この記事の要点

  • 不動産の登記は、種類の名前から探すより「いまどんな場面か」から探すと迷いにくくなります。この記事では、買う・借りる・返し終わる・相続する・贈与や財産分与・手放す・住所や氏名が変わった、の場面別に並べています
  • 建物の新築・取壊し、土地の地目変更・分筆など、土地や建物の形や使い方を記録する「表示に関する登記」は土地家屋調査士の業務です。名義や抵当権を記録する「権利に関する登記」は司法書士の分野です(どちらも、所有者本人が自分で申請することもできます)
  • 申請の期限があるのは主に、相続登記(原則3年以内)、住所・氏名の変更登記(2年以内)、新築・取壊しなどの表示に関する登記(1か月以内)です
  • 自分の場面を下の一覧で見つけたら、リンク先の詳しい記事へ進んでください

不動産の登記にはいくつもの種類がありますが、ふだんの暮らしで出てくる場面はある程度決まっています。この記事は、不動産登記に関する解説記事をまとめて案内する場面別の目次です。制度のしくみはそれぞれの記事にゆずり、ここでは「どの場面で、どの登記が出てきて、どの記事を読めばよいか」だけを並べます。本記事は、執筆時点(2026年09月)の法令に基づく一般的な解説です。

最初に、次の2本をあわせて読むと全体がつかみやすくなります。

また、この記事が「どの場面で何の登記が出てくるか」という軸で整理しているのに対し、「その登記は自分でできるか、専門家に頼んだほうがよいか」という軸で整理したのが自分でできる登記・専門家に頼んだほうがいい登記──難易度マップです。場面がわかったら、難易度マップで取り組み方の目安を確かめると判断しやすくなります。

場面別の一覧

場面 主に出てくる登記 登記簿の載る場所 申請を頼むときの相談先
買う(売買) 所有権移転登記 権利部(甲区) 司法書士
家を新築する 建物の表題登記 → 所有権保存登記 表題部 → 権利部(甲区) 表題登記は土地家屋調査士、保存登記は司法書士
借りる(住宅ローン) 抵当権設定登記 権利部(乙区) 司法書士
返し終わる(ローン完済) 抵当権抹消登記 権利部(乙区) 司法書士
相続する 相続による所有権移転登記(相続登記)・相続人申告登記 権利部(甲区) 司法書士
贈与・財産分与 贈与・財産分与による所有権移転登記 権利部(甲区) 司法書士(税金は税理士)
手放す(建物を取り壊す) 建物の滅失登記 表題部 土地家屋調査士
住所・氏名が変わった 所有権登記名義人の住所・氏名の変更登記 権利部(甲区) 司法書士

登記簿(登記事項証明書)が「表題部」「権利部(甲区・乙区)」に分かれていることや、それぞれに何が書かれているかは、登記簿(登記事項証明書)の見方──表題部・甲区・乙区は何が書いてある?で説明しています。

なお、2026年10月5日からは、売買・相続・贈与・財産分与・新築後の保存登記などで新たに所有者として登記される人(その登記の申請人になる人)について、登記を申請するときに国籍(外国籍の方は国籍または地域)もあわせて法務局に申し出ることになります(不動産登記規則の改正)。国籍を示す書類として、日本国籍の方なら本籍の記載のある住民票の写しなどを添えるのが原則です。申し出た国籍は法務局の内部で管理される情報で、登記事項証明書などで公開されるものではありません。

場面別の目次

1. 買う(売買・新築)

家や土地を買ったときは、売主から買主へ名義を移す「所有権移転登記」をします。代金の支払いと同じ日に登記の手続きを進めるのが一般的です。

家を新築したときは、まず建物の形や広さを記録する「建物の表題登記」(土地家屋調査士の業務)をし、そのあとに最初の名義を記録する「所有権保存登記」をします。

2. 借りる(住宅ローン・抵当権設定)

住宅ローンを借りるときは、金融機関が家と土地を担保に取る「抵当権設定登記」をします。登記簿では権利部の乙区に載ります。

3. 返し終わる(ローン完済・抵当権抹消)

