この記事の要点
- 経営者保証(社長個人が会社の借入の連帯保証人になること)は、「経営者保証に関するガイドライン」によって、一定の経営状態がそろえば保証なしの融資や既存の保証の見直しを金融機関が検討する枠組みが示されている。ただし法的拘束力はなく、「必ず外せる」ものではない
- ガイドラインが会社と経営者に求めるのは、①会社と経営者個人のお金・財産の区分・分離、②財務基盤の強化、③財務状況の正確な把握と適時適切な情報開示、の3つ
- 事業承継のときは、別に公表された「特則」で、前経営者と後継者の双方から二重には保証を求めないことが原則とされている
- 準備は「平時(今から)」「事業承継の準備段階」「代表者交代のとき」の3段階で考えると整理しやすい
- 金融機関との保証解除の交渉や保証債務の整理は弁護士、財務の整え方は税理士・中小企業診断士、代表者交代の登記は司法書士が相談先
経営者の方に知っておいてほしいのは、経営者保証は「外せるかどうか」を運に任せるものではなく、金融機関が保証を求めるかどうかを検討するときの目安が公表された文書に書かれている、という点です。結論から言うと、まず目指すのは「経営者保証に関するガイドライン」が示す3つの経営状態に近づけることであり、事業承継を控えているなら、後継者が保証を当然に引き継ぐ前提で進めず、早めに金融機関に保証の扱いを相談しておくことが出発点になります。
経営者が亡くなったときに保証が相続人に引き継がれる問題については、経営者の連帯保証は相続される──会社の借金と経営者保証ガイドラインの入口で解説しています。この記事では、その手前の「経営者がお元気なうちに、保証を外す・引き継がないための準備」に絞って整理します。
経営者保証ガイドラインとは──法律ではない「共通のルールブック」
「経営者保証に関するガイドライン」は、日本商工会議所と全国銀行協会を事務局とする「経営者保証に関するガイドライン研究会」が、平成25年(2013年)12月に公表したものです。平成26年(2014年)2月から運用が始まっています。その後、令和4年(2022年)6月に、支援機関の統合(「中小企業活性化協議会」の発足)などに合わせた一部改定が行われています。
ガイドライン自身が、中小企業団体と金融機関団体に共通する「自主的自律的な準則」(自分たちで決めて守る取り決め)であり、法的拘束力はないものの、会社・保証人・金融機関が自発的に尊重し守ることが期待されている、と位置づけています。つまり、条件を満たせば保証が自動的に外れる「権利」を定めたものではなく、金融機関が保証の要否を検討するときのよりどころになる文書、と理解しておくのが正確です。
ガイドラインの対象となるのは、おおまかには、借りている側(主たる債務者)が中小企業で、保証人が個人の経営者である保証契約です(ガイドライン第3項)。
時間軸で見る「外す・引き継がない」ための準備
経営者保証の準備は、次の3つの段階に分けて考えると整理しやすくなります。
| 段階 | 主に取り組むこと | ガイドライン・特則の該当箇所 |
|---|---|---|
| ① 平時(今から) | 3つの経営状態に近づける。既存の保証の見直しを申し出る | ガイドライン第4項・第6項(1) |
| ② 事業承継の準備段階 | 後継者に保証を当然に引き継がせない前提で、金融機関と早めに話す | ガイドライン第6項(2)、特則 |
| ③ 代表者交代のとき | 代表取締役の変更登記と並行して、前経営者の保証の解除・後継者の保証の要否を確認する | ガイドライン第6項(2)、特則 |
① 平時──ガイドラインが求める3つの経営状態
ガイドラインは、会社が経営者保証なしで資金を借りたいと望む場合には、まず次のような経営状態であることが求められる、としています(ガイドライン第4項(1))。
- 法人と経営者との関係の明確な区分・分離:会社の業務・経理・財産の持ち方について、会社と経営者個人の関係をはっきり分けること。役員報酬・賞与、配当、オーナーへの貸付けといった会社と経営者の間のお金のやりとりを、「社会通念上適切な範囲」(世間一般の常識から見て妥当な範囲)を超えないようにする体制を整えることが挙げられています
- 財務基盤の強化:財務状況や経営成績を改善し、返済能力を高めることで、会社自身の信用力を強くすること
- 財務状況の正確な把握、適時適切な情報開示等による経営の透明性確保:資産・負債の状況(経営者個人のものを含む)や事業計画・業績見通しについて、金融機関から求められたら正確かつ丁寧に開示・説明し、計画や見通しに変動があれば自分から報告すること
