社長個人と会社の貸し借り──役員貸付金・借入金は相続でどうなる?

この記事の要点 会社が社長個人に貸していたお金(役員貸付金)は、社長の「借金」=相続債務として相続人に引き継がれる 逆に、社長個人が会社に貸していたお金(役員借入金)は、社長の「財産」=相続財産になり、相続人が会社に対する債権者になる 貸し借りの有無と金額は、決算書の貸借対照表(役員貸付金・役員借入金などの科目)で確認できる 相殺・債権放棄・債務免除といった整理の方法は税務が絡むため、具体的な検討は税理士に相談する まず決算書で貸し借りの有無を確認すること。債務のほうが大きい場合は、相続放棄の期限(原則3か月)にも注意する 会社を経営していた方が亡くなったとき、見落とされやすいのが「社長個人と会社の間のお金の貸し借り」です。結論から言うと、会社が社長に貸していたお金(役員貸付金)は社長の相続債務として、社長が会社に貸していたお金(役員借入金)は社長の相続財産として、どちらも相続人に引き継がれます。貸した方向によって、相続人の立場は「会社にお金を返す側」と「会社からお金を返してもらう側」の正反対になります。 ...

2026年8月28日 · ひぐらしさとし

貸金庫の相続──相続人の一人だけでは開けられない理由

この記事の要点 貸金庫の開扉には、銀行実務上、原則として相続人全員の同意(または遺言執行者の権限)が求められる 中身が分からないと遺産分割協議書に書けないジレンマがあり、公証人の事実実験公正証書で内容を記録する方法がある 遺言書を貸金庫に保管していると、開扉に手間取り遺言の実行が遅れるおそれがある 亡くなった方が銀行の貸金庫(貸金庫室・セーフティボックスとも呼ばれます)を借りていた場合、相続人の一人が「自分だけで開けて中を確認したい」と思っても、それは基本的にできません。銀行は名義人の死亡を確認すると口座と同じように貸金庫の利用も止め、相続人全員の同意がそろうまで開扉に応じないのが一般的な取扱いだからです。 ...

2026年8月22日 · ひぐらしさとし

死亡届と死亡診断書のきほん──コピーを取っておくべき理由

ご家族が亡くなったとき、最初に行う役所の手続きが「死亡届」の提出です。結論から言うと、死亡届は「死亡の事実を知った日から7日以内」に提出しなければならず、提出の前に「死亡診断書のコピーを必ず取っておく」ことが、その後の手続きをスムーズに進めるポイントになります。 ...

2026年8月21日 · ひぐらしさとし

上場株式・投資信託の相続手続き──証券口座の移管と「準共有」の注意点

この記事の要点 亡くなった方の証券口座にある上場株式・投資信託は、遺産分割が確定するまで相続人全員の準共有という状態になります。 証券会社での相続手続きは、原則として相続人名義の証券口座に株式や投資信託そのものを移す移管が基本で、証券会社が代わりに売却して現金で分けてくれるわけではありません。 移管を受けるには、相続人自身が同じ証券会社(または別の証券会社)に口座を新たに開設する必要がある場合が多くなります。 単元未満株・端株は通常の市場では売買できず、発行会社や特別口座の管理機関への買取請求など、別ルートでの現金化になります。 遺産分割協議書の作成や、預貯金口座の解約とあわせて進めると効率的です。 本記事は執筆時点(2026年8月)の制度に基づく一般的な解説です。実際の必要書類や手続き方法は証券会社ごとに異なるため、詳細は各証券会社にご確認ください。 ...

2026年8月17日 · ひぐらしさとし

帰省したら親と話したい「実家の話」──相続の話し合いの始め方

この記事の要点 お盆で家族が顔をそろえるこの時期は、実家の将来を話し合う数少ない機会 いきなり「相続」と切り出さなくてよい。「実家、この先どうする?」くらいの軽い一言で十分 話し合いを先延ばしにすると、判断能力の低下や急な入院で身動きが取れなくなることがある 今回のゴールは結論を出すことではなく、「家族で話す場を持てたこと」でよい お盆で実家に帰省し、親やきょうだいと顔を合わせる機会があるなら、それは実家の将来や相続について話し合いを始める貴重なタイミングです。とはいえ「相続の話」と聞くと身構えてしまう方も多いはず。結論から言えば、最初から結論を出す必要はありません。まずは「実家、この先どうする?」というくらいの軽い一言から始めれば十分です。 ...

2026年8月10日 · ひぐらしさとし

相続の相談で、親の判断能力が気になるとき──家族が迷わず伝えるためにできること

この記事の要点 気になる様子に気づいたときに大切なのは「疑うこと」ではなく、気づいた事実をそのまま家族や相談先と共有すること 症状を決めつけたり診断したりせず、医学的な判断は医師など医療の専門家に委ねる 早めに気づきを共有しておくことが、本人の意思を大切にしながら相続の相談を進める力になる 相続の相談に行こうとしたとき、「最近、親の様子が前と少し違う気がする」と感じても、それを誰にどう伝えればいいか分からず、一人で抱え込んでしまう家族は少なくありません。こうした場面で大切なのは、様子の変化を「疑い」として詮索することではなく、気づいたことをそのまま家族や相談先と共有することです。 ...

