この記事の要点
- 建物を新築した・増築した・取り壊した、土地の地目が変わった・土地を分けたなど、土地や建物の「物理的な状態」が変わる場面の登記(表示に関する登記)は、土地家屋調査士が申請代理を担う分野です
- 新築・増築・取壊し・地目変更などには、1か月以内に申請する義務があります(新築は所有権を取得した日から:不動産登記法47条1項。増築・取壊し・地目変更は変更や滅失があった日から:同法51条1項・57条・37条1項)。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になり得ます(同法164条1項)
- 名義を記録する「権利の登記」(所有権保存・所有権移転・抵当権設定など)は司法書士の分野。新築や分筆のあとに権利の登記が続く場面では、両方の資格者が連携して進めることが多くあります
- 表示に関する登記も、所有者本人が自分で申請することはできます
- 下の一覧表で自分の場面を探し、詳しくはそれぞれの記事へ進んでください
家を建てた、古い家を壊した、畑を駐車場にした──こうした場面で「登記が必要らしいけれど、誰に頼めばいいのか」と迷ったときは、まず土地家屋調査士、名義の話が絡むところは司法書士と覚えておくと整理しやすくなります。
登記記録が「表題部」と「権利部」に分かれ、担当する専門家も分かれているという基本の仕組みは、土地家屋調査士と司法書士──同じ『登記』でも表題部と権利部で分かれるで説明しています。この記事では仕組みの説明は繰り返さず、場面ごとに「どの登記を・誰に頼むか」を一覧にします。
場面別の分担マップ
| 場面 | 必要になる主な登記(登記記録の欄) | 申請の義務・期限 | 申請の代理を頼む先 | 前後に関わることがある手続き |
|---|---|---|---|---|
| 家を新築した | 建物の表題登記(表題部) | 所有権を取得した日から1か月以内(不動産登記法47条1項) | 土地家屋調査士 | 所有権保存登記・住宅ローンの抵当権設定登記(権利部)=司法書士 |
| 増築した(床面積・構造などが変わった) | 建物の表題部の変更登記(表題部) | 変更があった日から1か月以内(同法51条1項) | 土地家屋調査士 | ― |
| 建物を取り壊した | 建物の滅失登記(表題部) | 滅失の日から1か月以内(同法57条) | 土地家屋調査士 | ― |
| 農地を宅地や駐車場などに変えた | 土地の地目変更登記(表題部) | 地目の変更があった日から1か月以内(同法37条1項) | 土地家屋調査士 | 農地法の許可申請・届出=行政書士の領域 |
| 土地を分けたい・まとめたい | 分筆登記・合筆登記(表題部) | 申請期限の定めはない(申請できるのは表題部所有者または所有権の登記名義人:同法39条1項) | 土地家屋調査士 | 分けた土地の売却・贈与・相続による名義変更(権利部)=司法書士 |
| 登記簿の面積が実測と違う | 地積更正登記(表題部) | 申請期限の定めはない | 土地家屋調査士 | ― |
| 売買・贈与・相続で名義が変わる | 所有権移転登記(権利部) | 相続による取得には申請義務あり(相続登記義務化の経過措置の記事参照) | 司法書士 | ― |
※ 埋立てなどで新たに生じた土地や、表題登記がない土地の所有権を取得したときも、取得の日から1か月以内に土地の表題登記を申請する義務があります(同法36条)。
※ 権利部の側では、2026年4月1日から、所有権の登記名義人の氏名・住所に変更があったときに、変更の日から2年以内に変更の登記を申請する義務も始まっています(同法76条の5。正当な理由なく怠ると5万円以下の過料の対象:同法164条2項)。こちらは権利の登記で、司法書士の分野です(住所変更登記の義務化の記事参照)。
