この記事の要点

  • 夫婦の共有名義で家を買うときは、登記簿に「夫○分の○・妻○分の○」という持分の割合が必ず記録されます。この割合は、夫婦それぞれが購入資金をいくら負担したかに合わせて決めるのが基本です
  • 資金の負担割合と登記の持分が食い違うと、差額の分について夫婦の間で贈与があったものとして扱われ得ます。「夫婦だから半分ずつ」は、負担の実態と合っていなければ注意が必要です
  • 持分は登記を申請する時点で決めて書き込みます。あとから直すには別の登記(当初から誤っていた場合の更正の登記など)が必要で、手間も費用もかかります
  • 贈与税の配偶者控除などの特例もありますが、使えるかどうか・税額・申告が要るかどうかの判断は税理士にご相談ください
  • 持分の割合を決める前に、誰がいくら出すのかを書き出しておきましょう。登記の進め方は、お近くの司法書士にご相談ください

夫婦で家を買うとき、「名義は2人で半分ずつにしておけば公平だろう」と考える方は少なくありません。結論から言うと、共有名義の持分(その不動産に対してそれぞれが持つ権利の割合)は、夫婦それぞれが実際に負担した購入資金の割合に合わせて決めるのが基本です。夫婦であっても、資金の負担と持分がずれていると、そのずれた分について贈与があったものとして扱われ得るからです。

本記事では、夫婦の間での「お金の出し方」と「登記の持分」の関係に絞って、持分の決め方の手順と、あとから直す場合の考え方を整理します。親から住宅資金の援助を受ける場合の持分の入れ方は、親からの住宅資金援助と登記で別に解説しています。税額の計算や特例が使えるかどうかの判断は税理士の領域のため、本記事では扱いません。

共有名義の「持分」は登記簿に必ず書かれる

夫婦2人の名義で家を買うと、登記簿(登記事項証明書)の甲区(所有者に関する欄)には、2人の氏名・住所とあわせて、それぞれの持分が記録されます。不動産登記法59条4号は、登記名義人が2人以上いるときは「登記名義人ごとの持分」を登記事項とすると定めています。登記を申請する側から見ても、所有者となる人が2人以上いるときは、申請書に一人ひとりの持分を書くことになっています(不動産登記令3条9号)。

つまり、共有名義にする以上、「とりあえず2人の名前だけ載せておく」ということはできず、登記を申請する時点で持分の割合を決めておく必要があります。

なお、民法250条には「各共有者の持分は、相等しいものと推定する」という規定がありますが、これは持分の割合がはっきりしないときのための推定(反対の事情が示されない限り、そう扱うという決まり)です。実際の登記では申請書に割合を書くため、「何も決めなければ自動的に半分ずつ」で済ませるものではありません。

夫婦でも「誰のお金か」は別々に考える

「夫婦なのだから、どちらのお金でも同じでは」と感じるかもしれません。しかし民法762条1項は、夫婦の一方が結婚前から持っている財産や、結婚している間に「自己の名で得た財産」は、その人だけの財産(特有財産)になると定めています。法律の基本的な考え方としては、夫婦であっても財産は一人ひとり別々、ということです。

そのうえで、相続税法9条は、対価を払わずに(または著しく低い対価で)利益を受けた場合には、その利益の額に相当する金額を、利益を受けさせた人から贈与によって取得したものとみなす、と定めています。これがいわゆる「みなし贈与」です。夫婦の間で贈与契約を交わしたつもりがなくても、負担した資金の割合より多い持分を登記した側は、その差の分だけ相手から利益を受けた、と見られる可能性があるわけです。

たとえば、次のようなケースが典型です。

  • 夫が住宅ローンを組み、妻は購入資金を出していないのに、「夫婦だから」と持分を2分の1ずつにした
  • 妻が結婚前の貯金から頭金を多く出したのに、ローンを組んだ夫の単独名義にした
  • ペアローン(夫婦がそれぞれ別々に住宅ローンを組む方法)で借りた額と、登記の持分の割合がそろっていない

もっとも、こうしたずれが実際に贈与税の対象になるかどうか、なるとしてどう扱われるか(相続税法9条のみなし贈与として扱われるのか、通常の贈与として扱われるのかを含みます)は、資金の流れや返済の実態などの事実関係によって変わり、その判断は税務の領域です。本記事でお伝えできるのは、「資金の負担と持分がずれると、贈与の問題が生じ得る」という仕組みまでです。具体的なケースについては税理士にご相談ください。

