この記事の要点
- 土地を買ってから家を建てる場合、登記は時期が2つに分かれます。土地の決済のときの「所有権移転登記」と、建物が完成したあとの「表題登記→所有権保存登記→抵当権設定登記」です。
- 建物の表題登記は、建物の所有権を取得した日から1か月以内に申請する義務があります(不動産登記法47条1項)。この登記の申請代理は土地家屋調査士の業務で、司法書士は扱えません。
- 土地の売買による所有権移転登記の登録免許税は原則2%ですが、2029年(令和11年)3月31日までは1.5%に軽減されています(租税特別措置法72条1項)。
- つなぎ融資は、住宅ローンが実行されるまでの支払いに備える借入れです。金利・手数料・審査などの商品の内容は金融機関に確認してください。
- 土地の決済の前に、建物完成までの段取り(融資の実行時期と登記の順番)を金融機関・司法書士・土地家屋調査士と共有しておくと安心です。
土地を探して購入し、そこに注文住宅を建てる──いわゆる「土地から家づくり」では、土地を買う日と家が完成する日のあいだに時間があきます。そのため登記も1回では終わらず、時期を分けて行うことになります。
結論から言うと、登記の流れは次のとおりです。
| 時期 | 主な登記 | 依頼先 |
|---|---|---|
| ① 土地の決済 | 土地の所有権移転登記(売主→買主)。融資の内容によっては土地への抵当権設定登記も | 司法書士 |
| ② 建物の完成後 | 建物の表題登記(必要に応じて土地の地目変更登記も) | 土地家屋調査士 |
| ③ 表題登記のあと | 建物の所有権保存登記、建物への抵当権設定登記 | 司法書士 |
以下、順番に見ていきます。
① 土地の決済──所有権移転登記で土地の名義を移す
土地の売買代金を支払う日(決済日)に、売主から買主へ土地の名義を移す所有権移転登記を申請します。この登記は、売主(登記義務者)と買主(登記権利者)が共同で申請するのが原則です(不動産登記法60条)。決済当日に司法書士が何を確認し、どの順番で手続きが進むのかは、不動産の売買で司法書士は何をしている?──決済当日の流れと所有権移転登記のしくみで詳しく解説しています。
この時点ではまだ建物がないので、登記の対象は土地だけです。
土地の登録免許税
所有権移転登記には、法務局に納める登録免許税がかかります。売買による土地の所有権移転登記の税率は次のとおりです。
- 原則の税率:2%(登録免許税法 別表第一・1号(二)ハ)
- 軽減税率:1.5%(租税特別措置法72条1項1号。2029年〈令和11年〉3月31日までに登記を受ける場合)
税額は、土地の価額(原則として固定資産課税台帳に登録された価格)に税率をかけて計算します。たとえば価額1,000万円の土地なら、軽減税率1.5%で15万円です。
つなぎ融資とは──住宅ローンが実行されるまでの「橋渡し」
注文住宅では、土地の代金のほかにも、建物の工事の着手時や途中の段階(着工金・中間金など)で支払いが発生することがあります。一方で、住宅ローンの融資が建物の完成・引渡しの時点でまとめて実行される場合、それより前の支払いのお金をどう用意するかが問題になります。
このあいだをつなぐために一時的に借りるのが、「つなぎ融資」と呼ばれるものです。もっとも、つなぎ融資を使うのか、土地の代金分を先に借りて土地を担保にし、建物の完成後に建物を担保に加えるのかなど、どの方法がとれるかは金融機関や商品によって異なります。金利・手数料・審査・担保の有無といった商品の内容は、金融機関に直接確認してください。
登記の面から押さえておきたいのは、次の一点です。
建物を担保にする抵当権設定登記は、建物が完成して表題登記と所有権保存登記を済ませてからでないとできません。
抵当権設定登記は、原則として、抵当権者(お金を貸す側)と、建物の所有権の登記名義人(抵当権を設定する側)が共同で申請する登記です(不動産登記法60条)。申請する側の「登記義務者」は、登記によって直接に不利益を受ける登記名義人と定められているため(同法2条13号)、建物に所有権の登記がない段階では、建物に抵当権の登記をすることができません。そのため、建物を担保にする住宅ローンでは、融資の実行と建物の登記の段取りをあわせて考える必要があります。
なお、土地を先に担保にしておき、あとから建物を同じ借入れの担保に加える場合は、登録免許税の計算にも別のルールがあります(登録免許税法13条2項)。具体的な流れや費用は融資の内容で変わるため、依頼する司法書士に見積もりを確認してください。
② 建物の完成──表題登記は土地家屋調査士へ
