この記事の要点
- 登記簿(登記事項証明書)の甲区にある「差押」は、所有者が申請した登記ではなく、差押えをした税務署・自治体や裁判所の側が法務局に頼んで(嘱託して)入れる登記です
- 誰が差し押さえたかは、「原因」欄と「債権者」などの欄で読み分けます。裁判所の強制競売なら原因欄に「何地方裁判所(支部)強制競売開始決定」と記録され(担保不動産競売も裁判所の開始決定にもとづく差押えです)、税金の滞納処分なら、国税は財務省、地方税は差押えをした都道府県・市区町村が登記上の権利者になります
- 差押えの登記が入っても、それだけで所有者が変わるわけではありません。ただし放置すると、公売(税金)や競売(裁判所)で売却される手続に進むことがあります
- 記載が消える道筋は、①税金の完納などによる差押えの解除、②競売の取下げ・取消し、③競売での売却、④公売での売却の4つが代表的で、原則として差押えや売却の手続をした税務署・自治体や裁判所の側の嘱託で抹消されます
登記簿に「差押」の文字を見つけたら、まず確かめたいのは「誰が、何を理由に差し押さえたのか」です。結論からいうと、その答えは甲区の「権利者その他の事項」欄に書かれている原因と債権者などの名前を見ればおおよそ分かります。差押えの主体は大きく分けて、国(国税)、都道府県や市区町村(地方税)、裁判所(強制競売・担保不動産競売)の3つで、主体によってその後の流れも、記載が消えるまでの道筋も変わります。
この記事は、登記簿に差押えの記載があったときの読み方と、その後に起こること・記載が消えるまでの流れに絞って解説します。これから家を買う側の目線で「差押えがある物件をどう確認するか」は、「中古住宅を買う前に登記簿でチェックする5項目」で整理しています。
なお、この記事は執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です。
「差押」は所有者が申請した登記ではない
登記事項証明書は、表題部・甲区・乙区の3つの欄に分かれています。差押えの登記が入るのは、所有権に関する事項を記録する甲区です。それぞれの欄の基本的な読み方は「登記簿(登記事項証明書)の見方」をご覧ください。
差押えの登記の特徴は、所有者本人が法務局に申請したものではない点です。登記は、当事者の「申請」のほか、官庁や公署(役所や裁判所)の「嘱託(しょくたく)」によってもされます(不動産登記法16条1項)。差押えの登記は、この嘱託によって入る登記の代表例です。
- 裁判所の競売:強制競売の開始決定がされると、裁判所書記官が直ちに差押えの登記を嘱託します(民事執行法48条1項)。抵当権などにもとづく担保不動産競売にも、この規定が準用されます(同法188条)。
- 国税の滞納処分:税務署長は、不動産を差し押さえたときは、差押えの登記を関係機関(法務局)に嘱託しなければならないとされています(国税徴収法68条3項)。
- 地方税の滞納処分:たとえば固定資産税では、市町村の徴税吏員が滞納者の財産を差し押さえ(地方税法373条1項)、その滞納処分は国税徴収法に規定する滞納処分の例によるとされています(同条7項)。
誰が差し押さえたかは「原因」と「債権者」の欄で読む
甲区の差押えの登記は、「登記の目的」欄に「差押」、「受付年月日・受付番号」欄に法務局が受け付けた日と番号、「権利者その他の事項」欄に原因と債権者などが記録される形になっています。主体ごとの違いを表にまとめると、次のとおりです。
| 差押えの主体 | 差押えのきっかけ | 登記を嘱託する人 | 登記簿での手がかり |
|---|---|---|---|
| 国(国税) | 所得税・相続税などの滞納 | 税務署長など(国税徴収法68条3項) | 登記上の権利者は財務省 |
| 都道府県・市区町村(地方税) | 固定資産税・住民税などの滞納 | 差押えをした地方団体の側(地方税法373条7項により国税徴収法の例による) | 登記上の権利者は差押えをした都道府県・市区町村 |
| 裁判所(強制競売) | 判決などの「債務名義」にもとづく強制執行(民事執行法22条) | 裁判所書記官(同法48条1項) | 原因欄に「何地方裁判所(支部)強制競売開始決定」、債権者欄に申立てをした債権者 |
| 裁判所(担保不動産競売) | 抵当権などの担保権の実行(同法181条1項) | 裁判所書記官(同法188条・48条1項) | 裁判所の開始決定にもとづく差押えである点は強制競売と同じ。債権者の名前が記録されていれば、乙区の抵当権者と見比べるのが手がかり |
