問題:

自己契約及び双方代理等に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものはいくつあるか。

ア. AがBに甲土地を売却した場合において、Dが、その所有権の移転の登記の申請について、登記権利者であるB及び登記義務者であるAの双方から代理権を与えられ、双方の代理人として申請をしたとしても、その登記の申請は、双方代理であることを理由として無効となるものではない。

イ. Aから甲土地の売却について代理権を与えられたBが、Aを代理して、甲土地をB自身に売却する契約を締結した場合には、Aがあらかじめこれを許諾していたときであっても、その契約は、代理権を有しない者がした行為とみなされる。

ウ. Aから代理権を与えられたBが、BのCに対する債務を担保するため、Aを代理して、A所有の甲土地にCのための抵当権を設定する契約をCとの間で締結した場合には、BはCの代理人ではなく、自らその契約の相手方となるものでもないから、Aがあらかじめ許諾していなくても、その契約は、代理権を有しない者がした行為とはみなされない。

エ. 代理人と本人との利益が相反する行為であっても、債務の履行に当たるものについては、本人があらかじめ許諾していなくても、代理権を有しない者がした行為とはみなされない。

オ. Aの代理人Bが、Cの代理人も兼ねて、A及びC双方の代理人としてA・C間の売買契約を締結した場合において、Aがあらかじめこれを許諾していなかったときであっても、Aは、その契約を追認することができ、その追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。

答え:

正しいものは、ア・オの2つである。

解説:

本問は、自己契約及び双方代理の効果とその例外(民法108条1項)、登記申請の双方代理(最判昭43.3.8民集22巻3号540頁)、利益相反行為(同条2項)並びに無権代理行為の追認(同法113条1項・116条)を問うものであり、正しいのはア・オの2つである。

ア 正しい。判例は、登記申請行為は、国家機関たる登記所に対し一定内容の登記を要求する公法上の行為であって、民法にいわゆる法律行為ではなく、また、すでに効力を発生した権利変動につき法定の公示を申請する行為であり、登記義務者にとっては義務の履行にすぎず、登記申請が代理人によってなされる場合にも代理人によって新たな利害関係が創造されるものではないから、登記申請について、同一人が登記権利者、登記義務者双方の代理人となっても、民法108条本文並びにその法意に違反するものではなく、双方代理のゆえをもって無効となるものではないとしている(最判昭43.3.8民集22巻3号540頁)。本肢は、同判決のとおりである。なお、同判決は、民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号。令和2年4月1日施行)による改正前の同条について判断したものである。

イ 誤り。民法108条1項は、「同一の法律行為について、相手方の代理人として、又は当事者双方の代理人としてした行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。」と定めている。同条の見出しが「自己契約及び双方代理等」とされているとおり、同項本文は、代理人が自ら本人の相手方となる自己契約と、代理人が当事者双方の代理人となる双方代理を対象としている。本肢の契約は自己契約に当たるが、同項ただし書により、本人があらかじめ許諾した行為については、代理権を有しない者がした行為とはみなされない。Aがあらかじめ許諾していたときであっても代理権を有しない者がした行為とみなされるとする本肢は誤りである。

ウ 誤り。民法108条2項は、「前項本文に規定するもののほか、代理人と本人との利益が相反する行為については、代理権を有しない者がした行為とみなす。ただし、本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。」と定めている。同項は、「前項本文に規定するもののほか」と定めているとおり、同条1項本文に規定する行為以外の行為であっても、代理人と本人との利益が相反する行為を対象としている。本肢の契約は、Bの債務をAの所有する甲土地によって担保させるものであり、Bには利益となる一方でAには不利益となるから、代理人と本人との利益が相反する行為に当たる。BがCの代理人でなく、自ら契約の相手方となるものでもないことは、同条2項の適用を妨げない。Aがあらかじめ許諾していない以上、その契約は代理権を有しない者がした行為とみなされるから、本肢は誤りである。なお、改正の立案過程の資料は、中間試案(平成25年2月26日決定)の段階の利益相反行為の規律について、自己契約及び双方代理に該当しなくても代理人と本人との利益が相反する行為については民法108条の規律が及ぶとの一般的な理解を明文化するものであると説明している(法務省民事局参事官室「民法(債権関係)の改正に関する中間試案の補足説明」(平成25年4月)39〜40頁)。

エ 誤り。ウで引用したとおり、民法108条2項ただし書が、代理人と本人との利益が相反する行為のうち代理権を有しない者がした行為とみなさないものとして掲げているのは、「本人があらかじめ許諾した行為」のみである。同条1項ただし書は「債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為」を除外しているが、同条2項ただし書には「債務の履行」は掲げられていない。債務の履行に当たるものであれば本人の許諾がなくても代理権を有しない者がした行為とはみなされないとする本肢は、同項ただし書にない除外を加えるものであり、誤りである。

オ 正しい。民法108条1項本文により、当事者双方の代理人としてした行為は、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為を除き、代理権を有しない者がした行為とみなされる。そして、同法113条1項は、「代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。」と定め、同法116条は、「追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。」と定めている。双方代理による契約は、無効とされるのではなく、代理権を有しない者がした行為とみなされるにとどまるから、Aは、これを追認して、契約の時にさかのぼって自己に対してその効力を生じさせることができる。本肢は正しい。

