問題:
代理に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものはいくつあるか。
ア. 特定の法律行為をすることを委託された代理人がその行為をした場合において、本人が過失によって知らなかった事情については、本人は、代理人が知らなかったことを主張することができる。
イ. 本人と代理人との間で委任契約が締結され、代理人と復代理人との間で復委任契約が締結された場合において、復代理人が委任事務を処理するに当たり受領した物を代理人に引き渡したときは、特別の事情がない限り、復代理人の本人に対する受領物引渡義務は消滅する。
ウ. 代理人が自己の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合において、相手方がその目的を知ることができたときは、その行為は無効であり、本人は、これを追認して本人に対してその効力を生じさせることはできない。
エ. 本人が後見開始の審判を受けたときは、委任による代理権は消滅する。
オ. 本人から登記申請を委任されてこれに必要な権限を与えられた者が、その権限を越えて第三者と取引行為をした場合において、その登記申請が本人の私法上の契約による義務の履行のためにされるものであるときは、その権限を基本代理権として、民法110条の表見代理が成立し得る。
答え:
正しいものは、イ・オの2つである。
解説:
ア 誤り。民法101条3項は、「特定の法律行為をすることを委託された代理人がその行為をしたときは、本人は、自ら知っていた事情について代理人が知らなかったことを主張することができない。本人が過失によって知らなかった事情についても、同様とする。」と定めている。本人が過失によって知らなかった事情についても、本人は、代理人が知らなかったことを主張することができない。なお、同条1項は、「代理人が相手方に対してした意思表示の効力が意思の不存在、錯誤、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。」と定めており、代理行為の瑕疵の有無は、原則として代理人について決せられる。同条3項は、特定の法律行為の委託があった場合について、この原則に対する例外を定めたものである。
イ 正しい。最判昭和51年4月9日(民集30巻3号208頁)の裁判要旨は、「本人代理人間で委任契約が締結され、代理人復代理人間で復委任契約が締結された場合において、復代理人が委任事務を処理するにあたり受領した物を代理人に引き渡したときは、特別の事情がない限り、復代理人の本人に対する受領物引渡義務は消滅する。」としている。同判決の参照法条には、民法104条、同法107条2項及び同法646条1項が掲げられている。このうち107条2項は平成29年法律第44号による改正前の規定(改正直前の文言は「復代理人は、本人及び第三者に対して、代理人と同一の権利を有し、義務を負う。」)であり、現行法では、同法106条2項が、「復代理人は、本人及び第三者に対して、その権限の範囲内において、代理人と同一の権利を有し、義務を負う。」と定めている。また、同法646条1項は、「受任者は、委任事務を処理するに当たって受け取った金銭その他の物を委任者に引き渡さなければならない。」と定めている。なお、委任による代理人は、本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない(同法104条)のに対し、法定代理人は、自己の責任で復代理人を選任することができ、やむを得ない事由があるときは、本人に対してその選任及び監督についての責任のみを負う(同法105条)。
ウ 誤り。民法107条は、「代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合において、相手方がその目的を知り、又は知ることができたときは、その行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。」と定めている。代理権の濫用は、無効とされるのではなく、無権代理行為とみなされる。そして、同法113条1項は、「代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。」と定め、同法116条本文は、「追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。」と定めているから、本人は、追認をすることによって、その行為の効力を本人に対して生じさせることができる。自己契約・双方代理(同法108条1項)及び代理人と本人との利益が相反する行為(同条2項)も、同様に「代理権を有しない者がした行為とみなす」とされている(ただし、同条1項については債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為、同条2項については本人があらかじめ許諾した行為が除かれている。)。
エ 誤り。民法111条1項は、代理権の消滅事由として、「本人の死亡」(1号)及び「代理人の死亡又は代理人が破産手続開始の決定若しくは後見開始の審判を受けたこと。」(2号)を掲げ、同条2項は、「委任による代理権は、前項各号に掲げる事由のほか、委任の終了によって消滅する。」と定めている。そして、同法653条は、委任の終了事由として、「委任者又は受任者の死亡」(1号)、「委任者又は受任者が破産手続開始の決定を受けたこと。」(2号)及び「受任者が後見開始の審判を受けたこと。」(3号)を掲げている。後見開始の審判は、代理人(受任者)が受けた場合には代理権の消滅事由となるが、本人(委任者)が受けたことは、同法111条1項にも同法653条にも掲げられておらず、本人が後見開始の審判を受けたことは、委任による代理権の消滅事由とはされていない。これに対し、本人が破産手続開始の決定を受けたときは、委任が終了する(同条2号)から、委任による代理権は消滅する(同法111条2項)。
オ 正しい。民法110条は、「前条第一項本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。」と定めている。最判昭和39年4月2日(民集18巻4号497頁)の裁判要旨は、「民法第一一〇条の表見代理が成立するために必要とされる基本代理権は私法上の行為についての代理権であることを要すると解すべきである。」としている。そのうえで、最判昭和46年6月3日(民集25巻4号455頁)の裁判要旨は、「本人から登記申請を委任されてこれに必要な権限を与えられた者が右権限をこえて第三者と取引行為をした場合において、その登記申請が本人の私法上の契約による義務の履行のためになされるものであるときは、その権限を基本代理権として、右第三者との問の行為につき民法一一〇条を適用し、表見代理の成立を認めることができる。」としている(「問」は裁判所ウェブサイト掲載の裁判要旨の表記のまま)。登記申請の権限であっても、その登記申請が本人の私法上の契約による義務の履行のためにされるものであるときは、基本代理権となり得る。なお、代理権授与の表示による表見代理の範囲外の行為(同法109条2項)及び代理権消滅後の表見代理の範囲外の行為(同法112条2項)についても、第三者がその行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、表示をした者又は代理権を与えた者がその責任を負うとされている。