裁判所の競売による差押え
法務省の通達に示された記録例では、裁判所の強制競売による差押えは、原因欄に「令和何年何月何日何地方裁判所(支部)強制競売開始決定」、その下に「債権者」として申立てをした債権者の住所・氏名が記録される形になっています(令和6年3月22日付け法務省民二第551号通達の別紙記録例)。原因欄の日付は、登記の受付日ではなく、裁判所が開始決定をした日です。
担保不動産競売の場合も、裁判所の開始決定を受けて裁判所書記官が差押えの登記を嘱託する点は強制競売と同じです(民事執行法188条・48条1項)。担保不動産競売は抵当権などの担保権の実行なので、強制競売の記録例と同じように差押えの債権者の名前が記録されていれば、その名前を乙区に登記されている抵当権の権利者(金融機関や保証会社など)と見比べると、「どの抵当権にもとづく競売か」の見当をつける手がかりになります。住宅ローンの滞納から競売に至るまでの時系列は、「住宅ローンを滞納するとどうなる」で整理しています。
税金の滞納処分による差押え
国税の滞納処分による差押えでは、国税庁の通達で、差押えの登記の登記権利者は財務省、登記を嘱託することができるのは国税局長・税務署長・税関長とされています(国税徴収法基本通達第68条関係34(1))。このため、裁判所の名前や「競売開始決定」の文字がなく、財務省の名前が記録されていれば、国税の滞納処分による差押えと読む手がかりになります。
法務省が公表している差押えの登記嘱託書の記載例では、登記の目的は「差押」、原因は「何年何月何日○○税務署差押」のように、どこの徴税官署による滞納処分の差押えかを特定する形で記載し、原因の日付は差押えの決定日とされています。地方税の場合は、登記上の権利者としてその都道府県や市区町村の名前を記載するとされています(法務省「所有権の差押登記嘱託書(オンライン庁)の例」)。これは役所が法務局に出す嘱託書の書き方の例で、登記簿にどのような見出しで記録されるかまでを示したものではありませんが、原因欄に税務署や自治体の名前が入っていれば、税金の滞納処分による差押えを見分ける手がかりになります。
すでに税金の差押えがされている不動産について、別の税務署や自治体が「参加差押え」をすることもあります。この場合も、参加差押えの登記が嘱託されます(国税徴収法86条1項2号・3項)。甲区に「参加差押」が並んでいれば、複数の機関が同じ不動産から税金などの回収を予定していることを示しています。
「仮差押」との違い
甲区には「仮差押」という登記が入ることもあります。仮差押えは、裁判などで決着がつく前に、債権者が相手の財産を仮に押さえておく民事保全の手続で、ここでいう差押えとは段階が異なります。しくみは「訴訟で勝つ前に相手の財産を凍結する|仮差押え(民事保全)」で解説しています。
差押えの登記が入っても、所有者はまだ変わっていない
差押えの登記が入っても、所有権はまだ所有者のもとにあります。甲区のいちばん新しい所有権の登記に記録されている人(登記上の所有者)が、差押えの登記によって入れ替わるわけではありません。所有者が変わるのは、後で述べる公売や競売で売却され、買受人が代金を納付する段階です(民事執行法79条、国税徴収法116条1項)。裁判所の競売による差押えは、債務者が通常の用法に従って不動産を使用し、または収益することを妨げないとされています(民事執行法46条2項)。
差押えの効力が生じる時期は、裁判所の競売では開始決定が債務者に送達された時、ただし差押えの登記が送達より前にされたときは登記の時とされています(民事執行法46条1項)。国税の滞納処分でも、差押書が滞納者に送達された時に効力が生じ、差押えの登記が送達より前にされた場合は登記の時に効力が生じます(国税徴収法68条2項・4項)。
その後に起こること──公売・競売へ進む流れ
差押えは、最終的に不動産を売却して債権や税金に充てるための入口です。
- 税金の滞納処分:督促状を発した日から起算して10日を経過した日までに完納しないときなどは、徴収職員は財産を差し押さえなければならないとされています(国税徴収法47条1項)。差し押さえた財産を換価(お金に換えること)するときは、税務署長は公売に付さなければならないとされています(同法94条1項)。固定資産税についても、督促状を発した日から起算して10日を経過した日までに完納しないときは差し押さえなければならないとされています(地方税法373条1項1号)。
