。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年7月・いずれも一次情報です)。
- 不動産登記規則 第28条の2・第37条の3・第55条・第247条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/417M60000010018
- 不動産登記法 第25条・第63条・第76条の2(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123
- 不動産登記令 第3条・別表22項(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/416CO0000000379
- 民法 第891条・第939条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- 戸籍法 第10条の2(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000224
- 司法書士法 第3条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000197
- 税理士法 第52条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC0000000237
- 登記手数料令 第2条・第3条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/324CO0000000140
- 「法定相続情報証明制度」について(法務局): https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000013.html
- 法定相続情報証明制度の具体的な手続について(法務局): https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000014.html
- 主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例(法務局): https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000015.html
- 法定相続情報一覧図の記載例(法定相続人が配偶者及び子である場合)(法務局・PDF): https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001397926.pdf
- 法定相続情報番号の提供による相続登記等における法定相続情報一覧図の写しの添付省略について(法務局): https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_00025.html