問題:

条件及び期限に関する次の記述のうち、正しいものはいくつあるか。

ア. 停止条件付法律行為は、停止条件が成就した時からその効力を生ずるが、当事者が条件が成就した場合の効果をその成就した時以前にさかのぼらせる意思を表示したときは、その意思に従う。

イ. 不能の解除条件を付した法律行為は、無効とする。

ウ. 条件が成就することによって利益を受ける当事者が不正にその条件を成就させたときは、相手方は、その条件が成就しなかったものとみなすことができる。

エ. 条件が成就しないことが法律行為の時に既に確定していた場合において、その条件が解除条件であるときは、その法律行為は無効とする。

オ. 債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、及び債務者が担保を供する義務を負う場合においてこれを供しないときは、債務者は、期限の利益を主張することができない。

答え:

正しいものは、ア・ウ・オの3つである。

解説:

ア 正しい。民法127条1項は、「停止条件付法律行為は、停止条件が成就した時からその効力を生ずる。」と定め、同条3項は、「当事者が条件が成就した場合の効果をその成就した時以前にさかのぼらせる意思を表示したときは、その意思に従う。」と定めている。解除条件についても、同条2項は、「解除条件付法律行為は、解除条件が成就した時からその効力を失う。」と定めており、条件成就の効果は成就の時から生ずるのが原則で、これをさかのぼらせるかどうかは当事者の意思に委ねられている。これに対し、期限については、「法律行為に始期を付したときは、その法律行為の履行は、期限が到来するまで、これを請求することができない。」(同法135条1項)、「法律行為に終期を付したときは、その法律行為の効力は、期限が到来した時に消滅する。」(同条2項)と定められており、効果をさかのぼらせる意思表示について定めた規定は置かれていない。

イ 誤り。民法133条1項は、「不能の停止条件を付した法律行為は、無効とする。」と定め、同条2項は、「不能の解除条件を付した法律行為は、無条件とする。」と定めている。不能の解除条件は成就することがないから、その法律行為の効力が条件の成就によって失われることはなく、条件を付さなかったのと同じ扱いとなる。本肢は、不能の停止条件の効果(無効)と不能の解除条件の効果(無条件)を入れ替えている点で誤りである。なお、不法条件については、同法132条が、「不法な条件を付した法律行為は、無効とする。不法な行為をしないことを条件とするものも、同様とする。」と定めており、停止条件か解除条件かを区別していない。

ウ 正しい。民法130条2項は、「条件が成就することによって利益を受ける当事者が不正にその条件を成就させたときは、相手方は、その条件が成就しなかったものとみなすことができる。」と定めている。最判平成6年5月31日(民集48巻4号1029頁)の裁判要旨は、「条件の成就によって利益を受ける当事者が故意に条件を成就させたときは、民法一三〇条の類推適用により、相手方は条件が成就していないものとみなすことができる。」としている。同判決の参照法条は民法130条であり、同判決は同条の類推適用によってこの結論を導いているが、現行法では、同条2項がこの場面について明文の規定を置いている(ただし、要件の文言は、同判決の裁判要旨が「故意に」であるのに対し、同項は「不正に」であり、両者は同じではない。)。本肢は同項の文言どおりであるから、正しい。また、同条1項は、「条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意にその条件の成就を妨げたときは、相手方は、その条件が成就したものとみなすことができる。」と定めており、1項(成就の妨害)と2項(不正な成就)とで、相手方がみなすことのできる内容が逆になっている。

エ 誤り。民法131条2項は、「条件が成就しないことが法律行為の時に既に確定していた場合において、その条件が停止条件であるときはその法律行為は無効とし、その条件が解除条件であるときはその法律行為は無条件とする。」と定めている。解除条件の不成就が確定している以上、その法律行為が条件の成就によって効力を失うことはないから、無条件となる。本肢は、停止条件の場合の効果(無効)を解除条件の場合に当てはめている点で誤りである。なお、同条1項は、「条件が法律行為の時に既に成就していた場合において、その条件が停止条件であるときはその法律行為は無条件とし、その条件が解除条件であるときはその法律行為は無効とする。」と定め、同条3項は、これらの場合において、当事者が条件が成就したこと又は成就しなかったことを知らない間は、同法128条及び129条の規定を準用するとしている。同法129条は、「条件の成否が未定である間における当事者の権利義務は、一般の規定に従い、処分し、相続し、若しくは保存し、又はそのために担保を供することができる。」と定めている。

オ 正しい。民法137条は、「次に掲げる場合には、債務者は、期限の利益を主張することができない。」とし、「債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。」(1号)、「債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき。」(2号)及び「債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき。」(3号)を掲げている。本肢の二つの場合は、それぞれ同条1号及び3号に当たる。なお、同法136条1項は、「期限は、債務者の利益のために定めたものと推定する。」と定め、同条2項は、「期限の利益は、放棄することができる。ただし、これによって相手方の利益を害することはできない。」と定めている。


問題:

抵当権の効力の及ぶ範囲に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものはいくつあるか。

ア. 宅地に対する抵当権の効力は、特段の事情のない限り、抵当権設定当時その宅地の従物であった石灯籠及び庭石にも及び、抵当権の設定登記による対抗力は、これらの従物についても生ずる。

イ. 土地賃借人がその土地上に所有する建物について抵当権を設定し、その抵当権の実行により第三者が建物を買い受けた場合において、賃貸人が賃借権の移転を承諾しないときは、賃借人は、土地所有者である賃貸人に代位して、建物の買受人に対し、土地の明渡しを請求することができる。

ウ. 抵当権は、その担保する債権について不履行があったかどうかにかかわらず、抵当権の設定後に生じた抵当不動産の果実に及ぶ。

エ. 抵当権の設定後に抵当地に建物が築造されたときは、抵当権者は、土地とともにその建物を競売することができるが、その優先権は、土地の代価についてのみ行使することができる。

