この記事の要点
- 更正登記(こうせいとうき)とは、登記した時点ですでにあった誤りや書き漏らしを直す登記です。登記した後に事実が変わったときの「変更登記」とは区別されます。
- 名前の字や住所の誤りは、登記名義人(登記簿に所有者などとして載っている人)が単独で申請できます(不動産登記法64条1項)。誤りがあったことを示す住民票の写しなどの公的な書類を添付します。
- 持分など権利の内容の誤りは、持分が増える人と減る人が共同で申請するのが原則です(同法60条)。その不動産に抵当権を持つ銀行など「登記上の利害関係を有する第三者」がいるときは、その承諾が必要になります(同法66条、不動産登記令 別表25項。詳しくは後半の【さらに深掘り】で補足します)。
- 名前・住所の更正登記の登録免許税は、不動産1個につき1,000円です(登録免許税法 別表第一・1号(十四))。持分など権利の内容の更正は、税額を申請前に確認してください。
- 土地の面積(地積)や建物の床面積など「表示の登記」の誤りを直すのは、土地家屋調査士の業務です。
登記簿を見たら、名前の漢字が違っていた、住所の番地が間違っていた、夫婦の持分が契約と違う割合で載っていた──このように、登記した時点から内容に誤りがあったときに使うのが「更正登記」です。
結論から言うと、直し方は何を間違えたかによって大きく2つに分かれます。
| 間違いの種類 | 申請する人 | 主な添付書類 | 登録免許税 |
|---|---|---|---|
| 名前の字・住所(登記名義人の表示) | 登記名義人が単独で | 誤りがあったことを示す公的な書類(住民票の写しなど) | 不動産1個につき1,000円 |
| 持分など権利の内容 | 持分が増える人と減る人が共同で(原則) | 登記原因証明情報、持分が減る人の登記識別情報・印鑑証明書、利害関係人がいればその承諾書 | 申請前に確認(※) |
※持分など権利の内容の更正の登録免許税は、課税の区分を確認する必要があります。後ほど「登録免許税」の項で補足します。
以下、更正登記のしくみと、間違いの種類ごとの直し方を順に見ていきます。
更正登記とは──「最初から間違っていた」ときの直し方
不動産登記法は、更正の登記を「登記事項に錯誤又は遺漏があった場合に当該登記事項を訂正する登記」と定義しています(不動産登記法2条16号)。錯誤(さくご)は誤り、遺漏(いろう)は書き漏らしのことです。これに対し、登記した後に引っ越しや結婚などで事実が変わった場合に使うのは「変更の登記」です(同条15号)。
「事実が後から変わったのか」「最初から間違っていたのか」という見分け方は、登記の『更正』と『変更』はどう違う?で整理しています。この記事では、更正登記にあたると分かったあとの直し方の手順に絞って説明します。
更正登記は「付記登記」として記録される
更正登記は、多くの場合「付記登記(ふきとうき)」という形で登記簿に記録されます。付記登記とは、すでにされている登記にぶら下げる形で記録する登記のことで、元の登記を変更・更正するものなどがこれにあたります(不動産登記法4条2項)。
付記登記の大きな特徴は、順位が元の登記(主登記)の順位のままになることです(同項)。誤りを直しても、元の登記の順番が後ろにずれることはありません。
- 名前・住所の更正登記:付記登記によってします(不動産登記規則3条1号)。
- 権利の内容の更正登記:登記上の利害関係を有する第三者の承諾がある場合、またはそのような第三者がいない場合に限り、付記登記によってすることができます(不動産登記法66条、不動産登記規則3条2号)。
ケース1:名前の字を間違えて登記した
たとえば、住民票では「斎藤」なのに、申請のときに「斉藤」と書いてしまい、そのまま登記された場合です。
- 申請する人:登記名義人が単独で申請できます(不動産登記法64条1項)。売主など他の人の協力は要りません。
- 添付書類:氏名に誤りがあったことを証する、市町村長などの公務員が職務上作成した情報が必要です(不動産登記令 別表23項 添付情報欄)。住民票の写しや戸籍の証明書などがこれにあたります。
- 登記のされ方:付記登記として記録されます(不動産登記規則3条1号)。