住宅ローンを完済しても、登記簿の抵当権は自動では消えません。金融機関から届く書類を使って「抵当権抹消登記」を申請します。

4. 相続する

亡くなった方の名義の不動産を相続人の名義に変えるのが「相続登記」です。相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請する義務があります。

登記以外の相続手続き(相続人の確認、遺産の分け方、相続放棄など)も含めた全体の流れは、相続手続きの全体マップ──「何から始めるか」をこの1本から辿れる総目次にまとめています。

5. 贈与・財産分与

生前に家や土地を子や孫に贈るときや、離婚で家の名義を変えるときも、所有権移転登記をします。どちらも登記の前に税金の検討が欠かせないため、税額の計算は税理士への相談が前提になります。

6. 手放す(売却・国庫帰属・建物の取壊し)

相続した不動産を手放す方法は、売る、国に引き取ってもらう、建物を壊す、などに分かれます。

建物を取り壊したときの「建物の滅失登記」は、表示に関する登記で、土地家屋調査士の業務です。滅失の日から1か月以内に申請する義務があります。所有者本人が自分で申請することもできます。

7. 住所・氏名が変わった

引っ越しや結婚などで、登記簿に載っている所有者の住所・氏名が変わったときの登記です。2026年4月1日から、変更の日から2年以内に申請する義務があります。

8. 土地・建物の形や使い方が変わった

増築した、畑を宅地にした、土地を分けたい、登記簿の面積が実測と違う──こうした場面の登記(表題部の変更・地目変更・分筆・地積更正など)は、表示に関する登記で、土地家屋調査士の業務です。場面ごとの登記の名前と期限は、冒頭で紹介した表題登記・表題部の変更は土地家屋調査士へ──権利の登記との分担マップで一覧にしています。

まとめ

不動産の登記は、「買う・借りる・返し終わる・相続する・贈与や財産分与・手放す・住所や氏名が変わった」という場面ごとに、出てくる登記がほぼ決まっています。まず上の一覧で自分の場面を見つけ、リンク先の記事で詳しい中身を確かめてください。名義や抵当権などの権利に関する登記は司法書士、建物の新築・取壊しや土地の地目変更・分筆などの表示に関する登記は土地家屋調査士が相談先です。自分の場面でどの登記が必要か判断に迷うときは、お近くの司法書士(表示に関する登記は土地家屋調査士)にご相談ください。

よくある質問

Q. 不動産の登記にはどのくらい費用がかかりますか?

主に、国に納める登録免許税、専門家に頼む場合の報酬、戸籍や証明書などの取得費がかかります。登録免許税は登記の種類で計算方法が違い、住所・氏名の変更登記や抵当権抹消登記は原則として不動産1個につき1,000円、名義を移す所有権移転登記は固定資産税評価額などに税率をかけて計算します。税率は相続・贈与・売買などの原因ごとに違うため、名義変更4類型の記事で比べてみてください。報酬は依頼先ごとに異なるので、依頼する前に見積もりを取るのが確実です。

Q. 登記に期限はありますか?放っておくとどうなりますか?

相続登記は相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内(正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象)、住所・氏名の変更登記は変更の日から2年以内(同じく5万円以下の過料の対象)、建物の新築・取壊しや地目変更などの表示に関する登記は原則1か月以内(同じく10万円以下の過料の対象)に申請する義務があります。義務化の前に起きた相続や住所変更にも、経過措置として期限が設けられています。売買・贈与・抵当権抹消には申請期限の定めはありませんが、放置すると売却や次の相続のときに手続きが複雑になりやすくなります。

Q. 自分で登記できますか?どこに相談すればいいですか?

登記は、制度上は本人が自分で申請できます。ただ、取り組みやすさは登記の種類や事情によって大きく違うので、難易度マップで目安を確かめてください。自分で進める場合は、法務局の「登記手続案内」(予約制のところが多い)で手続きの案内を受けられます。人に頼む場合、名義や抵当権などの権利に関する登記は司法書士、表示に関する登記は土地家屋調査士、贈与税などの税金は税理士、相続人どうしなどで争いになっているときは弁護士が相談先です。