- 裁判所の競売:開始決定と差押えの登記のあと、裁判所の手続で売却が進みます。買受人が代金を納付すると、裁判所書記官が登記の嘱託をします(民事執行法82条1項)。
ここで大切なのは、差押えの登記が入った時点ではまだ売却されていないということです。売却に至るまでの間に、税金を納めたり、債権者が申立てを取り下げたりすれば、差押えは解除・取下げの方向に進みます。
記載が消えるまでの4つの道筋
差押えの登記は、入るときと同じく、消えるときも差押えをした側(売却の場合は売却の手続をした側)の嘱託によるのが条文上の原則です(例外として、登記官が抹消する場合もあります。後述の深掘りを参照)。代表的な道筋は次の4つです。
1. 税金を完納するなどして差押えが解除されたとき
納付などによって差押えに係る国税の全額が消滅したときは、徴収職員は差押えを解除しなければならず(国税徴収法79条1項1号)、税務署長は不動産の差押えを解除したときは、その登記の抹消を関係機関に嘱託しなければならないとされています(同法80条3項)。地方税の滞納処分も、国税徴収法の例によります(地方税法373条7項)。
なお、国税については、2026年3月31日に公布された「所得税法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第12号)により、国税徴収法79条2項に4号が加わります。差し押さえられた不動産が売却され、滞納者から差押えの解除の申出があった場合に、売却価額(時価に相当するものとして財務省令で定める価額を下回るときはその価額)から先に優先する他の税金などの債権の合計額を差し引いた残額に相当する国税(差押えに係る国税の額が上限)が納付され、国税の徴収上支障がないと認められるときは、差押えを解除することができるとするものです。施行は2027年4月1日で、執筆時点ではまだ施行されていません。
2. 競売の申立てが取り下げられた・手続が取り消されたとき
強制競売の申立てが取り下げられたとき、または強制競売の手続を取り消す決定が効力を生じたときは、裁判所書記官が差押えの登記の抹消を嘱託します(民事執行法54条1項)。担保不動産競売にも準用されます(同法188条)。
3. 競売で売却されたとき
買受人が代金を納付したときは、裁判所書記官が、買受人への権利の移転の登記、売却により消滅した権利などの登記の抹消、そして差押えの登記の抹消をあわせて嘱託します(民事執行法82条1項1号〜3号)。
4. 公売で売却されたとき
税務署長は、買受代金を納付した買受人の請求により権利の移転の登記を嘱託し(国税徴収法121条)、その際、換価に伴い消滅する権利に係る登記があるときは、あわせてその抹消を嘱託します(同法125条)。この「換価に伴い消滅する権利に係る登記」には、差押え(参加差押えを含む)の登記も含まれるとされています(国税徴収法基本通達第125条関係2)。
抹消されると、甲区に差押えの登記を抹消した旨の新しい記録が加わり、元の差押えの記録には下線が引かれます。下線は「すでに効力がなくなった記録」という意味で、差押えの記載そのものが登記簿から消えてなくなるわけではありません。税金を納めた、競売が取り下げられたと聞いているのに下線のない差押えが残っているように見えるときは、差押えをした税務署・自治体や裁判所に、抹消の嘱託がされたかを確かめるのが基本です。
相談先は内容によって分かれます
登記簿の読み方や、差押えの登記がどう入り、どう消えるかという登記の手続は、司法書士が説明できる分野です。一方で、次のような事柄はそれぞれの窓口が担当します。
- 債権者との交渉、競売の手続の取消しを求めること、配当をめぐる争い → 弁護士
- 滞納している税金の分割納付や猶予の相談 → 差押えをした税務署・都道府県・市区町村の窓口
- 物件の価格の見通しや、任意売却の仲介 → 不動産会社(宅地建物取引業者)
差押えのある物件を買ってよいかどうかといった個別の取引判断は、この記事では扱いません。
まとめ
登記簿の甲区に「差押」とあるときは、原因欄と債権者などの欄を見ると、税金の滞納処分か、裁判所の競売かを読み分ける手がかりになります。差押えの登記は所有者の申請ではなく差押えをした側の嘱託で入り、完納による解除、競売の取下げ・取消し、競売や公売での売却といった道筋をたどって、原則として差押えや売却の手続をした側の嘱託で抹消されます。登記簿の記載の意味や、抹消されているはずの差押えが残っている場合の確認の仕方で迷ったときは、お近くの司法書士にご相談ください。
