この記事の要点

  • 滞納から競売までは、督促・催告 → 期限の利益の喪失 → 保証会社の代位弁済 → 一括請求 → 競売の申立て、という順で段階を踏んで進むのが一般的です
  • 競売の開始決定が出ると、登記簿の甲区(所有権の欄)に「差押」が入り、乙区の抵当権は代位弁済をした保証会社へ移ります。登記簿を見れば手続がどこまで進んだかが分かります
  • 任意売却は競売より高く売れる可能性がある一方、債権者の同意が必要で、売っても残った借金(残債)が消えるわけではありません
  • 返済の交渉や債務整理は弁護士、抵当権抹消や名義の登記は司法書士と、相談先が分かれます

住宅ローンを滞納すると、ある日突然家を失うわけではありません。滞納から競売による明渡しまでには、督促・催告、期限の利益の喪失、保証会社の代位弁済、一括請求、競売の申立て、差押えの登記、期間入札、売却許可、代金納付、明渡しという段階があり、それぞれに数週間から数か月の時間がかかります。そして、その進み具合の多くは登記簿(登記事項証明書)に記録されます

以下は執筆時点(2026年9月)の法令・実務運用にもとづく一般的な流れです。金融機関や保証会社によって運用も呼び方も異なりますので、実際の期間や順序は個別の契約によって変わります。

滞納から競売までの一般的な時系列

1. 滞納の発生と督促・催告

引落しができなかった月から、金融機関の督促が始まります。はじめは電話や書面での連絡、次いで「催告書」「督促状」といった文書が届き、支払いを求める内容が段階的に強くなっていきます。この段階ではまだ、遅れた分を入金すれば元の返済計画に戻れることがほとんどです。

返済が苦しくなりそうだと分かった時点で金融機関に相談すると、返済期間の延長や一定期間の元金据置きといった条件変更(リスケジュール)の話ができる場合があります。この交渉自体は契約当事者であるご本人が行うもので、司法書士が金融機関との交渉を代理して行うことはできません。この点は記事の最後にあらためて整理します。

2. 期限の利益の喪失

滞納が続くと、次に「期限の利益の喪失」という段階に進みます。期限の利益とは、「毎月○万円ずつ、○年かけて返せばよい」という分割払いの約束のことです。これを失うと、残っている元金の全額を直ちに支払う義務が生じます。

民法137条は、期限の利益を主張できなくなる場合として、債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、担保を滅失・損傷・減少させたとき、担保を供する義務があるのに供しないとき、の3つを定めています。返済の遅れ(滞納)そのものは、この条文には挙げられていません。

では滞納では期限の利益を失わないのかというと、そうではありません。住宅ローンの金銭消費貸借契約書には、通常「返済を○回以上怠ったときは、催告なしに期限の利益を失う」といった期限の利益喪失条項が置かれています。実際に滞納で一括請求に至るのは、この契約上の条項によるものです。法律が定める場合(法定事由)と、契約で定めた場合(約定事由)の二本立てになっている、と理解しておくとよいでしょう。

何回・何か月の滞納で喪失条項が働くかは契約によって異なります。一般には数か月程度の滞納が一つの目安として語られることがありますが、これは法令で定まった数字ではなく、契約ごとに異なります。ご自身の契約書の該当条項を確認するのが確実です。

3. 保証会社の代位弁済

住宅ローンの多くには保証会社が付いています。期限の利益を失うと、金融機関からの請求を受けた保証会社が、残債務の全額を金融機関へ支払います。これが「代位弁済」です。

民法499条は、債務者のために弁済をした者は債権者に代位すると定めています。代位した者は、債権の効力および担保としてその債権者が有していた権利を行使できます(民法501条1項)。つまり保証会社は、金融機関が持っていた債権と、その担保である抵当権をそのまま引き継ぐわけです。なお、民法500条は、債権譲渡の対抗要件を定める民法467条の規定を、弁済による代位の場合について準用しています。ただし、弁済をするについて正当な利益を有する者が代位する場合は、この準用の対象から除かれています。住宅ローンの保証会社のように、保証人として弁済をする立場にある者は、一般にこの「正当な利益を有する者」に当たると解されています。そのため住宅ローンの代位弁済では、債権譲渡の場合のような通知や承諾がなくても、代位したことを債務者やほかの第三者に主張できるのが通常です。