また、①の区分・分離の状況や③の開示する情報については、公認会計士・税理士などの外部専門家による検証を受け、その結果を金融機関に示すことが望ましい、ともされています。
金融機関の側では、会社について次のような点が将来にわたって満たされると見込まれるときは、会社の経営状況、資金の使い道、回収の見込みなどを総合的に判断する中で、会社の意向も踏まえて、経営者保証を求めない可能性や、保証に代わる融資の方法を活用する可能性を検討するとされています(ガイドライン第4項(2))。
- 会社と経営者個人の資産・経理が明確に分離されている
- 会社と経営者の間のお金のやりとりが、社会通念上適切な範囲を超えない
- 会社だけの資産・収益力で借入の返済が可能と判断できる
- 会社から適時適切に財務情報などが提供されている
- 経営者などから十分な物的担保(不動産などの担保)の提供がある
すでに保証人になっている場合でも、会社の経営改善が進んだときなどに、会社と保証人から保証契約の解除などを申し出ることが想定されています。申出があれば、金融機関は保証の必要性や適切な保証金額などを真摯かつ柔軟に検討し、その結果を丁寧かつ具体的に説明することとされています(ガイドライン第6項(1))。
② 事業承継の準備段階──「後継者に当然に引き継がせない」が出発点
事業承継の場面について、ガイドラインは、金融機関は前経営者が負っている保証債務を後継者に当然に引き継がせるのではなく、必要な情報開示を受けたうえで、保証契約の必要性などを改めて検討する、としています(ガイドライン第6項(2))。
さらに、経営者保証に関するガイドライン研究会は、令和元年(2019年)12月に「事業承継時に焦点を当てた『経営者保証に関するガイドライン』の特則」(以下「特則」)を公表しました(令和2年〔2020年〕4月から適用。令和5年〔2023年〕4月に支援体制の変更に合わせた一部改定)。特則のポイントは次のとおりです。
- 前経営者と後継者の双方から二重には保証を求めないことを原則とする。例外的に二重に保証を求めることが真に必要な場合には、その理由などを双方に十分説明し、理解を得ることとされています
- 後継者との保証契約は、経営者保証が事業承継の妨げになり得ることを十分考慮し、必要性を慎重かつ柔軟に判断する。ガイドライン第4項(2)の要件の多くを満たしていない場合でも、総合的な判断として保証を求めない対応ができないか検討することが求められています
- 前経営者との保証契約は、前経営者が実質的な経営権・支配権を持っているといった特別の事情がない限り、いわゆる第三者にあたる可能性があることを踏まえ、保証解除に向けて適切に見直す
特則には、後継者に保証を求めることがやむを得ない場合でも、保証の範囲や金額を絞る、一定の条件のもとで保証の効力がなくなる契約にする、経営者保証を求めない信用保証制度や政府系金融機関の融資制度を活用する、といった検討の選択肢も挙げられています。
また、特則は会社と保証人の側にも、保証なしでの事業承継を望むなら、まずガイドライン第4項(1)の3つの経営状態であることが求められ、要件が足りない場合は事業承継に先立って主体的に経営改善に取り組むことが必要だ、としています。つまり、①の平時の準備は、事業承継の準備そのものでもあります。事業承継全体の流れは、事業承継とは──会社を後継者に引き継ぐときに必要な手続きの全体像で整理しています。
③ 代表者交代のとき──登記と保証は別々に確認する
社長が退任し、後継者が代表取締役に就任したときは、会社の変更登記が必要です。代表取締役の氏名などの登記事項に変更が生じたときは、2週間以内に、本店の所在地で変更の登記をしなければなりません(会社法915条1項)。手続きの流れと必要書類は、代表取締役の交代の登記──就任・退任のパターン別 必要書類で解説しています。
注意したいのは、代表取締役の交代の登記と、金融機関との保証契約は別々のものだという点です。ガイドラインも、前経営者から保証契約の解除を求められた場合に、金融機関が、前経営者が引き続き実質的な経営権・支配権を持っているか、会社の資産・収益力による返済能力などを考慮して適切に判断する、という流れを示しています(ガイドライン第6項(2))。登記の準備と並行して、前経営者の保証をどうするか、後継者に保証を求めるかどうかを金融機関に確認しておくことが大切です。