問題:
不動産に関する物権の変動と登記に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものはいくつあるか。
ア. Aの所有する甲土地をBが占有し、Bの取得時効が進行している間に、AがCに甲土地を譲渡してその旨の所有権の移転の登記がされた場合において、その後Bの取得時効が完成したときは、Bは、Cに対し、登記がなくても、時効による所有権の取得を主張することができる。
イ. A及びBが共同相続した乙土地について、Bが無断で単独で所有権を取得した旨の登記をした上で乙土地をCに売却し、Cへの所有権の移転の登記がされた場合には、Aは、登記がなければ、Cに対し、自己の持分を対抗することができない。
ウ. Aの所有する丙土地についてBの取得時効が完成した後、Bへの所有権の移転の登記がされないまま、AがCのために抵当権を設定してその旨の登記がされた場合において、Bがその後引き続き時効取得に必要な期間占有を継続し、その期間の経過後に取得時効を援用したときは、Bが抵当権の存在を容認していたなど抵当権の消滅を妨げる特段の事情がない限り、Bが丙土地を時効取得する結果、Cの抵当権は消滅する。
エ. 被相続人Aの相続人B及びCのうちBが相続の放棄をした後、Bの債権者Dが、相続財産である未登記の丁建物について、Bも共同相続したものとして代位による所有権の保存の登記をした上で、Bの持分について仮差押えの登記を経由した場合には、Cは、登記がなければ、相続の放棄の効力をDに対抗することができない。
オ. Aから戊土地を買い受けたBがその登記をしない間に、AからCが戊土地を二重に買い受け、さらにCからDが買い受けてその旨の登記を完了した場合において、Cが背信的悪意者に当たるときは、D自身が背信的悪意者と評価されるかどうかにかかわらず、Dは、戊土地の所有権の取得をもってBに対抗することができない。
答え:
誤っているものは、イ・エ・オの3つである。
解説:
ア 正しい。民法177条は、「不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。」と定めている。最判昭和41年11月22日(民集20巻9号1901頁)の裁判要旨は、「不動産の時効取得者は、取得時効の進行中に原権利者から当該不動産の譲渡を受けその旨の移転登記を経由した者に対しては、登記がなくても、時効による所有権の取得を主張することができる。」としている。これに対し、時効完成後に原所有者から権利を取得した第三者との関係について、最判昭和33年8月28日(民集12巻12号1936頁)の裁判要旨は、「時効により不動産の所有権を取得しても、その登記がないときは、時効完成後旧所有者から所有権を取得し登記を経た第三者に対し、その善意であると否とを問わず、所有権の取得を対抗できない。」としている。第三者が権利を取得したのが時効の完成前か完成後かによって、登記の要否の結論が分かれる。
イ 誤り。最判昭和38年2月22日(民集17巻1号235頁)の裁判要旨は、「甲乙両名が共同相続した不動産につき乙が勝手に単独所有権取得の登記をし、さらに第三取得者丙が乙から移転登記をうけた場合、甲は丙に対し自己の持分を登記なくして対抗できる。」としている。したがって、Aは、登記がなくても、Cに対し、自己の持分を対抗することができる。同判決の裁判要旨は、あわせて、この場合に甲が乙丙に対し請求できるのは、甲の持分についてのみの一部抹消(更正)登記手続であって、各登記の全部抹消を求めることは許されないとしている。なお、民法899条の2第1項は、「相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。」と定めている。同項が登記等の対抗要件を備えなければ第三者に対抗することができないとしているのは、法定相続分(同法900条・901条により算定した相続分)を超える部分についてである。
ウ 正しい。最判平成24年3月16日(民集66巻5号2321頁)の裁判要旨は、不動産の取得時効の完成後、所有権移転登記がされることのないまま、第三者が原所有者から抵当権の設定を受けて抵当権設定登記を了した場合において、不動産の時効取得者である占有者が、その後引き続き時効取得に必要な期間占有を継続し、その期間の経過後に取得時効を援用したときは、占有者が抵当権の存在を容認していたなど抵当権の消滅を妨げる特段の事情がない限り、占有者が不動産を時効取得する結果、抵当権は消滅するとしている。同判決の参照法条には、民法162条及び同法177条とともに、同法397条が掲げられている。同条は、「債務者又は抵当権設定者でない者が抵当不動産について取得時効に必要な要件を具備する占有をしたときは、抵当権は、これによって消滅する。」と定めている。時効完成後の第三者(アの解説の最判昭和33年8月28日参照)であるCに対しても、Bがその後引き続き時効取得に必要な期間占有を継続し、その期間の経過後に取得時効を援用したときは、特段の事情がない限り、Bが丙土地を時効取得する結果、Cの抵当権は消滅する。
エ 誤り。民法939条は、「相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。」と定めている。最判昭和42年1月20日(民集21巻1号16頁)の裁判要旨は、「相続人は、相続の放棄をした場合には相続開始時にさかのぼつて相続開始がなかつたと同じ地位に立ち、当該相続放棄の効力は、登記等の有無を問わず、何人に対してもその効力を生ずべきものと解すべきであつて、相続の放棄をした相続人の債権者が、相続の放棄後に、相続財産たる未登記の不動産について、右相続人も共同相続したものとして、代位による所有権保存登記をしたうえ、持分に対する仮差押登記を経由しても、その仮差押登記は無効である。」としている。したがって、Cは、登記がなくても、相続の放棄の効力をDに対抗することができる。なお、遺産の分割による権利の承継については、民法899条の2第1項が、法定相続分を超える部分について対抗要件を要するとしている(イの解説参照)。