なお、戸籍に旧字体・異体字(「髙」と「高」、「澤」と「沢」など)が使われていて、登記簿の字体と違っているだけという場合もあります。このような字体の違いが直すべき「誤り」にあたるのかどうかは、申請の前に法務局や司法書士に確認しておくと安心です。字体の違いの考え方は、戸籍の旧字体・異体字とは?で解説しています。
ケース2:住所を間違えて登記した
たとえば、住民票の写しを取り違えて古い住所で登記してしまった、番地の数字を書き間違えた、という場合です。
- 申請する人:名前の場合と同じく、登記名義人が単独で申請できます(不動産登記法64条1項)。
- 添付書類:住所に誤りがあったことを証する公的な書類(住民票の写しなど)を添付します(不動産登記令 別表23項 添付情報欄)。
- 登記のされ方:付記登記として記録されます(不動産登記規則3条1号)。
登記の後に引っ越しもしている場合は、「最初から間違っていた部分」と「後から変わった部分」の両方が関係することがあります。どの順番・どの書類で直すかは、申請の前に法務局や司法書士に確認してください。
ケース3:持分を間違えて登記した
たとえば、夫婦で2分の1ずつの約束で家を買ったのに、申請のときに夫3分の2・妻3分の1と書いてしまい、そのまま登記された場合です。これは所有権の内容そのものを直す「所有権の更正登記」になります。
申請する人──原則は共同申請
権利に関する登記は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記権利者と登記義務者が共同で申請するのが原則です(不動産登記法60条)。登記権利者とは登記によって直接に利益を受ける人、登記義務者とは直接に不利益を受ける登記名義人のことです(同法2条12号・13号)。上の例でいえば、持分が増える妻が登記権利者、持分が減る夫が登記義務者になります。ほかに申請に加わる必要がある人がいるかどうかは元の登記の内容によって変わることもあるため、申請人の範囲は申請の前に法務局や司法書士に確認してください。
添付書類
主なものは次のとおりです。
- 登記原因証明情報:どういう誤りがあったのかを示す書類です(不動産登記法61条)。
- 登記識別情報:持分が減る人(登記義務者)のもの。登記が完了したときに通知された、いわゆる「権利証」にあたる情報です(同法22条)。
- 印鑑証明書:書面で申請する場合、原則として、申請書に記名押印した登記義務者の印鑑証明書(作成後3か月以内のもの)が必要です(不動産登記令16条2項・3項)。
- 利害関係人の承諾書:次に説明する「登記上の利害関係を有する第三者」がいる場合に必要です。
利害関係人の承諾(不動産登記法66条)
持分を直すと、ほかの人の権利に影響が出ることがあります。たとえば、持分が減る夫の持分に、銀行が抵当権を設定している場合です。持分が減れば、銀行が担保にとっている範囲も小さくなります。このように、更正登記によって登記上の不利益を受けるおそれのある人を「登記上の利害関係を有する第三者」といいます。
このような第三者がいる場合は、その第三者が作成した承諾を証する情報(承諾書など)、またはその第三者に対抗することができる裁判があったことを証する情報を添付します(不動産登記令 別表25項 添付情報欄ロ)。法務省の通達も、法定相続分での相続登記を遺産分割などにより所有権の更正の登記で直す場面について、登記上の利害関係を有する第三者がある場合にはその第三者の承諾がなければ申請することができないことは「従前のとおり」としています(令和5年3月28日付け法務省民二第538号通達 第3の1(6)。不動産登記法66条・68条等を挙げています)。
承諾を得られるかどうかで手続きが大きく変わるため、持分の誤りに気づいたら、まず登記簿で抵当権などの登記がないかを確認しておくとよいでしょう。承諾が得られない場合の進め方は個別の事情によって大きく異なるため、司法書士や弁護士に相談してください。
参考:法定相続分で相続登記をした後に遺産分割がまとまった場合