なお、特則の注記では、代表者交代前からの既存の借入は前経営者が、交代後の新しい借入は後継者だけが保証している場合は、「二重に保証を求める」ことにはあたらない、と説明されています。
金融機関への相談の入口
ガイドラインや特則を踏まえて金融機関と話すときは、次のような順序で準備すると、話が具体的になります。
- 保証の現状を一覧にする:どの金融機関の、どの借入に、誰が保証人になっているか、保証金額はいくらかを、契約書で確認する
- 3つの経営状態の現状を確かめる:会社と経営者個人のお金のやりとり、決算書の内容、金融機関への情報提供の状況を見直す
- 金融機関に、保証の要否と理由の説明を求める:特則は、金融機関が会社に対し、ガイドライン第4項(2)の要件のどの部分が十分でないために保証が必要なのか、どのような改善をすれば保証の変更・解除の可能性が高まるのかを、個別・具体的に説明することを求めています
金融庁も、「経営者保証改革プログラム」(令和4年〔2022年〕12月公表)を受けて、金融機関を監督する際の着眼点(「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」など)に、保証契約を結ぶときや既存の保証契約があるときに、どの部分が十分でないために保証が必要なのか、どのような改善をすれば保証の変更・解除の可能性が高まるのかを説明し、その結果を記録する態勢を盛り込んでいます。令和6年(2024年)10月からは、M&A・事業承継などで主な株主が変わることを金融機関が把握した保証契約もこの説明の対象とされ、令和8年(2026年)4月からは、状況に応じて、事業承継の成立前に経営者保証の扱いを事前に相談するよう勧めることや、事前相談に丁寧に対応する態勢も着眼点に加わりました。事業承継の予定を早めに金融機関に伝えることは、こうした説明を受けるきっかけにもなり得ます。ただし、これらは金融庁が金融機関を監督する際の目線であり、会社や保証人が金融機関に保証の解除を請求できる権利を定めたものではありません(見直しの申出や説明の依頼は、ガイドラインに沿って行えます)。
ここまでは会社と経営者自身で取り組めることです。一方、金融機関と保証の解除について交渉を代わりに行うことや、保証債務の整理(保証の一部または全部の免除などを求める手続き)の代理は、弁護士の領域です(ガイドラインに基づく保証債務の整理では、弁護士・公認会計士・税理士などの、保証人の債務整理を支援する専門家〔「支援専門家」〕が関わる仕組みになっています)。決算書の整え方や財務の改善については税理士や中小企業診断士に、ガイドラインが挙げる外部専門家による検証については公認会計士や税理士にご相談ください。
まとめ
経営者保証を外す・後継者に引き継がないための準備は、「平時に3つの経営状態に近づける」「事業承継の準備段階で、後継者に当然に引き継がせない前提で金融機関と話す」「代表者交代のとき、登記と保証を別々に確認する」という時間軸で考えると整理できます。経営者保証ガイドラインと事業承継時の特則は、そのための共通のよりどころですが、法的拘束力はなく、保証を外せるかどうかは金融機関の個別の判断によります。保証の解除の交渉や保証債務の整理は弁護士に、財務の整え方は税理士・中小企業診断士にご相談ください。代表者交代の登記など会社の登記の手続きで迷ったら、お近くの司法書士にご相談ください。
よくある質問
Q. 経営者保証を外す準備には、どのくらい費用がかかりますか?
保証を外すこと自体の費用は一律ではありません。ガイドラインでは、保証に代わる方法として金利の一定の上乗せなどの融資手法も挙げられており、保証の代わりに融資条件が変わることがあります。信用保証協会の保証付きの融資では、一定の要件を満たす会社が、保証料率の上乗せを条件に経営者保証を提供しないことを選べる制度(令和6年〔2024年〕3月開始)も設けられています。外部専門家に財務の検証を依頼する場合はその報酬が、代表者交代の登記をする場合は登録免許税と、依頼した場合の専門家への報酬がかかります。
Q. 期限はありますか?放っておくとどうなりますか?
ガイドラインに基づく見直しの申出そのものに期限は定められていません。ただし、代表者が交代したときの変更登記は2週間以内に申請する必要があります(会社法915条1項)。また、準備をしないまま経営者が亡くなると、保証債務が相続人に引き継がれる問題が生じることがあります。事業承継を考え始めた段階で、早めに金融機関と話しておくことをおすすめします。