ポイント:同一の法律行為について相手方の代理人として、又は当事者双方の代理人としてした行為(自己契約・双方代理)は、代理権を有しない者がした行為とみなされ、債務の履行と本人があらかじめ許諾した行為は除かれる(民法108条1項)。これ以外でも、代理人と本人との利益が相反する行為は代理権を有しない者がした行為とみなされ、除かれるのは本人があらかじめ許諾した行為だけである(同条2項)。いずれも無効ではなく無権代理行為とみなされるので、本人は追認でき、追認は別段の意思表示がない限り契約の時にさかのぼって効力を生ずる(同法113条1項・116条)。登記申請について同一人が登記権利者・登記義務者双方の代理人となっても、双方代理のゆえに無効とはならない(最判昭43.3.8)。「債務の履行の例外は1項だけ、2項の例外は事前の許諾だけ」と押さえる。


問題:

混同及び抵当権の目的である地上権の放棄に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものはいくつあるか。

ア. A所有の甲土地にBが地上権の設定を受けていた場合において、BがAから甲土地を買い受けたときは、甲土地及びBの地上権がいずれも第三者の権利の目的となっていなければ、Bの地上権は、混同により消滅する。

イ. A所有の甲土地にBが地上権の設定を受け、Bがその地上権にCのための抵当権を設定した後、BがAから甲土地を買い受けたときは、Bの地上権は、混同により消滅し、Cの抵当権も、その目的を失って消滅する。

ウ. A所有の甲土地にBのための1番抵当権とCのための2番抵当権とが設定されている場合において、BがAから甲土地を買い受けたときは、Bの1番抵当権は、混同により消滅しない。

エ. A所有の甲土地を賃借したBがその賃借権の登記をした後、甲土地にCのための抵当権が設定された場合において、BがAから甲土地を買い受けたときは、賃借権は物権ではなく、民法179条1項は所有権及び他の物権が同一人に帰属した場合についての規定であるから、Bの賃借権は消滅する。

オ. A所有の甲土地に地上権の設定を受けたBが、その地上権にCのための抵当権を設定した後、地上権を放棄した場合には、Bは、その放棄をもってCに対抗することができない。

答え:

誤っているものは、イ・エの2つである。

解説:

本問は、所有権と他の物権との混同(民法179条1項)、対抗要件を具備した賃借権と混同(最判昭46.10.14民集25巻7号933頁)及び抵当権の目的である地上権の放棄(同法398条)を問うものであり、誤っているのはイ・エの2つである。

ア 正しい。民法179条1項は、「同一物について所有権及び他の物権が同一人に帰属したときは、当該他の物権は、消滅する。ただし、その物又は当該他の物権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。」と定めている。地上権者Bが甲土地の所有権を取得したことにより、甲土地について所有権と地上権が同一人に帰属したから、甲土地及びBの地上権がいずれも第三者の権利の目的となっていなければ、同項本文により、Bの地上権は消滅する。本肢は正しい。

イ 誤り。アで引用したとおり、民法179条1項ただし書は、「当該他の物権が第三者の権利の目的であるとき」は、同項本文による消滅の例外としている。Bの地上権はCの抵当権の目的となっているから、BがAから甲土地を買い受けても、Bの地上権は混同により消滅しない。したがって、Cの抵当権がその目的を失って消滅することもない。本肢は誤りである。

ウ 正しい。アで引用したとおり、民法179条1項ただし書は、「その物」が第三者の権利の目的であるときも、同項本文による消滅の例外としている。1番抵当権者Bが甲土地の所有権を取得したことにより、甲土地について所有権とBの抵当権が同一人に帰属したが、甲土地はCの2番抵当権の目的となっているから、同項ただし書により、Bの1番抵当権は混同により消滅しない。本肢は正しい。

エ 誤り。判例は、特定の土地につき所有権と賃借権とが同一人に帰属するに至った場合であっても、その賃借権が対抗要件を具備したものであり、かつ、その対抗要件を具備した後にその土地に抵当権が設定されていたときは、民法179条1項ただし書の準用により、賃借権は消滅しないとしている(最判昭46.10.14民集25巻7号933頁)。民法605条は、「不動産の賃貸借は、これを登記したときは、その不動産について物権を取得した者その他の第三者に対抗することができる。」と定めており、本肢のBの賃借権は、その登記によって対抗要件を具備し、その後に甲土地にCの抵当権が設定されているから、同判決により、BがAから甲土地を買い受けても、Bの賃借権は消滅しない。賃借権が物権でないことを理由に消滅するとする本肢は誤りである。なお、同判決は、賃借権の対抗要件が建物保護に関する法律1条によるものである場合も同様であるとしている。建物保護に関する法律は借地借家法(平成3年法律第90号)附則2条1号により廃止されており、現在は、借地借家法10条1項が、「借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。」と定めている。

オ 正しい。民法398条は、「地上権又は永小作権を抵当権の目的とした地上権者又は永小作人は、その権利を放棄しても、これをもって抵当権者に対抗することができない。」と定めている。本肢は、同条のうち地上権に関する部分のとおりである。

ポイント:同一物について所有権と他の物権が同一人に帰属したときは、他の物権は混同により消滅するが、その物(所有権の目的物)又は当該他の物権が第三者の権利の目的であるときは消滅しない(民法179条1項)。地上権が抵当権の目的となっている場合や、1番抵当権者が所有権を取得したときに後順位の抵当権がある場合がこれに当たる。対抗要件を具備した賃借権も、その後に土地に抵当権が設定されていたときは、同項ただし書の準用により、所有権と同一人に帰属しても消滅しない(最判昭46.10.14)。地上権を抵当権の目的とした地上権者は、地上権を放棄しても抵当権者に対抗することができない(同法398条)。「第三者の権利が乗っていれば混同でも消えない」と押さえる。


問題:

相続の開始後に認知された者等による価額の支払請求に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものはいくつあるか。