表の「表題部」の行が土地家屋調査士、「権利部」の行が司法書士の分野です。表示に関する登記の申請手続の代理は、土地家屋調査士法で土地家屋調査士の業務と定められています(同法3条1項2号)。また、調査・測量を必要とする表示に関する登記の申請手続の代理などは、土地家屋調査士(土地家屋調査士法人)でない者が業として行うことは原則としてできないとされています(同法68条1項本文)。
場面ごとのポイント
新築:表題登記のあとに権利の登記が続く
新築した建物は、まず「どんな建物か」を記録する表題登記、次に「誰のものか」を記録する所有権保存登記、という2段階になります。前半が土地家屋調査士、後半が司法書士の分野です。住宅ローンを組む場合は抵当権設定登記も司法書士の分野になるため、両方の資格者が連携して進めることが多い場面です。詳しくは家を新築したときの「所有権保存登記」をご覧ください。
増築:床面積が変わったら表題部の変更
増築で床面積や構造などが変わったときは、建物の表題部の変更登記が必要です。増築後の建物図面・各階平面図が必要になるため、依頼先は土地家屋調査士です。手続きの流れは増築したときの登記、売却前に未登記の増築部分に気づいた場合は未登記の増築部分があると売れない?で整理しています。
取壊し:建物の登記記録を閉じる滅失登記
建物を取り壊したら、建物の滅失登記で登記記録を閉じます。解体業者が発行する書類をそろえて所有者が自分で申請する方法もあり、建物滅失登記を自分で申請する手順で手順を紹介しています。
地目変更:農地転用が絡むときは順番に注意
農地を宅地などに変える場合、農地法の許可申請・届出は行政書士の領域、地目変更登記の申請代理は土地家屋調査士の分野と、担当が分かれます。登記は現況が実際に変わってからの最後の手続きになります。順番の考え方は地目変更登記の手続き──農地転用が絡むときの順番をご覧ください。
分筆・合筆、地積更正:測量が前提になる土地の登記
土地を分ける分筆登記、まとめる合筆登記、登記簿の面積を実測に合わせる地積更正登記は、いずれも測量や境界の確認と結びつくことの多い登記で、土地家屋調査士の分野です。境界がはっきりしない場合の進め方も含めて、土地家屋調査士に相談することになります。詳しくは分筆・合筆とはと登記簿の面積と実測が違う──「縄伸び・縄縮み」と地積更正登記をご覧ください。
まとめ
土地や建物の物理的な状態が変わったときの登記(表題登記・表題部の変更・滅失・地目変更・分筆・合筆・地積更正)は土地家屋調査士、名義や抵当権など権利関係の登記は司法書士、というのが基本の分担です。新築・増築・取壊し・地目変更には1か月以内の申請義務があるため、変化があったら早めに動くことが大切です。どの登記が必要か迷ったら、上の一覧表で場面を確かめたうえで、お近くの土地家屋調査士・司法書士にご相談ください。
よくある質問
Q. 表示に関する登記の費用はどのくらいかかりますか?
費用は大きく、国に納める登録免許税と、依頼した場合の専門家への報酬に分かれます。所有権の登記がある土地では、分筆は分筆後の土地1筆につき1,000円、合筆は合筆後の土地1筆につき1,000円の登録免許税がかかります(登録免許税法別表第一第1号(13))。表題登記・地目変更・建物の滅失などは、同表に課税の定めがなく登録免許税はかかりません。報酬は測量や図面作成の有無で大きく変わるため、依頼先に見積もりを取って確認してください。
Q. 期限を過ぎたり、放置したりするとどうなりますか?
新築・増築・取壊し・地目変更などの登記は、原則として1か月以内(新築は所有権を取得した日から、増築・取壊し・地目変更は変更や滅失があった日から)の申請が義務で、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になり得ます(不動産登記法164条1項)。また、登記記録と現況が食い違ったままだと、売却や相続の手続き、住宅ローンの審査などで手間が増える原因になります。期限を過ぎていても、気づいた時点で申請することが大切です。
