この記事の要点
- 父母や祖父母などの直系尊属から、自分が住む家の新築・取得・増改築等に充てるお金の贈与を受けた場合、一定の要件を満たせば、限度額までの金額には贈与税がかからない(租税特別措置法70条の2)
- 限度額は贈与を受けた人1人につき、省エネ等住宅なら1,000万円、それ以外の住宅なら500万円。執筆時点の条文では、2026年(令和8年)12月31日までの贈与が対象
- 全額が非課税になる場合でも、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに贈与税の申告をしないと特例は受けられない。資金の出し方と登記の持分がずれると、別に贈与の問題が生じ得る点にも注意
結論から言うと、この特例は「親などから、自分が住む家を手に入れるためのお金をもらった」ときに、一定額までの贈与税をかからないようにする制度で、使うには期限内の申告が欠かせません。順に整理します。
誰から誰へ、何に使うお金が対象か
国税庁のタックスアンサー(No.4508)と条文に沿って、骨格だけをまとめると次のとおりです。
- 贈与する人:贈与を受ける人の父母・祖父母などの直系尊属。配偶者の父母(義理の親)は直系尊属に当たらないため対象外ですが、養子縁組をしていれば対象になります
- 贈与を受ける人:贈与を受けた年の1月1日に18歳以上で、その年の所得税の合計所得金額が2,000万円以下(家の床面積が40平方メートル以上50平方メートル未満なら1,000万円以下)であることなど。年収ではなく、所得税でいう所得の金額で判定します
- お金の使い道:贈与を受けた年の翌年3月15日までに、全額を自分が住む家の新築・取得・増改築等の代金(家と一緒に取得する敷地や、新築の場合に家を建てる前に先に取得する敷地の代金を含みます)に充てること。そのうえで同日までに住むか、同日後遅滞なく住むことが確実と見込まれること。見込みで特例を受けたのに、贈与を受けた年の翌年12月31日までに住んでいなかったときは、原則として特例は受けられず、修正申告が必要になります(租税特別措置法70条の2第4項)
- 家の要件:登記簿上の床面積(マンションは専有部分の床面積)が40平方メートル以上240平方メートル以下で、床面積の2分の1以上が自分の住まいに使われることなど。中古住宅には耐震性に関する要件もあります
対象になるのは、あくまで家を手に入れるための「お金」の贈与です。家そのものの贈与を受けた場合や、すでに住んでいる家の住宅ローンを返済するためのお金をもらった場合は、この特例の対象になりません。また、配偶者や父母・祖父母などの直系血族、生計を一にする親族など、一定の特別の関係がある人から家を買う場合や、そうした人との請負契約で家を建てる・増改築する場合も対象外とされています(租税特別措置法70条の2第2項5号、同法施行令40条の4の2第7項)。
非課税限度額の考え方
非課税限度額は、贈与を受けた人1人ごとに決まります。省エネルギー性能・耐震性能・バリアフリー性能のいずれかの基準に適合することを、住宅性能証明書などの書類を申告書に添付して証明した「省エネ等住宅」なら1,000万円、それ以外の住宅なら500万円です。
贈与する人ごとの枠ではない点に注意が必要です。たとえば父と祖父の両方から贈与を受けても、限度額は2人分にはならず、受け取った額を合計したうえで1人分の限度額までが非課税になります。限度額を超えた部分は、この特例では非課税にならず、通常の贈与税の計算に含まれることになります。過去(平成21年分から令和5年分)にこの特例の適用を受けたことがある人は、原則として使えないという要件もあります。
なお、この特例で非課税になった金額は、贈与した人が亡くなったときの相続税の計算に加算する必要はないとされています。暦年贈与で問題になる相続財産への加算(暦年贈与と相続時精算課税)とは扱いが異なります。
税額がゼロでも申告が必要
見落とされやすいのが申告です。この特例は、贈与税の申告書に特例の適用を受ける旨を記載し、計算の明細書などの書類を添付した場合に限って適用されます(租税特別措置法70条の2第14項。申告書は出したものの記載や添付が漏れていた場合に、やむを得ない事情があると税務署長が認めたときの救済規定は同条15項にあります)。国税庁は、受け取った金額が非課税となる金額以下で全額が非課税になる場合でも、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、戸籍の謄本や新築・取得の契約書の写しなどを添付して申告書を提出する必要があると案内しています。
適用期限
執筆時点の条文では、この特例の対象は令和6年(2024年)1月1日から令和8年(2026年)12月31日までの間の贈与です。執筆時点で、この期限を延ばす法改正は行われていません。国土交通省は2026年8月に公表した令和9年度の税制改正要望で、この特例について必要な検討を行い「所要の措置」を講じるよう求めていますが、これは要望の段階で、要望書にも延長の期間などの具体的な内容は書かれていません。2027年以降の贈与が対象になるかどうかは、今後の税制改正の内容次第で、現時点では決まっていません。
資金の割合と登記の持分の関係
国税庁は、贈与を受けた人がその家を所有することにならない場合(共有持分を持つ場合は所有に含まれます)には、この特例は使えないと案内しています。親からもらったお金で家を買うのに、その家の名義(持分)が贈与を受けた本人にないという形では、特例の前提を欠くことになります。
一方で、家の代金を誰がいくら負担したかと、登記簿に記録する持分の割合がずれると、ずれた分について贈与の問題が生じ得ます(相続税法9条のみなし贈与として扱われるのか、通常の贈与として扱われるのかを含め、どう扱われるかは資金の流れなどの事実関係によって変わります)。贈与の問題を生じさせないためには、登記の持分を、実際に誰がいくら負担したかに合わせて決めるのが基本です。持分の決め方と登記のかたちは、親からの住宅資金援助と登記で詳しく整理しています。
執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です。ここで紹介したのは公表されている要件の概要で、ほかにも細かな要件や添付書類の定めがあります。
まとめ
住宅取得等資金の贈与の非課税は、父母や祖父母などから、自分が住む家の新築・取得・増改築等に充てるお金の贈与を受けたときに、受贈者1人につき省エネ等住宅1,000万円・それ以外500万円までの贈与税をかからないようにする特例です。全額が非課税になる場合でも翌年2月1日から3月15日までの申告が必要で、執筆時点の条文では2026年12月31日までの贈与が対象です。特例が使えるかどうかや具体的な税額は、税理士または税務署にご確認ください。家の名義や持分の入れ方など登記の手続きについては、お近くの司法書士にご相談ください。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年10月・いずれも一次情報です)。
- 租税特別措置法 第70条の2(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/332AC0000000026
- 所得税法等の一部を改正する法律(令和6年法律第8号)附則第54条(租税特別措置法の附則として掲載。e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/332AC0000000026
- 租税特別措置法施行令 第40条の4の2(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/332CO0000000043
- 相続税法 第9条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000073
- 国税庁「相続税法基本通達 9-9(財産の名義変更があった場合)」: https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/sozoku2/01/06.htm
- 国税庁 タックスアンサー「No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4508.htm
- 国税庁 タックスアンサー「No.4508」の質疑(Q1〜Q6): https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4508_qa.htm
- 財務省「令和9年度税制改正要望(国土交通省)」25 住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置等に係る所要の措置: https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2027/request/mlit/09y_mlit_k_25.pdf
- 国土交通省「令和9年度税制改正要望事項」(令和8年8月): https://www.mlit.go.jp/page/content/002018722.pdf