この記事の要点
- 中古住宅を買う前は、土地と建物の登記簿(登記事項証明書)で5項目を確認する──①売主と所有者(登記名義人)は一致しているか ②抵当権が残っていないか ③差押え・仮差押えが入っていないか ④仮登記がないか ⑤共有になっていないか
- 登記された権利の内容と登記名義人は、不動産会社(宅地建物取引業者)の重要事項説明でも説明される事項です(宅地建物取引業法35条1項1号)。説明に代わるものではなく、説明とあわせて自分の目でも確かめるためのチェックです
- 登記事項証明書は1通600円、オンラインで請求すれば窓口受取490円・郵送520円(登記手数料令2条1項・3条1項)
- 気になる登記を見つけたら、それが何を意味するかを確かめ、決済(代金の支払いと引き渡し)までに抹消されるのか、どういう段取りなのかを契約前に確認します
中古住宅を買う前に、登記簿で確認しておきたいのは「所有者」「抵当権」「差押え」「仮登記」「共有」の5項目です。どれも登記事項証明書(いわゆる登記簿謄本)の甲区(こうく=所有権に関する欄)と乙区(おつく=所有権以外の権利に関する欄)を見れば分かります。
登記事項証明書の構造(表題部・甲区・乙区)そのものの読み方は、別記事「登記簿(登記事項証明書)の見方──表題部・甲区・乙区は何が書いてある?」で整理しています。この記事では、これから家を買う側の目線に立って、どこを見て、何が書いてあったら何を意味するのかに絞って解説します。
なぜ買う前に登記簿を見るのか
不動産の権利は、登記をしなければ第三者に主張(対抗)できないのが原則です(民法177条)。登記簿は、その不動産について「誰が所有者として登記されているか」「どんな権利が付いているか」を誰でも確認できるように公開している記録です。
買主も、代金を払ったあとは自分の名義にする登記(所有権移転登記)をします。ただ、その時点ですでに登記簿に入っている抵当権・差押え・仮登記などは、内容によっては後から登記した買主よりも優先することがあります。だからこそ、契約前に「すでに何が入っているか」を見ておくことに意味があります。
不動産会社が仲介する売買や、不動産会社が売主となる売買では、契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士が「登記された権利の種類と内容」「登記名義人」などを、書面(買主が承諾した場合は電子データ)を渡して説明することになっています(宅地建物取引業法35条1項1号・8項)。この記事のチェックは、その重要事項説明の代わりになるものではありません。説明を聞く前後に自分でも登記簿を開き、分からない点を質問できるようにしておくための目安と考えてください。
なお、登記記録は1筆の土地、1個の建物ごとに作られます(不動産登記法2条5号)。一戸建てなら土地と建物の両方、敷地が複数の筆に分かれていれば筆ごとに確認します。証明書は法務局の窓口・郵送・オンラインで請求できるほか、閲覧用のデータで足りるなら「登記情報提供サービス」で確認する方法もあります。
チェック1 所有者──売主と登記名義人は一致しているか
最初に見るのは甲区です。甲区のいちばん新しい所有権の登記(下線で消されていないもの)に書かれた「所有者」の氏名・住所が、売主本人と一致しているかを確認します。
一致しないときに考えられる典型は次のとおりです。
- 名義人がすでに亡くなっている:相続登記がされず、亡くなった方の名義のままになっているケースです。登記は権利の移り変わりを順にたどる形で記録されるため、売買の登記の前に、相続人の名義にする相続登記が必要になるのが通常です
- 住所や氏名が変わっている:引っ越しや結婚などで、登記簿上の住所・氏名が今のものと違うケースです。売買の登記の前に、登記名義人の住所・氏名の変更登記が必要になります
- 売主とまったく別の人が名義人になっている:なぜ別人の名義なのか、売主がどういう立場で売るのかを、仲介する不動産会社に確認すべき場面です
