外国籍になった相続人がいるとき──宣誓供述書と必要書類

この記事の要点 相続人が日本国籍を失って外国籍になっていても、相続人としての地位は失われません。変わるのは、そろえる書類の中身です 日本人が外国籍を取得して日本国籍を失うことは「国籍喪失」(国籍法11条1項)または「国籍離脱」(同13条)と呼びます。「帰化」は逆方向、つまり外国人が日本国籍を取得する場合の言葉です(同4条) 在外公館(大使館・総領事館)の署名証明(サイン証明)・在留証明は、日本国籍を有する方向けの制度です。外国籍になった方は原則として発給の対象外とされています 印鑑証明書の代わりとして、現地の公証人などが認証した**宣誓供述書(せんせいきょうじゅつしょ/affidavit)**の提出を求められることがあります 求められる書類・記載事項は提出先によって違います。着手前に管轄の法務局へ事前照会するのが確実です 相続人が日本国籍を失って外国籍になっていても、その方が相続人であることは変わりません。 「相続人の一人が、何年も前に外国の国籍を取得していて、いまは日本国籍ではない」というケースで、まず押さえておきたいのがこの点です。手続きで変わるのは、本人であることや住所をどう証明するか、つまり「そろえる書類」の中身だけです。 ...

2026年7月31日 · ひぐらしさとし

法定相続情報一覧図の作り方──書式・記載例・やり直しになりやすい例

この記事の要点 一覧図に必ず書くのは「亡くなった方の氏名・生年月日・最後の住所・死亡年月日」と「相続開始のときの同順位の相続人の氏名・生年月日・続柄」(不動産登記規則247条1項1号・2号。このほか作成の年月日と記名が必要)。相続人の住所や被相続人の最後の本籍は、任意で記載できる項目です(ただし住民票の除票が市区町村で廃棄されていて最後の住所を確認できないときは、住所に代えて最後の本籍を記載します) 様式は法務局が公表しているひな型から、相続人の組み合わせに合うものを選べばよい(配偶者と子/子のみ/配偶者と父母/配偶者と兄弟姉妹/代襲相続/旧民法下の相続/養子を含む場合/列挙形式) 相続分や遺産分割の結論は記載事項に入っていないので、書き込まない やり直しになりやすいのは「戸籍が出生時までそろっていない」「続柄を『子』とだけ書いた」「住所を書いたのに住所を証する書面を付けていない」の3つ 制度そのもののしくみ・申出先・メリットは法定相続情報証明制度をやさしく解説にまとめています。この記事は「図を実際にどう書くか」の実践編です 法定相続情報一覧図は、書く項目が法令で決まっている書面です。家系図のように見えますが、自由に情報を足していい図ではありません。不動産登記規則247条1項各号に挙げられた項目を正確に書き、そこに挙げられていない事情(相続分や遺産分割の結論)は足さないのが基本です。相続人の住所や被相続人の最後の本籍、作成者の住所のように、法務局の様式・記載例が記載を認めている(または求めている)項目は別です。各号の項目を外すと、登記官から直すよう求められて出し直しになります。 ...