ア. 被相続人Aの相続の開始後に認知によってAの相続人となったCは、Aの他の共同相続人が既にAの遺産の分割をしていたときは、その遺産の分割の無効を主張して、改めて遺産の分割を請求することができる。

イ. Aの子であるCは、父Aの死亡後であっても、Aの死亡の日から3年を経過するまでは、認知の訴えを提起することができる。

ウ. 相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既に当該遺産の分割をしていたときは、民法910条に基づき支払われるべき価額の算定の基礎となる遺産の価額は、相続債務が他の共同相続人によって弁済されていたときは、当該分割の対象とされた積極財産の価額からその相続債務の額を控除した額となる。

エ. 相続の開始後認知によって相続人となった者が他の共同相続人に対して民法910条に基づき価額の支払を請求する場合における遺産の価額算定の基準時は、価額の支払を請求した時であり、他の共同相続人の価額の支払債務は、履行の請求を受けた時に遅滞に陥る。

オ. 母Dの死亡による相続について、遺産の分割がされた後に、共同相続人であるDの非嫡出子Eの存在が明らかになった場合には、民法784条ただし書及び910条の類推適用により、Eは、他の共同相続人に対し、価額のみによる支払を請求することができるにとどまる。

答え:

誤っているものは、ア・ウ・オの3つである。

解説:

本問は、相続の開始後に認知された者の価額の支払請求権(民法910条)とその算定の基礎・基準時・遅滞の時期(最判平28.2.26民集70巻2号195頁、最判令元.8.27民集73巻3号374頁)、認知の訴えの期間(同法787条)並びに母の相続における784条ただし書・910条の類推適用の可否(最判昭54.3.23民集33巻2号294頁)を問うものであり、誤っているのはア・ウ・オの3つである。

ア 誤り。民法910条は、「相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既にその分割その他の処分をしたときは、価額のみによる支払の請求権を有する。」と定めている。判例は、同条の規定は、相続の開始後に認知された者が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既にその分割その他の処分をしていたときには、当該分割等の効力を維持しつつ認知された者に価額の支払請求を認めることによって、他の共同相続人と認知された者との利害の調整を図るものであるとしている(最判平28.2.26民集70巻2号195頁)。Cは、同条により価額のみによる支払の請求権を有するのであり、既にされた遺産の分割の無効を主張して改めて遺産の分割を請求することができるとする本肢は誤りである。

イ 正しい。民法787条は、「子、その直系卑属又はこれらの者の法定代理人は、認知の訴えを提起することができる。ただし、父又は母の死亡の日から三年を経過したときは、この限りでない。」と定めている。子Cは、父Aの死亡後であっても、Aの死亡の日から3年を経過するまでは、認知の訴えを提起することができる。本肢は正しい。

ウ 誤り。判例は、相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既に当該遺産の分割をしていたときは、民法910条に基づき支払われるべき価額の算定の基礎となる遺産の価額は、当該分割の対象とされた積極財産の価額であるとしている(最判令元.8.27民集73巻3号374頁)。同判決は、その理由中で、遺産の分割は、遺産のうち積極財産のみを対象とするものであって、消極財産である相続債務は、認知された者を含む各共同相続人に当然に承継され、遺産の分割の対象とならないものであると述べ、このことは、相続債務が他の共同相続人によって弁済された場合や、他の共同相続人間において相続債務の負担に関する合意がされた場合であっても、異なるものではないとしている。相続債務が他の共同相続人によって弁済されていたときは積極財産の価額からその相続債務の額を控除した額となるとする本肢は誤りである。

エ 正しい。判例は、相続の開始後認知によって相続人となった者が他の共同相続人に対して民法910条に基づき価額の支払を請求する場合における遺産の価額算定の基準時は、価額の支払を請求した時であるとし、同条に基づく他の共同相続人の価額の支払債務は、期限の定めのない債務であって、履行の請求を受けた時に遅滞に陥るとしている(最判平28.2.26民集70巻2号195頁)。本肢は、同判決のとおりである。

オ 誤り。判例は、母の死亡による相続について、共同相続人である子の存在が遺産の分割その他の処分後に明らかになったとしても、民法784条但書、910条を類推適用することはできないとしている(最判昭54.3.23民集33巻2号294頁)。同判決は、その理由中で、母とその非嫡出子との間の親子関係は、原則として、母の認知をまたず分娩の事実により当然に発生するものであって、母子関係が存在する場合には認知によって形成される父子関係に関する同法784条但書を類推適用すべきではなく、また、同法910条は、共同相続人の既得権と被認知者の保護との調整をはかる規定であって、相続人の存在が遺産分割その他の処分後に明らかになった場合については同条を類推適用することができないと述べている。なお、同法784条は、「認知は、出生の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者が既に取得した権利を害することはできない。」と定めている。同法784条ただし書及び910条の類推適用により価額のみによる支払を請求することができるにとどまるとする本肢は誤りである。

ポイント:相続の開始後に認知によって相続人となった者は、他の共同相続人が既に遺産の分割その他の処分をしていたときは、価額のみによる支払の請求権を有し(民法910条)、既にされた分割等の効力は維持される(最判平28.2.26)。認知の訴えは、父又は母の死亡の日から3年を経過するまで提起できる(同法787条)。価額算定の基礎は分割の対象とされた積極財産の価額で、相続債務は控除せず、他の共同相続人が相続債務を弁済していても同じである(最判令元.8.27)。価額算定の基準時は価額の支払を請求した時、支払債務が遅滞に陥るのは履行の請求を受けた時である(最判平28.2.26)。母の死亡による相続で遺産分割等の後に子の存在が明らかになった場合は、同法784条ただし書・910条は類推適用されない(最判昭54.3.23)。「910条は認知された者だけ、基礎は積極財産、基準時は請求時」と押さえる。