オ 誤り。最判平成8年10月29日(民集50巻9号2506頁)の裁判要旨は、「所有者甲から乙が不動産を買い受け、その登記が未了の間に、甲から丙が当該不動産を二重に買い受け、更に丙から転得者丁が買い受けて登記を完了した場合に、丙が背信的悪意者に当たるとしても、丁は、乙に対する関係で丁自身が背信的悪意者と評価されるのでない限り、当該不動産の所有権取得をもって乙に対抗することができる。」としている。同判決によれば、Cが背信的悪意者に当たるとしても、D自身がBに対する関係で背信的悪意者と評価されるのでない限り、Dは戊土地の所有権の取得をBに対抗することができる。本肢は、D自身の評価を問わずに対抗することができないとしている点で誤りである。
問題:
遺留分に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものはいくつあるか。
ア. 共同相続人の一人が相続の開始前に家庭裁判所の許可を受けて遺留分を放棄した場合であっても、その者は、相続の放棄をしない限り相続人となり、また、その遺留分の放棄によって他の各共同相続人の遺留分が増加することはない。
イ. 被相続人の配偶者及び父母が相続人である場合には、遺留分を算定するための財産の価額に3分の1を乗じた額に各自の法定相続分を乗じた額が、各自の遺留分の額となる。
ウ. 被相続人が相続人の一人に対して生計の資本として贈与をした場合には、その贈与が相続開始の10年以上前にされたものであっても、その価額は、遺留分を算定するための財産の価額に算入される。
エ. 相続人のうちの一人に対して財産全部を相続させる旨の遺言がされた場合には、遺言の趣旨等から相続債務については当該相続人にすべてを相続させる意思のないことが明らかであるなどの特段の事情のない限り、遺留分の侵害額の算定に当たり、遺留分権利者の法定相続分に応じた相続債務の額を遺留分の額に加算することは許されない。
オ. 遺留分権利者が受遺者に対して遺留分侵害額の請求をしたときは、遺贈は、遺留分を侵害する限度において効力を失い、遺贈の目的である不動産は、遺留分権利者と受遺者との共有となる。
答え:
正しいものは、ア・エの2つである。
解説:
ア 正しい。民法1049条1項は、「相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずる。」と定め、同条2項は、「共同相続人の一人のした遺留分の放棄は、他の各共同相続人の遺留分に影響を及ぼさない。」と定めている。遺留分の放棄は、相続の放棄とは別の制度である。相続の放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内に(同法915条1項)、その旨を家庭裁判所に申述してしなければならない(同法938条)ものであり、相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなされる(同法939条)。これに対し、遺留分を放棄した者も、相続の放棄をしない限り、相続人として相続財産を承継する地位を失わない。
イ 誤り。民法1042条1項は、「兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第一項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。」と定め、その割合を、「直系尊属のみが相続人である場合」は3分の1(1号)、「前号に掲げる場合以外の場合」は2分の1(2号)としている。そして、同条2項は、「相続人が数人ある場合には、前項各号に定める割合は、これらに第九百条及び第九百一条の規定により算定したその各自の相続分を乗じた割合とする。」と定めている。配偶者及び父母が相続人である場合は、「直系尊属のみが相続人である場合」に当たらないから、乗ずる割合は2分の1である。この場合、配偶者の法定相続分は3分の2、直系尊属の法定相続分は3分の1であり(同法900条2号)、父母各自の相続分は相等しい(同条4号本文)から、各自の遺留分の割合は、配偶者が3分の1(2分の1×3分の2)、父母が各12分の1(2分の1×3分の1×2分の1)となる。
ウ 誤り。民法1044条1項は、「贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。」と定め、同条3項は、「相続人に対する贈与についての第一項の規定の適用については、同項中「一年」とあるのは「十年」と、「価額」とあるのは「価額(婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額に限る。)」とする。」と定めている。相続人に対する生計の資本としての贈与は、相続開始前の10年間にしたものに限り算入されるのが原則であり、10年前の日より前にしたものが算入されるのは、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときに限られる。本肢は、この要件を問わずに算入されるとしている点で誤りである。なお、遺留分を算定するための財産の価額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除した額とされている(同法1043条1項)。
エ 正しい。最判平成21年3月24日(民集63巻3号427頁)の裁判要旨は、「相続人のうちの1人に対して財産全部を相続させる旨の遺言がされた場合には,遺言の趣旨等から相続債務については当該相続人にすべてを相続させる意思のないことが明らかであるなどの特段の事情のない限り,相続人間においては当該相続人が相続債務もすべて承継したと解され,遺留分の侵害額の算定に当たり,遺留分権利者の法定相続分に応じた相続債務の額を遺留分の額に加算することは許されない。」としている(「1人」及び読点「,」は裁判所ウェブサイト掲載の裁判要旨の表記のまま)。同判決は、平成30年法律第72号(民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律)による改正前の規定の下での判断であり、その参照法条には、民法899条、902条のほか、改正前の同法1029条、1031条等が掲げられている。現行の同法1046条2項は、遺留分侵害額の算定に当たり加算する額として、「被相続人が相続開始の時において有した債務のうち、第八百九十九条の規定により遺留分権利者が承継する債務(次条第三項において「遺留分権利者承継債務」という。)の額」(3号)を掲げている。なお、相続債権者との関係では、同法902条の2本文は、「被相続人が相続開始の時において有した債務の債権者は、前条の規定による相続分の指定がされた場合であっても、各共同相続人に対し、第九百条及び第九百一条の規定により算定した相続分に応じてその権利を行使することができる。」と定めている。