Q. 自分で申請できますか?どこに相談すればいいですか?
表示に関する登記も、所有者本人が自分で申請することはできます。ただ、表題登記や分筆などは建物図面・地積測量図などの作成や測量が必要になり、専門的な作業が中心です。表示に関する登記は土地家屋調査士、名義変更など権利の登記は司法書士、農地転用の許可申請・届出は行政書士が相談先の目安です。
【さらに深掘り】表題部所有者・一般承継人と、変更後に所有者となった者の申請義務
ご注意 以下は執筆時点(2026年09月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。
表題部と権利部の分担は、手続を担う資格者が分かれるというだけでなく、「表題部に誰が記録されているか」が権利の登記の入口を決めるという形で、条文上もつながっています。ここでは、その接点となる規定を3つ取り上げます。
1. 表題部所有者は所有権保存登記の申請適格の起点になる
所有権の保存の登記を申請できる者は、不動産登記法74条1項で次の3類型に限定されています。
- 表題部所有者またはその相続人その他の一般承継人(1号)
- 所有権を有することが確定判決によって確認された者(2号)
- 収用によって所有権を取得した者(3号)
つまり、通常の新築の場面では、表題登記で表題部所有者として記録された者(またはその一般承継人)が、所有権保存登記の申請人となります。表題登記の段階で誰を所有者として記録するかが、後に続く権利の登記の前提になるということです。
また、表題部所有者やその持分についての変更は、所有権の保存の登記をした後に、所有権の移転の登記の手続によるのでなければ登記することができないとされています(同法32条)。表題部所有者の欄は、表題登記の後に売買などがあったからといって書き換えるものではなく、保存登記を経て権利部で移転を記録する流れになる、という構造です。
例外として、区分建物(マンションの専有部分など)については、表題部所有者から所有権を取得した者も所有権保存登記を申請することができます(同法74条2項前段)。この場合、その建物が敷地権付き区分建物であるときは、敷地権の登記名義人の承諾が必要です(同項後段)。分譲マンションのように、表題部所有者から専有部分を取得した購入者が、自己を名義人とする所有権保存登記を申請できるのは、この規定があるためです。
2. 表示に関する登記の申請人と一般承継人
表示に関する登記の多くは、申請する者を「表題部所有者又は所有権の登記名義人」と定めています(分筆・合筆の申請ができる者につき同法39条1項、申請義務を負う者につき地目・地積の変更は37条1項、建物の表題部の変更は51条1項、建物の滅失は57条など)。
そのうえで同法30条は、表題部所有者または所有権の登記名義人が表示に関する登記の申請人となることができる場合に、その者について相続その他の一般承継があったときは、相続人その他の一般承継人がその表示に関する登記を申請することができると定めています。たとえば、表題部所有者が亡くなった後に建物を取り壊した・地目を変えたといった場面で、相続人が被相続人名義のままの登記記録について表示に関する登記を申請する根拠となる規定です。なお、同条は相続人などが申請「することができる」と定める規定で、申請義務そのものについて定めたものではありません。
また、区分建物を新築した場合に所有者について一般承継があったときは、相続人その他の一般承継人も、被承継人を表題部所有者とする表題登記を申請することができるとされています(同法47条2項)。この規定は区分建物について置かれたものであり、区分建物以外の建物の扱いについてまで同項から結論を導くことはできないため、個別の事案では土地家屋調査士に確認することになります。
3. 変更の後に所有者となった者にも別に申請義務が生じる
本文の一覧表で紹介した1か月以内の申請義務(変更があった時点の表題部所有者・所有権の登記名義人の義務)とは別に、変更の後に表題部所有者・所有権の登記名義人となった者についても、申請義務が定められています。前の所有者の義務をそのまま引き継ぐという定め方ではなく、その者に係る登記があった日から1か月以内という、その者自身の義務として定められています。