問題:

土地の分筆の登記及び合筆の登記に関する次の記述のうち、不動産登記法及び不動産登記規則の規定に照らし正しいものはいくつあるか。

ア. 甲土地の所有権の登記名義人Aが死亡した場合には、Aの相続人Bは、Bへの相続による所有権の移転の登記を受ける前であっても、甲土地の分筆の登記を申請することができる。

イ. 抵当権の設定の登記がある甲土地から乙土地を分筆する分筆の登記を申請する場合において、当該抵当権の登記名義人が分筆後の甲土地について当該抵当権を消滅させることを承諾したことを証する当該登記名義人が作成した情報が申請情報と併せて提供されたとき(当該抵当権を目的とする第三者の権利に関する登記はなく、抵当証券も発行されていないものとする。)は、登記官は、分筆後の甲土地の登記記録の当該抵当権に関する登記についてする付記登記によって分筆後の甲土地について当該抵当権が消滅した旨を記録し、当該抵当権に関する登記を抹消する記号を記録しなければならない。

ウ. 抵当証券が発行されている抵当権の設定の登記がある甲土地から乙土地を分筆する分筆の登記を申請する場合において、乙土地について当該抵当権が消滅した旨の登記を求めるときは、当該抵当証券の所持人が当該抵当権を消滅させることを承諾したことを証する情報を提供すれば足り、当該抵当証券を提供することを要しない。

エ. 要役地についてする地役権の登記がある甲土地から乙土地を分筆する分筆の登記を申請する場合において、当該地役権を乙土地について消滅させることを証する地役権者が作成した情報が申請情報と併せて提供されたとき(甲土地を目的とする第三者の権利に関する登記はないものとする。)は、登記官は、乙土地について当該地役権が消滅した旨を登記しなければならない。

オ. いずれも所有権の登記がある甲土地を乙土地に合筆する合筆の登記をする場合において、甲土地及び乙土地に、登記の目的、申請の受付の年月日及び受付番号並びに登記原因及びその日付が同一の承役地についてする地役権の登記があるときは、登記官は、乙土地の登記記録の乙区に甲土地の登記記録から当該地役権の登記を移記しなければならない。

答え:

正しいものは、ア・イ・エの3つである。

解説:

本問は、一般承継人による表示に関する登記の申請(不動産登記法30条)、分筆又は合筆の登記の申請人(同法39条1項)、分筆に伴う権利の消滅の登記(同法40条、不動産登記規則104条)及び合筆の登記における承役地についてする地役権の登記の記録方法(同規則107条3項・4項)を問うものであり、正しいのはア・イ・エの3つである。

ア 正しい。不動産登記法39条1項は、「分筆又は合筆の登記は、表題部所有者又は所有権の登記名義人以外の者は、申請することができない。」と定めている。そして、同法30条は、「表題部所有者又は所有権の登記名義人が表示に関する登記の申請人となることができる場合において、当該表題部所有者又は登記名義人について相続その他の一般承継があったときは、相続人その他の一般承継人は、当該表示に関する登記を申請することができる。」と定めている。分筆の登記を定める同法39条は、同法第4章第2節(表示に関する登記)に置かれており、所有権の登記名義人Aは分筆の登記の申請人となることができる者であるから、Aの相続人Bは、同法30条により、相続による所有権の移転の登記を受ける前であっても、甲土地の分筆の登記を申請することができる。本肢は正しい。

イ 正しい。不動産登記法40条は、「登記官は、所有権の登記以外の権利に関する登記がある土地について分筆の登記をする場合において、当該分筆の登記の申請情報と併せて当該権利に関する登記に係る権利の登記名義人(中略)が当該権利を分筆後のいずれかの土地について消滅させることを承諾したことを証する情報が提供されたとき(中略)は、法務省令で定めるところにより、当該承諾に係る土地について当該権利が消滅した旨を登記しなければならない。」と定めている。不動産登記規則104条1項1号は、提供すべき情報として、「当該権利の登記名義人(中略)が当該権利を消滅させることを承諾したことを証する当該登記名義人が作成した情報又は当該登記名義人に対抗することができる裁判があったことを証する情報」を掲げ、同条3項は、「甲土地から乙土地を分筆する分筆の登記をする場合において、法第四十条の規定により分筆後の甲土地について権利が消滅した旨の登記をするときは、分筆後の甲土地の登記記録の当該権利に関する登記についてする付記登記によって分筆後の甲土地について当該権利が消滅した旨を記録し、当該権利に関する登記を抹消する記号を記録しなければならない。」と定めている。本肢は、これらの規定のとおりである。

ウ 誤り。不動産登記規則104条1項は、法40条の規定による権利が消滅した旨の登記は、分筆の登記の申請情報と併せて同項各号に掲げる情報が提供された場合にするものとし、1号で、承諾をすべき者である権利の登記名義人について「当該権利が抵当権である場合において、抵当証券が発行されているときは、当該抵当証券の所持人又は裏書人を含む。」としたうえで、3号で「第一号の権利が抵当証券の発行されている抵当権であるときは、当該抵当証券」を掲げている。抵当証券が発行されている抵当権について権利が消滅した旨の登記を求めるときは、承諾を証する情報のほか、当該抵当証券も提供しなければならないから、本肢は誤りである。