間違いとは少し場面が違いますが、所有権の更正登記が使われる例をもう一つ紹介します。法定相続分どおりに相続登記をした後に、遺産分割協議で「この不動産は長男が取得する」とまとまった場合、2023年(令和5年)4月1日以後の申請からは、所有権の更正の登記によることができ、不動産を取得する相続人(登記権利者)が単独で申請できる取扱いになっています(令和5年3月28日付け法務省民二第538号通達 第3の1(1)・(8))。登記原因は「錯誤」ではなく「年月日遺産分割」です(同通達 第3の1(2)ア)。手続の詳細は、法定相続分どおりに登記するときの申請書の「後から遺産分割が成立した場合の登記」で解説しています。
登記官のミスで間違って登記されていた場合
申請した内容は正しかったのに、法務局側の処理の誤りで登記簿の記録が違っている場合は、手順が別になります。登記官が権利に関する登記の錯誤や遺漏に気づき、それが登記官の過誤によるものであるときは、監督する法務局・地方法務局の長の許可を得て、職権で更正します(不動産登記法67条2項)。ただし、登記上の利害関係を有する第三者がいる場合は、その第三者の承諾があるときに限られます(同項ただし書)。登記簿の記録が申請書の控えと違うことに気づいたら、まずは登記をした法務局に問い合わせてください。
面積や床面積の誤りは「表示の登記」──土地家屋調査士へ
この記事で扱っているのは、所有者の名前・住所・持分といった「権利の登記」の更正です。これとは別に、登記簿の表題部に記録された土地の面積(地積)、地目、建物の床面積・構造などの誤りを直す登記もあり、こちらは「表示の登記」と呼ばれます。土地の地積を直す地積更正登記などがその例です。
表示の登記の申請代理は土地家屋調査士の業務で、測量や図面の作成を伴うことも多くあります。どの登記を誰に頼むかの全体像は、表題登記・表題部の変更は土地家屋調査士へ──権利の登記との分担マップで一覧にしています。
登録免許税──名前・住所の更正は不動産1個につき1,000円
更正登記をするときは、法務局に登録免許税を納めます。登録免許税法の別表第一・1号(十四)は、「付記登記、抹消された登記の回復の登記又は登記事項の更正若しくは変更の登記」について、不動産の個数1個につき1,000円と定めています。
たとえば、土地1筆と建物1棟の両方で住所を間違えていた場合、不動産は2個なので、登録免許税は2,000円です。
ただし、この(十四)の区分からは、同じ別表の(一)〜(十三)に掲げる登記と、土地・建物の表示に関する登記が除かれています。持分を直す更正登記など、権利の内容にかかわる更正登記の税額は、申請の前に依頼する司法書士や法務局に確認しておくと確実です。
まとめ
更正登記は、登記した時点からあった誤りや書き漏らしを直す登記です。名前の字や住所の誤りは登記名義人が単独で申請でき、住民票の写しなどの公的な書類で誤りを示します。持分など権利の内容の誤りは、持分が増える人と減る人の共同申請が原則で、抵当権を持つ銀行など登記上の利害関係を有する第三者がいる場合はその承諾が必要です。どちらも付記登記として記録されるため、元の登記の順位はそのまま維持されます。
どの書類で誤りを示せるか、利害関係人がいるかどうかで、手続きの進め方は変わります。登記簿の誤りに気づいたら、早めにお近くの司法書士にご相談ください。
よくある質問
Q. 更正登記の費用はどのくらいかかりますか?
名前や住所の更正登記の場合、法務局に納める登録免許税は不動産1個につき1,000円です(登録免許税法 別表第一・1号(十四))。このほか、住民票の写しや戸籍の証明書などの取得費用がかかり、司法書士に依頼する場合は報酬がかかります。権利の内容にかかわる更正登記の税額は、依頼先の司法書士や法務局に確認してください。
Q. 更正登記に期限はありますか?放置するとどうなりますか?
不動産登記法には、更正登記について「何年以内に申請しなければならない」という申請期限の定めは見当たりません。ただし、売却や担保の設定などの手続きをするときに、登記簿の名前や住所が書類と一致しないと、先に更正登記が必要になることがあります。また、持分の誤りを放置している間に抵当権などの登記が増えると、承諾を得なければならない相手が増えるおそれがあります。