オ 誤り。民法1046条1項は、「遺留分権利者及びその承継人は、受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む。以下この章において同じ。)又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。」と定めている。遺留分侵害額の請求によって生ずるのは、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を求める権利であり、遺贈が効力を失って目的不動産が遺留分権利者と受遺者との共有となるものではない。なお、裁判所は、受遺者又は受贈者の請求により、負担する債務の全部又は一部の支払につき相当の期限を許与することができる(同法1047条5項)。また、遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅し、相続開始の時から10年を経過したときも、同様とされている(同法1048条)。
問題:
地図及び地図に準ずる図面に関する次の記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア. 地図に表示された土地の地番のみに誤りがあることを理由として地図の訂正の申出をする場合には、地図に表示された地番に誤りがあることを証する情報を提供しなければならないが、土地所在図又は地積測量図を提供することは要しない。
イ. 地図に表示された甲土地の区画に誤りがある場合において、地図を訂正することによって甲土地に隣接する乙土地の区画も訂正すべきこととなるときであっても、甲土地の所有権の登記名義人が乙土地の所有権の登記名義人の承諾を証する情報を併せて提供して地図の訂正の申出をしたときは、登記官は、当該申出を却下することができない。
ウ. 土地区画整理法による換地処分による土地の登記の申請の際に提供された換地処分後の土地の全部についての所在図は、当該登記が完了した後であっても、地図として備え付けることはできず、地図に準ずる図面として備え付けるものとされている。
エ. 登記官は、書面の地図を電磁的記録に記録したときは、従前の地図の全部又は一部を閉鎖しなければならず、その閉鎖をする場合には、当該地図に閉鎖の事由及びその年月日を記録し、登記官印を押印しなければならない。
オ. 主に牧場が占める地域及びその周辺の地域において地図を作成するための一筆地測量及び地積測定における誤差の限度は、国土調査法施行令別表第四に掲げる精度区分乙一までとされている。
答え:
正しいものは、ア・エの2つである。
解説:
ア 正しい。不動産登記規則16条1項前段は、「地図に表示された土地の区画又は地番に誤りがあるときは、当該土地の表題部所有者若しくは所有権の登記名義人又はこれらの相続人その他の一般承継人は、その訂正の申出をすることができる。」と定めている。同条5項は、申出の際に地図訂正申出情報と併せて提供しなければならない情報として、「地図又は地図に準ずる図面に表示された土地の区画若しくは位置若しくは形状又は地番に誤りがあることを証する情報」(1号)と、「地図又は地図に準ずる図面に表示された土地の区画又は位置若しくは形状に誤りがあるときは、土地所在図又は地積測量図」(2号)とを掲げている。1号の情報は地番の誤りを含めて誤りがあるすべての場合に提供を要するのに対し、2号の土地所在図又は地積測量図は、区画又は位置若しくは形状に誤りがあるときに限って掲げられており、地番のみに誤りがある場合は含まれていない。なお、地図の訂正の申出をする場合において、当該土地の登記記録の地積に錯誤があるときは、その申出は、地積に関する更正の登記の申請と併せてしなければならない(同条2項)。
イ 誤り。不動産登記規則16条13項は、登記官が理由を付した決定で地図の訂正の申出を却下しなければならない場合として、「地図又は地図に準ずる図面を訂正することによって申出に係る土地以外の土地の区画又は位置若しくは形状を訂正すべきこととなるとき。」(6号)を掲げている。同号は、他の土地の所有権の登記名義人の承諾の有無によって取扱いを区別しておらず、承諾を証する情報を提供すれば却下を免れるとする定めは置かれていない。なお、同条15項は、「登記官は、地図等に誤りがあると認めるときは、職権で、その訂正をすることができる。」と定めている。
ウ 誤り。不動産登記規則10条5項は、「国土調査法第二十条第一項の規定により登記所に送付された地籍図の写しは、同条第二項又は第三項の規定による登記が完了した後に、地図として備え付けるものとする。ただし、地図として備え付けることを不適当とする特別の事情がある場合は、この限りでない。」と定め、同条6項は、「前項の規定は、土地改良登記令(昭和二十六年政令第百四十六号)第五条第二項第三号又は土地区画整理登記令(昭和三十年政令第二百二十一号)第四条第二項第三号の土地の全部についての所在図その他これらに準ずる図面について準用する。」と定めている。土地区画整理登記令4条2項は、換地処分による土地の登記を申請する場合に申請情報と併せて登記所に提供しなければならない情報として、「換地処分後の土地の全部についての所在図」(3号)を掲げている。したがって、この所在図は、地図として備え付けることを不適当とする特別の事情がある場合を除き、登記が完了した後に地図として備え付けられる。
エ 正しい。不動産登記規則12条1項は、「登記官は、新たな地図を備え付けた場合において、従前の地図があるときは、当該従前の地図の全部又は一部を閉鎖しなければならない。地図を電磁的記録に記録したときも、同様とする。」と定め、同条2項は、「登記官は、前項の規定により地図を閉鎖する場合には、当該地図に閉鎖の事由及びその年月日を記録するほか、当該地図が、電磁的記録に記録されている地図であるときは登記官の識別番号を記録し、その他の地図であるときは登記官印を押印しなければならない。」と定めている。書面の地図を電磁的記録に記録した場合に閉鎖されるのは従前の書面の地図であるから、閉鎖の事由及びその年月日の記録とともに、登記官印の押印による。また、従前の地図の一部を閉鎖したときは、当該閉鎖した部分と他の部分とを判然区別することができる措置を講じなければならず(同条3項)、同条1項から3項までの規定は、地図に準ずる図面及び建物所在図について準用されている(同条4項)。
オ 誤り。不動産登記規則10条2項3号は、山林・原野地域を「主に山林、牧場又は原野が占める地域及びその周辺の地域」としており、主に牧場が占める地域は山林・原野地域に当たる。村落・農耕地域は「主に田、畑又は塩田が占める地域及びその周辺の地域」(同項2号)であり、牧場は含まれていない。そして、同条4項は、地図を作成するための一筆地測量及び地積測定における誤差の限度について、市街地地域は国土調査法施行令別表第四に掲げる精度区分(以下「精度区分」という。)甲二まで(1号)、村落・農耕地域は精度区分乙一まで(2号)、山林・原野地域は精度区分乙三まで(3号)と定めているから、主に牧場が占める地域の誤差の限度は精度区分乙三までである。なお、山林・原野地域の地図の縮尺は、1000分の1又は2500分の1によるものとされている(同条2項3号。ただし、土地の状況その他の事情により当該縮尺によることが適当でない場合は、この限りでない。同項ただし書)。