エ 正しい。不動産登記規則104条6項は、「登記官は、要役地についてする地役権の登記がある土地について分筆の登記をする場合において、当該分筆の登記の申請情報と併せて当該地役権を分筆後のいずれかの土地について消滅させることを証する地役権者が作成した情報が提供されたとき(当該土地を目的とする第三者の権利に関する登記がある場合にあっては、当該第三者が承諾したことを証する情報が併せて提供されたときに限る。)は、当該土地について当該地役権が消滅した旨を登記しなければならない。」と定めている。本肢は、同項のとおりである。

オ 誤り。不動産登記規則107条3項は、合筆前の甲土地及び乙土地が所有権の登記がある土地である場合において、「甲土地の登記記録に承役地についてする地役権の登記があるときは、乙土地の登記記録の乙区に甲土地の登記記録から当該地役権の登記を移記し、当該移記された地役権の登記に当該地役権設定の範囲及び地役権図面番号を記録しなければならない。」と定めている。しかし、同条4項は、「登記官は、前項の規定により地役権の登記を移記すべき場合において、乙土地に登記の目的、申請の受付の年月日及び受付番号並びに登記原因及びその日付が同一の承役地にする地役権の登記があるときは、同項の規定にかかわらず、乙土地の登記記録に甲土地の地番及び甲土地につき同一事項の登記がある旨を記録しなければならない。」と定めている。本肢の場合には、甲土地の地役権の登記を移記するのではなく、乙土地の登記記録に甲土地の地番及び甲土地につき同一事項の登記がある旨を記録するのであるから、本肢は誤りである。

ポイント:分筆又は合筆の登記の申請人は表題部所有者又は所有権の登記名義人に限られるが(不動産登記法39条1項)、これらの者に相続その他の一般承継があったときは、一般承継人がその表示に関する登記を申請することができる(同法30条)。所有権以外の権利の登記がある土地の分筆では、権利の登記名義人の承諾を証する情報が提供されれば、承諾に係る土地について権利が消滅した旨を登記し(同法40条)、分筆後の甲土地について消滅させるときは、甲土地の当該権利の登記にする付記登記で消滅の旨を記録し、その登記を抹消する記号を記録する(不動産登記規則104条3項)。抵当証券が発行されているときは、所持人又は裏書人も承諾をすべき者に含まれ、抵当証券そのものも提供する(同条1項1号・3号)。要役地の地役権は、地役権者が作成した消滅させることを証する情報の提供により分筆後のいずれかの土地について消滅した旨を登記する(同条6項)。合筆では、甲土地の承役地の地役権の登記は乙土地に移記するのが原則であるが、乙土地に同一の承役地の地役権の登記があるときは、移記に代えて甲土地の地番及び同一事項の登記がある旨を記録する(同規則107条3項・4項)。「抵当証券があれば証券も出す、同一の地役権は移記しない」と押さえる。


問題:

区分建物についての建物の表題登記の申請に関する次の記述のうち、不動産登記法及び不動産登記令の規定に照らし正しいものはいくつあるか。

ア. 区分建物である建物を新築したAが、その表題登記を申請しないまま死亡した場合には、Aの相続人Bは、Bを表題部所有者とする当該建物についての表題登記を申請することができる。

イ. アの場合において、BがAを表題部所有者とする当該建物についての表題登記を申請するときは、Aの氏名及び一般承継の時における住所並びにBがAの相続人である旨を申請情報の内容とし、相続があったことを証する市町村長、登記官その他の公務員が職務上作成した情報を添付情報として提供しなければならない。

ウ. 区分建物の表題登記を申請する場合において、当該区分建物が属する一棟の建物の名称があるときは、その名称を申請情報の内容とすれば、当該一棟の建物の構造及び床面積を申請情報の内容とすることを要しない。

エ. 敷地権が存する区分建物の表題登記を申請する場合には、申請人は、当該表題登記の申請と併せて、敷地権の目的である土地の登記記録に当該土地の所有権等が敷地権である旨の登記をすることを申請しなければならない。

オ. 二人以上の者が共有する区分建物の表題登記を申請するときは、表題部所有者となる者ごとの持分を申請情報の内容としなければならない。

答え:

正しいものは、イ・オの2つである。

解説:

本問は、区分建物の新築者の一般承継人による表題登記の申請(不動産登記法47条2項、不動産登記令別表12の項)、区分建物の表題登記の申請情報(同令3条8号・9号)及び敷地権である旨の登記(同法46条)を問うものであり、正しいのはイ・オの2つである。

ア 誤り。不動産登記法47条2項は、「区分建物である建物を新築した場合において、その所有者について相続その他の一般承継があったときは、相続人その他の一般承継人も、被承継人を表題部所有者とする当該建物についての表題登記を申請することができる。」と定めている。相続人Bが申請することができるのは、被承継人Aを表題部所有者とする表題登記であるから、Bを表題部所有者とする表題登記を申請することができるとする本肢は誤りである。

イ 正しい。不動産登記令別表12の項(建物の表題登記)は、申請情報欄のロで「法第四十七条第二項の規定による申請にあっては、被承継人の氏名又は名称及び一般承継の時における住所並びに申請人が被承継人の相続人その他の一般承継人である旨」を掲げ、添付情報欄のトで「法第四十七条第二項の規定による申請にあっては、相続その他の一般承継があったことを証する市町村長、登記官その他の公務員が職務上作成した情報(公務員が職務上作成した情報がない場合にあっては、これに代わるべき情報)」を掲げている。本肢は、これらの規定のとおりである。