Q. 自分でできますか?どこに相談すればよいですか?
保証の現状の確認や、金融機関への見直しの申出・説明の依頼は、会社と経営者自身で行えます。金融機関との保証解除の交渉や保証債務の整理を任せたい場合は弁護士に、財務の整え方は税理士・中小企業診断士にご相談ください。代表者交代の登記など会社の登記の手続きは、お近くの司法書士にご相談ください。
【さらに深掘り】代表者交代の登記と保証見直しの対応関係
ご注意 以下は執筆時点(2026年10月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。
本文では「代表取締役の交代の登記と保証契約は別々に確認する」と整理しました。ここでは商業登記実務の側から、登記に表れる地位と表れない事情、特則が挙げる判断要素との対応、前経営者の残り方ごとの登記の形を整理します。
登記に表れるもの・表れないもの
株式会社の登記事項は会社法911条3項に列挙されており、役員関係では主に次のものが登記されます。これらに変更が生じたときは、2週間以内に本店の所在地で変更の登記をしなければなりません(会社法915条1項)。
- 取締役の氏名(911条3項13号。監査等委員会設置会社の取締役は22号イ)
- 代表取締役の氏名及び住所(同14号。指名委員会等設置会社は23号ハの代表執行役)
- 取締役会設置会社であるときは、その旨(同15号)
一方、次のものは911条3項の登記事項に掲げられていません。
- 株主ごとの株式の保有状況(登記されるのは発行済株式の総数やその種類・種類ごとの数〔同9号〕までで、誰が何株を持っているかは載りません)
- 「会長」「相談役」といった社内の呼び名
- 会社の借入についての経営者の保証契約
このため、登記事項証明書から読み取れるのは、前経営者が取締役・代表取締役として残っているかどうかまでです。株式の保有状況や保証の有無は、株主名簿や金融機関との契約書など、登記とは別の資料で確認することになります。ガイドラインも、前経営者から保証契約の解除を求められた場合に金融機関が適切に判断する、という組み立てをとっています(ガイドライン第6項(2)②ロ)。この組み立てからは、代表者交代の登記によって保証契約が当然に終わるとは扱われていないことが読み取れます。保証が続くかどうかは、登記とは別に、保証契約の内容や、解除の申出を受けた金融機関の判断によって決まる事柄です。
特則が挙げる判断要素と登記の対応
特則は、保証契約の見直しを検討したうえで前経営者に引き続き保証を求める場合には、前経営者の株式保有状況(議決権の過半数を保有しているか等)、代表権の有無、実質的な経営権・支配権の有無、既存債権の保全状況、法人の資産・収益力による借入返済能力等を勘案して、保証の必要性を慎重に検討することが必要だとしています。特に、取締役等の役員ではなく、議決権の過半数を有する株主等でもない前経営者に対し、やむを得ず保証の継続を求める場合には、より慎重な検討が求められるとしています(特則2(3))。
これを登記の側から見ると、次のように対応します。
| 特則が挙げる事情 | 登記事項証明書で確認できるか |
|---|---|
| 代表権の有無 | 確認できる(代表取締役の登記・911条3項14号) |
| 取締役等の役員かどうか | 確認できる(取締役の氏名・同13号、監査役の氏名・同17号ロ) |
| 株式保有状況(議決権の過半数か等) | 登記事項ではないため、登記からは確認できない |
| 実質的な経営権・支配権の有無 | 登記だけでは判断できない |
また特則は、会社と保証人の側に、株式の移転や経営権・支配権の移転等が行われた場合は速やかに金融機関に報告することを求めています(特則3(3))。株式の移転は登記に表れないため、代表者交代の登記とは別に、金融機関への報告の段取りを組んでおく必要があります。
なお、特則は「事業承継の実行」を代表者交代のタイミングと定め、それに先立って会社と経営者の関係の区分・分離を確認し、その結果を後継者や金融機関と共有することが望ましいとしています(特則3(1))。代表者交代の登記の日程を決める段階は、金融機関との保証の話を前に進めておくべき時期と重なります。
前経営者の残り方と登記の形
代表者交代の登記の内容は、前経営者が会社にどう残るかで変わります。
| 前経営者の残り方 | 主な登記の内容 | 登記上の前経営者 |
|---|---|---|
| 取締役も退く | 前経営者の取締役・代表取締役の退任、後継者の取締役・代表取締役の就任 | 役員欄に残らない |
| 代表取締役だけ退き、取締役に残る(「会長」など) | 前経営者の代表取締役の退任、後継者の代表取締役の就任(後継者がまだ取締役でなければ取締役の就任も) | 取締役として残る(「会長」の呼び名は登記されない) |
| 代表取締役のまま、後継者も代表取締役に加わる | 後継者の代表取締役の就任(後継者がまだ取締役でなければ取締役の就任も) | 代表取締役として残る |
この表を特則の判断要素と重ねると、前経営者が代表取締役に残る形では代表権が残っていることが登記上も明らかになり、取締役に残る形では役員であることが登記上明らかになります。どの形を選ぶかは会社の経営判断ですが、保証の見直しを金融機関と話す際には、交代後に前経営者がどの地位に残るのかを、登記の形とあわせて具体的に示せるようにしておくと話がかみ合いやすくなります。
形を選ぶ際に、登記の面から注意したい点が3つあります。