問題:
土地所在図及び地積測量図に関する次の記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
ア. 電子申請において送信する地積測量図には、作成の年月日並びに申請人及び作成者の氏名又は名称を記録しなければならず、書面である地積測量図には、作成の年月日を記録し、申請人及び作成者がいずれも署名し、又は記名押印しなければならない。
イ. 地図を作成するための一筆地測量及び地積測定における誤差の限度を定めた不動産登記規則10条4項の規定は、地積測量図について準用されているが、土地所在図については準用されていない。
ウ. 登記官は、土地改良法又は土地区画整理法に基づく換地処分の登記をした場合には、従前の土地に係る土地所在図又は地積測量図を閉鎖しなければならない。
エ. 地積測量図に誤りがあるときは、当該土地の所有権の登記名義人のほか、当該土地を目的とする抵当権の登記名義人も、その訂正の申出をすることができる。
オ. 地積測量図の訂正の申出は、訂正後の地積測量図を提供してしなければならない。
答え:
誤っているものは、ア・イ・エの3つである。
解説:
ア 誤り。不動産登記規則73条1項は、「電子申請において送信する土地所在図、地積測量図、建物図面及び各階平面図は、法務大臣の定める方式に従い、作成しなければならない。書面申請においてこれらの図面を電磁的記録に記録して提出する場合についても、同様とする。」と定め、同条2項は、「前項の土地所在図、地積測量図、建物図面及び各階平面図には、作成の年月日並びに申請人及び作成者の氏名又は名称を記録しなければならない。」と定めている。前半は正しい。これに対し、書面である図面について、同規則74条2項は、「前項の土地所在図、地積測量図、建物図面及び各階平面図には、作成の年月日を記録し、申請人が記名するとともに、その作成者が署名し、又は記名押印しなければならない。」と定めている。申請人は記名で足り、署名又は記名押印を要するのは作成者である。なお、書面である図面は、0.2ミリメートル以下の細線により図形を鮮明に表示しなければならず(同条1項)、別記第一号及び第二号の様式により、日本産業規格B列4番の丈夫な用紙を用いて作成しなければならない(同条3項)。
イ 誤り。不動産登記規則76条3項は、「第十条第四項の規定は、土地所在図について準用する。」と定め、同規則77条5項は、「第十条第四項の規定は、地積測量図について準用する。」と定めている。同規則10条4項の誤差の限度の規定は、土地所在図と地積測量図のいずれにも準用されている。これに対し、縮尺については、土地所在図は「近傍類似の土地についての法第十四条第一項の地図と同一の縮尺により作成するものとする」とされ(同規則76条2項)、地積測量図は「二百五十分の一の縮尺により作成するものとする」とされていて(同規則77条4項本文。ただし、土地の状況その他の事情により当該縮尺によることが適当でないときは、この限りでない。同項ただし書)、両図面で定め方が異なっている。
ウ 正しい。不動産登記規則85条2項は、登記官が図面を閉鎖しなければならない場合として、表題部の登記事項に関する変更の登記又は更正の登記をした場合(変更後又は更正後の土地所在図、地積測量図、建物図面又は各階平面図がある場合に限る。)における変更前又は更正前の図面(1号)、滅失の登記又は表題部の抹消をした場合における滅失前又は抹消前の図面(2号)とともに、「土地改良法(昭和二十四年法律第百九十五号)又は土地区画整理法(昭和二十九年法律第百十九号)に基づく換地処分の登記をした場合(前号に掲げる場合を除く。)」における「従前の土地に係る土地所在図又は地積測量図」(3号)を掲げている。閉鎖する図面が電磁的記録に記録されているときは、当該電磁的記録に閉鎖の事由及びその年月日並びに登記官の識別番号を記録し、土地図面つづり込み帳につづり込まれているときは、当該図面に閉鎖の事由及びその年月日を記録して登記官印を押印する(同条3項)。
エ 誤り。不動産登記規則88条1項本文は、「土地所在図、地積測量図、建物図面又は各階平面図に誤りがあるときは、表題部所有者若しくは所有権の登記名義人又はこれらの相続人その他の一般承継人は、その訂正の申出をすることができる。」と定めている。訂正の申出をすることができる者は、表題部所有者若しくは所有権の登記名義人又はこれらの相続人その他の一般承継人に限られ、抵当権の登記名義人は掲げられていない。また、同項ただし書は、「表題部の登記事項に関する更正の登記(土地所在図、地積測量図、建物図面又は各階平面図を添付情報とするものに限る。)をすることができる場合は、この限りでない。」としている。
オ 正しい。不動産登記規則88条2項は、「前項の申出は、訂正後の土地所在図、地積測量図、建物図面又は各階平面図を提供してしなければならない。」と定めている。なお、同条3項は、地図の訂正の申出に関する同規則16条の規定のうち、3項、4項、5項3号及び6項から14項までの規定を、図面の訂正の申出について準用している。
問題:
筆界特定に関する次の記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア. 地方公共団体は、その区域内の対象土地の所有権登記名義人等のうちいずれかの者の同意を得たときは、当該対象土地の筆界について、その筆界が不動産登記法14条1項の地図に表示されているものであっても、筆界特定の申請をすることができる。
イ. 筆界特定登記官が、関係土地を目的とする抵当権の登記名義人の配偶者であった者であるときは、当該筆界特定登記官は、対象土地について筆界特定を行うことができない。
ウ. 土地家屋調査士法の規定による懲戒処分により業務の禁止の処分を受けた者は、その処分を受けた日から5年を経過しなければ、筆界調査委員となることができない。
エ. 筆界特定登記官は、意見聴取等の期日において、適当と認める者に参考人としてその知っている事実を陳述させることができ、その期日に立ち会う筆界調査委員は、筆界特定登記官の許可を得て、筆界特定の申請人若しくは関係人又は参考人に対し質問を発することができる。
オ. 筆界特定手続記録のうち筆界特定書等以外のものの閲覧は、登記簿の附属書類のうち政令で定める図面以外のものの閲覧と同様に、正当な理由があるときに、その正当な理由があると認められる部分に限り、請求することができる。
答え:
正しいものは、イ・エの2つである。
解説:
ア 誤り。不動産登記法131条2項は、「地方公共団体は、その区域内の対象土地の所有権登記名義人等のうちいずれかの者の同意を得たときは、筆界特定登記官に対し、当該対象土地の筆界(第十四条第一項の地図に表示されないものに限る。)について、筆界特定の申請をすることができる。」と定めている。同意は所有権登記名義人等のうち「いずれかの者」の同意で足りるが、申請の対象となる筆界は、同法14条1項の地図に表示されないものに限られる。なお、所有権登記名義人等とは、所有権の登記がある一筆の土地にあっては所有権の登記名義人、所有権の登記がない一筆の土地にあっては表題部所有者、表題登記がない土地にあっては所有者をいい、所有権の登記名義人又は表題部所有者の相続人その他の一般承継人を含む(同法123条5号)。
イ 正しい。不動産登記法126条は、筆界特定登記官が次の各号のいずれかに該当する者であるときは、当該筆界特定登記官は、対象土地について筆界特定を行うことができないとし、「対象土地又は関係土地のうちいずれかの土地の所有権の登記名義人(仮登記の登記名義人を含む。以下この号において同じ。)、表題部所有者若しくは所有者又は所有権以外の権利の登記名義人若しくは当該権利を有する者」(1号)、「前号に掲げる者の配偶者又は四親等内の親族(配偶者又は四親等内の親族であった者を含む。次号において同じ。)」(2号)等を掲げている。関係土地を目的とする抵当権の登記名義人は1号の「所有権以外の権利の登記名義人」に当たり、その配偶者であった者は2号に当たる。なお、同法134条2項は、筆界調査委員に指定することができない者についても、同じ範囲の者を掲げている。
ウ 誤り。不動産登記法128条1項は、筆界調査委員となることができない者として、「拘禁刑以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から五年を経過しない者」(1号)、「弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)、司法書士法(昭和二十五年法律第百九十七号)又は土地家屋調査士法(昭和二十五年法律第二百二十八号)の規定による懲戒処分により、弁護士会からの除名又は司法書士若しくは土地家屋調査士の業務の禁止の処分を受けた者でこれらの処分を受けた日から三年を経過しないもの」(2号)、「公務員で懲戒免職の処分を受け、その処分の日から三年を経過しない者」(3号)を掲げている。土地家屋調査士の業務の禁止の処分を受けた者については、処分を受けた日から3年を経過すれば、同項2号の欠格事由には当たらない。5年とされているのは拘禁刑以上の刑に処せられた場合(1号)である。同号の「拘禁刑以上の刑」は、刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律(令和4年法律第68号)により、令和7年6月1日から、「禁錮以上の刑」から改められたものである。なお、筆界調査委員が同項各号のいずれかに該当するに至ったときは、当然失職する(同条2項)。
エ 正しい。不動産登記法140条1項は、筆界特定の申請があったときは、筆界特定登記官は、同法133条1項本文の規定による公告をした時から筆界特定をするまでの間に、筆界特定の申請人及び関係人に対し、あらかじめ期日及び場所を通知して、対象土地の筆界について、意見を述べ、又は資料(電磁的記録を含む。)を提出する機会を与えなければならないと定めている。同条2項は、「筆界特定登記官は、前項の期日において、適当と認める者に、参考人としてその知っている事実を陳述させることができる。」と定め、同条3項は、「筆界調査委員は、第一項の期日に立ち会うものとする。この場合において、筆界調査委員は、筆界特定登記官の許可を得て、筆界特定の申請人若しくは関係人又は参考人に対し質問を発することができる。」と定めている。筆界特定登記官は、この期日の経過を記載した調書を作成し、当該調書において当該期日における筆界特定の申請人若しくは関係人又は参考人の陳述の要旨を明らかにしておかなければならない(同条4項)。
オ 誤り。不動産登記法149条2項は、「何人も、登記官に対し、手数料を納付して、筆界特定手続記録(電磁的記録にあっては、記録された情報の内容を法務省令で定める方法により表示したもの)の閲覧を請求することができる。ただし、筆界特定書等以外のものについては、請求人が利害関係を有する部分に限る。」と定めている。筆界特定書等以外のものの閲覧について求められているのは、請求人が利害関係を有する部分であることであり、「正当な理由」ではない。「正当な理由」を要件とするのは、登記簿の附属書類のうち政令で定める図面以外のものの閲覧について定める同法121条3項である。なお、筆界特定書等とは、筆界特定手続記録のうち筆界特定書又は政令で定める図面の全部又は一部をいい(同法149条1項)、この政令で定める図面は、筆界調査委員が作成した測量図その他の筆界特定の手続において測量又は実地調査に基づいて作成された図面(同法143条2項の図面を除く。)とされている(不動産登記令21条2項)。
問題:
土地家屋調査士会(以下「調査士会」という。)及び公共嘱託登記土地家屋調査士協会(以下「協会」という。)に関する次の記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
ア. 調査士会が会則のうち会員の品位保持に関する規定を変更するには、法務大臣の認可を受けなければならず、この場合において、法務大臣は、調査士会連合会の意見を聴いて、認可し、又は認可しない旨の処分をしなければならない。
イ. 調査士会は、所属の会員の業務に関する紛議につき、当事者その他関係人の請求により調停をすることができるが、当該紛議の当事者である会員自身の請求によって調停をすることはできない。
ウ. 協会の定款には、理事の員数の過半数は社員(社員である調査士法人の社員を含む。)でなければならないものとする旨の定めがなければならず、この定款の定めは、変更することができない。
エ. 協会が土地家屋調査士法又は同法に基づく命令に違反したときは、協会の主たる事務所の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の長は、当該協会に対し、戒告又は2年以内の業務の全部若しくは一部の停止の処分をすることができるが、協会を解散させる処分をすることはできない。
オ. 調査士会は、所属の会員が土地家屋調査士法又は同法に基づく命令に違反すると思料するときは、その旨を法務大臣に報告しなければならず、この報告をしたときは、会則の定めるところにより、当該会員に対して、注意を促し、又は必要な措置を講ずべきことを勧告しなければならない。
答え:
誤っているものは、イ・エ・オの3つである。
解説:
ア 正しい。土地家屋調査士法49条1項は、「調査士会の会則を定め、又はこれを変更するには、法務大臣の認可を受けなければならない。ただし、前条第一号及び第七号から第十一号までに掲げる事項に係る会則の変更については、この限りでない。」と定め、同条2項は、「前項の場合において、法務大臣は、調査士会連合会の意見を聴いて、認可し、又は認可しない旨の処分をしなければならない。」と定めている。認可を要しない会則の変更は、48条1号(名称及び事務所の所在地)及び7号から11号まで(調査士の研修、会員の業務に関する紛議の調停、調査士会及び会員に関する情報の公開、資産及び会計、会費に関する規定)に掲げる事項に係るものであり、会員の品位保持に関する規定(同条4号)はこれに含まれないから、その変更には法務大臣の認可を要する。