よくある質問
Q. 差押えの登記を消すのに、費用はかかりますか?
差押えの登記の抹消は、差押えをした側が嘱託するしくみで、所有者が自分で登記費用を負担して申請する手続にはなっていません。税金の滞納処分に関する登記には登録免許税が課されず(登録免許税法5条11号。換価による権利の移転の登記は除かれます)、強制競売の取下げなどによる抹消の嘱託の費用は差押債権者の負担とされています(民事執行法54条2項)。もちろん、差押えの原因となった税金や債務そのものの支払いは別の問題です。
Q. 差押えの登記を放置するとどうなりますか?期限はありますか?
差押えの登記に「いつまでに消さなければならない」という期限はありません。ただし、差押えは売却に向けた手続の入口なので、そのままにしておくと、税金なら公売(国税徴収法94条1項)、裁判所なら競売の売却へと手続が進むことがあります。売却されて買受人が代金を納付すると所有者が変わり、買受人への移転の登記と差押えの登記の抹消が嘱託されます(民事執行法82条1項、国税徴収法121条・125条)。
Q. 自分で確認できますか?どこに相談すればよいですか?
登記事項証明書を取得して、原因欄と債権者などの欄から差押えの主体を読み取ることは自分でもできます。抹消は差押えをした側が嘱託するものなので、本人が申請するものではありません。税金の分納や猶予は差押えをした税務署・自治体、債権者との交渉や手続の取消し・配当をめぐる争いは弁護士、売却の価格や仲介は不動産会社が相談先です。登記の読み方や抹消の流れについては、お近くの司法書士にご相談ください。
【さらに深掘り】差押えの登記と他の登記・抹消の実務
ご注意 以下は執筆時点(2026年10月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。
嘱託登記そのもののしくみは「自分で申請していない登記が載っているのはなぜ?」、住宅ローンの滞納から競売・任意売却までの流れは「住宅ローンを滞納するとどうなる」で扱っているため、ここでは登記どうしの関係と抹消の手続に絞ります。
差押えの後に入った登記の位置づけ
差押えの登記の後に、所有権の移転や抵当権の設定の登記が記録されることもあります。民事執行法は、差押債権者などに対抗することができない不動産に係る権利の取得は、売却によりその効力を失うと定め(民事執行法59条2項)、代金の納付後には「売却により効力を失つた権利の取得」に係る登記の抹消を嘱託するとしています(同法82条1項2号)。条文のこの組み立てからは、差押え後の権利取得の登記がされうることを前提に、売却の段階でその効力を整理するしくみと読めます。差押え後の処分の効力がどこまで否定されるかには解釈上の議論もあるため、ここでは条文の枠組みの紹介にとどめます。
登記官は、申請情報・添付情報と登記記録をもとに、不動産登記法25条と不動産登記令20条に列挙された却下事由に当たるかを審査します。これらの条文には、差押えの登記があることそのものは却下事由として明示されていません(申請に係る権利が既にされた登記の目的である権利と矛盾するときを却下事由とする不動産登記令20条7号との関係には、ここでは立ち入りません)。差押え後の権利取得の登記が記録されうることは、前段の民事執行法82条1項2号の組み立てとも符合します。いずれにしても、差押えより後の順位番号で所有権移転の登記があっても、それだけで差押えが解消された、あるいは差押えに優先すると読まないことが大切です(民事執行法59条2項参照)。
差押えが二つ以上並ぶとき
- 裁判所の競売が重なる場合:競売の開始決定がされた不動産について、更に強制競売の申立てがあれば、執行裁判所は更に開始決定をします(民事執行法47条1項)。先の申立てが取り下げられても後の開始決定に基づいて手続は続くため(同条2項)、先の差押えに下線が引かれても、後の差押えが残っていれば手続は終わっていません。
- 税金の参加差押え:先行する滞納処分による差押えが解除されると、最も先に登記された参加差押えが、さかのぼって差押えの効力を生じます(国税徴収法87条1項2号)。
- 税金の差押えと裁判所の競売が重なる場合:滞納処分による差押えがされている不動産にも強制競売の開始決定ができますが(滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する法律12条1項)、売却のための手続は、原則として滞納処分による差押えが解除された後でなければできません(同法13条1項)。公売による権利移転の登記がされたときは、強制競売に係る差押えの登記は登記官が抹消します(同法16条)。
抹消の費用と、所有者が申請する手続になっていない理由
登録免許税法5条11号は、滞納処分(その例による処分を含みます)に関してする登記を非課税としていますが、換価による権利の移転の登記は除かれています。国税庁の通達も、差押えの登記の嘱託や、公売に伴う抹消の嘱託に登録免許税は課されないとしています(国税徴収法基本通達第68条関係37、第125条関係5)。
裁判所の競売による差押えは5条11号の対象ではなく、取下げなどによる抹消の嘱託に要する登録免許税その他の費用は差押債権者の負担(民事執行法54条2項)、代金納付による嘱託に要する費用は買受人の負担(同法82条4項)とされています。
