この記事の要点
- 付記登記は、すでにある権利の登記に「ぶら下げて」記録する登記で、登記簿には「1番付記1号」のように、もとの登記(主登記)の順位番号に「付記何号」を付けた形で記録される
- 付記登記の順位は主登記の順位に従い、同じ主登記に付いた付記登記どうしはその前後で決まる(不動産登記法4条2項)。付記登記がされても、もとの権利の優先順位は動かない
- どの登記が付記登記になるかは、申請する人が選ぶものではなく、不動産登記規則3条の列挙と、不動産登記法66条(利害関係人の承諾の有無)などの条文で決まる
登記事項証明書(登記簿)を取り寄せると、「順位番号」の欄に「1」「2」という独立した番号のほか、「付記1号」のように「付記」の文字を含む記載が混じっていることがあります(不動産登記規則148条が定める記録の方法では、「1番付記1号」のように、もとの登記の順位番号に「付記何号」を付け加えた形になります)。結論から言うと、これは**もとの1番の登記に後から付け加えられた登記(付記登記)**であり、その順位は1番の登記の順位のまま扱われる、という意味です。登記簿全体の構造は「登記簿(登記事項証明書)の見方」で、抵当権の欄(乙区)の読み方は「登記簿の『乙区』を読み解く」で扱いました。ここでは、付記登記と主登記がそもそも何で、どの登記がどちらになるのかが条文上どう決まっているのかに絞って整理します。これは執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です。
「付記1号」はどう記録されるのか
権利に関する登記をするとき、登記官は、権利部の甲区(所有権に関する欄)・乙区(所有権以外の権利に関する欄)のそれぞれに、記録した順序を示す番号を記録します(不動産登記規則147条1項)。これが順位番号です。
付記登記の場合は、新しい番号を振るのではなく、主登記の順位番号に「付記何号」を付け加える方法で記録すると定められています(同規則148条)。たとえば乙区の1番に抵当権設定登記があり、その抵当権が別の会社に移った場合、移転の登記は「1番付記1号」として、1番の抵当権のすぐ下に記録されます。法務省の通達に付けられた登記記録の記録例でも、主登記の行の順位番号欄に「2」などの番号が、その直下の行の順位番号欄に「付記1号」が記録される形で示されています(令和6年3月15日法務省民二第535号通達の別紙1、令和2年3月31日法務省民二第328号通達の別紙など)。
ここでいう主登記とは、「付記登記の対象となる既にされた権利に関する登記」のことです(不動産登記法4条2項)。つまり主登記は、付記登記との関係で呼ばれる言葉で、付記登記がぶら下がっている「親」の登記を指します。
順位への影響──付記登記は主登記の順位を引き継ぐ
同じ不動産について登記した権利の順位は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記の前後によるのが原則です(不動産登記法4条1項)。そのうえで同条2項は、付記登記の順位は主登記の順位により、同一の主登記に係る付記登記の順位はその前後によると定めています。
具体的には、次のように読みます。
- 乙区1番の抵当権が「1番付記1号」で別の会社に移転しても、その抵当権は引き続き1番の順位のまま。2番の抵当権より後回しになることはない
- 1番に「付記1号」「付記2号」と複数の付記登記が付いている場合、付記どうしの順序は「付記1号」→「付記2号」の前後で決まる
付記登記は「新しい権利が後から割り込んできた」という記録ではなく、もとの権利に後から何が起きたかの履歴を、もとの権利と一体のものとして示すしくみです。条文も、付記登記を「既にされた権利に関する登記と一体のものとして公示する必要があるもの」と位置づけています(同項)。
どの登記が付記登記になるのか
付記登記になるかどうかは、申請書に書けば選べるものではなく、条文で決まっています。不動産登記法4条2項の定義では、付記登記とは、既にされた権利に関する登記について、その登記を変更し、もしくは更正し、または所有権以外の権利にあってはこれを移転し、もしくはこれを目的とする権利の保存等をするものとされています。
これを受けて、不動産登記規則3条は「次に掲げる登記は、付記登記によってするものとする」として、主に次の登記を挙げています。
- 登記名義人の氏名・名称や住所についての変更の登記・更正の登記(1号)
- 不動産登記法66条に規定する場合の、権利の変更の登記・更正の登記(2号)
- 相続人申告登記(不動産登記法76条の3第1項の申出に関する登記。3号)
- 登記事項の一部が抹消されている場合の、抹消された登記の回復(4号)
- 所有権以外の権利を目的とする権利に関する登記(処分の制限の登記を含む。5号)。抵当権を目的とする転抵当などがこれにあたる
- 所有権以外の権利の移転の登記(6号)。抵当権の移転などがこれにあたる
- 登記の目的である権利の消滅に関する定めの登記(7号)
- 民法393条による代位の登記(8号)、抵当証券交付・抵当証券作成の登記(9号)、買戻しの特約の登記(10号)