ここで大切なのは、代位弁済は借金の肩代わりであって、免除ではないということです。返済先が金融機関から保証会社に変わるだけで、支払う義務そのものはなくなりません。金融機関からは「代位弁済のお知らせ」が届き、以後の連絡窓口は保証会社(またはその委託を受けた債権回収会社)に移ります。

4. 保証会社からの一括請求

代位弁済をした保証会社は、金融機関へ支払った金額を返すよう求める権利(求償債権)にもとづいて、残債務の一括返済を請求します。この段階では分割払いの約束はすでに失われているため、請求は原則として全額です。遅延損害金も加算されます。

任意売却の話が現実的に検討されるのは、多くの場合この前後の時期です。詳しくは後述します。

5. 担保不動産競売の申立て

一括請求に応じられない状態が続くと、保証会社は抵当権にもとづいて競売を申し立てます。これは民事執行法180条1号の「担保不動産競売」(不動産担保権の実行としての競売)です。

判決などの債務名義(強制執行をするための根拠となる公的な文書)がなくても申立てができる点が、通常の強制執行とは異なります。民事執行法181条1項1号は、担保権の登記(仮登記を除く)がされた不動産については、その不動産担保権の実行の申立てがあったときに手続を開始すると定めています。抵当権の登記があること自体が、手続の入口の鍵になっているわけです。

なお、この部分は近年改正されています。2025年9月30日までは、同項3号が「担保権の登記に関する登記事項証明書」の提出を手続開始の要件としていましたが、2025年10月1日施行の改正(令和5年法律第53号)により、登記がされている担保権については、申立てそのものが手続開始の要件とされました。登記された抵当権があれば競売の入口を通れるという結論は変わりませんが、根拠となる条項の建て付けが変わっている点にご注意ください。

6. 差押えの登記──ここが登記簿に現れます

裁判所が競売開始決定を出すと、その不動産の差押えが宣言され、裁判所書記官の嘱託によって差押えの登記がされます(民事執行法48条1項。担保不動産競売については同法188条により準用されます)。

登記簿を見ると、差押えは**甲区(所有権に関する事項)**に記録されます。登記の目的は「差押」、原因は「令和○年○月○日○○地方裁判所担保不動産競売開始決定」といった形です。所有者の名義はまだ変わりませんが、この登記が入った時点で、事実上その不動産を自由に売ることは難しくなります。買主も、差押えの登記が入った不動産をそのまま買い受けることは通常しないからです。

競売の開始決定は、債務者に送達しなければならないとされています(民事執行法45条2項。担保不動産競売については同法188条により準用されます)。住宅ローンでは、債務者とご自宅の所有者が同じであるのが通常ですから、「知らないうちに差し押さえられていた」ということは通常ありません。

7. 現況調査・評価・期間入札

差押えの後、執行官による現況調査、評価人による評価が行われ、物件明細書・現況調査報告書・評価書(いわゆる3点セット)が作成されます。これらは裁判所とインターネット上で公開され、誰でも見ることができます。建物の中の写真や間取り、占有の状況まで載ります。

その後、売却基準価額が定められ、期間入札の方法で売却が実施されるのが一般的です。一定の入札期間を設けて入札を受け付け、開札期日に開札して最高価の買受申出人を決める方法です(民事執行規則34条・46条1項。入札期間は1週間以上1か月以内、開札期日は入札期間の満了後1週間以内の日と定められています)。

8. 売却許可決定と代金納付

開札で最高価買受申出人が決まると、裁判所は売却決定期日を開き、売却を許可するかどうかを判断します。売却許可決定が確定し、買受人が代金を納付した時点で、所有権は買受人に移ります。所有権移転の登記と、消滅する抵当権・差押えの抹消登記は、裁判所書記官の嘱託によって行われます。