Q. 自分で申請できますか?どこに相談すればいいですか?
名前や住所の更正登記は登記名義人が単独で申請できるので、ご本人が申請することも制度上は可能です。持分の更正登記は共同申請が原則で、利害関係人の承諾も関係するため、司法書士への相談をおすすめします。土地の面積や建物の床面積など表示の登記の誤りは、土地家屋調査士にご相談ください。権利の登記の誤りについては、お近くの司法書士へ。
【さらに深掘り】更正登記で直せる範囲──登記の同一性、承諾が得られないとき、持分更正の登録免許税
ご注意 以下は執筆時点(2026年10月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。
本文では、間違いの種類ごとの直し方を説明しました。ここでは、持分など権利の内容を直す場面を中心に、「どこまでなら更正登記で直せるのか」「利害関係人の承諾が得られないときはどうなるのか」「登録免許税はいつでも1,000円なのか」の3点を、条文・通達・判例にそって整理します。
1. 更正登記で直せる範囲──「登記の同一性」という考え方
更正の登記は、登記事項に錯誤または遺漏があった場合に、その登記事項を「訂正」する登記です(不動産登記法2条16号)。すでにある登記を前提に、その中身を正しく直すという性格を持つため、更正の前と後とで登記としての同一性が保たれる範囲で認められる、と考えられています。最高裁平成12年1月27日第一小法廷判決(集民196号239頁、判例時報1702号84頁)も、更正登記は、錯誤または遺漏のため登記と実体関係の間に原始的な不一致がある場合に、その不一致を解消させるべく既存登記の内容の一部を訂正補充する目的でされる登記であり、更正の前後を通じて登記としての同一性がある場合に限り認められる、としています(同判決の判例研究として、渡邊拓「いわゆる中間省略相続登記の更正方法に関する事例」法政研究〔静岡大学〕6巻3・4号733頁〔2002年〕)。
同一性が保たれる典型は、共有者の持分の割合だけを直す場合(本文ケース3)や、共有名義のうち持分を持たない人の名前を外す場合です。後者について、最高裁平成22年4月20日判決(集民234号49頁)は、甲乙の共有に属する不動産に甲乙丙を共有者とする所有権保存登記がされている場合、甲が丙に対して丙の持分に関する部分の抹消を求める請求は、その部分を実体的権利に合致させるための更正登記手続を求める趣旨を含むと解することができる、としています。また、甲が丙に求めることができるのは甲の持分についての更正登記手続にとどまり、乙の持分についてまでは求められない、とも判断しています。法定相続分での相続登記を遺産分割の結果に合わせて直す場面でも、通達の記録例は「3番所有権更正」として付記登記をし、更正前の共有者を抹消する記号を記録する形を示しています(令和5年3月28日付け法務省民二第538号通達 別紙2)。
これに対し、名義人を丸ごと別の人に入れ替える場合(たとえば、A名義の登記を、Aが権利を持たないB名義に直す場合)は、更正の前後で登記の同一性が失われるとされ、原則として、更正の登記ではなく、登記の抹消など別の手段によることになります。前記の平成12年判決は、相続登記を、登記名義人がいったん別の人に変わり、しかも1個の登記を2個の登記にする形に更正することについて、登記名義人と登記の個数の点で登記としての同一性を欠くとして、更正登記手続をすることはできないと判断しました。最高裁平成17年12月15日第一小法廷判決(集民218号1191頁)も、登記名義人が異なることになり、登記の個数も増える更正は同一性を欠くとして更正登記手続を認めず、他の共同相続人はその登記の抹消登記手続を求めることができる、としています(前記の判例研究738頁も、更正の前後で同一性を失う場合は抹消登記によるべきとされていることを紹介しています)。
登記原因を書き換える更正にも限界があります。最高裁平成11年3月9日判決(集民192号65頁)は、被相続人の生存中に相続人に対し売買を原因としてされた所有権移転登記を、被相続人の死亡後に相続を原因とするものに更正することはできない、と判断しました。登記がされた当時は被相続人が生存中で、相続が開始することはあり得ないから、そのような更正は実体法上生ずることのない物権変動を原因とする登記を行うことになる、という理由です。そのうえで同判決は、他の相続人の請求を、各自の持分についての真正な登記名義の回復を原因とする持分移転登記手続を求めるものと解して、これを認めています。
このように、更正の登記で直せない誤りについては、抹消の登記や、真正な登記名義の回復を原因とする移転の登記といった別の手段があります。どの手段によるかは、登記記録と事実関係によって変わります。
2. 持分の更正で、利害関係人の承諾が得られないとき