あわせて、甲区の「原因」欄(売買・相続・贈与など)と日付を見ると、売主がいつ、どんな理由でその不動産を取得したのかが分かります。
チェック2 抵当権──決済の日に抹消される段取りか
次は乙区です。「抵当権設定」「根抵当権設定」といった登記が残っていないかを確認します。
抵当権は、お金を貸した人(銀行など)が、返済が滞ったときにその不動産から他の債権者より先に返してもらえる権利です(民法369条1項)。抵当権は、不動産の所有者が変わっても付いたまま残る性質があるため、抹消されないまま買ってしまうと、売主の借金が返されなかったときに、買った家が競売にかけられるおそれが残ります。
売主の住宅ローンが残っている中古住宅は珍しくありません。一般には、買主が払う売買代金で売主がローンを完済し、決済と同じ日に抵当権の抹消登記の手続をする段取りが組まれます。確認したいのは次の点です。
- 売買契約書や重要事項説明に、引き渡しまでに抵当権を抹消する旨が書かれているか
- 乙区に抵当権が複数ある場合、そのすべてが抹消の対象になっているか
なお、乙区の「債権額」はローンを組んだ時点の金額で、今の残高ではありません。また、ローンを完済しても抵当権の登記は自動では消えず、抹消の登記をして初めて消えます。乙区の各項目の意味は「登記簿の『乙区』を読み解く──抵当権の記載事項は何を意味するか」で詳しく整理しています。
チェック3 差押え・仮差押え──甲区に「差押」の文字がないか
甲区に「差押」「仮差押」という登記がないかも確認します。
差押えの登記が入る代表的な場面は二つです。一つは、債権者の申立てによる裁判所の競売の手続が始まった場合で、開始決定がされると裁判所書記官が差押えの登記を嘱託します(民事執行法48条1項。抵当権にもとづく競売〔担保不動産競売〕では同法188条による準用)。もう一つは、税金の滞納を理由に税務署などが差し押さえた場合で、税務署長が法務局に差押えの登記を依頼(嘱託)することになっています(国税徴収法68条3項)。このほか、不動産そのものではなく賃料などの収益から回収する強制管理の手続でも、開始決定で不動産を差し押さえる旨が宣言され(民事執行法93条1項)、差押えの登記がされます(同法111条・48条1項)。競売や滞納処分による差押えの場合、差し押さえられた不動産は、裁判所の競売や、税の滞納処分としての公売(国税徴収法94条1項)で売却されることがあります。
裁判所の競売で売却された場合、差押えをした債権者に対抗できない権利の取得は効力を失うとされています(民事執行法59条2項)。差押えの効力は、開始決定が債務者に送達された時か、それより前に差押えの登記がされたときは登記の時に生じます(同法46条1項)。差押えの登記の後にその不動産を買っても、この「対抗できない権利の取得」にあたると考えられており、競売で売却されると買主の権利が失われるおそれがあります。
仮差押えは、裁判などで決着がつく前に、債権者が相手の財産を仮に押さえておく手続です。仮差押えのしくみは「訴訟で勝つ前に相手の財産を凍結する|仮差押え(民事保全)の手続きと担保の仕組み」で解説しています。
差押えや仮差押えの登記がある物件を見つけたときに確認したいのは、その登記が決済までに抹消されるのか、誰がどの手続で抹消するのかという点です。差押えの登記がどうやって入り、どうやって消えるのかは「自分で申請していない登記が載っているのはなぜ?──裁判所や役所が法務局に頼む『嘱託登記』のしくみ」で整理しています。債権者との間で争いがある場合など、権利関係そのものに争いが絡む事情があるときは、弁護士に相談すべき場面です。
チェック4 仮登記──「仮」でも順位を押さえている
甲区に「所有権移転仮登記」「所有権移転請求権仮登記」といった仮登記がないかも見ておきます。
仮登記は、本登記(正式な登記)をするための条件がまだ整っていないときに、登記の順位だけを先に確保しておく登記です。「仮」という名前から軽く見られがちですが、仮登記にもとづいて本登記がされると、その本登記の順位は仮登記の順位になります(不動産登記法106条)。