2026年7月31日 · ひぐらしさとし

山林を相続したら──90日以内の森林法の届出、管理の負担、そして手放すという選択肢

この記事の要点 山林を相続すると、期限の異なる2つの手続きが並行して走ることがある。相続登記は3年以内(不動産登記法第76条の2第1項)、森林法の届出は相続開始の日から90日以内(届出義務の根拠は森林法第10条の7の2第1項、90日という期限を定めているのは同法施行規則第7条第1項) 森林法の届出先は「市町村の長」。ただし対象は地域森林計画の対象となっている民有林に限られ、相続した山林がすべて届出の対象になるわけではない。まず市町村の林務担当窓口で対象かどうかを確認する 届出をせず、または虚偽の届出をすると10万円以下の過料(森林法第213条)。相続登記を怠った場合の10万円以下の過料(不動産登記法第164条第1項)とは別の制度 固定資産税は課税標準額が30万円未満なら課されないのが原則(地方税法第351条)。ただし「税金がかからない」ことと「管理の責任がなくなる」ことは別 手放す方法は国庫帰属・売却・自治体への寄付だが、いずれもハードルがある。特に境界が明らかでない土地は国庫帰属の申請そのものができない(相続土地国庫帰属法第2条第3項第5号) 親から山林を相続した、という相談は珍しくありません。ここで最初に押さえておきたいのは、山林の相続には、宅地の相続にはない別ルートの手続きが加わることがあるという点です。法務局への相続登記とは別に、市町村への届出が必要になる場合があり、しかもその期限は相続登記よりずっと短い90日です。 ...

2026年7月28日 · ひぐらしさとし

内縁の妻・事実婚パートナーに相続権はない──遺言・生命保険・生前贈与でできる備え

この記事の要点 内縁の妻・事実婚のパートナーには、法律上の相続権が一切ない(民法890条の「配偶者」は法律上の婚姻届を出した夫婦に限られる) 何も対策をしないまま亡くなると、財産は法律上の相続人(子・親・兄弟姉妹など)に渡り、内縁パートナーには当然には一切渡らない 遺言(遺贈)・死因贈与契約・生命保険の受取人指定・生前贈与など、生前にできる備えは複数ある どの方法にも一長一短があり、ほかの相続人の遺留分や税負担も考えたうえで選ぶ必要がある まずは今の家族関係を整理し、お近くの司法書士に相談して備えを検討するのが第一歩 長年連れ添っていても、婚姻届を出していない「内縁の妻・夫」「事実婚のパートナー」には、法律上の相続権がありません。これは、同居期間の長さや生計をともにしてきた実態とは関係なく決まるルールです。 ...

2026年7月23日 · ひぐらしさとし

孫に財産を渡す方法──贈与・遺贈・養子縁組の違いと注意点

この記事の要点 孫は、親(祖父母から見た子)が先に亡くなっている場合の代襲相続を除き、そもそも法定相続人ではない 孫に財産を渡す方法は主に「生前贈与」「遺言による遺贈」「養子縁組(相続人化)」の3つで、渡すタイミングや確実性、家族関係への影響がそれぞれ異なる とくに養子縁組は他の相続人の取り分にも影響する重い制度で、税務上も孫養子には固有の取り扱いがある 制度の違いはこの記事で押さえつつ、具体的な税額や「どれが得か」の判断は税理士に、手続きの進め方はお近くの司法書士にご相談ください 「かわいい孫に、生きているうちから何か残してやりたい」「子だけでなく孫にも財産を分けたい」。相続の相談では、こうした声をよく耳にします。ただ、孫は多くの場合、法律上の相続人ではありません。子が健在であれば、祖父母の相続が発生しても、孫は自動的には財産を受け取れないのです。 ...

2026年7月19日 · ひぐらしさとし

おひとりさまの相続準備──相続人がいないと財産はどこへ行く?

この記事の要点 相続人が一人もいなくても、財産がすぐ全額国庫に入るわけではない。まず特別縁故者への財産分与の余地があり、それでも残った分だけが最終的に国庫に帰属する(民法959条) 特別縁故者への分与は家庭裁判所の裁量判断であり、身近な人が自動的に財産を受け取れる保証はない 相続土地国庫帰属法(自分から土地を手放す制度)とは別の制度なので混同しない 生前に遺言書で渡したい相手・団体を指定しておけば、相続人不存在の手続きを経ずに希望どおり財産を渡せる 遺言執行者の指定、死後事務委任契約、任意後見契約を組み合わせると、判断能力の低下から死後の事務まで一貫して備えられる 生涯未婚率の上昇や少子化を背景に、「自分が亡くなったとき、法律上の相続人が一人もいない」という、いわゆるおひとりさまが増えています。配偶者も子もおらず、親や兄弟姉妹もすでに他界している、あるいは疎遠──そうした場合、亡くなった後の財産はどこへ行くのでしょうか。 ...