不動産登記法66条は、権利の変更の登記または更正の登記は、登記上の利害関係を有する第三者の承諾がある場合と、その第三者がない場合に限り、付記登記によってすることができる、と定めています。条文の文言は「付記登記によってすることができる」場合を定めたもので、承諾がないときに申請そのものができないとまでは書かれていません。もっとも、だからといって承諾がなくても別の形で更正の登記ができると読めるわけではなく、承諾がない場合の扱いは、この条文の文言だけからは決まりません。
これに対し、所有権の更正の登記について、前記の通達第3の1(6)は、法定相続分での相続登記を遺産分割などにより更正する場面について、登記上の利害関係を有する第三者がある場合にはその第三者の承諾がなければ申請することができないことなどは「従前のとおり」であるとし、66条と並べて68条を挙げています。68条は、権利に関する登記の抹消は、登記上の利害関係を有する第三者がある場合には、その第三者の承諾があるときに限り申請することができる、と定める条文です。持分を減らす更正には、減る部分の登記を消すという面があるため、抹消の規定もあわせて挙げられていると考えられます(この部分は通達の文言からの推論です)。持分が減る人の持分に抵当権や差押えなどの登記がある場合は、その権利者の承諾を、所有権の更正の登記を申請するための前提として準備しておくのが安全です。
承諾書による場合、承諾を証する情報を記載した書面には作成者が記名押印し、原則としてその印鑑に関する証明書を添付します(不動産登記令19条1項・2項)。承諾が得られない場合について、不動産登記令の別表25項添付情報欄ロは、承諾を証する情報に代えて「当該第三者に対抗することができる裁判があったことを証する情報」を提供する方法を定めています。これは裁判手続を経ることを前提とするもので、訴訟を起こすかどうかやその見通しは、弁護士にご相談ください。
3. 持分を直す更正登記の登録免許税
本文では、名前・住所の更正登記の登録免許税を不動産1個につき1,000円(登録免許税法 別表第一・1号(十四))と説明しました。名前・住所の更正は、(一)から(十三)のどれにもあたらず、この区分によるのが基本です。
ただし、(十四)は括弧書きで、「(一)から(十三)までに掲げるもの及び土地又は建物の表示に関するもの」を除いています。(一)から(十三)には、所有権の保存の登記((一))、所有権の移転の登記((二))など、登記の種類ごとに課税標準と税率が定められた登記が並んでいます。つまり、「更正の登記」であれば必ず1,000円になる、という作りにはなっていません。
持分を直す更正のうち、ある共有者の持分が増える場合に、その増える部分が(一)から(十三)のいずれか(たとえば所有権の移転の登記)として課税されるのか、(十四)の1,000円で足りるのかが問題になります。この点に関係する法務省の公開資料としては、相続登記の見直しを検討した法制審議会民法・不動産登記法部会の部会資料8「不動産登記制度の見直し(1)」(8頁)があります。同資料は、法定相続分での相続登記を錯誤による更正の登記で直すと考えた場合について、「更正の登記の登録免許税は不動産1個につき1000円となる」と説明しています(同資料は根拠として登録免許税法別表第1第1号(14)を挙げています)。ただし、これは法改正の検討段階で相続登記の場面を説明したもので、売買などで取得した共有者の持分を直す場面の税額を示したものではありません。また、法務局ウェブサイトの「不動産登記の申請書様式について」のページに掲載されている「登録免許税の計算」(PDF)にも、更正の登記についての記載はありません。持分が増える更正を申請するときは、税額を申請前に管轄の法務局で確認しておくのが確実です。遺産分割を原因とする所有権の更正の登記の税額についての整理は、法定相続分どおりに登記するときの申請書の【さらに深掘り】をご覧ください。
なお、更正の登記は、登記した時点からあった錯誤や遺漏を直すためのものです(不動産登記法2条16号)。登記の後に共有者どうしで実際に持分を譲り合った場合は、更正ではなく持分の移転の問題になり、贈与税などの税務も関係してきます。税務については税理士にご相談ください。
4. 補足:申請期限と、住所の変更登記の申請義務
本文のよくある質問では、更正登記に申請期限の定めは見当たらないと説明しました。関連して、不動産登記法76条の5は、所有権の登記名義人の氏名・名称または住所について「変更があったとき」は、その変更があった日から2年以内に、変更の登記を申請しなければならないと定めています。この条文が定めているのは変更の登記で、条文上、更正の登記は挙げられていません。ただし、本文ケース2で触れたように、最初の誤りに加えて登記の後に引っ越しもしている場合は、引っ越しによる住所の変更の部分がこの申請義務と関係します。