所有権の仮登記の場合、仮登記にもとづく本登記の申請には、仮登記より後に登記をした人(登記上の利害関係を有する第三者)の承諾が必要とされ、本登記がされると、その人の権利の登記は登記官の職権で抹消されます(同法109条)。つまり、仮登記より後に所有権の登記をした買主は、仮登記が本登記になったときに、順位で負けて自分の登記を抹消される立場に置かれます。
仮登記を見つけたら、誰の名義で、いつ、どんな原因で入ったものか、そして決済までに抹消されるのかを確認します。何十年も前の仮登記が残っているケースもあります。仮登記の種類(1号仮登記・2号仮登記)や古い仮登記の注意点は「仮登記(かりとうき)とは?登記の「順位」を確保する仮のしくみ」で解説しています。
チェック5 共有──売主は「全員」そろっているか
最後に、甲区で所有者が1人なのか、複数人の共有なのかを確認します。共有の場合は「共有者 持分2分の1 A」「2分の1 B」のように、共有者ごとの持分(所有の割合)が書かれています。
共有者の1人が持っているのは、その人の持分です。家全体を買うには、登記簿に載っている共有者全員から持分を譲り受ける必要があり、共有者全員が売主として契約と登記の手続に加わるのが原則です。確認したいのは次の点です。
- 登記簿に載っている共有者全員が、売主として契約に名前を連ねているか
- 持分を合計すると1(全部)になるか
- 共有者のうち亡くなっている人がいないか(いれば、その人の持分について相続登記が先に必要になるのが通常です)
夫婦や親子での共有、相続による兄弟姉妹での共有は珍しくありません。共有の確認の仕方は、実家の登記簿を点検する視点でまとめた「実家の登記簿を取ってみよう──帰省中にできる「実家の健康診断」5つのチェック」でも取り上げています。
登記簿を見るタイミングと、登記簿だけでは分からないこと
登記事項証明書に書かれているのは、請求した時点の内容です。契約前に確認したあとも、決済までの間に新しい登記が入る可能性はゼロではありません。契約前だけでなく、決済の直前にも最新の内容を確認することが大切です。
また、登記簿で分かるのは登記された権利関係です。建物の傷み具合、境界がはっきりしているか、登記されていない賃貸借があるかといった事柄は、登記簿だけでは分かりません。こうした点は、重要事項説明や現地での確認とあわせて判断することになります。
まとめ
中古住宅を買う前に登記簿で確認したい5項目は、①売主と所有者(登記名義人)の一致、②抵当権、③差押え・仮差押え、④仮登記、⑤共有です。甲区と乙区を順に見ていけば、どれも自分で確認できます。
気になる登記を見つけたときに大切なのは、その登記が何を意味するのかを知ったうえで、決済までに抹消されるのか、どういう段取りになっているのかを契約前に確かめることです。重要事項説明で分からない点は宅地建物取引士に質問し、登記の意味や抹消の手続について不安があれば、お近くの司法書士にご相談ください。
よくある質問
Q. 登記簿を取るのにいくらかかりますか?
登記事項証明書は、窓口や郵送で請求すると1通600円です(登記手数料令2条1項)。オンラインで請求すると、窓口で受け取る場合は1通490円、郵送で受け取る場合は1通520円です(同令3条1項)。一戸建てなら土地と建物で最低2通、敷地が複数の筆に分かれていればその分だけ必要です。閲覧用のデータで足りるなら、登記情報提供サービスを使う方法もあります。
Q. いつまでに確認すればよいですか?確認しないとどうなりますか?
登記簿の確認に法律上の期限はありませんが、売買契約を結ぶ前に確認しておくのが基本です。抵当権や差押え・仮登記が残ったまま所有権を取得すると、競売で権利を失ったり、仮登記が本登記になって自分の登記を抹消されたりするおそれがあります。契約前に加えて、決済の直前にも最新の内容を確認しましょう。