差押えの登記の抹消は、民事執行法54条1項・82条1項3号、国税徴収法80条3項・125条により、差押えをした側(売却の場合は売却の手続をした裁判所書記官・税務署長)が嘱託するものと定められています(公売による権利移転の登記に伴い強制競売の差押えの登記を登記官が抹消する場合〔前述の調整法16条〕を除きます)。このため、所有者が自分で抹消を申請する流れにはなっていません。
売却で消える登記・残る登記
裁判所の競売では、抵当権・先取特権などは売却により消滅し(民事執行法59条1項)、差押債権者などに対抗できない権利の取得、差押えや仮差押えの執行も効力を失い(同条2項・3項)、これらの登記は代金納付後にまとめて抹消が嘱託されます(同法82条1項2号・3号)。一方、留置権などは買受人が引き受ける場合があり(同法59条4項)、利害関係人の合意によって扱いが変わることもあります(同条5項)。賃借権などの用益権が残るかどうかは、対抗要件を備えた時期などによって分かれるため、物件明細書に記載される「売却によりその効力を失わないもの」(同法62条1項2号)など、個々の売却条件によります。
公売でも、換価に伴い消滅する担保権・用益物権等の権利と、差押え(参加差押えを含みます)の登記の抹消が嘱託されます(国税徴収法基本通達第125条関係2)。どの権利が消滅するかは、個々の売却の条件によります。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年10月・いずれも一次情報です)。
- 民事執行法 第22条・第45条〜第48条・第54条・第59条・第62条・第79条・第82条・第181条・第188条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004
- 国税徴収法 第47条・第68条・第79条・第80条・第86条・第87条・第94条・第116条・第121条・第125条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000147
- 滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する法律 第12条・第13条・第16条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/332AC0000000094
- 地方税法 第373条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000226
- 不動産登記法 第16条・第25条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123
- 不動産登記令 第20条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/416CO0000000379
- 不動産登記規則 第152条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/417M60000010018
- 登録免許税法 第5条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/342AC0000000035
- 国税庁「国税徴収法基本通達 第68条関係 不動産の差押の手続及び効力発生時期」: https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/chosyu/05/01/04/068/01.htm
- 国税庁「国税徴収法基本通達 第125条関係 換価に伴い消滅する権利の登記の抹消の嘱託」: https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/chosyu/05/03/05/125/01.htm
- 法務省 令和6年3月22日付け法務省民二第551号通達「民法等の一部を改正する法律の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて(所有権の登記の登記事項の追加関係)」(別紙記録例を含む): https://www.moj.go.jp/content/001416428.pdf
- 法務省「所有権の差押登記嘱託書(オンライン庁)の例」: https://www.moj.go.jp/content/000010803.pdf
- 参議院「議案情報 第221回国会 所得税法等の一部を改正する法律案(閣法第3号)」(公布年月日・法律番号の確認): https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/221/meisai/m221080221003.htm
- 財務省「第221回国会における財務省関連法律」(成立日・公布日の確認): https://www.mof.go.jp/about_mof/bills/221diet/index.html