9. 明渡し

代金が納付されても、元の所有者が住み続けている場合があります。この場合、買受人は裁判所に引渡命令(不動産を明け渡すよう命じる裁判所の決定)を申し立てることができます(民事執行法83条)。引渡命令が出れば、それを債務名義として強制執行(明渡しの強制執行)が可能になります。

ここまでが、滞納から明渡しに至る一般的な流れです。全体では、滞納の開始から明渡しまで1年以上かかることも珍しくありませんが、事案によって差が大きく、一律の期間を示すことはできません。

登記簿にはどう現れるか

競売の進行は、登記簿の甲区と乙区の両方に痕跡を残します。

乙区(所有権以外の権利に関する事項) には、もともとの抵当権が登記されています。保証会社の代位弁済があると、この抵当権について「○番抵当権移転」の登記がされ、原因は「令和○年○月○日代位弁済」となります。抵当権者の欄が金融機関から保証会社に変わるわけです。この移転登記は、もとの抵当権の登記に付記する形(付記登記)でされます。所有権以外の権利の移転の登記は付記登記によってするものとされているためです(不動産登記規則3条6号)。

甲区(所有権に関する事項) には、先に述べた「差押」の登記が入ります。

つまり、登記事項証明書を1通取るだけで、「代位弁済が済んでいるか」「競売の開始決定まで進んでいるか」がある程度読み取れます。不動産を買おうとする人にとっても、相続で不動産を引き継ぐ人にとっても、これは重要な情報です。登記簿の見方や、抵当権の登記がどう記録されるかについては、住宅ローン完済後の抵当権抹消登記の記事も参考にしてください。完済して抵当権を消すのも、競売で抵当権が消えるのも、登記簿の上では同じ「乙区の抵当権が抹消される」という結果になりますが、そこに至る道のりはまったく違います。

なお、競売で買い受けた場合の所有権移転登記は裁判所書記官の嘱託によるため、買受人が自分で申請するわけではありません。ただし、買受人と、買受人からその不動産に抵当権の設定を受けようとする者とが、代金の納付の時までに申出をしたときは、この嘱託は、申出人が指定する登記の申請の代理を業とすることができる者(司法書士など)に嘱託情報を提供し、その者に登記所へ提供させる方法によることとされています(民事執行法82条2項)。競売で買った不動産にあらためて住宅ローンを組む場合などに使われる仕組みです。

任意売却という選択肢の入口

競売と並んでよく名前が挙がるのが「任意売却」です。これは、抵当権が付いたままでは通常売れない不動産について、債権者の同意を得たうえで、通常の売買と同じように売却する方法をいいます。売却代金から債権者に配分し、抵当権を抹消してもらう、という段取りです。

ここでは入口の一般論だけを整理します。

競売より高く売れる可能性がある 競売は買受人にとって内覧ができない・引渡しの手間があるなどのリスクがあるため、市場価格より低い水準で落札されることが多いとされています。任意売却は通常の売買と同じ形をとるため、より高く売れる可能性があります。ただし「必ず高く売れる」わけではありません。

債権者の同意が必要 抵当権を抹消してもらわなければ売買は成立しませんから、抵当権者(代位弁済後は保証会社)の同意が前提になります。抵当権が複数付いている場合や、税金の滞納で差押えが入っている場合は、関係者全員の調整が必要になり、難度が上がります。

残った借金は消えない 売却代金で債務全額を返しきれない場合、残債はそのまま残ります。任意売却は不動産を手放す方法であって、借金をなくす手続ではありません。残債をどうするかは、別に検討すべき問題です。

時間的な制約がある 競売の手続が進み、開札の期日が近づくほど、任意売却に切り替える余地は狭くなります。競売を取り下げてもらう必要があるためです。

どの選択肢がその方にとって適切かは、収入の見通し、他の借入れの状況、家族の住まいの確保など、個別の事情によって大きく変わります。本記事では、任意売却が「どういう仕組みの選択肢か」を示すにとどめ、個別の可否や優劣の判断には立ち入りません。特定の業者や団体を推奨することもありません。