Q. 自分で確認できますか?どこに相談すればよいですか?
登記事項証明書の取得と、この記事の5項目の確認は自分でもできます。重要事項説明の内容で分からない点は、説明をした宅地建物取引士に質問しましょう。登記の意味や、抵当権・差押え・仮登記の抹消の手続については司法書士、権利関係に争いがある場合は弁護士、境界や面積のことは土地家屋調査士が相談先になります。
【さらに深掘り】順位・受付日・原因欄の読み方と、決済前に必要になる登記の根拠
ご注意 以下は執筆時点(2026年10月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。
ここでは、本文の5項目を登記の条文に引き寄せて、もう一段だけ掘り下げます。登記簿の読み方の解説であり、重要事項説明に代わるものではありません。
権利の優劣は「順位番号」と「受付番号」で決まる
同じ不動産について登記された権利の順位は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記の前後によります(不動産登記法4条1項)。その「前後」の判定方法は不動産登記規則に定めがあり、同じ区(甲区どうし、乙区どうし)の登記の間では順位番号、甲区と乙区にまたがる登記の間では受付番号で比べます(不動産登記規則2条1項)。順位番号は、登記官が権利部の各区に登記事項を記録した順序を示す番号です(同規則147条1項)。
たとえば、甲区の差押えと乙区の抵当権のどちらが先かは、順位番号ではなく受付番号を見比べることになります。また、同じ不動産について権利に関する登記の申請が二つ以上あったときは、登記官は受付番号の順に登記をすることになっています(不動産登記法20条)。
抵当権の移転や変更などは、すでにある登記(主登記)に付け加える「付記登記」としてされることがあります。付記登記の順位は主登記の順位により、同じ主登記に付いた付記登記どうしはその前後によります(同法4条2項)。乙区で抵当権者の名前が途中で変わっている場合は、元の抵当権の登記とあわせて読みます。
「受付年月日」と「原因の日付」は別のもの
権利に関する登記には、「申請の受付の年月日及び受付番号」と「登記原因及びその日付」が別々の登記事項として記録されます(不動産登記法59条2号・3号)。前者は法務局が申請を受け付けた日、後者は売買・相続・贈与といった権利の移り変わりの原因と、その日付です。
この二つが大きく離れていることもあります。原因が「相続」の登記では、相続は死亡によって開始し(民法882条)、登記の申請はその後にされるため、原因の日付から何年もたってから受け付けられていることがあります。甲区を見るときは、受付年月日(いつ登記されたか)と原因の日付(いつ権利が移ったか)を分けて読むと、名義の移り変わりを取り違えにくくなります。
名義人の住所・氏名が違う、名義人が亡くなっている場合──なぜ先に登記が必要か
本文で「売買の登記の前に、住所・氏名の変更登記や相続登記が必要になる」と書いた点のうち、住所・氏名の変更登記には条文上の手がかりがあります。登記官は、申請情報の内容である登記義務者(売買なら売主側)の氏名・名称や住所が登記記録と合致しないときは、補正されない限り申請を却下しなければならないとされています(不動産登記法25条7号)。登記簿上の住所・氏名が古いままだと、申請情報に書く今の住所・氏名と登記記録が合致しないため、先に変更の登記で食い違いを解消しておく必要があります。
名義人が亡くなっている場合は、少し事情が異なります。登記義務者は、その登記によって登記上直接に不利益を受ける登記名義人とされており(同法2条13号)、相続人は、相続登記をするまでは登記記録上の名義人ではありません。登記は権利の移り変わりを順にたどって記録するものなので、相続人が売主となる売買では、亡くなった方から相続人への相続登記を先にしてから売買の登記をするのが原則です。なお、亡くなった方が生前に売っていて登記だけが済んでいなかった場合には、相続人が亡くなった方の立場を引き継いで売買の登記を申請する方法があります(同法62条)。これは、相続人自身が売主となる売買とは別の場面です。
また、現在の不動産登記法では、所有権の登記名義人の氏名・名称や住所に変更があったときは、変更があった日から2年以内に変更の登記を申請しなければならないとされ(同法76条の5)、正当な理由なく怠ったときは5万円以下の過料の対象となります(同法164条2項)。この義務は2026年4月1日に始まったもので、それより前に住所などが変わって変更の登記をしていない場合も対象になります。その場合の期限は、2026年4月1日から2年以内、つまり2028年3月31日までとされています(民法等の一部を改正する法律〔令和3年法律第24号〕附則5条7項)。
共有の不動産で、共有者の一部について相続や持分の売買などがあった場合、その変化は後の順位番号の登記として甲区に追加されていきます。登記名義人が二人以上のときは名義人ごとの持分も登記事項とされているため(同法59条4号)、現在の共有者と持分は、いちばん新しい1件だけでなく、甲区を順位番号の順にたどって確かめるのが確実です。
抵当権は所有者が変わっても残る──抹消に抵当権者の関与が必要な理由
本文で「抵当権は所有者が変わっても付いたまま残る」と書いた点について、民法には、抵当権が付いた不動産を買い受けた人(第三取得者)がいることを前提にした規定が置かれています。抵当権者の請求に応じて代価を支払ったときに抵当権がその人のために消滅する「代価弁済」(民法378条)や、第三取得者がする「抵当権消滅請求」(同法379条)です。これらは、所有者が変わっただけでは抵当権が消えないことを前提にしたしくみです。