持分の決め方──登記の前に整理しておきたいこと

持分の割合は、次の順番で整理していくと考えやすくなります。

1. 購入にかかるお金を、誰がいくら出すのか書き出す

まず、物件の購入代金を、誰がどの資金でいくら負担するのかを一覧にします。

  • 頭金(自己資金):夫の預金から○円、妻の預金から○円
  • 住宅ローン:誰が借りる(債務者になる)のか、いくら借りるのか

仮に、4,000万円の家を買うにあたり、夫が住宅ローンで3,000万円、妻が自分の預金から頭金1,000万円を出すのであれば、負担の割合は夫4分の3・妻4分の1になります。登記の持分も、この割合に合わせるのが基本的な考え方です。

ただし、登記費用などの諸費用を計算に含めるかどうかなど、細かな数え方によって割合が変わることもあります。どの金額を基準にするかは、税理士に確認しておくと安心です。

2. 住宅ローンの組み方を確認する

夫婦で住宅ローンを組む方法には、いくつかの型があります。

  • 一方だけが借りる:借りた人がローンの分を負担するのが基本です
  • ペアローン:夫婦がそれぞれ別のローンを組むため、誰がいくら借りたかが比較的はっきりします
  • 連帯債務など、2人で1つのローンを借りる方法:2人とも全額について返済の責任を負う形になるため、借入金をどちらの負担として数えるかは、返済の分担の取り決めなどによって変わります

特に3つ目の場合、借入金をどう割り振って持分を決めるかは税務上の考え方が関わるため、税理士に確認したうえで割合を決めるのが安全です。また、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)のように、ローンの組み方や持分と関係する税の制度もあります。使えるかどうかの判断も税理士にお尋ねください。

3. 決めた割合を、申請書に正しく書き込む

割合が決まったら、登記の申請書(申請情報)にその割合をそのとおり記載します。売買で買う場合は、売主から夫婦への所有権移転登記の申請書に、「持分4分の3 夫」「持分4分の1 妻」のように書くかたちになります。注文住宅のように建物を新築する場合は、建物の最初の登記の段階から所有者と持分を決めて進むため、資金計画が固まる前に手続きが進んでしまわないよう、早めに割合を決めておくことが大切です。

登録免許税は、持分の分け方で大きくは変わらない

登記をするときには、国に納める税金として登録免許税がかかります。売買による所有権移転登記の登録免許税は、原則として不動産の価額(固定資産税評価額を基にした額)に税率を掛けて計算します。

夫婦の共有名義で登記する場合、持分の割合をどう決めても、登記する不動産全体についての税額であることに変わりはないため、持分の分け方そのもので登録免許税の合計が大きく変わることは通常ありません。ただし、住宅用の家屋には一定の要件を満たすと税率が軽くなる措置があり、その要件を満たすかどうかの確認が必要です。具体的な税額の見積りは、登記を依頼する司法書士に確認できます。

一方、あとで持分を直すための登記をすると、そのための登録免許税や手続き費用が別にかかります。最初の申請で正しい割合を入れておくことが、結果的にいちばん手間とお金のかからない方法です。

あとから持分を直したいときは

登記した持分が実際の資金負担と違っていたことに後で気づいた場合、取り得る方法は、そのずれが「いつ」生じたものかによって分かれます。

  • 最初の登記の時点から、登記した持分が本来の持分と食い違っていた場合(申請書への書き誤りなど):登記事項に誤り(錯誤)があったものとして、更正の登記で正しい割合に直すことが考えられます。不動産登記法2条16号は、更正の登記を「登記事項に錯誤又は遺漏があった場合に当該登記事項を訂正する登記」と定めています。ただし、資金の割合を承知のうえで夫婦で決めた割合のとおりに登記していた場合まで、「誤り」として更正の登記で直せるとは限りません
  • 最初の登記は正しく、その後で持分を動かしたい場合:これは誤りの訂正ではなく、新たに持分を移す話になります。この場合は持分の移転の登記になり、無償で移せば、その時点であらためて贈与の問題が生じ得ます

なお、住宅ローンを借りて抵当権が設定されている家では、更正の登記をするときに、抵当権を持つ金融機関など登記上の利害関係を有する第三者の承諾が問題になることがあります(不動産登記法66条)。どの方法で直せるかは、最初の登記の経緯や担保の状況によって変わるため、関係する書類をそろえてお近くの司法書士に相談するのが確実です。持分を直すことが税務上どう扱われるかは、税理士にご確認ください。

また、離婚にともなって家の名義やローンをどう整理するかは、持分の決め方とは別の問題になります。ペアローンで買った家の整理については、ペアローンと離婚をご覧ください。