建物が完成したら、最初に行うのが表題登記(ひょうだいとうき)です。所在・家屋番号・種類(居宅など)・構造・床面積といった「どこに、どんな建物があるか」を記録し、この登記によって初めて建物の登記簿がつくられます。
- 期限:新築した建物の所有権を取得した人は、その所有権の取得の日から1か月以内に表題登記を申請しなければなりません(不動産登記法47条1項)。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料の対象になり得ます(同法164条1項)。
- 依頼先:表題登記は建物の調査・測量や図面の作成を伴う登記で、その申請代理は土地家屋調査士の業務です。司法書士はこの申請代理を扱えません(土地家屋調査士法3条1項・68条1項)。
あわせて、土地の登記簿の地目(ちもく。土地の用途の区分)が「宅地」以外になっている場合は、家が建って土地の用途が変わったことで、地目変更登記が必要になることがあります。地目の変更があった日から1か月以内に申請する義務があり(不動産登記法37条1項)、こちらも土地家屋調査士の担当分野です。
表題登記や地目変更登記など、どの場面でどの登記が必要になり、誰に頼むのかの全体像は、表題登記・表題部の変更は土地家屋調査士へ──権利の登記との分担マップで一覧にしています。
③ 所有権保存登記と抵当権設定登記
表題登記が終わったら、建物の「誰のものか」を初めて記録する所有権保存登記と、住宅ローンを使う場合は建物への抵当権設定登記を申請します。ここからは司法書士が扱う登記です。
所有権保存登記を申請できるのは、表題登記で所有者として記録された人(表題部所有者)などに限られます(不動産登記法74条1項)。保存登記そのものには申請期限がありませんが、住宅ローンの抵当権をつけるためには欠かせません。表題登記との違いや費用は、家を新築したときの「所有権保存登記」の記事もご覧ください。
建物の登録免許税と軽減措置
| 登記 | 原則の税率 | 住宅用家屋の軽減税率 |
|---|---|---|
| 所有権保存登記 | 0.4% | 0.15%(租税特別措置法72条の2) |
| 抵当権設定登記 | 0.4%(債権金額に対して) | 0.1%(租税特別措置法75条) |
軽減税率は、個人が2027年(令和9年)3月31日までに住宅用の家屋を新築して自分の住まいにする場合などに使える、期限つきの特例です。床面積が50平方メートル以上であることや、新築または取得後1年以内の登記であることなどの要件があります。
なお、この期限については、国土交通省が令和9年度の税制改正要望で、2年間の延長(2029年〈令和11年〉3月31日まで)や床面積要件の緩和(50平方メートル以上→40平方メートル以上)などを求めていますが、2026年10月時点では要望の段階で、まだ決まっていません。建物の完成・登記が2027年4月以降になりそうな場合は、その時点の制度を確認してください。
また、軽減を受けるには、登記の申請時に、家屋の所在する市町村などの証明書(一般に「住宅用家屋証明書」と呼ばれます)を添付する必要があり、登記したあとで証明書を出しても軽減は受けられないと国税庁は案内しています。
引っ越し後は「土地の住所」にも注意
土地を先に買う場合、土地の所有権移転登記は引っ越し前の住所で行うことになります。その後、新居に移って住所が変わると、土地の登記簿には古い住所が残ったままになります。
不動産の所有者として登記されている人は、住所が変わった日から2年以内に住所変更登記を申請する義務があります(不動産登記法76条の5)。正当な理由なく怠ると、5万円以下の過料の対象になり得ます(同法164条2項)。登記官が職権で住所の変更の登記をする仕組みもありますが、所有者が個人の場合は、本人の申出があるときに限られます(同法76条の6)。建物の登記を進めるときに、土地の住所変更登記もあわせて手続きできるか、依頼する司法書士に確認しておくとよいでしょう。
税金について
登記の際に法務局に納める登録免許税のほかにも、土地や建物を取得すると不動産取得税(都道府県の税)がかかる場合があります。また、住宅ローンを使って家を建てた場合には、所得税の住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)が関係します。これらの要件や手続きは、都道府県の税事務所・税務署、または税理士にご確認ください。
まとめ
土地を先に買って家を建てる場合の登記は、土地の決済時の所有権移転登記と、建物完成後の表題登記→所有権保存登記→抵当権設定登記の2つの時期に分かれます。建物の表題登記は所有権取得の日から1か月以内の申請義務があり、土地家屋調査士が担当します。つなぎ融資など、建物完成までの資金の流れは金融機関ごとに違うため、商品の内容は金融機関に確認してください。