オ. ガソリンスタンドの店舗用建物に対する抵当権設定当時、建物内の設備と一部管によって連通する地下タンク、ノンスペース型計量機、洗車機などの諸設備を建物の敷地上又は地下に近接して設置し、これらを建物に付属させて経済的に一体として営業に使用していたなどの事情の下においては、これらの諸設備には、建物の従物として抵当権の効力が及ぶ。

答え:

誤っているものは、イ・ウの2つである。

解説:

ア 正しい。民法370条は、「抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産(以下「抵当不動産」という。)に付加して一体となっている物に及ぶ。ただし、設定行為に別段の定めがある場合及び債務者の行為について第四百二十四条第三項に規定する詐害行為取消請求をすることができる場合は、この限りでない。」と定めている。また、同法87条1項は、「物の所有者が、その物の常用に供するため、自己の所有に属する他の物をこれに附属させたときは、その附属させた物を従物とする。」と定め、同条2項は、「従物は、主物の処分に従う。」と定めている。最判昭和44年3月28日(民集23巻3号699頁)の裁判要旨は、「宅地に対する抵当権の効力は、特段の事情のないかぎり、抵当権設定当時右宅地の従物であつた石燈籠および庭石にも及び、抵当権の設定登記による対抗力は、右従物についても生ずる。」としている(「石燈籠」は裁判所ウェブサイト掲載の裁判要旨の表記のまま)。同判決の参照法条には、民法87条、177条及び370条が掲げられている。

イ 誤り。最判昭和40年5月4日(民集19巻4号811頁)の裁判要旨は、「一 土地賃借人が該土地上に所有する建物について抵当権を設定した場合には、原則として、右抵当権の効力は当該土地の賃借権に及び、右建物の競落人と賃借人との関係においては、右建物の所有権とともに土地の賃借権も競落人に移転するものと解するのが相当である。」とし、「二 前項の場合には、賃借人は、賃貸人において右賃借権の移転を承諾しないときであつても、競落人に対し、土地所有者たる賃貸人に代位して右土地の明渡を請求することはできない。」としている。同判決の参照法条には、民法370条、87条2項、423条及び612条が掲げられている。賃貸人が賃借権の移転を承諾しないときであっても、賃借人は、賃貸人に代位して買受人(裁判要旨にいう「競落人」)に対し土地の明渡しを請求することはできない。本肢は、これを請求することができるとしている点で誤りである。

ウ 誤り。民法371条は、「抵当権は、その担保する債権について不履行があったときは、その後に生じた抵当不動産の果実に及ぶ。」と定めている。抵当権の効力が果実に及ぶのは、被担保債権について不履行があった後に生じた果実に限られる。本肢は、不履行の有無にかかわらず抵当権設定後に生じた果実に及ぶとしている点で誤りである。なお、果実には、「物の用法に従い収取する産出物」である天然果実(同法88条1項)と、「物の使用の対価として受けるべき金銭その他の物」である法定果実(同条2項)とがある。また、民法371条は、譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(令和7年法律第57号)により、「抵当権は、その担保する債権について不履行があったときは、抵当不動産の果実(収取されていないものに限る。)に及ぶ。」と改められる(施行日は、譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律(令和7年法律第56号)の施行の日であり、同法は、公布の日〔令和7年6月6日〕から起算して2年6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行される。)。改正後も、被担保債権について不履行があったことを要する点は変わらない。

エ 正しい。民法389条1項は、「抵当権の設定後に抵当地に建物が築造されたときは、抵当権者は、土地とともにその建物を競売することができる。ただし、その優先権は、土地の代価についてのみ行使することができる。」と定めている。土地の抵当権の効力は、「抵当地の上に存する建物」には及ばない(同法370条本文)から、建物の代価から優先弁済を受けることはできないが、土地とともに建物を競売することが認められている。なお、同法389条2項は、「前項の規定は、その建物の所有者が抵当地を占有するについて抵当権者に対抗することができる権利を有する場合には、適用しない。」と定めている。

オ 正しい。最判平成2年4月19日(集民159号461頁)の裁判要旨は、「ガソリンスタンドの店舗用建物に対する抵当権設定当時、建物内の設備と一部管によつて連通する地下タンク、ノンスペース型計量機、洗車機などの諸設備を右建物の敷地上又は地下に近接して設置し、これらを右建物に付属させて経済的に一体として右営業に使用していたなど判示の事情の下においては、右諸設備には、右建物の従物として抵当権の効力が及ぶ。」としている。同判決の参照法条には、民法87条及び370条が掲げられている。同判決は、民集ではなく最高裁判所裁判集民事(集民)に登載された、いわゆる事例判断である(判示事項は「…諸設備にも及ぶとされた事例」とされている。)。


問題:

相続分に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものはいくつあるか。

ア. 被相続人を保険契約者及び被保険者とし、共同相続人の一人を保険金受取人とする養老保険契約に基づき保険金受取人とされた相続人が取得する死亡保険金請求権は、民法903条1項に規定する遺贈又は贈与に係る財産には当たらないが、保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が同条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には、同条の類推適用により、特別受益に準じて持戻しの対象となる。

イ. 共同相続人の一人が被相続人から生計の資本として受けた贈与の価額が、その者の相続分の価額を超えるときは、その者は、その超える部分に相当する価額を他の共同相続人に償還しなければならない。

ウ. 共同相続人間においてされた無償による相続分の譲渡は、譲渡に係る相続分に含まれる積極財産及び消極財産の価額等を考慮して算定した当該相続分に財産的価値があるとはいえない場合を除き、譲渡をした者の相続において、民法903条1項に規定する「贈与」に当たる。

エ. 寄与分について共同相続人間の協議が調わないときは、寄与をした者は、遺産の分割の請求がされているかどうかにかかわらず、家庭裁判所に寄与分を定めることを請求することができる。