相談先が分かれます──弁護士と司法書士

住宅ローンの問題では、相談先が場面によって分かれます。ここを最初に押さえておくと、遠回りが減ります。

返済の交渉・債務整理は弁護士へ。 金融機関や保証会社との返済条件の交渉、任意整理・個人再生・自己破産といった債務整理の代理は、原則として弁護士の業務です。認定司法書士も簡易裁判所の訴訟代理などを扱えますが、その範囲は、訴訟の目的の価額(おおむね請求する金額)が140万円以下のものに限られます。住宅ローンの残債は通常この額を大きく超えますので、住宅ローンそのものを対象とする交渉や手続の代理は、司法書士の扱える範囲を超えます。

登記の場面は司法書士へ。 一方で、返済を終えた後の抵当権抹消登記、任意売却が成立したときの所有権移転登記、離婚などにともなう名義の整理といった登記の手続は司法書士の業務です。たとえば離婚後もローンが残る家に住み続けるケースのように、名義と返済がねじれている場合の登記の扱いも、司法書士に相談する場面にあたります。

「借金の話は弁護士、登記の話は司法書士」と大づかみに覚えておき、迷ったらどちらかの窓口で事情を話せば、適切な方へ案内してもらえます。

まとめ

住宅ローンの滞納は、督促・催告から始まり、契約上の条項による期限の利益の喪失、保証会社の代位弁済、一括請求を経て、担保不動産競売の申立てへと段階的に進みます。競売の開始決定が出れば登記簿の甲区に差押えが入り、乙区の抵当権は保証会社へ移転しますので、手続がどこまで進んでいるかは登記事項証明書からある程度読み取れます。

任意売却は、競売より高く売れる可能性がある一方で、債権者の同意が必要で、残債が消えるわけでもありません。どの段階でも、早く動くほど選べる道は多く残っています。

返済の交渉や債務整理は弁護士へ、抵当権抹消や名義変更などの登記は司法書士へ。登記簿に何が書かれているかを確認したい、これから必要になる登記の見通しを知りたいというときは、お近くの司法書士にご相談ください。

よくある質問

Q. 競売になった場合、費用は誰が負担しますか。

競売の申立てには、申立手数料のほか、手続費用に充てる予納金が必要で、まず申し立てた債権者が納めます。強制執行の費用で必要なもの(執行費用)は債務者の負担とされ(民事執行法42条1項。担保不動産競売については同法194条により準用されます)、配当の順位は民法・商法その他の法律の定めるところによります(同法85条2項)。共益の費用については民法が先取特権を認めています(民法306条1号、307条1項)。結果として、売却代金から差し引かれる分だけ、所有者に残る金額や返済に充てられる金額が少なくなります。なお、代金納付後に裁判所書記官が嘱託する所有権移転や抵当権・差押えの抹消の登記にかかる登録免許税その他の費用は、買受人の負担です(民事執行法82条4項)。

Q. 督促を放置し続けると、どうなりますか。

段階が進むごとに、選べる道が減っていきます。督促の段階なら条件変更の相談ができ、代位弁済の前後なら任意売却を検討する余地があります。しかし差押えの登記が入り、期間入札が始まってしまうと、任意売却に切り替えるには競売の取下げが必要になり、現実的に難しくなります。売却許可決定が確定して代金が納付されれば所有権は買受人に移り、引渡命令によって退去を求められます。そして、売却代金で足りなかった残債は残ります。放置は、時間とともに選択肢を失っていく行為だとお考えください。

Q. 自分で対応できますか。どこに相談すればよいですか。

金融機関への連絡や、契約書の期限の利益喪失条項を確認することはご本人でもできます。ただし、返済条件の交渉を第三者に代理してもらう場合や、債務整理を検討する場合は弁護士の業務範囲です。認定司法書士の簡裁訴訟代理も、訴訟の目的の価額が140万円以下のものに限られるため、住宅ローンの残債は通常その範囲外です。一方、抵当権抹消や所有権移転といった登記の場面は司法書士の業務ですので、登記の見通しや登記簿の記載についてはお近くの司法書士にご相談ください。