この申請義務は2026年(令和8年)4月1日に施行され、正当な理由がないのに申請を怠ったときは5万円以下の過料の対象になります(同法164条2項)。施行日より前に住所などが変わっていた場合も対象で、その場合は、変更があった日と施行日のいずれか遅い日から2年以内、つまり2026年3月31日以前の変更であれば2028年(令和10年)3月31日までに申請することになります(民法等の一部を改正する法律〔令和3年法律第24号〕附則5条7項、令和7年10月30日付け法務省民二第915号通達 第2の3)。
また、同じ日から、登記官が職権で住所などの変更の登記をする仕組み(不動産登記法76条の6。法務省は「スマート変更登記」と案内しています)も始まっています。この条文も、住所などに「変更があったと認めるべき場合」の変更の登記を定めたもので、最初からあった誤りを直す更正の登記を対象として書かれてはいません。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年10月)。
- 不動産登記法 第2条・第4条・第22条・第60条・第61条・第64条・第66条〜第68条・第76条の5・第76条の6・第164条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123
- 民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)附則第5条第7項(e-Gov法令検索・不動産登記法の改正附則): https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123
- 不動産登記令 第16条・第19条・別表23の項〜25の項(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/416CO0000000379
- 不動産登記規則 第3条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/417M60000010018
- 登録免許税法 別表第一 第1号(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/342AC0000000035
- 法務省 令和5年3月28日付け法務省民二第538号通達(民法等の一部を改正する法律の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて〔令和5年4月1日施行関係〕): https://www.moj.go.jp/content/001394385.pdf
- 法務省 令和7年10月30日付け法務省民二第915号通達(住所等変更登記の義務化関係): https://www.moj.go.jp/content/001460083.pdf
- 法務省 法制審議会民法・不動産登記法部会 部会資料8「不動産登記制度の見直し(1)」: https://www.moj.go.jp/content/001298725.pdf
- 法務局「登録免許税の計算」(不動産登記の申請書様式について): https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001467400.pdf
- 法務省「スマート変更登記について」: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00688.html
- 法務省「住所等変更登記の義務化特設ページ」: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00687.html
- 最高裁判所第三小法廷 平成11年3月9日判決(平成9年(オ)第953号)集民192号65頁(裁判所ウェブサイト): https://www.courts.go.jp/hanrei/62826/detail2/index.html
- 最高裁判所第一小法廷 平成12年1月27日判決(平成11年(オ)第773号)集民196号239頁(裁判所ウェブサイト): https://www.courts.go.jp/hanrei/62425/detail2/index.html
- 最高裁判所第一小法廷 平成17年12月15日判決(平成16年(オ)第402号)集民218号1191頁(裁判所ウェブサイト): https://www.courts.go.jp/hanrei/62591/detail2/index.html
- 最高裁判所第三小法廷 平成22年4月20日判決(平成21年(オ)第1408号)集民234号49頁(裁判所ウェブサイト): https://www.courts.go.jp/hanrei/80127/detail2/index.html
※ 次の資料は一次情報ではなく、解説・評釈などの二次資料ですが、内容確認の参考にしたため一次情報と区別して掲載しています。
- 渡邊拓「いわゆる中間省略相続登記の更正方法に関する事例」法政研究(静岡大学)6巻3・4号733頁(2002年)(静岡大学学術リポジトリ): https://doi.org/10.14945/00008842