イ 誤り。土地家屋調査士法54条は、「調査士会は、所属の会員の業務に関する紛議につき、当該会員又は当事者その他関係人の請求により調停をすることができる。」と定めている。調停の請求をすることができる者には、当該会員自身も含まれている。
ウ 正しい。土地家屋調査士法63条1項は、その名称中に公共嘱託登記土地家屋調査士協会という文字を使用する一般社団法人は、同項所定の目的を有し、かつ、次に掲げる内容の定款の定めがあるものに限り、設立することができるとし、その内容として、社員は主たる事務所の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の管轄区域内に事務所を有する調査士又は調査士法人でなければならないものとすること(1号)、これらの調査士又は調査士法人が社員になろうとするときは、正当な理由がなければ、これを拒むことができないものとすること(2号)、「理事の員数の過半数は、社員(社員である調査士法人の社員を含む。)でなければならないものとすること。」(3号)を掲げている。そして、同条2項は、「前項に規定する定款の定めは、これを変更することができない。」と定めている。
エ 誤り。土地家屋調査士法65条前段は、「第四十三条第一項、第四十四条及び第四十六条の規定は協会に対する懲戒について」準用すると定め、同条後段は、「第四十三条第一項、第四十四条第一項から第三項まで及び第四十六条中「法務大臣」とあるのは、「第六十四条の二第一項に規定する法務局又は地方法務局の長」と読み替えるものとする。」と定めている(読み替えの対象は、同法44条については同条1項から3項までに限られている。)。準用される同法43条1項は、調査士法人がこの法律又はこの法律に基づく命令に違反したときにすることができる処分として、「戒告」(1号)、「二年以内の業務の全部又は一部の停止」(2号)及び「解散」(3号)を掲げているから、協会に対しても解散の処分をすることができる。懲戒権者は、協会の業務を監督する主たる事務所の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の長である(同法64条の2第1項、65条後段)。
オ 誤り。土地家屋調査士法55条は、「調査士会は、所属の会員が、この法律又はこの法律に基づく命令に違反すると思料するときは、その旨を、法務大臣に報告しなければならない。」と定めている。これに対し、同法56条は、「調査士会は、所属の会員がこの法律又はこの法律に基づく命令に違反するおそれがあると認めるときは、会則の定めるところにより、当該会員に対して、注意を促し、又は必要な措置を講ずべきことを勧告することができる。」と定めている。注意勧告は、違反の「おそれ」がある段階でも「することができる」とされる任意の措置であり、法務大臣への報告をしたときにしなければならないものとはされていない。
問題:
表示に関する登記の申請情報と併せて提供すべき添付情報に関する次の記述のうち、誤っているものはいくつあるか。なお、代理人の権限を証する情報など、各登記に共通して問題となる添付情報は考慮しないものとする。
ア. 地目に関する変更の登記を申請するときは、地積測量図を提供しなければならない。
イ. 承役地についてする地役権の登記がある土地の合筆の登記を申請する場合において、地役権設定の範囲が合筆後の土地の一部であるときは、当該地役権設定の範囲を証する地役権者が作成した情報又は当該地役権者に対抗することができる裁判があったことを証する情報及び地役権図面を提供しなければならないが、合筆後の土地の地積測量図を提供することは要しない。
ウ. 建物の所在する土地の地番を更正する建物の表題部の更正の登記を申請するときは、更正後の建物図面のほか、更正後の各階平面図も提供しなければならない。
エ. 区分建物である建物を新築した者が当該建物の表題登記を申請しないまま死亡した場合において、その相続人が被相続人を表題部所有者とする当該建物についての表題登記を申請するときは、相続があったことを証する市町村長、登記官その他の公務員が職務上作成した情報(公務員が職務上作成した情報がない場合にあっては、これに代わるべき情報)を提供しなければならない。
オ. 共用部分である旨の登記がある建物の滅失の登記を申請するときは、当該建物の所有者を証する情報を提供しなければならない。
答え:
誤っているものは、ア・ウの2つである。
解説:
不動産登記令7条1項6号は、同項1号から5号までに掲げるもののほか、「別表の登記欄に掲げる登記を申請するときは、同表の添付情報欄に掲げる情報」を申請情報と併せて登記所に提供しなければならないと定めている。以下の各肢は、同令別表の各項の添付情報欄の定めによる。
ア 誤り。不動産登記令別表5の項は、「地目に関する変更の登記又は更正の登記」について、申請情報欄に「変更後又は更正後の地目」を掲げているが、添付情報欄には何も掲げていない。地積測量図の提供を要するのは、同表6の項の「地積に関する変更の登記又は更正の登記(十一の項の登記を除く。)」(添付情報欄「地積測量図」)である。
イ 正しい。不動産登記令別表9の項は、合筆の登記について、添付情報欄に「地役権の登記がある承役地の合筆の登記を申請する場合において、地役権設定の範囲が合筆後の土地の一部であるときは、当該地役権設定の範囲を証する地役権者が作成した情報又は当該地役権者に対抗することができる裁判があったことを証する情報及び地役権図面」を掲げるのみであり、地積測量図は掲げていない。これに対し、分筆の登記について定める同表8の項は、添付情報欄に「分筆後の土地の地積測量図」(イ)を掲げ、地役権の登記がある承役地の分筆の登記を申請する場合において地役権設定の範囲が分筆後の土地の一部であるときの地役権者が作成した情報等及び地役権図面(ロ)をあわせて掲げている。なお、合筆の登記の申請情報には、合筆後の土地の所在する市、区、郡、町、村及び字並びに当該土地の地目及び地積(同表9の項申請情報欄イ)のほか、上記の場合には当該地役権設定の範囲(同欄ロ)を含める。
ウ 誤り。不動産登記令別表14の項は、法51条1項から4項までの規定による建物の表題部の変更の登記又は法53条1項の規定による建物の表題部の更正の登記について、添付情報欄に、「建物の所在する市、区、郡、町、村、字及び土地の地番を変更し、又は更正するときは、変更後又は更正後の建物図面」(イ)、「床面積を変更し、又は更正するときは」「変更後又は更正後の建物図面及び各階平面図」等(ロ)を掲げている。建物の所在の地番を更正するときに提供を要するのは更正後の建物図面であり、各階平面図の提供を要するのは床面積を変更し、又は更正するとき等である。