2026年8月2日 · ひぐらしさとし

相続税の配偶者の税額軽減とは──「1億6,000万円」の意味と、税額ゼロでも申告が必要な理由

この記事の要点 相続税には「配偶者に対する相続税額の軽減」という制度があり、配偶者が取得した遺産の額が「配偶者の法定相続分相当額」と「1億6,000万円」のいずれか多い金額までであれば、配偶者に相続税はかからない(相続税法19条の2第1項) この軽減の適用を受けるには相続税の申告書(または更正の請求書)を提出することが法律上の要件であり(同条3項)、軽減の結果として納税額がゼロになる場合でも申告書の提出は省略できない 贈与税の「おしどり贈与」(贈与税の配偶者控除)とは、かかる税目も要件も別の制度なので混同しないよう注意が必要 相続税には、亡くなった方の配偶者が遺産を受け取るときに税負担を大きく軽くする「配偶者に対する相続税額の軽減」という制度があります(相続税法19条の2)。よく耳にする「1億6,000万円」という金額の意味を、正しく理解している方は意外と多くありません。 ...

2026年8月2日 · ひぐらしさとし

相続関係説明図の書き方──法定相続情報一覧図との違いと、戸籍を返してもらう仕組み

この記事の要点 相続関係説明図は、相続登記の申請書に添えて出す図です。これを出しておくと、一緒に提出した戸籍・除籍の原本を、登記の調査が終わった後に返してもらえると法務局が案内しています 法定相続情報一覧図は、法務局に申し出て登記官の認証文が付いた写しを無料で交付してもらう証明書です。戸籍の束そのものの代わりとして、他の法務局・金融機関・年金の手続にも使えます ひとことで言うと、相続関係説明図=戸籍を返してもらうための添え物/法定相続情報一覧図=戸籍の束の代わりになる証明です。似た形の図ですが、位置づけがまったく違います 相続関係説明図には決まった様式はなく、法務局が相続登記の申請書の記載例のなかで見本を公表しています(被相続人は住所・死亡年月日、相続人は住所・出生年月日を書く形) 一覧図そのものの書き方(様式・記載例・不備で戻される例)は法定相続情報一覧図の作り方にまとめています。**この記事は「2つの図の役割の違い」と「相続関係説明図の書き方」**を扱います 相続登記を自分で進めようとすると、「相続関係説明図」と「法定相続情報一覧図」という、名前も見た目も似た2つの図が出てきます。どちらも家系図のような形をしていて、亡くなった方と相続人を線でつないだものです。 ...

2026年8月1日 · ひぐらしさとし

外国籍になった相続人がいるとき──宣誓供述書と必要書類

この記事の要点 相続人が日本国籍を失って外国籍になっていても、相続人としての地位は失われません。変わるのは、そろえる書類の中身です 日本人が外国籍を取得して日本国籍を失うことは「国籍喪失」(国籍法11条1項)または「国籍離脱」(同13条)と呼びます。「帰化」は逆方向、つまり外国人が日本国籍を取得する場合の言葉です(同4条) 在外公館(大使館・総領事館)の署名証明(サイン証明)・在留証明は、日本国籍を有する方向けの制度です。外国籍になった方は原則として発給の対象外とされています 印鑑証明書の代わりとして、現地の公証人などが認証した**宣誓供述書(せんせいきょうじゅつしょ/affidavit)**の提出を求められることがあります 求められる書類・記載事項は提出先によって違います。着手前に管轄の法務局へ事前照会するのが確実です 相続人が日本国籍を失って外国籍になっていても、その方が相続人であることは変わりません。 「相続人の一人が、何年も前に外国の国籍を取得していて、いまは日本国籍ではない」というケースで、まず押さえておきたいのがこの点です。手続きで変わるのは、本人であることや住所をどう証明するか、つまり「そろえる書類」の中身だけです。 ...

2026年7月31日 · ひぐらしさとし

法定相続情報一覧図の作り方──書式・記載例・やり直しになりやすい例

この記事の要点 一覧図に必ず書くのは「亡くなった方の氏名・生年月日・最後の住所・死亡年月日」と「相続開始のときの同順位の相続人の氏名・生年月日・続柄」(不動産登記規則247条1項1号・2号。このほか作成の年月日と記名が必要)。相続人の住所や被相続人の最後の本籍は、任意で記載できる項目です(ただし住民票の除票が市区町村で廃棄されていて最後の住所を確認できないときは、住所に代えて最後の本籍を記載します) 様式は法務局が公表しているひな型から、相続人の組み合わせに合うものを選べばよい(配偶者と子/子のみ/配偶者と父母/配偶者と兄弟姉妹/代襲相続/旧民法下の相続/養子を含む場合/列挙形式) 相続分や遺産分割の結論は記載事項に入っていないので、書き込まない やり直しになりやすいのは「戸籍が出生時までそろっていない」「続柄を『子』とだけ書いた」「住所を書いたのに住所を証する書面を付けていない」の3つ 制度そのもののしくみ・申出先・メリットは法定相続情報証明制度をやさしく解説にまとめています。この記事は「図を実際にどう書くか」の実践編です 法定相続情報一覧図は、書く項目が法令で決まっている書面です。家系図のように見えますが、自由に情報を足していい図ではありません。不動産登記規則247条1項各号に挙げられた項目を正確に書き、そこに挙げられていない事情(相続分や遺産分割の結論)は足さないのが基本です。相続人の住所や被相続人の最後の本籍、作成者の住所のように、法務局の様式・記載例が記載を認めている(または求めている)項目は別です。各号の項目を外すと、登記官から直すよう求められて出し直しになります。 ...

2026年7月31日 · ひぐらしさとし