融資の実行時期と登記の順番は互いに連動しています。土地の決済の前に全体の段取りを確認しておくことが大切です。登記の進め方でわからないことがあれば、お近くの司法書士・土地家屋調査士にご相談ください。
よくある質問
Q. 土地から家を建てると、登記の費用は何にかかりますか?
主に、法務局に納める登録免許税と、専門家に依頼する場合の報酬です。登録免許税は、土地の所有権移転登記(売買は軽減税率1.5%)、建物の所有権保存登記(原則0.4%・住宅用家屋の軽減0.15%)、抵当権設定登記(原則0.4%・住宅用家屋の軽減0.1%)などで、土地や建物の価額・借入額によって変わります。報酬は、権利の登記が司法書士、表題登記が土地家屋調査士と別々にかかります。
Q. 登記に期限はありますか?放置するとどうなりますか?
建物の表題登記は所有権取得の日から1か月以内(地目変更登記も変更の日から1か月以内)の申請義務があり、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になり得ます。所有権保存登記に期限はありませんが、住宅ローンの抵当権を設定するには必要です。また、保存登記・抵当権設定登記の軽減税率は、新築または取得後1年以内の登記であることが要件のひとつです。住所が変わった場合の住所変更登記は、変更の日から2年以内の申請義務があります。
Q. 自分で登記できますか?どこに相談すればいいですか?
制度上は、本人が申請することもできます。ただし、表題登記は建物の調査・測量や図面の作成を伴い、申請代理は土地家屋調査士の業務です。所有権移転登記・所有権保存登記・抵当権設定登記といった権利の登記は司法書士が扱います。融資がからむ登記は金融機関との段取りも必要になるため、進め方を事前に金融機関に確認したうえで、お近くの司法書士・土地家屋調査士にご相談ください。つなぎ融資の商品の内容は、金融機関へ。
【さらに深掘り】土地を先に担保にし、建物を追加で担保に入れるときの登記と登録免許税
ご注意 以下は執筆時点(2026年10月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。
土地の決済のときに、借入れの担保として土地だけに抵当権を設定し、建物が完成したあとで、同じ借入れの担保として建物を加える──このように担保を後から加える抵当権設定登記は、一般に「追加設定」と呼ばれます。ここでは、その登記のしくみと登録免許税の計算を、条文で確認できる範囲で整理します。なお、建物を担保に加える前提として、建物の表題登記(土地家屋調査士の担当)と所有権保存登記が済んでいる必要があるのは、本文③で見たとおりです。
追加設定の登記で記録されること
建物について後から申請する抵当権設定登記では、申請情報に、前の登記(土地の抵当権の登記)に係る土地の所在・地番と順位事項を記載します(不動産登記令別表55項申請情報欄ハ)。申請先の登記所に前の登記に係る共同担保目録がすでにある場合は、これらに代えて、その共同担保目録の記号と目録番号を記載します(同欄ハの括弧書き、不動産登記規則168条1項)。
登記がされると、建物の抵当権の登記の末尾に共同担保目録の記号と目録番号が記録されます(不動産登記規則168条2項)。土地が1筆だけで、前の登記に共同担保目録がなかった場合は、このときに新たに共同担保目録が作成され、土地の抵当権の登記には、付記登記によって担保を追加した旨などが記録されます(同条4項)。こうして、土地と建物が同じ債権の担保(共同担保)になっていることが、登記記録から読み取れるようになります。
登録免許税──最初の土地の登記と、追加する建物の登記
| 登記 | 課税標準・税率 | 根拠 |
|---|---|---|
| 土地への抵当権設定登記(最初の申請) | 債権金額 × 1,000分の4 | 登録免許税法 別表第一・1号(五) |
| 建物の追加設定の登記(最初の申請以外) | 不動産に関する権利の件数1件につき1,500円(下記の要件を満たす場合) | 登録免許税法13条2項 |
13条2項の定額(1件につき1,500円)が使えるのは、次のすべてに当てはまる場合です。
- 同一の債権のために数個の不動産に関する権利を目的とする抵当権の設定登記であること
- その申請が最初の申請以外のものであること
- 13条2項に該当することを証する書類を添付して申請すること。この書類は、登記事項証明書その他の書類で、その債権金額について既に抵当権の設定登記を受けている旨を証するものとされています(登録免許税法施行規則11条)