また、ローンを完済しても抵当権の登記が自動では消えないのは、権利に関する登記の申請が、法令に別段の定めがある場合を除き、登記権利者と登記義務者が共同してしなければならないとされているためです(不動産登記法60条)。抵当権の抹消では抵当権者(金融機関など)が登記義務者の側に立ち、原則として抵当権者の登記識別情報を申請とあわせて提供する必要があります(同法22条)。本文の「決済と同じ日に抵当権の抹消登記の手続をする段取り」は、この抵当権者側の書類がそろうことを前提に組まれるものです。
差押えの登記は、売主・買主の申請だけでは消せない
登記は、法令に別段の定めがある場合を除き、当事者の申請か、官庁・公署の嘱託がなければすることができません(不動産登記法16条1項)。税金の滞納による差押えの登記は税務署長の嘱託で入りますが(国税徴収法68条3項)、消すときも同じように嘱託によります。徴収職員は、納付などによって差押えに係る国税の全額が消滅したときは差押えを解除しなければならず(同法79条1項1号)、不動産などの差押えを解除したときは、税務署長がその登記の抹消を嘱託しなければならないとされています(同法80条3項)。
つまり、税金の滞納による差押えの登記が決済までに抹消されるかどうかは、滞納の解消などを理由とする差押えの解除という、差押えをした側の手続が前提になります。本文で「誰がどの手続で抹消するのか」を確認するとしたのは、このためです。
なお、2027年4月1日からは、差し押さえられた不動産が売却され、滞納者から申出があった場合に、売却価額をもとにした一定額の納付があり国税の徴収上支障がないと認められるときは差押えを解除することが「できる」とする類型が加わります(所得税法等の一部を改正する法律〔令和8年法律第12号〕による改正後の国税徴収法79条2項4号。2026年10月時点では施行前です)。
「所有権移転請求権仮登記」と担保仮登記
仮登記には、権利の移転などはすでに生じているが申請に必要な一定の情報を提供できない場合のもの(不動産登記法105条1号)と、権利の移転などの請求権を保全しようとする場合のもの(同条2号)があります。甲区に「所有権移転請求権仮登記」とあれば、名称のとおり、所有権移転の請求権を保全するための仮登記として読みます。
このうち、お金の貸し借りの担保として使われるものがあります。仮登記担保契約に関する法律は、金銭債務を担保するため、不履行があったときに所有権などを債権者に移転することを目的としてされた代物弁済の予約、停止条件付代物弁済契約その他の契約で、仮登記又は仮登録ができるものを「仮登記担保契約」と定めています(同法1条)。こうした仮登記(同法では「担保仮登記」)は、競売の手続では順位に関して抵当権とみなされ、担保仮登記がされた時に抵当権の設定の登記がされたものとみなされます(同法13条1項)。
甲区の原因欄に記録された登記原因(同法1条が例に挙げる代物弁済の予約など)は手がかりになりますが、担保仮登記にあたるかどうかは、金銭債務を担保する目的の契約かどうかによるため(同法1条)、登記簿の記載だけで判断しきれるものではありません。どちらにあたる場合でも、その仮登記が決済までに抹消されるのかを確認するという点は、本文で述べたとおりです。仮登記の権利者との間で権利関係に争いがある場合は、弁護士に相談すべき場面です。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年10月・いずれも一次情報です)。
- 民法 第177条・第369条・第378条・第379条・第882条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- 不動産登記法 第2条・第4条・第16条・第20条・第22条・第25条・第59条・第60条・第62条・第76条の5・第105条・第106条・第109条・第164条、民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)附則第1条・第5条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123
- 不動産登記規則 第2条・第147条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/417M60000010018
- 宅地建物取引業法 第35条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/327AC1000000176
- 登記手数料令 第2条・第3条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/324CO0000000140
- 民事執行法 第46条・第48条・第59条・第93条・第111条・第188条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004
- 国税徴収法 第68条・第79条・第80条・第94条(令和8年法律第12号による改正後の第79条〔2027年4月1日施行〕を含む)(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000147
- 仮登記担保契約に関する法律 第1条・第4条・第13条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/353AC0000000078
- 法務省「住所等変更登記の義務化について」: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00693.html
- 法務省民事局長通達 令和8年3月27日付け法務省民二第525号「民法等の一部を改正する法律の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて(符号の表示関係及び職権による住所等変更登記関係)」: https://www.moj.go.jp/content/001459424.pdf