ウ 誤り。不動産登記令3条8号は、建物の表示に関する登記を申請するときの申請情報の内容として、ロで「家屋番号(建物の表題登記(合体による登記等における合体後の建物についての表題登記を含む。)を申請する場合(中略)を除く。)」を、ヘで「建物又は附属建物が区分建物であるときは、当該建物又は附属建物が属する一棟の建物の構造及び床面積(トに掲げる事項を申請情報の内容とする場合(ロに規定する場合を除く。)を除く。)」を、トで「建物又は附属建物が区分建物である場合であって、当該建物又は附属建物が属する一棟の建物の名称があるときは、その名称」を掲げている。一棟の建物の名称を申請情報の内容とすることにより一棟の建物の構造及び床面積を申請情報の内容とすることを要しなくなるのは、ロに規定する場合(建物の表題登記を申請する場合等)を除いた場合に限られる。区分建物の表題登記を申請する場合はロに規定する場合に当たるから、一棟の建物の名称があるときであっても、一棟の建物の構造及び床面積を申請情報の内容としなければならない。本肢は誤りである。

エ 誤り。不動産登記法46条は、「登記官は、表示に関する登記のうち、区分建物に関する敷地権について表題部に最初に登記をするときは、当該敷地権の目的である土地の登記記録について、職権で、当該登記記録中の所有権、地上権その他の権利が敷地権である旨の登記をしなければならない。」と定めている。敷地権である旨の登記は登記官が職権でするものであるから、申請人がその登記を申請しなければならないとする本肢は誤りである。

オ 正しい。不動産登記令3条9号は、申請情報の内容として、「表題登記又は権利の保存、設定若しくは移転の登記(根質権、根抵当権及び信託の登記を除く。)を申請する場合において、表題部所有者又は登記名義人となる者が二人以上であるときは、当該表題部所有者又は登記名義人となる者ごとの持分」を掲げている。本肢は、同号のとおりである。

ポイント:区分建物を新築した者に相続その他の一般承継があったときは、一般承継人も、被承継人を表題部所有者とする表題登記を申請することができ(不動産登記法47条2項)、この場合は被承継人の氏名等と一般承継人である旨を申請情報とし、一般承継を証する公務員作成の情報を添付する(不動産登記令別表12の項)。区分建物の申請情報では、一棟の建物の名称があるときに一棟の建物の構造及び床面積を省略できるのは、家屋番号を申請情報とする場合であり、表題登記の申請では省略できない(同令3条8号ロ・ヘ・ト)。表題部所有者となる者が二人以上のときは各自の持分を申請情報とする(同条9号)。区分建物に関する敷地権について表題部に最初に登記をするときは、登記官が職権で土地の登記記録に敷地権である旨の登記をする(不動産登記法46条)。「相続人が出すのは被承継人名義、表題登記では一棟の構造・床面積は省けない」と押さえる。


問題:

建物図面及び各階平面図に関する次の記述のうち、不動産登記規則の規定に照らし誤っているものはいくつあるか。

ア. 書面である建物図面には、作成の年月日を記録し、申請人が記名するとともに、その作成者が署名し、又は記名押印しなければならないが、書面である各階平面図には、作成者の署名又は記名押印を要しない。

イ. 附属建物がある建物の建物図面及び各階平面図は、主である建物と附属建物とが異なる地番の土地の上に存する場合であっても、主である建物と附属建物を合わせて一個の建物として作成しなければならない。

ウ. 建物の区分の登記を申請する場合において提供する各階平面図には、区分後の各建物を表示すれば足り、これに符号を付すことを要しない。

エ. 登記官は、建物の表題部の登記事項に関する変更の登記をした場合には、変更後の建物図面及び各階平面図がないときであっても、変更前の建物図面及び各階平面図を閉鎖しなければならない。

オ. 登記官は、建物の表題部の抹消をした場合には、抹消前の建物図面及び各階平面図を閉鎖しなければならない。

答え:

誤っているものは、ア・ウ・エの3つである。

解説:

本問は、書面である図面の記名及び署名等(不動産登記規則74条2項)、建物図面及び各階平面図の作成単位(同規則81条)、建物の分割の登記等の場合の図面(同規則84条)並びに図面の閉鎖(同規則85条2項)を問うものであり、誤っているのはア・ウ・エの3つである。

ア 誤り。不動産登記規則74条1項は、「土地所在図、地積測量図、建物図面及び各階平面図(これらのものが書面である場合に限る。)は、〇・二ミリメートル以下の細線により、図形を鮮明に表示しなければならない。」と定め、同条2項は、「前項の土地所在図、地積測量図、建物図面及び各階平面図には、作成の年月日を記録し、申請人が記名するとともに、その作成者が署名し、又は記名押印しなければならない。」と定めている。作成者の署名又は記名押印は、書面である建物図面だけでなく、書面である各階平面図にも求められるから、本肢は誤りである。

イ 正しい。不動産登記規則81条は、「建物図面及び各階平面図は、一個の建物(附属建物があるときは、主である建物と附属建物を合わせて一個の建物とする。)ごとに作成しなければならない。」と定めている。同条は、主である建物と附属建物の所在する土地の地番が同一であるかどうかを区別していないから、両者が異なる地番の土地の上に存する場合であっても、主である建物と附属建物を合わせて一個の建物として作成する。本肢は正しい。

ウ 誤り。不動産登記規則84条は、「建物の分割の登記又は建物の区分の登記を申請する場合において提供する建物図面及び各階平面図には、分割後又は区分後の各建物を表示し、これに符号を付さなければならない。」と定めている。区分後の各建物を表示するだけでなく、これに符号を付さなければならないから、本肢は誤りである。