【さらに深掘り】場面をまたぐ「前提となる登記」──表題部と権利部のつながり、住所変更登記の位置づけ

ご注意 以下は執筆時点(2026年09月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。

不動産登記実務の観点

本文の一覧は場面ごとに登記を並べましたが、実際の申請では「目的の登記をする前に、別の登記を先に済ませておく必要がある」という場面がしばしば生じます。ここでは、場面をまたいで出てくる代表的な2つの論点を整理します。

1. 表題部所有者と所有権保存登記の申請適格

登記記録のうち、所有権の登記がない不動産の表題部に所有者として記録されている者を「表題部所有者」といいます(不動産登記法2条10号)。新築した建物や、表題登記のない建物(区分建物以外)の所有権を取得した者は、取得の日から1か月以内に表題登記を申請しなければなりません(同法47条1項)。この表題登記は表示に関する登記であり、申請の代理は土地家屋調査士の業務です。

権利部の最初の登記である所有権保存登記は、誰でも申請できるわけではありません。申請できるのは、次の者に限られています(同法74条1項)。

  • 表題部所有者またはその相続人その他の一般承継人(1号)
  • 所有権を有することが確定判決によって確認された者(2号)
  • 収用によって所有権を取得した者(3号)

区分建物(マンションの一室など)については、表題部所有者から所有権を取得した者も保存登記を申請できます。敷地権付き区分建物であれば、敷地権の登記名義人の承諾が必要です(同条2項)。

一方、表題部所有者やその持分の変更は、所有権保存登記をしたうえで所有権移転登記の手続によるのでなければ登記できないとされています(同法32条)。このため、表題登記だけがされていて保存登記のない建物(区分建物以外)を買い受けた場合、買主は表題部所有者でもその一般承継人でもなく(74条1項1号に当たらない)、表題部所有者を買主に変える登記もできない(32条)ので、原則として直接自分の名義で保存登記をすることはできません(所有権を有することが確定判決によって確認された場合〔同項2号〕は別です)。表題部所有者(売主)の名義でいったん保存登記をし、そのうえで売主から買主への所有権移転登記をする、という順序になります。これに対し、表題部所有者が亡くなっているときは、相続人が1号の「相続人」として保存登記を申請できます。

また、表題登記そのものがない建物(いわゆる未登記建物)は、権利に関する登記をする前提として、原則としてまず表題登記(土地家屋調査士の業務)が必要です。相続財産や売買の対象に未登記建物が含まれていないかは、固定資産税の課税明細書と登記記録を突き合わせて確かめるのが基本です。

2. 前提としての住所・氏名変更登記──登記の種類で扱いが分かれる

売買による所有権移転登記や抵当権設定登記は、登記権利者と登記義務者が共同で申請する登記です。このとき、申請情報に記載した登記義務者(売買なら売主、抵当権設定なら所有者)の氏名・住所が登記記録と合致しないことは、申請の却下事由とされています(不動産登記法25条7号)。そのため、売主や所有者が登記記録の住所から引っ越しているときは、目的の登記の前提として、所有権登記名義人の住所変更登記をあわせて申請するのが基本です。

これに対し、相続による所有権移転登記は、登記権利者(相続人)が単独で申請できる登記です(同法63条2項)。登記義務者のいない申請であり、25条7号が挙げる場面にも含まれていないため、亡くなった方の登記記録上の住所が最後の住所と異なっていても、そのこと自体は同号の却下事由に当たりません。そのため、前提として亡くなった方の住所変更登記をする必要はないと扱われており、代わりに、登記記録上の住所と本籍の記載がある住民票の除票や戸籍の附票を添えて、登記記録上の人物と亡くなった方が同一人であることを示します。法務局が公表している相続登記の必要書類一覧でも、亡くなった方の除票または戸籍の附票(登記簿上の住所と本籍地の記載のあるもの)が、登記上の住所と本籍が異なる場合に必要な書類として挙げられています。

なお、2026年4月1日からは、所有権の登記名義人の氏名・住所に変更があったときは、変更の日から2年以内に変更登記を申請する義務があります(同法76条の5)。売却や借入れの直前に前提登記として慌てて申請するのではなく、変更が生じた時点で申請しておくと、どの場面の登記でも前提登記の手間が生じにくくなります。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年09月・いずれも一次情報です)。

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