この記事の要点
- 訴状には「当事者及び法定代理人」「請求の趣旨及び原因」を記載しなければならず(民事訴訟法134条2項)、答弁書はこれに対する被告の言い分を記載する準備書面です(同161条)
- 答弁書を提出しておけば、期日に出頭しなくても、裁判所はその内容を陳述したものとみなして手続きを進めることができるとされています(同158条)。簡易裁判所の訴訟手続では、この扱いが続行の期日にも準用されます(同277条)
- 答弁書も出さず、期日にも出頭しないと、原告の主張事実を争わなかったものとみなされ(自白の擬制、同159条1項・3項)、原告の請求どおりの判決につながりやすくなります
これまでの記事では、お金を貸した側・請求する側の視点で手続きを整理してきました。今回は逆に、簡易裁判所から訴状が届いた側(被告)が最初にすべきことに絞って、答弁書の位置づけを整理します。
これは執筆時点(2026年8月)の制度に基づく一般的な解説です。個別の事案でどのような対応が有利かの判断はここでは扱いません。
訴状には何が書いてあるか
訴えの提起は、訴状を裁判所に提出してしなければなりません(民事訴訟法134条1項)。訴状には、(1)当事者及び法定代理人、(2)請求の趣旨及び原因、を記載しなければならないと定められています(同条2項)。訴状が届いたら、まずこの2点、つまり「誰が」「いくらを」「何を理由に」求めているのかを確認するのが出発点です。
この記載に不備があるときは、まず裁判長が相当の期間を定めて原告に補正を命じ、補正されなければ訴状は却下されます(同137条1項・2項)。訴え提起の手数料が納付されていない場合も、同様に期間を定めた納付命令を経る手続きが置かれています(同137条の2)。手元に届く訴状は、こうした形式面のチェックを経たものです。もっとも、裁判所がこの段階で確認しているのは記載事項がそろっているかどうかであって、そこに書かれた事実関係の当否ではありません。請求が認められるかどうかは、これからの審理で判断されます。
答弁書とは、被告が最初に出す準備書面
口頭弁論は書面で準備しなければならず、この書面を準備書面といいます(同161条1項)。準備書面には、(1)攻撃または防御の方法、(2)相手方の請求及び攻撃または防御の方法に対する陳述、を記載します(同条2項)。被告が最初に提出する準備書面が、実務上「答弁書」と呼ばれるものです。
答弁書を出す意味は、同158条にはっきり表れています。原告または被告が最初にすべき口頭弁論の期日に出頭せず、または出頭しても本案の弁論をしないときは、裁判所は、その者が提出した訴状または答弁書その他の準備書面に記載した事項を陳述したものとみなし、出頭した相手方に弁論をさせることができる、と定めているのです。
つまり、答弁書を提出しておけば、当日出頭しなくてもその記載内容を「陳述した」ものとして扱い、手続きを進めることができる仕組みが置かれています。条文の書き方は「裁判所は……できる」というものですので、常に必ずそう扱われると決まっているわけではありませんが、答弁書を出しておくことに意味がある根拠は、ここにあります。
なお、158条が定めているのは「最初にすべき口頭弁論の期日」についての扱いです。ただし簡易裁判所の訴訟手続については、この158条を続行の期日にも準用する規定が別に置かれています(同277条)。訴状が簡易裁判所から届いた場合、この扱いは第一回の期日だけの話ではない、ということになります。
答弁書も出さず、期日にも出なかったらどうなるか
より重い結果につながるのが自白の擬制です。当事者が口頭弁論において相手方の主張した事実を争うことを明らかにしない場合、その事実を自白したものとみなされます(同159条1項本文)。ただし、弁論の全趣旨から争ったものと認めるべきときは、この限りではありません(同項ただし書)。相手方の主張した事実を知らない旨を陳述した場合は、争ったものと推定されます(同条2項)。
そして、この1項の規定は、当事者が口頭弁論の期日に出頭しない場合にも準用されます(同条3項本文)。答弁書も出さず、期日にも出頭しないと、原告が主張した事実を争わなかったものとして扱われ、原告の請求どおりの判決(いわゆる欠席判決)につながりやすくなります。
もっとも、3項には例外があります。その当事者が「公示送達による呼出し」を受けたものであるときは、この自白の擬制は働きません(同項ただし書)。公示送達は、住所が分からないなどの理由で、訴状や呼出状が実際には本人の手元に届いていない場合に用いられる送達方法です。実際に書類を目にする機会がなかった当事者にまで、争わなかったとみなす扱いを及ぼさないための例外と理解できます。
なお、自白の擬制が及ぶのは「事実」の部分です。争いのないものとして扱われた事実を前提に、法律上その請求が認められるかどうかは、裁判所が判断します。欠席すれば自動的に請求が認められる、という仕組みではありません。とはいえ、被告の側の言い分が審理に上がらないまま手続きが進むことに変わりはありませんので、答弁書は期限までに出しておくことが基本になります。
認定司法書士に相談できる範囲
答弁書の作成・提出を含めた訴訟対応は、訴訟の目的の価額が140万円を超えないものであれば、認定を受けた司法書士に代理を依頼できます(司法書士法3条1項6号イ)。訴訟の目的の価額(訴額)がこの範囲に入るかどうかの数え方は、認定司法書士に頼める「140万円以下」とは何の金額?|訴額の数え方の基礎で整理していますので、あわせてご確認ください。
まとめ
訴状が届いたら、まず記載された請求の趣旨・原因(民事訴訟法134条2項)を確認し、答弁書(準備書面、同161条)を準備します。答弁書を提出しておけば、欠席してもその内容を陳述したものとみなして手続きを進めることができるとされていますが(同158条。簡易裁判所では続行の期日にも準用、同277条)、答弁書も出さず期日にも出頭しないと、相手方の主張を争わなかったものとして扱われ(同159条1項・3項)、原告の請求どおりの判決につながりやすくなります(公示送達による呼出しを受けていた場合を除く、同項ただし書)。
訴状を受け取ったら放置せず、お早めにお近くの司法書士にご相談ください。認定を受けた司法書士が代理できるのは140万円を超えない請求に限られますので、140万円を超える請求は弁護士にご相談ください。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年08月・いずれも一次情報です)。
- 民事訴訟法 第134条(訴え提起の方式)・第137条(裁判長の訴状審査権)・第137条の2(訴えの提起の手数料の納付がない場合の訴状却下)・第158条(訴状等の陳述の擬制)・第159条(自白の擬制)・第161条(準備書面)・第277条(続行期日における陳述の擬制)(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/408AC0000000109
- 司法書士法 第3条第1項第6号イ・第2項(簡裁訴訟代理等関係業務)(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC1000000197
- 裁判所法 第33条第1項第1号(「140万円を超えない請求」の根拠)(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000059