この記事の要点

  • 後見の登記に関する証明書は2種類。登記の記録が「ある」ことを示すのが登記事項証明書、「ない」ことを示すのが登記されていないことの証明書で、根拠となる条文は同じ
  • 請求できる人は法律で限定されている。本人、本人の配偶者や四親等内の親族、後見人・後見監督人など、立場ごとに請求できる登記記録が決まっており、誰でも他人の分を取れる制度ではない
  • 各種の資格・営業許可などの場面で提出を求められることがあるが、求められる書類は制度改正で変わっているため、提出先の最新の案内で確認が必要
  • 令和8年(2026年)6月24日公布の改正法により、後見・保佐を廃止して補助に一元化する見直しが予定されており、後見登記もその対象に含まれる。ただし施行日は政令待ちで、確認時点ではまだ定まっていない

「後見の登記がされていない証明書を出してください」と言われて、はじめてこの書類の存在を知った、という方は少なくありません。名前が長いうえに、よく似た名前の「登記事項証明書」もあるため、どちらを取ればよいのか迷いやすい書類です。本記事は、執筆時点(2026年08月)の制度に基づく一般的な解説です。

後見の登記は、法務局のファイルに記録される

成年後見は、戸籍に記載される制度ではありません。家庭裁判所が後見等の開始の審判をすると、裁判所書記官が法務局(登記所)に対して登記を嘱託し(家事事件手続法116条1号)、法務局が管理する「後見登記等ファイル」に記録されます。

記録される内容は、後見登記等に関する法律4条1項に列挙されています。後見・保佐・補助のどれか(種別)、審判をした裁判所と確定の年月日、本人の氏名・生年月日・住所・本籍、成年後見人等の氏名または名称と住所、監督人が選任されたときはその氏名等、保佐人・補助人に代理権が付与されたときはその代理権の範囲、登記番号などです。「誰が、どこまでの権限を持っているか」がわかる仕組みになっています。

法定後見の3つの類型そのものについては、法定後見の3類型『後見・保佐・補助』はどう違う?をご覧ください。

証明書が2種類あるのは、記録が「ある」ときと「ない」とき

同法10条1項は、この後見登記等ファイルに「記録されている事項(記録がないときは、その旨)を証明した書面」を登記事項証明書と定めています。つまり、記録がある場合とない場合の両方が、同じ条文でカバーされています。

その上で、法務局の実務では次のように呼び分けられ、申請書の様式も手数料も別になっています。

  • 登記事項証明書……後見等が登記されている場合に、後見人等の権限や任意後見契約の内容など、登記されている情報を証明するもの
  • 登記されていないことの証明書……成年被後見人・被保佐人・被補助人とする記録がないこと、任意後見契約の本人とする記録がないことを証明するもの

手数料は、後見登記等に関する法律11条1項により「政令で定める額」とされており、その政令が登記手数料令(昭和24年政令第140号)です。同令2条10項は、後見登記等ファイル・閉鎖登記ファイルに係る登記事項証明書を1通550円(1通の枚数が50枚を超えるものは、その超える枚数50枚までごとに100円を加算)、記録がない旨を証明したもの、すなわち登記されていないことの証明書を1通300円と定めています(確認日:2026年08月07日)。法務局が案内している額もこれと一致しています。納付は収入印紙によることとされています(後見登記等に関する法律11条2項)。申請先は、窓口であれば東京法務局民事行政部後見登録課または全国の法務局・地方法務局(本局)の戸籍課で、支局・出張所では取り扱われていません。郵送の場合は東京法務局民事行政部後見登録課です。オンラインによる送付請求の制度も設けられていますが、この場合は手数料の額も納付の方法も窓口・郵送の場合とは異なりますので、実際に請求されるときは法務局の案内でご確認ください。

なお、任意後見契約も後見登記の対象です。契約の形式によって登記のタイミングや効力の発生時期が異なりますので、任意後見の3つの形式もあわせてご確認ください。

「何人も」で始まるが、誰でも取れるわけではない

ここが最も誤解されやすい点です。同法10条1項は「何人も、登記官に対し、次に掲げる登記記録について……交付を請求することができる」という書き出しですが、続く各号で請求できる登記記録の範囲そのものが限定されています。限定されているのは請求できる人ではなく、請求の対象となる登記記録のほうです。閉鎖登記記録について定める同条3項も「何人も、登記官に対し、次に掲げる閉鎖登記記録について……」という同じ書き出しで、各号はいずれも「自己が……であった閉鎖登記記録」となっており、構造は共通しています。「何人も」という3文字だけを取り出して「誰でも取れる」と読むのは誤りです。