1つ目は、取締役会を置かない会社の代表権です。会社法は、取締役は会社を代表し、ただし他に代表取締役その他会社を代表する者を定めた場合はこの限りでないとしたうえで、取締役が2人以上いる場合は各自が会社を代表すると定めています(会社法349条1項・2項)。代表取締役を定めていない会社で前経営者が取締役に残ると、前経営者にも代表権が残ることになります。代表権を後継者に絞るには、定款、定款の定めに基づく取締役の互選、または株主総会の決議によって、後継者を代表取締役に定める必要があります(同条3項)。取締役会設置会社では、取締役会が取締役の中から代表取締役を選定します(会社法362条2項3号・3項)。
2つ目は、取締役の員数です。取締役会設置会社では取締役は3人以上でなければなりません(会社法331条5項)。前経営者が取締役も退くことで法律や定款で定めた員数を欠く場合、任期の満了または辞任により退任した取締役は、新たに選任された取締役が就任するまで、なお取締役としての権利義務を持ちます(会社法346条1項)。前経営者が役員から完全に退く形を目指すなら、後任の取締役の選任を同時に進める段取りが必要です。
3つ目は、添付する印鑑証明書です。代表取締役の就任による変更の登記では、代表取締役を選んだ株主総会・取締役会の議事録や取締役の互選を証する書面に押された印鑑について、市町村長が作成した印鑑証明書を添付するのが原則です(商業登記規則61条6項本文)。ただし、その印鑑が、変更前の代表取締役が登記所に提出している印鑑と同じであるときは、この限りでないとされています(同項ただし書。条文は「変更前の代表取締役又は代表執行役(取締役を兼ねる者に限る。)」と定めています)。このため、前経営者が後継者を選ぶ手続きに加わり、登記所に提出している印鑑で議事録などに押印するかどうかで、そろえる書類が変わることがあります。ただし書が使えるかどうかは、代表取締役の選び方や前経営者が退くタイミングによって変わるため、申請前に確認しておくと安心です。このほかの必要書類(就任承諾書・辞任届など)は、本文で案内した代表取締役の交代の登記の記事で整理しています。
登録免許税は、役員に関する事項の変更の登記として、申請1件につき3万円(資本金の額が1億円以下の会社は1万円)です(登録免許税法別表第一第24号(一)カ)。後継者の体制に合わせて取締役会を置く・やめるといった変更を同時に行う場合は、取締役会に関する事項の変更の登記(同ワ・申請1件につき3万円)が加わります。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年10月・いずれも一次情報です)。
- 経営者保証に関するガイドライン研究会「経営者保証に関するガイドライン」(平成25年12月・令和4年6月改定/全国銀行協会掲載): https://www.zenginkyo.or.jp/fileadmin/res/abstract/adr/sme/guideline.pdf
- 経営者保証に関するガイドライン研究会「事業承継時に焦点を当てた『経営者保証に関するガイドライン』の特則」(令和元年12月・令和5年4月改定/全国銀行協会掲載): https://www.zenginkyo.or.jp/fileadmin/res/abstract/adr/sme/guideline_sp.pdf
- 金融庁「『経営者保証改革プログラム』の策定について」(令和4年12月23日): https://www.fsa.go.jp/news/r4/ginkou/20221223-3/20221223-3.html
- 金融庁「『中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針』等の一部改正(案)に対するパブリックコメントの結果等の公表について」(令和6年8月30日公表・令和6年10月1日適用): https://www.fsa.go.jp/news/r6/ginkou/20240830.html
- 金融庁「『中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針』等の一部改正(案)に対するパブリックコメントの結果等の公表について」(令和8年2月20日公表・令和8年4月1日適用): https://www.fsa.go.jp/news/r7/ginkou/20260220/20260220.html
- 中小企業庁「保証料率の上乗せにより経営者保証を提供しないことを選択できる信用保証制度等を開始します」(令和6年3月15日): https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/2024/240315.html
- 中小企業庁「信用保証協会における『経営者保証に関するガイドライン』活用実績(令和7年度)」: https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/keieihosyou/download/kyokai_202603.pdf
- 全国信用保証協会連合会「信用保証料」: https://www.zenshinhoren.or.jp/guarantee-system/hoshoryo/
- 会社法 第331条・第346条・第349条・第362条・第911条・第915条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086
- 商業登記規則 第61条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/339M50000010023
- 登録免許税法 別表第一第24号(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/342AC0000000035