夫婦間の贈与には、配偶者控除という特例もある

夫婦の間の贈与については、婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用の不動産やその取得のための金銭を贈与した場合の「贈与税の配偶者控除」(相続税法21条の6)という特例があります。いわゆる「おしどり贈与」と呼ばれる制度で、登記との関係はおしどり贈与──婚姻20年の夫婦の自宅贈与と持戻し免除・登記で紹介しています。

ただし、この特例を使えるかどうか、使うと税額がどうなるか、申告が必要かといった判断は、個々の事情によって変わります。これらは税理士にご相談ください。本記事では、制度の名前と入口のご紹介にとどめます。

まとめ

夫婦で家を買って共有名義にするときは、登記簿に記録される持分の割合を、夫婦それぞれが実際に負担した資金の割合に合わせるのが基本です。夫婦であっても財産は一人ひとり別々に考えるのが法律の基本の考え方で、資金の負担と持分がずれていると、差額について贈与があったものとして扱われ得ます。持分は登記の申請時に決めて書き込むもので、あとから直すには別の登記が必要です。誰がいくら出すのかを登記の前に書き出し、税金の判断は税理士に、登記の持分の入れ方はお近くの司法書士にご相談ください。

よくある質問

Q. 夫婦の共有名義にすると、登記の費用は高くなりますか? 登録免許税は、登記する不動産全体の価額をもとに計算するため、単独名義か共有名義か、持分をどう分けるかによって合計額が大きく変わることは通常ありません。ただし、住宅用の家屋の軽減措置の要件など、個別に確認が必要な点はあります。あとで持分を直す登記をすると、その分の費用が別にかかります。具体的な見積りはお近くの司法書士にご確認ください。

Q. 持分が資金の割合とずれたまま放っておくと、どうなりますか? 持分がずれていても、その登記が自動的に直されたり、取り消されたりすることはありません。ただ、贈与があったものとして扱われ得る状態が続くことになり、時間がたつほど「誰がいくら出したか」を示す振込記録や契約書が散らばりやすくなります。購入時の資料はまとめて保管しておきましょう。ずれに気づいたら、税金の扱いは税理士に、登記の直し方はお近くの司法書士に早めに相談するのが安全です。

Q. 持分の割合は夫婦で決めてよいのですか?どこに相談すればいいですか? 割合を話し合って決めること自体は夫婦で行えます。ただ、実際の資金負担に合った割合になっているか、申請書に正しく書き込めているかは確認が必要です。登記の申請や持分の入れ方はお近くの司法書士に、贈与税がかかるかどうか・特例が使えるかどうかは税理士にご相談ください。


【さらに深掘り】共有持分の登記実務──申請時の持分の表し方と更正の登記の要件

ご注意 以下は執筆時点(2026年10月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。

1. 申請情報の持分と登記原因証明情報をそろえる

権利の保存・設定・移転の登記を申請する場合に、登記名義人となる者が2人以上いるときは、その者ごとの持分が申請情報の内容になります(不動産登記令3条9号)。売買で夫婦が共有名義で買う場合は、買主である夫婦がそれぞれ登記権利者、売主が登記義務者となり(不動産登記法2条12号・13号)、共同で申請するのが原則です(同法60条)。添付情報としては、登記原因を証する情報のほか、登記名義人となる者それぞれの住所を証する情報が必要とされています(不動産登記令別表30の項)。

このほか、所有権の保存・移転の登記を申請するときは、所有権の登記名義人となる者(申請人である者に限ります)について、氏名・氏名の振り仮名・住所・生年月日・電子メールアドレス・国籍等の「検索用情報」を申請情報の内容として申し出るものとされています(不動産登記規則158条の39第1項)。このうち国籍等は、2026年10月5日施行の規則改正(令和8年法務省令第23号)で加わった項目です。振り仮名・生年月日・国籍等については、一定の場合を除き、これらを証する情報もあわせて提供します(同条2項・3項)。夫婦の共有名義で買う場合は、夫と妻それぞれについて必要になります。

また、申請情報の内容が登記原因を証する情報の内容と合致しないことは、却下事由の一つとされています(不動産登記法25条8号。補正できる不備を登記官が定めた期間内に補正した場合を除きます)。登記原因証明情報で買主ごとの取得持分を示すときは、申請情報に書く持分と食い違わないようにそろえておくことが前提になります。

2. 新築の建物では、表題登記の段階で持分が記録される

注文住宅のように夫婦が建物を新築して所有者となる場合、最初にされるのは権利に関する登記ではなく、表示に関する登記である表題登記です。新築した建物の所有権を取得した者は、取得の日から1か月以内に表題登記を申請しなければならないとされ(不動産登記法47条1項)、所有権の登記がない建物の表題部には、所有者が2人以上であるときは所有者ごとの持分が記録されます(同法27条3号。申請情報については不動産登記令3条9号)。