【さらに深掘り】担保不動産競売の手続と債務整理の線引き

ご注意 以下は執筆時点(2026年9月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。

手続上の観点──担保不動産競売と強制競売

不動産の競売には二つの入口があります。本文で述べた担保不動産競売(民事執行法180条1号)は抵当権などの担保権の実行として行われ、強制競売(同法43条以下)は判決・和解調書・執行証書といった債務名義(同法22条)にもとづいて行われます。

違いは入口にあります。強制競売では債務名義と執行文が必要ですが、担保不動産競売は、担保権の登記(仮登記を除く)がされた不動産についてはその不動産担保権の実行の申立てがあったとき、それ以外の場合は担保権の存在を証する法定の文書または電磁的記録が提出されたときに開始します(同法181条1項1号・2号)。登記された抵当権があれば申立てだけで入口を通れるため、訴訟や判決を経ずに競売へ進みます。

手続開始後の進行は両者でほぼ共通です。民事執行法188条が、強制競売について定めた規定(同法第2章第2節第1款第2目=45条から92条まで。ただし法定地上権を定める81条を除く)を、担保不動産競売に準用しているためです。

開始決定と差押えの効力

競売開始決定では、不動産を差し押さえる旨が宣言されます(民事執行法45条1項、同法188条による準用)。差押えの効力が生じる時期は、原則として開始決定が債務者に送達された時ですが、差押えの登記が送達より前にされたときは、登記がされた時に効力が生じます(同法46条1項)。

差押えの後に所有者が不動産を第三者へ譲渡した場合、その処分が当事者間で当然に無効となるわけではなく、差押債権者との関係でその効力を主張できないにとどまる、と解されています(相対効)。もっとも、効力を主張できない相手方の範囲については、差押債権者に対してのみ対抗できないとする見解と、その競売手続に参加したほかの債権者や買受人との関係でも対抗できないとする見解とがあり、見解が分かれています。

本文で「事実上その不動産を自由に売ることは難しくなる」と述べたのは、この意味です。売買契約そのものが禁じられるわけではありませんが、買主は取得した所有権を差押債権者などに主張できない可能性がありますので、通常は買い手がつきません。

差押えを受けても、所有者が直ちに家を出る必要はありません。差押えは、債務者が通常の用法に従って不動産を使用し、または収益することを妨げないとされています(同法46条2項)。所有権が移るのは、後の代金納付の時点です。

売却で消えるもの・残るもの

売却によって、その不動産上の先取特権、使用および収益をしない旨の定めのある質権、ならびに抵当権は消滅します(民事執行法59条1項)。売却代金は、手続費用を差し引いたうえで順位に従って債権者へ配当されます(同法84条以下)。

もっとも、不動産上の負担がすべて売却で消えるわけではありません。不動産の上に存する留置権と、使用および収益をしない旨の定めのない質権で民事執行法59条2項の適用がないものについては、買受人がこれらによって担保される債権を弁済する責めに任じます(同条4項)。買受人が引き受ける負担も残りうる、という点は押さえておく必要があります。

押さえておくべきなのは、配当で満足を得られなかった部分の債権は消えないことです。抵当権という担保がなくなるだけで、債権そのものは無担保の債権として残ります。競売でも任意売却でも変わりません。

さらに、期限の利益を失った後は残元金の全額について遅延損害金が発生し続けます。金銭債務の損害賠償額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によりますが、約定利率が法定利率を超えるときは約定利率によります(民法419条1項)。住宅ローン契約では遅延損害金の利率が定められているのが通常で、時間の経過とともに残債務が膨らみます。

残債務についての選択肢の入口(制度名と一般論)