2026年7月19日 · ひぐらしさとし

負担付贈与とは──「介護してくれたら家をあげる」の落とし穴

この記事の要点 「介護してくれたら家をあげる」といった条件付きの贈与は「負担付贈与」と呼ばれ、もらう側にも一定の義務が生じる特殊な贈与である 約束した負担(介護など)が果たされない場合、贈与した側が契約を解除できる可能性がある 負担の内容が曖昧なまま口約束にしておくと、「ちゃんとやった/やっていない」で後々深刻なトラブルになりやすい 「介護をしてくれたら、この家をあげる」。家族の間でこうした約束が交わされることは珍しくありません。しかし、この約束は法律上「負担付贈与(ふたんつきぞうよ)」と呼ばれる特殊な贈与にあたり、通常の贈与とは異なるルールが適用されます。約束した介護が実現しなかった場合にどうなるのか、口約束のままにしておくとどんな危険があるのか、あらかじめ知っておくことが重要です。 ...

2026年7月18日 · ひぐらしさとし

子どものいない夫婦の相続──配偶者が全部もらえるわけではない

この記事の要点 子どもがいない夫婦では、配偶者だけでなく亡くなった人の親や兄弟姉妹が相続人になることがある 配偶者と親(直系尊属)が相続人のときは配偶者3分の2・親3分の1、配偶者と兄弟姉妹が相続人のときは配偶者4分の3・兄弟姉妹4分の1が目安の割合 配偶者にすべて残したいなら、生前の遺言が最も確実な備え 「子どもがいないから、財産は全部配偶者のものになる」——そう思い込んでいる方は少なくありません。ですが、これは正確ではありません。子どもがいない夫婦の一方が亡くなったとき、亡くなった人の親(存命であれば)や兄弟姉妹も、配偶者と一緒に相続人になる場合があります。 ...

2026年7月18日 · ひぐらしさとし

生前贈与と遺言、どちらで渡す?──確実さ・費用・撤回のしやすさ比較

この記事の要点 「今すぐ確実に渡したい」なら生前贈与、「亡くなるまで気持ちが変わる可能性がある」なら遺言が入口の目安 生前贈与は原則やり直しがきかず、遺言は何度でも書き直せる(ただし公正証書遺言は作り直しのたびに費用がかかる) 具体的な税額の有利不利は制度の性質だけでは決まらないため、最終判断は税理士へ確認したうえで進める 「子どもに財産を渡したい」と考えたとき、多くの方が最初に迷うのが「生前贈与にするか、遺言にするか」という選択です。どちらも「自分の財産を特定の人に渡す」という点は同じですが、法律上の位置づけはまったく違います。この記事では、税額の有利不利には立ち入らず、確実さ・撤回のしやすさ・手続きの重さ・費用感という「制度の性質」だけを比較します。具体的な税額の有利不利は税理士にご確認ください。 ...

2026年7月17日 · ひぐらしさとし

名義預金とは──子や孫名義の口座が「相続財産」と扱われるとき

この記事の要点 「名義預金」とは、口座の名義人(子や孫など)と、実際にお金を出して管理していた人(多くは親や祖父母)が食い違っている預金のことです。 名義が家族でも、実質的な持ち主が亡くなった方だと判断されれば、その預金は亡くなった方の財産(相続財産)としてあつかわれることがあります。 どの預金がこれに当たるかという課税上の判断や税額の計算は税理士の分野です。財産を洗い出して名義変更や遺産分割につなげる登記の手続きは、司法書士がお手伝いできます。 「亡くなった父が、孫の名前で通帳をつくって毎年お金を入れていた」「母が、私に知らせないまま私名義の口座で貯金していた」——相続が起きたあとに、こうした通帳が出てくることは珍しくありません。 ...

2026年7月15日 · ひぐらしさとし