続く所有権の保存の登記は、表題部所有者またはその相続人その他の一般承継人などに限って申請できるとされています(不動産登記法74条1項)。表題部に記録された所有者と持分が、その後の保存登記の出発点になるということです。

保存の登記の前に表題部の持分の誤りに気づいた場合には、「表題部所有者である共有者の持分についての更正の登記」という表示に関する登記の手続があります。この登記はその共有者以外は申請できず、持分が更正されることになる他の共有者の承諾が必要です(同法33条3項・4項、不動産登記令別表3の項)。

なお、新築マンションのような区分建物では、分譲業者などの表題部所有者から所有権を取得した者が、直接、所有権の保存の登記を申請することができます(不動産登記法74条2項。敷地権付き区分建物では敷地権の登記名義人の承諾が必要です)。この場合は、買主の保存の登記の申請情報に、買主ごとの持分を書くことになります(不動産登記令3条9号)。

3. 持分の更正の登記の要件

更正の登記は、登記事項に錯誤または遺漏があった場合に、それを訂正する登記です(不動産登記法2条16号)。持分の更正も権利に関する登記の更正の登記にあたり、申請には登記原因を証する情報の提供が求められます(不動産登記令別表25の項)。その内容として、当初の登記の時点で本来の持分が別の割合であったこと、つまり申請の時から登記が誤っていたことを示すことになります。

申請人については、持分が増える共有者は登記上直接に利益を受ける者、持分が減る共有者は登記上直接に不利益を受ける登記名義人にあたります(同法2条12号・13号)。申請人の組み方は当初の登記の経緯に照らして確認が必要ですが、両者の共同申請(同法60条)が出発点になります。

登記上の利害関係を有する第三者がいる場合、更正の登記は、その第三者の承諾があるとき(または第三者がいないとき)に限り、付記登記によってすることができるとされています(同法66条)。申請の際は、その第三者の承諾を証する情報、またはその第三者に対抗することができる裁判があったことを証する情報を提供します(不動産登記令別表25の項)。たとえば、持分が減る共有者の持分に抵当権が設定されていれば、その抵当権者は更正によって担保の目的が減る立場になるため、承諾の要否を事前に確認しておくことになります。

4. 更正か持分移転かで、登録免許税も変わる

登記事項の更正の登記の登録免許税は、不動産1個につき1,000円です(登録免許税法別表第一第1号(14))。これに対し、登記に誤りがなく、後から持分を動かす場合は持分の移転の登記になり、課税標準は不動産の価額に移転する持分の割合を掛けた金額(同法10条2項)、税率は贈与などによる移転であれば1,000分の20です(同法別表第一第1号(2)ハ)。

もっとも、どちらの登記になるかは費用ではなく事実で決まります。当初の登記の時点で誤りがなかったのであれば、登記事項の「錯誤又は遺漏」を前提とする更正の登記の要件を満たしません。持分の更正や移転が税務上どう扱われるかは、税理士の判断領域です。

5. 住宅用家屋の軽減措置と共有

売買による所有権の移転の登記の税率は、建物が1,000分の20(登録免許税法別表第一第1号(2)ハ)、土地が令和11年3月31日までの登記について1,000分の15(租税特別措置法72条1項1号)です。新築した建物の所有権の保存の登記は1,000分の4です(登録免許税法別表第一第1号(1))。

住宅用家屋については、令和9年3月31日までの新築・取得を対象に、保存の登記が1,000分の1.5(租税特別措置法72条の2)、売買などによる移転の登記が1,000分の3(同法73条)に軽減される措置があります。いずれも、政令で定める住宅用家屋であること、個人が新築または取得してその個人の居住の用に供したこと、財務省令で定めるところにより新築または取得後1年以内に登記を受けることなどが要件とされています。この「1年以内」について、移転の登記(73条)には「1年以内に登記ができないことにつき政令で定めるやむを得ない事情がある場合には、政令で定める期間内」とする例外が条文に置かれていますが、保存の登記(72条の2)の条文にはこの例外がありません。

共有との関係では、課税標準は登記の時における不動産の価額とされ(登録免許税法10条1項)、持分の取得に係る登記では価額に持分の割合を掛けた金額とされています(同条2項)。共有者全員の持分を足せば不動産全体になるため、同じ税率が適用される限り、持分をどう分けても課税標準の合計は不動産全体の価額となり、税額の合計が大きく変わることはありません。他方、住宅用家屋の軽減措置は「個人が…取得をし、当該個人の居住の用に供した場合」という形で定められているため、共有者それぞれについて要件を満たすかどうかを確認することになります。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年10月・いずれも一次情報です)。

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