エ 誤り。不動産登記規則85条2項は、登記官が図面を閉鎖しなければならない場合として、1号で「表題部の登記事項に関する変更の登記又は更正の登記をした場合(変更後又は更正後の土地所在図、地積測量図、建物図面又は各階平面図がある場合に限る。)」を掲げ、この場合に閉鎖する図面を「変更前又は更正前の土地所在図、地積測量図、建物図面又は各階平面図」としている。変更前の図面を閉鎖するのは、変更後の図面がある場合に限られるから、変更後の建物図面及び各階平面図がないときであっても変更前の図面を閉鎖しなければならないとする本肢は誤りである。

オ 正しい。不動産登記規則85条2項2号は、「滅失の登記又は表題部の抹消をした場合」を掲げ、この場合に閉鎖する図面を「滅失前又は抹消前の土地所在図、地積測量図、建物図面又は各階平面図」としている。本肢は、同号のとおりである。

ポイント:書面である建物図面及び各階平面図は、0.2ミリメートル以下の細線で図形を鮮明に表示し、作成の年月日を記録し、申請人が記名するとともに作成者が署名又は記名押印する(不動産登記規則74条1項・2項)。建物図面及び各階平面図は、附属建物があるときは主である建物と附属建物を合わせた一個の建物ごとに作成し(同規則81条)、建物の分割の登記又は区分の登記では分割後又は区分後の各建物を表示して符号を付す(同規則84条)。登記官は、表題部の登記事項の変更又は更正の登記をした場合は変更後又は更正後の図面があるときに限り変更前又は更正前の図面を、滅失の登記又は表題部の抹消をした場合は滅失前又は抹消前の図面を閉鎖する(同規則85条2項1号・2号)。「署名等は図面の種類を問わず作成者、変更登記による閉鎖は新しい図面があるときだけ」と押さえる。


問題:

甲土地(所有権の登記名義人A)と乙土地(所有権の登記名義人B)とは相互に隣接しており、Aの申請に基づき、甲土地と乙土地との筆界について筆界特定がされた。この場合に関する次の記述のうち、令和8年4月1日時点で施行されている不動産登記法及び不動産登記規則の規定に照らし正しいものはいくつあるか。なお、「筆界確定訴訟」とは、民事訴訟の手続により筆界の確定を求める訴えをいう。

ア. その後、Bが提起した筆界確定訴訟において、当該筆界特定の内容と一部が異なる筆界を定める判決が確定したときは、当該筆界特定は、当該判決と抵触しない部分を含め、その全部について効力を失う。

イ. その後、Bが提起した筆界確定訴訟において、訴えを不適法として却下する判決が確定した場合において、Aが同一の筆界について更に筆界特定の申請をしたときは、対象土地について更に筆界特定をする特段の必要があると認められる場合を除き、筆界特定登記官は、当該申請を却下しなければならない。

ウ. 当該筆界特定に係る筆界特定手続記録のうち筆界特定書以外のものに記載され、又は記録された情報の保存期間は、対象土地の所在地を管轄する登記所が当該筆界特定手続記録の送付を受けた年の翌年から30年間である。

エ. 筆界特定登記官が筆界特定をした旨を関係人に通知する場合において、関係人の所在が判明しないときは、所定の事項を対象土地の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の掲示場に掲示することによって通知を行うことができ、この場合には、掲示を始めた日から2週間を経過したときに、当該通知が関係人に到達したものとみなされる。

オ. 筆界特定書において筆界特定の内容を表示する図面には、地積測量図と同様に、対象土地の地積及びその求積方法を記録するものとされている。

答え:

正しいものは、イ・ウ・エの3つである。

解説:

本問は、筆界確定訴訟の判決との関係(不動産登記法148条)、筆界特定の申請の却下事由(同法132条1項6号・7号)、筆界特定手続記録の保存期間(不動産登記規則235条1項)、筆界特定をした旨の関係人への通知(不動産登記法144条、133条2項)及び筆界特定書の図面の記録事項(同法143条2項、同規則231条4項)を問うものであり、正しいのはイ・ウ・エの3つである。

ア 誤り。不動産登記法148条は、「筆界特定がされた場合において、当該筆界特定に係る筆界について民事訴訟の手続により筆界の確定を求める訴えに係る判決が確定したときは、当該筆界特定は、当該判決と抵触する範囲において、その効力を失う。」と定めている。筆界特定が効力を失うのは判決と抵触する範囲に限られるから、抵触しない部分を含めてその全部について効力を失うとする本肢は誤りである。

イ 正しい。不動産登記法132条1項は、筆界特定登記官が理由を付した決定で筆界特定の申請を却下しなければならない場合として、6号で「対象土地の筆界について、既に民事訴訟の手続により筆界の確定を求める訴えに係る判決(訴えを不適法として却下したものを除く。第百四十八条において同じ。)が確定しているとき。」を、7号で「対象土地の筆界について、既に筆界特定登記官による筆界特定がされているとき。ただし、対象土地について更に筆界特定をする特段の必要があると認められる場合を除く。」を掲げている。訴えを不適法として却下する判決は6号の判決から除かれ、同法148条の判決からも除かれるから、本肢の却下判決の確定によって筆界特定が効力を失うことはなく、甲土地と乙土地との筆界については既に筆界特定がされている状態にある。したがって、Aの再度の申請は、特段の必要があると認められる場合を除き、7号により却下される。本肢は正しい。

ウ 正しい。不動産登記規則235条1項は、筆界特定手続記録に係る情報の保存期間を、1号で「筆界特定書に記載され、又は記録された情報」について「永久」とし、2号で「筆界特定書以外の筆界特定手続記録に記載され、又は記録された情報」について「対象土地の所在地を管轄する登記所が第二百三十三条の規定により筆界特定手続記録の送付を受けた年の翌年から三十年間」としている。本肢は、同項2号のとおりである。