オ. 相続開始の時から10年を経過した後にする遺産の分割については、相続開始の時から10年を経過する前に相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしていた場合であっても、特別受益者の相続分及び寄与分に関する規定は適用されない。

答え:

誤っているものは、イ・エ・オの3つである。

解説:

ア 正しい。民法903条1項は、「共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。」と定めている。最決平成16年10月29日(民集58巻7号1979頁)の裁判要旨は、「被相続人を保険契約者及び被保険者とし,共同相続人の1人又は一部の者を保険金受取人とする養老保険契約に基づき保険金受取人とされた相続人が取得する死亡保険金請求権は,民法903条1項に規定する遺贈又は贈与に係る財産には当たらないが,保険金の額,この額の遺産の総額に対する比率,保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係,各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して,保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には,同条の類推適用により,特別受益に準じて持戻しの対象となる。」としている(「1人」、算用数字及び読点「,」は裁判所ウェブサイト掲載の裁判要旨の表記のまま)。同決定の参照法条には、民法903条のほか、商法673条及び675条1項(いずれも同決定当時の規定)が掲げられている。

イ 誤り。民法903条2項は、「遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。」と定めている。特別受益の価額が相続分の価額を超える場合でも、その者は相続分を受けることができないにとどまり、超える部分を他の共同相続人に償還すべきものとはされていない。なお、同条3項は、「被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思に従う。」と定め、同条4項は、婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について同条1項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定するとしている。また、同法904条は、「前条に規定する贈与の価額は、受贈者の行為によって、その目的である財産が滅失し、又はその価格の増減があったときであっても、相続開始の時においてなお原状のままであるものとみなしてこれを定める。」と定めている。

ウ 正しい。最判平成30年10月19日(民集72巻5号900頁)の裁判要旨は、「共同相続人間においてされた無償による相続分の譲渡は,譲渡に係る相続分に含まれる積極財産及び消極財産の価額等を考慮して算定した当該相続分に財産的価値があるとはいえない場合を除き,上記譲渡をした者の相続において,民法903条1項に規定する「贈与」に当たる。」としている(算用数字及び読点「,」は裁判所ウェブサイト掲載の裁判要旨の表記のまま)。同判決は遺留分減殺請求事件についてのものであり、その参照法条には、民法903条1項、905条及び1044条(同判決当時の規定であり、平成30年法律第72号による改正前のもの)が掲げられている。なお、同法905条1項は、「共同相続人の一人が遺産の分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときは、他の共同相続人は、その価額及び費用を償還して、その相続分を譲り受けることができる。」と定め、同条2項は、「前項の権利は、一箇月以内に行使しなければならない。」と定めている。

エ 誤り。民法904条の2第2項は、「前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、同項に規定する寄与をした者の請求により、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定める。」と定め、同条4項は、「第二項の請求は、第九百七条第二項の規定による請求があった場合又は第九百十条に規定する場合にすることができる。」と定めている。寄与分を定める請求は、家庭裁判所への遺産の分割の請求(同法907条2項)があった場合、又は相続の開始後認知によって相続人となった者が価額の支払を請求する場合(同法910条)に限りすることができ、遺産の分割の請求と無関係に単独ですることはできない。本肢は、遺産の分割の請求の有無にかかわらず請求することができるとしている点で誤りである。なお、寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない(同法904条の2第3項)。

オ 誤り。民法904条の3は、「前三条の規定は、相続開始の時から十年を経過した後にする遺産の分割については、適用しない。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。」とし、「相続開始の時から十年を経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。」(1号)及び「相続開始の時から始まる十年の期間の満了前六箇月以内の間に、遺産の分割を請求することができないやむを得ない事由が相続人にあった場合において、その事由が消滅した時から六箇月を経過する前に、当該相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。」(2号)を掲げている。「前三条」とは、特別受益者の相続分に関する同法903条及び904条並びに寄与分に関する同法904条の2である。相続開始の時から10年を経過する前に相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしていた場合は、同条1号に当たり、10年経過後の遺産の分割であっても、これらの規定が適用される。本肢は、この場合にも適用されないとしている点で誤りである。なお、同条は、民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)によって新設された規定であり、同法附則3条は、同条の規定は同法の施行日前に相続が開始した遺産の分割についても適用するとした上で、その場合の期間について、「相続開始の時から十年を経過する時又は民法等の一部を改正する法律(令和三年法律第二十四号)の施行の時から五年を経過する時のいずれか遅い時まで」とする読替えを定めている。


問題:

区分建物の表題部の変更の登記及び更正の登記並びに特定登記に関する次の記述のうち、正しいものはいくつあるか。

ア. 区分建物が属する一棟の建物の床面積に変更があった場合において、当該一棟の建物に属する区分建物の一つについて一棟の建物の床面積に関する変更の登記がされたときは、その登記は、同じ一棟の建物に属する他の区分建物についてされた変更の登記としての効力を有し、登記官は、職権で、他の区分建物について当該変更の登記をしなければならない。

イ. 区分建物である建物の床面積に関する変更の登記は、同じ一棟の建物に属する他の区分建物についてされた変更の登記としての効力を有する。

ウ. 敷地権付き区分建物の表題部の更正の登記のうち、敷地権の登記原因及びその日付に関する更正の登記は、当該区分建物についてのみ効力を有し、同じ一棟の建物に属する他の区分建物についてされた更正の登記としての効力を有しない。

エ. 敷地権付き区分建物について、不動産登記法73条1項の規定により敷地権についてされた登記としての効力を有する抵当権の登記(特定登記)がある場合において、規約の変更により敷地利用権が専有部分と分離して処分することができるものとなったことによる敷地権の変更の登記をするときは、抵当権者の承諾を証する情報が提供されなかったとしても、当該抵当権は建物のみを目的とするものとして存続し、敷地権の目的であった土地の登記記録に当該特定登記が転写されることはない。

