この記事の要点
- 地役権の登記は、負担を負う土地(承役地)の登記記録の乙区にされます。便益を受ける土地(要役地)の側にも、登記官が職権で記録します(不動産登記法80条4項)。
- 承役地の乙区には、要役地や地役権設定の目的・範囲などが載りますが、地役権者の氏名・住所は登記しなくてよいとされています(同条1項・2項)。
- 範囲が土地の一部のときは、登記の末尾に地役権図面番号が記録されます。地役権図面は、誰でも写しの交付を請求できる図面の一つです(不動産登記規則160条、不動産登記法121条1項)。
隣の土地を通路として通らせてもらう、水道管を通させてもらう。こうした関係を、当事者が「地役権」として設定し、登記していることがあります。地役権は、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自分の土地の便益に使う権利です(民法280条)。結論から言うと、登記簿で探す場所は使われる側の土地の乙区で、使う側の土地にも対になる記録があります。
なお、この記事は執筆時点(2026年9月)の制度に基づく一般的な解説です。
承役地の乙区に載る事項
登記記録の権利部は甲区と乙区に分かれ、甲区には所有権に関する登記、乙区には所有権以外の権利に関する登記が記録されます(不動産登記規則4条4項)。地役権は所有権以外の権利なので、抵当権などと同じ乙区に並びます。乙区の読み方の全体像は登記簿の『乙区』を読み解くで紹介しています。
承役地についてする地役権の登記には、登記の目的、受付年月日と受付番号、登記原因とその日付といった権利の登記に共通する事項(不動産登記法59条各号)のほか、次の事項が記録されます(同法80条1項)。
- 要役地(便益を受ける土地)
- 地役権設定の目的(何のために使うか)と範囲(土地のどの部分か)
- 特約があるときはその定め(地役権が要役地の所有権とともに移転しないとする定めや、承役地の所有者が自分の費用で工作物を設け、修繕する義務を負う定めなど。同項3号、民法281条1項ただし書・285条1項ただし書・286条)
ここで戸惑いやすいのが、権利を持つ人(地役権者)の氏名・住所が見当たらないことです。承役地の地役権の登記では、地役権者の氏名・住所は登記しなくてよいとされています(不動産登記法80条2項)。民法281条1項は、設定行為に別段の定めがない限り、地役権は要役地の所有権とともに移転すると定めています。そのため、記録された要役地の登記事項証明書を取り、甲区で所有者を確かめる、という順にたどるのが基本です。
要役地の側にも記録される
承役地に地役権の設定の登記がされると、登記官は要役地についても職権で登記します(不動産登記法80条4項)。記録されるのは、①要役地の地役権の登記である旨、②承役地の所在・地番とそれが承役地である旨、③地役権設定の目的と範囲、④登記の年月日です(不動産登記規則159条1項)。これも地役権という所有権以外の権利の記録なので、要役地の乙区に置かれます(同規則4条4項。要役地が別の登記所の管轄にある場合について、同規則159条5項は要役地の登記記録の乙区に記録すると定めています)。
自分の土地の乙区に地役権の記録があったときは、それが承役地としての登記なのか、要役地の地役権の登記である旨の記録なのかを見ると、「使われる側」か「使う側」かを見分けられます。なお、要役地に所有権の登記がないときは、承役地に地役権の設定の登記をすることができません(不動産登記法80条3項)。
範囲が一部なら地役権図面番号が手がかり
地役権の範囲は、承役地の全部のこともあれば一部のこともあります。範囲が一部のときは、申請の際に地役権図面(範囲を明らかにする図面)を提出し(不動産登記令2条4号・別表35の項)、登記官は登記の末尾に地役権図面番号を記録します(不動産登記規則160条)。地役権図面は、手数料を納めれば誰でも写しの交付を請求できる図面の一つです(不動産登記法121条1項、不動産登記令21条1項)。オンラインでの取得については登記情報提供サービスの使い方で触れています。
反対に、乙区に地役権の記載がないからといって、通路や導管の利用関係が現地に一切ないとまでは言えません。物権の設定は当事者の意思表示だけで効力を生じ(民法176条)、登記は第三者に対抗するための要件とされているため(同法177条)、登記をしないまま当事者の間で地役権が設定されていることもあるからです。登記簿は、現地の利用状況のすべてを映すものではありません。なお、登記のない地役権を、承役地を買い受けた人などとの関係でどう扱うかは、登記簿の読み方の範囲を超えるため、この記事では扱いません。
まとめ
地役権の登記は承役地の乙区に載り、要役地の乙区にも対になる記録が置かれます。承役地の側では地役権者の氏名・住所が出てこないため、要役地の記録から所有者をたどるのが読み方のポイントです。範囲が土地の一部なら、地役権図面番号が図面を探す手がかりになります。
通路や導管をめぐって隣地と話がまとまらない、争いになっているといった場面は、登記簿の読み方の範囲を超えます。争いの解決の相談先は原則として弁護士です(簡易裁判所で扱う140万円以下の事件は、認定を受けた司法書士も代理できます)。登記の記録の読み方や地役権の登記手続きについて確認したいときは、お近くの司法書士にご相談ください。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年09月・いずれも一次情報です)。
- 不動産登記法 第59条・第80条・第121条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123
- 不動産登記令 第2条・第21条・別表第三十五の項(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/416CO0000000379
- 不動産登記規則 第4条・第159条・第160条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/417M60000010018
- 民法 第176条・第177条・第280条・第281条・第285条・第286条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089