1項で請求できるのは、たとえば次のような登記記録です。

  • 自己を成年被後見人等または任意後見契約の本人とする登記記録(1号)
  • 自己を成年後見人等、成年後見監督人等、任意後見受任者、任意後見人または任意後見監督人とする登記記録(2号。退任した者を含む)
  • 自己の配偶者または四親等内の親族を成年被後見人等または任意後見契約の本人とする登記記録(3号)

さらに2項では、未成年後見人・未成年後見監督人、成年後見人等・成年後見監督人等、登記された任意後見契約の任意後見受任者について、それぞれ請求できる登記記録が個別に定められています。4項では相続人その他の承継人が被相続人等の閉鎖登記記録について、5項では国または地方公共団体の職員が職務上必要とする場合について、それぞれ規定されています。

つまり、1項から4項までについては、「自分に関するもの」「自分が後見人等として関わっているもの」「自分の配偶者・四親等内の親族に関するもの」「自分が相続その他により承継した方に関するもの」といったつながりが条文上必要で、これにあたらない人が他人の登記記録を請求することはできません。国または地方公共団体の職員が職務上必要とする場合(5項)は、これとは別に定められた場合です。代理人が申請する場合は、その権限を証する書面(本人が作成した委任状等)の添付が求められます。

どのような場面で提出を求められるか

東京法務局の案内では、各種の資格や営業許可などに関する機関等から証明書の提出を求められた場合の手続として説明されています。実際に、こうした申請の添付書類として求められる場面があります。

ただし、この点は制度改正の影響を受けています。かつては、成年被後見人・被保佐人であることを理由に資格・職種・業務等から一律に排除する規定(欠格条項)を置く法律が多数ありましたが、令和元年6月14日に公布された「成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律」(令和元年法律第37号)により、こうした規定の多くは、心身の故障の状況を個別的・実質的に審査して制度ごとに必要な能力の有無を判断する規定へと改められました。

そのため、「後見の登記がないこと」と「その資格や許可の要件を満たすこと」は、現在では単純に結びつくものではありません。どの手続でどの書類が必要かは、制度ごとに、また改正によっても変わりますので、提出先が案内している最新の必要書類をご確認ください

あわせて申し添えると、法務局に証明書の交付を請求する場面と、その証明書を添えて許認可を申請する場面とは、担い手が異なります。許認可の申請手続そのものについては、行政書士または許可を出す役所の窓口にお尋ねください。この記事は、証明書の種類と請求できる人の範囲を整理するもので、個別の許認可の要件や「その申請が通るかどうか」の判断には立ち入りません。

制度改正の動きにご注意ください

成年後見制度は、大きな改正が予定されています。令和8年(2026年)6月17日に「民法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第45号)と、「民法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(令和8年法律第46号。以下「整備法」といいます)が成立し、同月24日にいずれも公布されました。法務省の説明によれば、前者は成年後見制度について「後見及び保佐の制度を廃止して補助の制度に一元化」する内容であり、整備法は、後見の制度の廃止に伴って成年被後見人を対象とする規定を削除するなど、関係法律について所要の整備をするものとされています。

本記事の主題である後見の登記も、この見直しの対象に含まれています。法務省民事局が公表している改正法の概要資料には、主要な改正事項の末尾に「その他、任意後見契約、後見登記、家事事件手続、法務局における自筆証書遺言書の保管に係る手続等の見直しを含む。」との注記があります(確認日:2026年08月07日)。後見・保佐が廃止されて補助に一元化されれば、後見登記等ファイルに記録される種別や、証明書に表示される内容も変わることが見込まれます。もっとも、証明書の種類・請求できる人の範囲・手数料が具体的にどう変わるかは、施行に向けて整備される政省令の内容にもよるため、現時点では確かなことを申し上げられません。

そして、成年後見制度の見直しに関する部分の施行日は「公布の日から起算して2年6月を超えない範囲内において政令で定める日」とされており、2026年8月の確認時点ではまだ定まっていません。施行までは本記事で説明した現行の取扱いのままです。実際に証明書を取得されるときは、その時点での法務局の案内をご確認ください。

まとめ

後見の登記に関する証明書は、記録が「ある」ことを示す登記事項証明書と、「ない」ことを示す登記されていないことの証明書の2種類で、いずれも後見登記等に関する法律10条を根拠とします。請求できる人は、本人・その配偶者・四親等内の親族・後見人等など、立場ごとに条文で限定されています。提出を求められる場面は制度改正で変わっているため、必要な書類は提出先の案内で確かめるのが確実です。

成年後見制度そのものの利用や、後見に関する手続でお困りのときは、お住まいの地域の司法書士会、または公益社団法人 成年後見センター・リーガルサポートの相談窓口にお問い合わせください。家庭裁判所の手続については、申立てを行う家庭裁判所の窓口でも案内を受けられます。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年8月・いずれも一次情報です)。

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