オ. 特定登記がある敷地権付き区分建物について建物の滅失の登記を申請する場合において、特定登記に係る権利の登記名義人が敷地権の目的であった土地について当該権利を消滅させることを承諾したことを証する情報を併せて提供したときは、登記官は、当該土地について当該権利が消滅した旨を登記しなければならない(当該権利を目的とする第三者の権利に関する登記はないものとする。)。

答え:

正しいものは、ア・オの2つである。

解説:

ア 正しい。不動産登記法51条5項は、「建物が区分建物である場合において、第四十四条第一項第一号(区分建物である建物に係るものに限る。)又は第七号から第九号までに掲げる登記事項(同号に掲げる登記事項にあっては、法務省令で定めるものに限る。次項及び第五十三条第二項において同じ。)に関する変更の登記は、当該登記に係る区分建物と同じ一棟の建物に属する他の区分建物についてされた変更の登記としての効力を有する。」と定めている。一棟の建物の構造及び床面積は、同法44条1項7号に掲げる登記事項である。そして、同法51条6項は、「前項の場合において、同項に規定する登記事項に関する変更の登記がされたときは、登記官は、職権で、当該一棟の建物に属する他の区分建物について、当該登記事項に関する変更の登記をしなければならない。」と定めている。

イ 誤り。不動産登記法51条5項が他の区分建物についてされた変更の登記としての効力を認める登記事項は、同法44条1項1号(区分建物である建物に係るもの=一棟の建物の所在)及び7号から9号まで(一棟の建物の構造及び床面積、一棟の建物の名称、敷地権〔法務省令で定めるものに限る。〕)に掲げるものに限られる。区分建物である建物自体の床面積は同法44条1項3号の登記事項であり、同法51条5項の対象に含まれていないから、他の区分建物についてされた変更の登記としての効力を有しない。

ウ 誤り。不動産登記法53条2項は、「第五十一条第五項及び第六項の規定は、建物が区分建物である場合における同条第五項に規定する登記事項に関する表題部の更正の登記について準用する。」と定めている。そして、不動産登記規則122条1項は、同法51条5項の法務省令で定める登記事項を「敷地権の目的となる土地の不動産所在事項、地目及び地積」(1号)及び「敷地権の種類」(2号)とし、同条2項は、「法第五十三条第二項において準用する第五十一条第五項の法務省令で定める事項は、前項各号に掲げる事項並びに敷地権の登記原因及びその日付とする。」と定めている。したがって、敷地権の登記原因及びその日付に関する更正の登記は、同じ一棟の建物に属する他の区分建物についてされた更正の登記としての効力を有する。なお、変更の登記(規則122条1項)では敷地権の登記原因及びその日付は対象に含まれておらず、変更と更正とで対象となる事項の範囲が異なる点に注意を要する。

エ 誤り。不動産登記法55条1項は、特定登記を「所有権等の登記以外の権利に関する登記であって、第七十三条第一項の規定により敷地権についてされた登記としての効力を有するもの」と定義した上で、敷地利用権が分離処分可能となったことにより敷地権の変更の登記をする場合において、特定登記に係る権利の登記名義人の承諾を証する情報が提供されたときは、承諾に係る建物又は土地について当該権利が消滅した旨を登記しなければならないとしている。そして、不動産登記規則124条3項は、「登記官は、前項に規定する登記をすべき場合において、敷地権付き区分建物の登記記録に特定登記(法第五十五条第一項に規定する特定登記をいう。以下同じ。)があるときは、当該敷地権付き区分建物の登記記録から第一項の土地の登記記録の権利部の相当区にこれを転写しなければならない。」と定めている。転写すべき登記が抵当権の登記であるときは、登記官は、共同担保目録を作成しなければならない(同条6項前段。既に共同担保目録が作成されていた場合を除く。同条7項)。承諾を証する情報が提供されない場合には、同法55条1項による権利が消滅した旨の登記はされず、特定登記は同規則124条3項により土地の登記記録に転写される。本肢は、当該抵当権が建物のみを目的とするものとして存続し、特定登記が転写されることはないとしている点で誤りである。

オ 正しい。不動産登記法55条4項前段は、「第一項の規定は、特定登記がある建物の滅失の登記について準用する。」と定め、同項後段は、同条1項中「当該建物又は当該敷地権の目的であった土地」とあるのは「当該敷地権の目的であった土地」と、「当該承諾に係る建物又は土地」とあるのは「当該土地」と読み替えるものとしている。したがって、建物の滅失の登記の申請情報と併せて、特定登記に係る権利の登記名義人が敷地権の目的であった土地について当該権利を消滅させることを承諾したことを証する情報が提供されたときは、登記官は、当該土地について当該権利が消滅した旨を登記しなければならない。この登記は、付記登記によってする(不動産登記規則125条2項前段・4項)。


問題:

地図等及び登記簿の附属書類の写しの交付並びに閲覧に関する次の記述のうち、誤っているものはいくつあるか。

ア. 地役権図面の閲覧を請求するには、正当な理由があることを要し、閲覧することができるのは、その正当な理由があると認められる部分に限られる。

イ. 地図に準ずる図面の全部又は一部の写しの交付の請求は、法務省令で定める場合を除き、請求に係る土地の所在地を管轄する登記所以外の登記所の登記官に対してもすることができる。

ウ. 登記簿の附属書類のうち土地所在図、地積測量図、地役権図面、建物図面及び各階平面図以外のものについて、正当な理由があるとして閲覧を請求するときは、閲覧する部分及び当該部分を閲覧する正当な理由を請求情報の内容とし、かつ、当該正当な理由を証する書面を提示しなければならない。