たとえば債権金額3,000万円の借入れで土地を先に担保にした場合、土地の抵当権設定登記の登録免許税は3,000万円×1,000分の4=12万円となり、建物を追加する登記は、上記の要件を満たせば建物1件につき1,500円です。最初の申請で債権金額を基準に課税されるので、追加分は件数あたりの定額になる、というしくみです。
一方、土地の決済のときの借入れとは別の借入れを担保するために建物などへ抵当権を設定する場合は、「同一の債権」という13条2項の要件に当たらないため、1件1,500円の定額にはなりません。土地の段階の借入れと住宅ローン本体が同じ債権として扱われるのか、別の債権なのかは融資の組み方によって異なりますので、その点は金融機関や依頼する司法書士に確認しておく必要があります。
住宅用家屋の軽減税率(租税特別措置法75条)の対象
本文の表で紹介した抵当権設定登記の軽減税率(1,000分の1)について、租税特別措置法75条は、軽減の対象を「住宅用家屋を目的とする抵当権の設定の登記」と定めています。条文が対象として掲げているのは住宅用家屋を目的とする登記であり、土地を目的とする抵当権の設定登記は掲げられていません。
そのため、建物がまだない土地の決済の段階で、土地だけを目的として申請する最初の抵当権設定登記は、この軽減税率の対象として条文に掲げられた登記には当たらず、別表第一の税率(債権金額×1,000分の4)で計算することになります。
なお、ここまでの整理は、土地を先に単独で担保にする場合を前提にしています。建物の完成後に、同一の債権のために土地と建物を同じ登記所へ同時に申請して担保にする場合は、これらを一つの抵当権設定登記とみなして計算する登録免許税法13条1項が関係するなど、考え方が異なります。土地を先に担保にするか、建物の完成後にまとめて担保にするかで登録免許税の額が変わり得るため、融資の段取りを決める段階で、登記の順番とあわせて登録免許税の見積もりも確認しておくと安心です。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年10月・いずれも一次情報です)。
- 不動産登記法 第2条・第37条・第47条・第60条・第74条・第76条の5・第76条の6・第164条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123
- 不動産登記令 別表第55項(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/416CO0000000379
- 不動産登記規則 第168条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/417M60000010018
- 登録免許税法 第13条・附則第7条・別表第一(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/342AC0000000035
- 登録免許税法施行規則 第11条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/342M50000040037
- 租税特別措置法 第72条・第72条の2・第75条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/332AC0000000026
- 租税特別措置法施行令 第41条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/332CO0000000043
- 租税特別措置法施行規則 第25条・第27条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/332M50000040015
- 土地家屋調査士法 第3条・第68条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC1000000228
- 国税庁 タックスアンサー No.7191「登録免許税の税額表」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm
- 国土交通省「令和9年度税制改正要望事項 住宅用家屋の所有権の保存登記等に係る特例措置の拡充及び延長」(財務省ウェブサイト掲載): https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2027/request/mlit/09y_mlit_k_05.pdf