残債務の処理として、一般には次の制度名が挙げられます。ここでは制度の枠組みを示すにとどめ、どれが適切かの評価には立ち入りません。

  • 任意整理:法律上の手続ではなく、債権者との個別の話し合いによる整理です。
  • 個人再生における住宅資金特別条項:民事再生法196条以下に、住宅資金貸付債権についての特則が置かれています。住宅を手放さずに再生計画を立てる余地を認めるものです。ここで本文の代位弁済と関わる点が二つあります。一つは、民法499条により代位した再生債権者(弁済をするについて正当な利益を有していた者に限る)が代位により有することとなった債権は、住宅資金特別条項の対象から除かれるのが原則だということです(民事再生法198条1項)。もう一つは、その例外として、保証会社が保証債務の全部を履行した日から6か月を経過する日までの間に再生手続開始の申立てがされたときは、民事再生法204条1項本文により住宅資金貸付債権を有することとなる者の権利について、住宅資金特別条項を定めることができるとされている点です(同法198条2項)。同法204条1項本文は、住宅資金特別条項を定めた再生計画の認可の決定が確定した場合に、保証会社がした保証債務の履行はなかったものとみなす、と定めています。つまり、代位弁済がなかった状態に戻したうえで、もとの債権者に対する住宅ローンとして特別条項を定める、という建て付けです。ここで特別条項の対象になるのは、保証会社が代位により取得した債権そのものではありません。また、住宅資金特別条項を定めた再生計画の認可の見込みがあると認めるときは、裁判所は再生債務者の申立てにより、相当の期間を定めて抵当権の実行手続の中止を命ずることができます(同法197条1項)。いずれも期間や見込みの判断がからむため、検討するなら早い段階で弁護士に相談することになります。
  • 自己破産:破産法にもとづく手続で、免責許可が得られれば残債務についての責任を免れます。

どの制度を選ぶか、そもそも選べるかは、収入・資産・他の債務の状況によって大きく変わります。この判断と手続の代理は弁護士の業務です。

代理できる範囲の線引き

認定司法書士が扱える簡裁訴訟代理等関係業務は、司法書士法3条1項6号(簡易裁判所における訴訟・支払督促・民事調停などの手続の代理)、同項7号(簡易裁判所の訴訟手続の対象となる民事の紛争についての相談、裁判外の和解の代理など)および同項8号(筆界特定の手続)に定められています(同条2項)。いずれも、訴訟・請求・紛争の目的の価額(8号については法務省令で定める方法により算定した額)が140万円(裁判所法33条1項1号の額)を超えないものに限られます。制限はもう一つあり、同項6号ただし書により、強制執行に関する事項(少額訴訟債権執行を除く)は、金額の大小にかかわらず代理の対象外です。

このうち住宅ローンの場面でまず効いてくるのは、金額の上限のほうです。住宅ローンの残債務は、通常140万円を大きく超えます。したがって、住宅ローンを対象とする債務整理や、金融機関・保証会社との返済交渉の代理は、司法書士の扱える範囲外です。返済交渉・債務整理は弁護士へという切り分けになります。

引渡命令と明渡し

代金納付後も占有が続いている場合、買受人は引渡命令を申し立てることができます(民事執行法83条1項)。ただし、事件の記録上、買受人に対抗することができる権原により占有していると認められる者に対しては、引渡命令を発することはできません(同項ただし書)。占有していれば誰に対しても引渡命令が出る、というわけではありません。

申立てができる期間にも制限があります。買受人は、代金を納付した日から6か月を経過したときは申立てをすることができません。ただし、買受けの時に民法395条1項に規定する抵当建物使用者が占有していた建物の買受人については、9か月とされています(同条2項)。

引渡命令については執行抗告をすることができ(同条4項)、決定は確定しなければ効力を生じません(同条5項)。民事執行法22条3号は「抗告によらなければ不服を申し立てることができない裁判(確定しなければその効力を生じない裁判にあつては、確定したものに限る。)」を債務名義として挙げており、確定した引渡命令はこれに当たるものとして扱われます。これにもとづいて明渡しの強制執行が可能になります。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年9月・いずれも一次情報です)。

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