エ. 登記を申請した者は、正当な理由の有無にかかわらず、自己を申請人とする登記記録に係る登記簿の附属書類の閲覧を請求することができるが、この場合には、閲覧する附属書類が自己を申請人とする登記記録に係る登記簿の附属書類である旨を証する書面を提示しなければならない。

オ. 登記官は、地積測量図の閲覧をさせる場合において、請求人から別段の申出があり、かつ、当該申出を相当と認めるときは、電子計算機を使用して登記官及び請求人が映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話することができる方法によって閲覧をさせることができる。

答え:

誤っているものは、ア・オの2つである。

解説:

ア 誤り。不動産登記法121条1項は、「何人も」、手数料を納付して、登記簿の附属書類のうち政令で定める図面の全部又は一部の写しの交付を請求することができると定め、同条2項は、「何人も」、手数料を納付して、登記簿の附属書類のうち同条1項の図面の閲覧を請求することができると定めている。そして、不動産登記令21条1項は、「法第百二十一条第一項の政令で定める図面は、土地所在図、地積測量図、地役権図面、建物図面及び各階平面図とする。」と定めている。地役権図面の閲覧には正当な理由を要しない。正当な理由を要し、閲覧できる範囲が「その正当な理由があると認められる部分に限る」とされるのは、同法121条3項の規定による、これらの図面以外の登記簿の附属書類の閲覧である。

イ 正しい。不動産登記法120条1項は、「何人も」、手数料を納付して、「地図、建物所在図又は地図に準ずる図面(以下この条において「地図等」という。)の全部又は一部の写し」の交付を請求することができると定め、同条3項は、「第百十九条第三項から第五項までの規定は、地図等について準用する。」と定めている。準用される同法119条5項は、「第一項の交付の請求は、法務省令で定める場合を除き、請求に係る不動産の所在地を管轄する登記所以外の登記所の登記官に対してもすることができる。」と定めている。

ウ 正しい。不動産登記法121条3項は、「何人も、正当な理由があるときは」、法務省令で定めるところにより、手数料を納付して、登記簿の附属書類(同条1項の図面を除く。)の全部又は一部(その正当な理由があると認められる部分に限る。)の閲覧を請求することができると定めている。これを受けて、不動産登記規則193条2項は、この閲覧の請求をするときは、同条1項1号・2号に掲げる事項(請求人の氏名又は名称、不動産所在事項又は不動産番号)のほか、請求人の住所等に加え、「閲覧する部分及び当該部分を閲覧する正当な理由」(同項4号)を請求情報の内容とすると定め、同条3項前段は、「前項第四号の閲覧の請求をするときは、同号の正当な理由を証する書面を提示しなければならない。」と定めている(登記官から求めがあったときは、当該書面又はその写しを提出しなければならない。同項後段)。

エ 正しい。不動産登記法121条4項は、「前項の規定にかかわらず、登記を申請した者は、登記官に対し、法務省令で定めるところにより、手数料を納付して、自己を申請人とする登記記録に係る登記簿の附属書類の閲覧を請求することができる。」と定めている。この場合、不動産登記規則193条2項5号により、「閲覧する附属書類が自己を申請人とする登記記録に係る登記簿の附属書類である旨」を請求情報の内容とし、同条4項により、その旨を証する書面を提示しなければならない。

オ 誤り。不動産登記規則202条1項は、「地図等又は登記簿の附属書類の閲覧は、登記官(その指定する職員を含む。第三項において同じ。)の面前でさせるものとする。」と定めている。映像と音声の送受信による方法での閲覧を認める同条3項は、「登記官は、法第百二十一条第三項又は第四項の規定による登記簿の附属書類の閲覧をさせる場合において」と規定しており、その対象は土地所在図等以外の附属書類の閲覧(同法121条3項・4項)に限られる。地積測量図の閲覧は同条2項の規定によるものであるから、同規則202条3項の方法によることはできない。なお、筆界特定の手続における調書等の閲覧(不動産登記法141条1項)については、別途、同様の方法による閲覧を認める規定がある(不動産登記規則228条3項)。


問題:

筆界特定の手続における筆界の調査等に関する次の記述のうち、誤っているものはいくつあるか。

ア. 筆界調査委員は、対象土地の測量又は実地調査を行うときは、あらかじめ、その旨並びにその日時及び場所を筆界特定の申請人及び関係人に通知して、これに立ち会う機会を与えなければならないが、関係人の所在が判明しないときは、この通知を、対象土地の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の掲示場に所定の事項を掲示することによって行うことができ、この場合には、掲示を始めた日から2週間を経過したときに、当該通知が関係人に到達したものとみなされる。

イ. 筆界調査委員が対象土地の測量を行う場合において、法務局又は地方法務局の長の許可を受けたときは、筆界調査委員は、日出前及び日没後においても、土地の占有者の承諾を得ることなく、宅地又は垣、さく等で囲まれた他人の占有する土地に立ち入ることができる。

ウ. 筆界特定の申請があったときは、筆界特定の申請人及び関係人は、筆界特定登記官に対し、対象土地の筆界について意見又は資料を提出することができるが、筆界特定登記官が意見又は資料を提出すべき相当の期間を定めたときは、その期間内にこれを提出しなければならない。

エ. 筆界特定の申請人及び関係人は、筆界特定の申請があった旨の公告があった時から筆界特定の申請人に対する筆界特定書の内容の通知がされるまでの間、筆界特定の手続において作成された調書及び提出された資料の閲覧を請求することができ、筆界特定登記官は、第三者の利益を害するおそれがあるときその他正当な理由があるときでなければ、その閲覧を拒むことができない。

オ. 対象土地の筆界特定のために必要な事実の調査を行うべき筆界調査委員として指定を受けた者が数人あるときは、共同してその職務を行うが、筆界特定登記官の許可を得て、それぞれ単独にその職務を行い、又は職務を分掌することができる。

答え:

誤っているものは、イの1つである。

解説:

ア 正しい。不動産登記法136条1項は、「筆界調査委員は、対象土地の測量又は実地調査を行うときは、あらかじめ、その旨並びにその日時及び場所を筆界特定の申請人及び関係人に通知して、これに立ち会う機会を与えなければならない。」と定め、同条2項は、「第百三十三条第二項の規定は、前項の規定による通知について準用する。」と定めている。準用される同法133条2項は、関係人の所在が判明しないときは、通知を、「関係人の氏名又は名称、通知をすべき事項及び当該事項を記載した書面をいつでも関係人に交付する旨を対象土地の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の掲示場に掲示することによって行うことができる。」とし、「この場合においては、掲示を始めた日から二週間を経過したときに、当該通知が関係人に到達したものとみなす。」と定めている。なお、同法133条2項は、デジタル社会の形成を図るための規制改革を推進するためのデジタル社会形成基本法等の一部を改正する法律(令和5年法律第63号)により改正され、令和8年5月21日からは、関係人の氏名又は名称等の事項を法務省令で定める方法により不特定多数の者が閲覧することができる状態に置くとともに、当該事項が記載された書面を対象土地の所在地を管轄する法務局若しくは地方法務局の掲示場に掲示し、又は当該事項を当該法務局若しくは地方法務局の事務所に設置した電子計算機の映像面に表示したものの閲覧をすることができる状態に置く措置をとることによって通知を行うものとされ、「当該措置を開始した日から二週間を経過したときに」到達したものとみなされる。本肢は、令和8年度試験の法令基準日である令和8年4月1日の時点で施行されていた改正前の同項の規定によるものであり、本肢を正しいとするのも同日時点の規定による。改正後の同項の下では、掲示場への掲示のみによって通知を行うことはできず、到達の起算点も「当該措置を開始した日」となる。

イ 誤り。不動産登記法137条1項は、法務局又は地方法務局の長は、筆界調査委員が対象土地又は関係土地その他の土地の測量又は実地調査を行う場合において、必要があると認めるときは、その必要の限度において、筆界調査委員等に他人の土地に立ち入らせることができると定め、同条3項は、「宅地又は垣、さく等で囲まれた他人の占有する土地」に立ち入ろうとする場合には、立入りの際、あらかじめ、その旨を当該土地の占有者に告げなければならないと定めている。そして、同条4項は、「日出前及び日没後においては、土地の占有者の承諾があった場合を除き、前項に規定する土地に立ち入ってはならない。」と定めている。法務局又は地方法務局の長の許可によって占有者の承諾に代えることはできない。

ウ 正しい。不動産登記法139条1項は、「筆界特定の申請があったときは、筆界特定の申請人及び関係人は、筆界特定登記官に対し、対象土地の筆界について、意見又は資料を提出することができる。この場合において、筆界特定登記官が意見又は資料を提出すべき相当の期間を定めたときは、その期間内にこれを提出しなければならない。」と定めている。なお、この意見又は資料の提出は、法務省令で定める電磁的方法により行うこともできる(同条2項)。

エ 正しい。不動産登記法141条1項は、「筆界特定の申請人及び関係人は、第百三十三条第一項本文の規定による公告があった時から第百四十四条第一項の規定により筆界特定の申請人に対する通知がされるまでの間、筆界特定登記官に対し、当該筆界特定の手続において作成された調書及び提出された資料(電磁的記録にあっては、記録された情報の内容を法務省令で定める方法により表示したもの)の閲覧を請求することができる。この場合において、筆界特定登記官は、第三者の利益を害するおそれがあるときその他正当な理由があるときでなければ、その閲覧を拒むことができない。」と定めている。同法144条1項の通知は、筆界特定登記官が筆界特定をしたときに、筆界特定の申請人に対し、筆界特定書の写しを交付する方法(電磁的記録で作成されているときは法務省令で定める方法)によりその内容を通知するものである。なお、筆界特定登記官は、この閲覧について日時及び場所を指定することができる(同法141条2項)。

オ 正しい。不動産登記法134条3項は、「第一項の規定による指定を受けた筆界調査委員が数人あるときは、共同してその職務を行う。ただし、筆界特定登記官の許可を得て、それぞれ単独にその職務を行い、又は職務を分掌することができる。」と定めている。筆界調査委員を指定するのは法務局又は地方法務局の長であるが(同条1項)、単独での職務執行又は職務の分掌についての許可をするのは筆界特定登記官である。


問題:

土地家屋調査士でない者等の業務の制限等に関する次の記述のうち、誤っているものはいくつあるか。なお、以下の記述において「非調査士等」とは、調査士会に入会している土地家屋調査士又は土地家屋調査士法人でない者(公共嘱託登記土地家屋調査士協会を除く。)をいう。

ア. 非調査士等が業として行うことができないとされる不動産の表示に関する登記の申請手続についての代理は、土地又は家屋に関する調査又は測量を必要とする申請手続に関するものに限られる。

イ. 弁護士は、土地の分筆の登記の申請手続についての代理を業として行うことができるほか、当該申請の却下処分に対する審査請求の手続についての代理も業として行うことができる。

ウ. 公共嘱託登記土地家屋調査士協会が、その業務の範囲を超えて、土地家屋調査士法64条1項に規定する事務を行うことを業としたときは、その違反行為をした協会の理事又は職員は、1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金に処せられる。

エ. 非調査士等であっても、不動産の表示に関する登記について必要な土地の調査又は測量に関する相談に応ずることは、報酬を得て業として行うものであっても、土地家屋調査士法による制限を受けない。

オ. 司法書士は、簡裁訴訟代理等関係業務を行うのに必要な能力を有すると法務大臣が認定した者でなくても、司法書士法3条1項8号に規定する筆界特定の手続に係るものであれば、筆界特定の手続についての代理を業として行うことができる。