身近なところでは、引っ越しによる所有者の住所変更の登記(1号。住所変更登記の義務化の対象になるもの)や、相続人申告登記(3号。相続人申告登記とは何か)も付記登記として記録されます。規則3条のほかにも、個別の条文で付記登記によると定められているものがあり、たとえば所有権の登記名義人が亡くなったこと(失踪の宣告を受けた場合を含みます)を示す符号の表示は、登記官が付記登記によって記録すると定められています(不動産登記規則158条の42第2項1号・第3項)。
主登記になる登記との分かれ目
反対に、独立した順位番号が付く登記(主登記)になる代表例は、次のようなものです。
- 所有権の移転の登記:規則3条6号が付記登記とするのは「所有権以外の権利」の移転に限られています。売買や相続で所有者が代わる登記は、甲区に新しい順位番号で記録されます
- 所有権を目的とする抵当権の設定の登記:規則3条5号が付記登記とするのは「所有権以外の権利」を目的とする権利に関する登記です。土地や建物(の所有権)に抵当権を設定する登記は、乙区に新しい順位番号で記録されます
不動産登記法4条2項の定義も、移転や「これを目的とする権利の保存等」については「所有権以外の権利にあっては」と限定しています。そのため、所有権の移転や、所有権を目的とする権利の設定は付記登記の定義に当たらず、それぞれ独立した登記として記録されます。
注意が必要なのが、権利の変更・更正の登記です。不動産登記法66条は、権利の変更の登記または更正の登記は、登記上の利害関係を有する第三者の承諾がある場合、またはその第三者がいない場合に限り、付記登記によってすることができると定めています。条文は、承諾がある場合と第三者がいない場合に「限り」付記登記によってすることができる、という書き方なので、承諾が得られないときは付記登記によることはできません。そのときにどう記録されるかまでは条文に書かれておらず、権利の変更の登記については、一般に、付記登記ではなく主登記として新しい順位番号でされると説明されています。たとえば抵当権の債権額を増やす変更の登記で、後順位の抵当権者の承諾が得られない場合には、主登記としてされ、増えた部分はもとの抵当権の順位を引き継げないと説明されるのが一般的です(なお、債権額を増やす変更の登記がそもそもどのような場合にできるかには別の論点があり、ここでは、その変更の登記をする場面を前提にした説明です)。更正の登記で承諾が得られない場合の扱いは、この記事では取り上げません。この点は「登記の『更正』と『変更』はどう違う?」でも触れています。
「この登記は付記登記になるのか」が申請前に問題になりやすいのは、この66条の場面です。氏名・住所の変更や抵当権の移転のように規則3条で付記登記と決まっているものと違い、権利の変更・更正は利害関係人の承諾が得られるかどうかで記録のされ方が分かれ、それが優先順位に響くことがあります。申請の前に登記事項証明書で、後順位の権利者など利害関係を持つ人がいないかを確認しておくと安心です。
まとめ
付記登記は、すでにある権利の登記に「付記何号」の形でぶら下げて記録する登記で、その順位はもとの登記(主登記)の順位に従います。登記簿の「1番付記1号」は、1番の権利に後から移転や変更などが起きたという履歴であり、1番の優先順位そのものは変わりません。どの登記が付記登記になるかは、不動産登記規則3条の列挙や不動産登記法66条などの条文で決まり、所有権の移転や所有権に対する抵当権の設定は主登記になります。権利の変更・更正のように利害関係人の承諾の有無で扱いが分かれる場面や、付記登記が重なった登記簿の読み取りに迷うときは、お近くの司法書士にご相談ください。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年10月・いずれも一次情報です)。
- 不動産登記法 第4条・第66条・第76条の3(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123
- 不動産登記規則 第3条・第147条・第148条・第158条の42(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/417M60000010018
- 法務省「民法等の一部を改正する法律の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて(相続人申告登記関係)」(令和6年3月15日法務省民二第535号通達・別紙1に登記記録の記録例): https://www.moj.go.jp/content/001415569.pdf
- 法務省「民法の一部を改正する法律等の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて」(令和2年3月31日法務省民二第328号通達)別紙(登記記録の記録例): https://www.moj.go.jp/content/001377501.pdf
- 法務省「不動産登記関係の主な通達等」: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00465.html