- 地目または地積について変更があった後に表題部所有者または所有権の登記名義人となった者は、その者に係る表題部所有者についての更正の登記または所有権の登記があった日から1か月以内に、地目・地積の変更の登記を申請しなければなりません(同法37条2項)。
- 建物の表題部の登記事項(所在、種類、構造、床面積など)について変更があった後に表題部所有者または所有権の登記名義人となった者も、同様に、その者に係る表題部所有者についての更正の登記または所有権の登記があった日から1か月以内に、変更の登記を申請しなければなりません(同法51条2項)。
これらの義務も過料の対象とされています(同法164条1項)。たとえば、前の所有者のもとで農地が現況宅地となっていたのに地目変更登記がされないまま、売買や相続で所有権の登記を受けた場合には、登記を受けた者について新たに申請義務が生じることになります。権利の登記(所有権移転)を終えた後に、表示に関する登記の手当てが別途必要になる場面があるという点で、表題部と権利部の手続が時間的にもつながっていることを示す規定です。この場合の表示に関する登記の申請代理は、本文のとおり土地家屋調査士の分野です。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年09月・いずれも一次情報です)。
- 不動産登記法(平成16年法律第123号)(e-Gov法令検索)── 30条(一般承継人による表示に関する登記の申請)、32条(表題部所有者の変更等は所有権保存登記後に所有権移転登記の手続による)、36条(土地の表題登記=所有権の取得の日から1月以内)、37条1項・2項(地目・地積の変更の登記=変更があった日から1月以内/変更後に表題部所有者・所有権の登記名義人となった者はその者に係る登記があった日から1月以内)、39条1項(分筆・合筆の登記は表題部所有者又は所有権の登記名義人以外は申請できない)、44条1項(建物の表示に関する登記の登記事項=1号所在・3号種類・構造・床面積など)、47条1項・2項(建物の表題登記=所有権の取得の日から1月以内/区分建物新築後の一般承継人による申請)、51条1項・2項(建物の表題部の変更の登記=変更があった日から1月以内/変更後に表題部所有者等となった者の義務)、57条(建物の滅失の登記=滅失の日から1月以内)、74条1項・2項(所有権の保存の登記の申請人=表題部所有者又はその相続人その他の一般承継人・確定判決・収用/区分建物は表題部所有者から所有権を取得した者も可、敷地権付きは敷地権の登記名義人の承諾)、76条の5(氏名・住所の変更の登記=変更があった日から2年以内。令和3年法律第24号による改正部分で、e-Gov法令検索の改正履歴により施行日2026年4月1日を確認)、164条1項・2項(過料=10万円以下/76条の5の義務違反は5万円以下)
- 土地家屋調査士法(昭和25年法律第228号)(e-Gov法令検索)── 3条1項2号(不動産の表示に関する登記の申請手続についての代理)、68条1項本文(調査又は測量を必要とする申請手続に関する事務を土地家屋調査士・土地家屋調査士法人でない者が業とすることの禁止)
- 登録免許税法(昭和42年法律第35号)(e-Gov法令検索)── 別表第一第一号(十三)イ・ロ(所有権の登記のある不動産の分筆・合筆による登記事項の変更の登記=分筆後・合筆後の不動産1個につき1,000円)、同号(十四)(登記事項の更正・変更の登記=土地又は建物の表示に関するものを除く)・(十五)(登記の抹消=土地又は建物の表題部の登記の抹消を除く)。同号に表題登記・地目変更・建物の滅失の登記の項目がないことを確認
- 農地法(昭和27年法律第229号)(e-Gov法令検索)── 4条1項(農地転用の許可)・同項7号(市街化区域内の農地はあらかじめ農業委員会に届け出る)、5条1項(転用目的の権利移動の許可)・同項6号(市街化区域内の届出)
- 行政書士法(昭和26年法律第4号)(e-Gov法令検索)── 1条の3第1項(官公署に提出する書類の作成)、1条の4第1項1号(官公署に提出する手続の代理)