答え:

誤っているものは、イ・エ・オの3つである。

解説:

ア 正しい。土地家屋調査士法68条1項本文は、「調査士会に入会している調査士又は調査士法人でない者(協会を除く。)は、第三条第一項第一号から第五号までに掲げる事務(同項第二号及び第三号に掲げる事務にあつては、同項第一号に掲げる調査又は測量を必要とする申請手続に関するものに限る。)又はこれらの事務に関する同項第六号に掲げる事務を行うことを業とすることができない。」と定めている。不動産の表示に関する登記の申請手続についての代理(同法3条1項2号)及び書類等の作成(同項3号)については、同項1号の調査又は測量を必要とする申請手続に関するものに限って、非調査士等が業として行うことが禁止される。

イ 誤り。土地家屋調査士法68条1項ただし書は、「弁護士、弁護士法人若しくは弁護士・外国法事務弁護士共同法人が同項第二号から第五号までに掲げる事務(同項第二号及び第三号に掲げる事務にあつては、同項第一号に掲げる調査又は測量を必要とする申請手続に関する審査請求の手続に関するものに限る。)若しくはこれらの事務に関する同項第六号に掲げる事務を行う場合」は同項本文の制限を受けないと定めている。弁護士について除外されるのは、同法3条1項2号・3号の事務のうち調査又は測量を必要とする申請手続に関する「審査請求の手続」に関するものであり、調査又は測量を必要とする申請手続そのものについての代理は除外されていない。土地の分筆の登記の申請は、分筆後の土地の地積測量図の提供を要する(不動産登記令別表8の項添付情報欄イ)など調査又は測量を必要とする申請手続であるから、弁護士であっても、同項本文により、その申請手続についての代理を業として行うことはできない。これに対し、当該申請の却下処分に対する審査請求の手続についての代理は、上記ただし書により業として行うことができる。

ウ 正しい。土地家屋調査士法68条2項は、「協会は、その業務の範囲を超えて、第六十四条第一項に規定する事務を行うことを業とすることができない。」と定め、同法73条2項は、「協会が第六十八条第二項の規定に違反したときは、その違反行為をした協会の理事又は職員は、一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。」と定めている。なお、同法75条の両罰規定は、同法73条の違反行為を対象に含んでいる。

エ 誤り。土地家屋調査士法68条1項本文は、同法3条1項1号から5号までに掲げる事務のほか、「これらの事務に関する同項第六号に掲げる事務」、すなわちこれらの事務についての相談(同法3条1項6号)も、非調査士等が業として行うことができないものとしている。不動産の表示に関する登記について必要な土地の調査又は測量(同項1号)に関する相談を業として行うことは、同法68条1項により禁止される。これに違反した者は、1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金に処せられる(同法73条1項)。

オ 誤り。土地家屋調査士法68条1項ただし書は、「司法書士法第三条第二項に規定する司法書士若しくは同項に規定する簡裁訴訟代理等関係業務を行うことを目的とする司法書士法人が第三条第一項第四号若しくは第五号に掲げる事務(同法第三条第一項第八号に規定する筆界特定の手続に係るものに限る。)若しくはこれらの事務に関する第三条第一項第六号に掲げる事務を行う場合」は同項本文の制限を受けないと定めている。除外の対象となるのは「司法書士法第三条第二項に規定する司法書士」、すなわち法務大臣が指定する研修の課程を修了し、法務大臣から簡裁訴訟代理等関係業務を行うのに必要な能力を有すると認定され、かつ、司法書士会の会員である司法書士(司法書士法3条2項1号〜3号)に限られる。司法書士法の側でも、同法3条1項8号の業務は簡裁訴訟代理等関係業務として、同条2項各号に該当する司法書士に限り行うことができるとされている(同条2項柱書)。したがって、この認定を受けていない司法書士は、土地家屋調査士法68条1項本文により、筆界特定の手続についての代理を業として行うことはできない。


問題:

二以上の建物が合体して一個の建物となった場合の登記に関する次の記述のうち、正しいものはいくつあるか。

ア. 合体前の二以上の建物が表題登記がない建物及び表題登記がある建物(所有権の登記がある建物を除く。)のみである場合において、合体後に、当該表題登記がない建物の所有者から合体後の建物について合体前の表題登記がない建物の所有権に相当する持分を取得した者は、その持分の取得の日から1月以内に、合体による登記等を申請しなければならない。

イ. 合体前の二以上の建物が表題登記がない建物及び表題登記がある建物(所有権の登記がある建物を除く。)のみであるときは、合体による登記等の申請に併せて、当該表題登記がない建物の所有者及び当該表題登記がある建物の表題部所有者を合体後の建物の登記名義人とする所有権の登記を申請しなければならない。

ウ. 合体前の二以上の建物が表題登記がない建物及び所有権の登記がある建物のみであるときは、合体による登記等の申請と、これに併せて申請しなければならない所有権の登記の申請とは、一の申請情報によってしなければならない。

エ. 合体前の建物に賃借権の登記がある場合には、賃借権は不動産登記法50条に規定する「所有権等」に含まれるため、賃借権の登記名義人が合体後の建物について当該賃借権を消滅させることを承諾したことを証する情報を提供したとしても、同条の規定により当該賃借権が消滅した旨の登記がされることはない。

オ. 合体前の建物についてされた抵当権の登記であって合体後の建物について存続することとなるもの(存続登記)がある場合において、合体後の建物の持分について当該存続登記と同一の登記をするときは、当該存続登記に係る権利の登記名義人が当該登記を承諾したことを証する当該登記名義人が作成した情報又は当該登記名義人に対抗することができる裁判があったことを証する情報を提供しなければならない。

答え:

正しいものは、ア・ウ・オの3つである。

解説:

ア 正しい。不動産登記法49条3項は、「第一項第一号、第二号又は第六号に掲げる場合において、当該二以上の建物(同号に掲げる場合にあっては、当該三以上の建物)が合体して一個の建物となった後当該合体前の表題登記がない建物の所有者から当該合体後の建物について合体前の表題登記がない建物の所有権に相当する持分を取得した者は、その持分の取得の日から一月以内に、合体による登記等を申請しなければならない。」と定めている。記述の場合は同条1項1号(合体前の二以上の建物が表題登記がない建物及び表題登記がある建物のみであるとき)に当たる。

イ 誤り。不動産登記法49条1項後段は、「第二号に掲げる場合にあっては当該表題登記がない建物の所有者、第四号に掲げる場合にあっては当該表題登記がある建物(所有権の登記がある建物を除く。以下この条において同じ。)の表題部所有者、第六号に掲げる場合にあっては当該表題登記がない建物の所有者及び当該表題登記がある建物の表題部所有者をそれぞれ当該合体後の建物の登記名義人とする所有権の登記を併せて申請しなければならない。」と定めている。所有権の登記を併せて申請しなければならないのは、合体前の建物に所有権の登記がない建物(表題登記がない建物又は表題登記がある建物)と所有権の登記がある建物とが含まれる同項2号・4号・6号の場合に限られ、合体前の建物がいずれも所有権の登記がない同項1号の場合はこれに当たらない。

ウ 正しい。記述の場合は不動産登記法49条1項2号に当たり、同項後段により、当該表題登記がない建物の所有者を合体後の建物の登記名義人とする所有権の登記を併せて申請しなければならない。そして、不動産登記令5条1項は、「合体による登記等の申請は、一の申請情報によってしなければならない。この場合において、法第四十九条第一項後段の規定により併せて所有権の登記の申請をするときは、これと当該合体による登記等の申請とは、一の申請情報によってしなければならない。」と定めている。

エ 誤り。不動産登記法50条は、「所有権等(所有権、地上権、永小作権、地役権及び採石権をいう。以下この款及び第百十八条第五項において同じ。)の登記以外の権利に関する登記がある建物について合体による登記等をする場合」において、当該権利の登記名義人が合体後の建物について当該権利を消滅させることについて承諾したことを証する情報が提供されたときは、法務省令で定めるところにより、当該権利が消滅した旨を登記しなければならないと定めている。賃借権は「所有権等」に含まれないから、同条の対象となる。この場合の権利が消滅した旨の登記は、付記登記によってする(不動産登記規則120条5項1号・6項前段)。

オ 正しい。不動産登記令別表13の項申請情報欄ハは、「合体前の建物についてされた所有権の登記以外の所有権に関する登記又は先取特権、質権若しくは抵当権に関する登記であって合体後の建物について存続することとなるもの(以下この項において「存続登記」という。)」があるときの申請情報を定め、同項添付情報欄トは、「合体後の建物の持分について存続登記と同一の登記をするときは、当該存続登記に係る権利の登記名義人が当該登記を承諾したことを証する当該登記名義人が作成した情報又は当該登記名義人に対抗することができる裁判があったことを証する情報」を添付情報としている。この場合、登記官は、合体前の建物の登記記録から合体後の建物の登記記録の権利部の相当区に当該存続登記を移記する(不動産登記規則120条4項)。


出題分野の振り分け

問 分野 主な論点 主な根拠条文
第1問 民法(総則・条件及び期限) 条件の成就・不成就の効果と遡及の特約、条件の成就の妨害と不正な成就、既成条件・不法条件・不能条件、期限の到来の効果と期限の利益の喪失 民法127条、130条、131条、132条、133条、135条、136条、137条、最判平6.5.31
第2問 民法(物権・抵当権) 抵当権の効力の及ぶ範囲(付加一体物・従物・従たる権利)、被担保債権の不履行後の果実、抵当地の上の建物の一括競売 民法87条、88条、370条、371条、389条、最判昭44.3.28、最判昭40.5.4、最判平2.4.19
第3問 民法(相続・相続分) 特別受益(死亡保険金・無償の相続分譲渡)、寄与分を定める請求の要件、相続開始から10年を経過した後の遺産分割と経過措置、相続分の取戻し 民法903条、904条、904条の2、904条の3、905条、907条2項、910条、令和3年法律第24号附則3条、最決平16.10.29、最判平30.10.19
第4問 不動産登記法(区分建物) 区分建物の表題部の変更・更正の登記の効力が同じ一棟の他の区分建物に及ぶ範囲、特定登記の扱い 不動産登記法44条1項3号・7号、51条5項・6項、53条2項、55条1項・4項、不動産登記規則122条、124条、125条
第5問 地図関連制度(地図等・附属書類) 地図等・登記簿の附属書類の写しの交付と閲覧、地役権図面と正当な理由、映像等による閲覧の範囲 不動産登記法119条5項、120条、121条、不動産登記令21条1項、不動産登記規則193条、202条、228条3項
第6問 筆界特定 筆界調査委員による調査(立会いの通知と掲示、立入調査の時間の制限)、意見・資料の提出、調書等の閲覧、筆界調査委員が数人ある場合 不動産登記法133条2項、134条、136条、137条、139条、141条、144条1項
第7問 土地家屋調査士法(業務の制限・罰則) 土地家屋調査士でない者の業務の制限の範囲、弁護士・司法書士の例外、公共嘱託登記土地家屋調査士協会の業務範囲外の行為と罰則 土地家屋調査士法3条1項、64条1項、68条、73条、75条、司法書士法3条、不動産登記令別表8の項
第8問 不動産登記法(合体による登記等) 合体による登記等の申請義務者、所有権の登記を併せて申請する場合、一の申請情報、存続登記と承諾を証する情報 不動産登記法49条、50条、不動産登記令5条1項、別表13の項、不動産登記規則120条4項〜6項