エ 正しい。不動産登記法47条2項は、「区分建物である建物を新築した場合において、その所有者について相続その他の一般承継があったときは、相続人その他の一般承継人も、被承継人を表題部所有者とする当該建物についての表題登記を申請することができる。」と定めている。不動産登記令別表12の項は、建物の表題登記について、添付情報欄に、建物図面(イ)、各階平面図(ロ)、表題部所有者となる者が所有権を有することを証する情報(ハ)等とともに、「法第四十七条第二項の規定による申請にあっては、相続その他の一般承継があったことを証する市町村長、登記官その他の公務員が職務上作成した情報(公務員が職務上作成した情報がない場合にあっては、これに代わるべき情報)」(ト)を掲げている。また、同項の申請情報欄は、法47条2項の規定による申請にあっては、「被承継人の氏名又は名称及び一般承継の時における住所並びに申請人が被承継人の相続人その他の一般承継人である旨」(ロ)を申請情報の内容としている。
オ 正しい。不動産登記令別表17の項は、「共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記がある建物の滅失の登記」について、添付情報欄に「当該建物の所有者を証する情報」を掲げている。共用部分である旨の登記がある建物の滅失の登記の申請義務を負うのは「所有者」とされており(不動産登記法57条括弧書)、共用部分である旨の登記をするときは、登記官が、職権で、当該建物について表題部所有者の登記又は権利に関する登記を抹消しなければならないとされている(同法58条4項)から、このような建物の登記記録には表題部所有者の登記も所有権の登記も存在しない。同様に、同表14の項添付情報欄ニ(共用部分である旨の登記がある建物についての表題部の変更の登記等)、16の項添付情報欄ロ(共用部分である旨の登記がある建物の分割の登記又は区分の登記)も、当該建物の所有者を証する情報を掲げている。
出題分野の振り分け
| 問 | 分野 | 主な論点 | 主な根拠条文 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 民法(総則・代理) | 特定の法律行為の委託と本人の過失による不知(代理行為の瑕疵)、復代理人の受領物引渡義務と代理人への引渡し、代理権の濫用と無権代理の擬制・追認、本人の後見開始と委任による代理権の消滅事由、登記申請の権限と民法110条の基本代理権 | 民法101条、104条、105条、106条2項、107条、108条、109条2項、110条、111条、112条2項、113条1項、116条、646条1項、653条、最判昭51.4.9、最判昭39.4.2、最判昭46.6.3 |
| 第2問 | 民法(物権・不動産物権変動と登記) | 取得時効の進行中の譲受人と登記、時効完成後の第三者、共同相続人の一人による単独登記と第三取得者、時効完成後の抵当権設定登記と再度の取得時効、相続の放棄と登記、背信的悪意者からの転得者 | 民法162条、177条、397条、899条の2第1項、939条、最判昭41.11.22、最判昭33.8.28、最判昭38.2.22、最判平24.3.16、最判昭42.1.20、最判平8.10.29 |
| 第3問 | 民法(相続・遺留分) | 相続開始前の遺留分の放棄と相続の放棄の違い・他の共同相続人への影響、遺留分の割合(直系尊属のみの場合とそれ以外)、相続人に対する贈与の算入期間(10年)、財産全部を相続させる遺言と相続債務の加算の可否、遺留分侵害額請求権の金銭債権化 | 民法900条、915条1項、938条、939条、902条の2、1042条、1043条1項、1044条1項・3項、1046条1項・2項、1047条5項、1048条、1049条、最判平21.3.24 |
| 第4問 | 地図関連制度(地図・地図に準ずる図面) | 地番のみの誤りによる地図の訂正の申出と提供情報(土地所在図・地積測量図の要否)、他の土地の区画の訂正を要する場合の却下(承諾による例外の不存在)と職権訂正、土地区画整理の換地処分後の所在図の地図としての備付け、地図の電磁的記録化に伴う従前の地図の閉鎖と閉鎖の方法、牧場が占める地域(山林・原野地域)の精度区分と縮尺 | 不動産登記規則10条2項〜6項、12条1項〜4項、16条1項・2項・5項・13項・15項、土地区画整理登記令4条2項 |
| 第5問 | 不動産登記規則(土地所在図・地積測量図) | 電子申請の図面と書面の図面の記録事項・署名等の書き分け(申請人の記名と作成者の署名又は記名押印)、誤差の限度の準用(土地所在図・地積測量図の双方)と縮尺の定め方の相違、換地処分の登記に伴う従前の図面の閉鎖、図面の訂正の申出をすることができる者と更正の登記との振り分け、訂正後の図面の提供 | 不動産登記規則10条4項、73条1項・2項、74条1項〜3項、76条2項・3項、77条4項・5項、85条2項・3項、88条1項〜3項 |
| 第6問 | 筆界特定 | 地方公共団体による筆界特定の申請(14条地図に表示されない筆界に限定・いずれかの者の同意)、筆界特定登記官の除斥(所有権以外の権利の登記名義人の配偶者であった者)、筆界調査委員の欠格事由(業務の禁止の処分後3年・拘禁刑は5年)、意見聴取等の期日における参考人の陳述と筆界調査委員の質問、筆界特定手続記録の閲覧(利害関係)と登記簿の附属書類の閲覧(正当な理由)の対比 | 不動産登記法121条3項、123条5号、126条、128条、131条2項、134条2項、140条1項〜4項、149条1項・2項、不動産登記令21条2項 |
| 第7問 | 土地家屋調査士法(調査士会・公共嘱託登記土地家屋調査士協会) | 会則の変更と法務大臣の認可(認可を要しない事項)・調査士会連合会の意見聴取、紛議の調停の請求権者、協会の定款の必要的記載事項(理事の過半数)と変更の禁止、協会に対する懲戒(法務局又は地方法務局の長・解散を含む)、法務大臣への報告義務と注意勧告の要件・性質の相違 | 土地家屋調査士法43条1項、48条、49条、54条、55条、56条、63条1項・2項、64条の2第1項、65条 |
| 第8問 | 不動産登記令(表示に関する登記の添付情報) | 地目の変更の登記と地積測量図の要否(地積の変更・更正との対比)、承役地の地役権の登記がある土地の合筆と地役権図面・地積測量図(分筆との対比)、建物の所在の地番の更正と建物図面・各階平面図、区分建物の新築者の相続人による表題登記と一般承継を証する情報、共用部分である旨の登記がある建物の滅失と所有者を証する情報 | 不動産登記法47条2項、57条、58条4項、不動産登記令7条1項6号、別表5の項・6の項・8の項・9の項・12の項・14の項・16の項・17の項 |