エ 正しい。不動産登記法144条1項は、「筆界特定登記官は、筆界特定をしたときは、遅滞なく、筆界特定の申請人に対し、筆界特定書の写しを交付する方法(中略)により当該筆界特定書の内容を通知するとともに、法務省令で定めるところにより、筆界特定をした旨を公告し、かつ、関係人に通知しなければならない。」と定め、同条2項は、「第百三十三条第二項の規定は、前項の規定による通知について準用する。」と定めている。そして、同法133条2項は、「前項本文の場合において、関係人の所在が判明しないときは、同項本文の規定による通知を、関係人の氏名又は名称、通知をすべき事項及び当該事項を記載した書面をいつでも関係人に交付する旨を対象土地の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の掲示場に掲示することによって行うことができる。この場合においては、掲示を始めた日から二週間を経過したときに、当該通知が関係人に到達したものとみなす。」と定めている。本肢は、これらの規定のとおりである。なお、同法133条2項は、令和8年5月21日に施行されたデジタル社会の形成を図るための規制改革を推進するためのデジタル社会形成基本法等の一部を改正する法律(令和5年法律第63号)による改正で、関係人の氏名又は名称等の所定の事項を法務省令で定める方法により不特定多数の者が閲覧することができる状態に置くとともに、当該事項が記載された書面を掲示場に掲示し、又は当該事項を法務局若しくは地方法務局の事務所に設置した電子計算機の映像面に表示したものの閲覧をすることができる状態に置く措置をとることによって通知を行うものに改められ、到達したものとみなされる時期も「当該措置を開始した日から二週間を経過したとき」とされている。本問は、令和8年4月1日時点で施行されている規定によっている。

オ 誤り。不動産登記法143条2項は、「筆界特定書においては、図面及び図面上の点の現地における位置を示す方法として法務省令で定めるものにより、筆界特定の内容を表示しなければならない。」と定め、不動産登記規則231条4項は、この図面に記録する事項として、1号「地番区域の名称」、2号「方位」、3号「縮尺」、4号「対象土地及び関係土地の地番」、5号「筆界特定の対象となる筆界又はその位置の範囲」、6号「筆界特定の対象となる筆界に係る筆界点(中略)間の距離」、7号「境界標があるときは、当該境界標の表示」、8号「測量の年月日」を掲げている。同項各号に地積及びその求積方法は掲げられておらず、この点で、地積及びその求積方法を記録事項とする地積測量図(同規則77条1項5号)とは異なる。本肢は誤りである。

ポイント:筆界特定は、その筆界について筆界確定訴訟の判決(訴えを不適法として却下したものを除く。)が確定したときは、判決と抵触する範囲において効力を失う(不動産登記法148条、132条1項6号括弧書)。既に筆界特定がされている筆界についての申請は、更に筆界特定をする特段の必要があると認められる場合を除き却下される(同項7号)。筆界特定手続記録の保存期間は、筆界特定書の情報が永久、それ以外の記録が送付を受けた年の翌年から30年間である(不動産登記規則235条1項)。筆界特定をした旨の関係人への通知は、所在不明のときは掲示により行うことができ、掲示開始から2週間で到達したものとみなされる(不動産登記法144条2項、133条2項。令和8年4月1日時点の規定であり、同年5月21日施行の改正で、所定の事項を不特定多数の者が閲覧することができる状態に置く措置等をとる方法に改められている)。筆界特定書の図面には、地番区域の名称、方位、縮尺、対象土地及び関係土地の地番、筆界又はその位置の範囲、筆界点間の距離、境界標の表示、測量の年月日を記録し、地積及びその求積方法は記録事項とされていない(同法143条2項、同規則231条4項)。「失効は抵触する範囲だけ、却下判決なら筆界特定は生きている」と押さえる。


問題:

土地家屋調査士法人(以下「調査士法人」という。)に関する次の記述のうち、土地家屋調査士法の規定に照らし正しいものはいくつあるか。なお、「調査士」とは土地家屋調査士を、「特定社員」とは同法35条2項に規定する特定社員をいう。

ア. 調査士法人の社員は、調査士でなければならないが、土地家屋調査士会の会員であることまでは要しない。

イ. 社員のうちに土地家屋調査士法3条2項に規定する調査士がない調査士法人であっても、使用人のうちに同項に規定する調査士があるときは、定款で定めるところにより、民間紛争解決手続代理関係業務を行うことができる。

ウ. 調査士法人は、筆界特定手続代理関係業務に関するものとして受任している事件(土地家屋調査士法3条1項5号に規定する業務として受任している事件を除く。)の相手方からの依頼による他の事件については、受任している事件の依頼者が同意した場合であっても、筆界特定手続代理関係業務を行ってはならない。

エ. 民間紛争解決手続代理関係業務を行うことを目的とする調査士法人が民間紛争解決手続代理関係業務に関し依頼者に対して負担することとなった債務を当該調査士法人の財産をもって完済することができないときは、当該調査士法人を脱退した特定社員も、当該債務が脱退後の事由により生じた債務であることを証明した場合を除き、連帯して、その弁済の責任を負う。

オ. 調査士法人が社員の死亡により社員の欠亡を理由として解散した場合には、その清算人は、当該社員の相続人の同意を得て、新たに社員を加入させて調査士法人を継続することができる。

答え:

正しいものは、エ・オの2つである。

解説:

本問は、社員の資格(土地家屋調査士法28条)、業務の範囲(同法29条)、特定の事件についての業務の制限(同法36条の3第1項)、社員の責任(同法35条の3第4項)及び調査士法人の継続(同法39条の2)を問うものであり、正しいのはエ・オの2つである。

ア 誤り。土地家屋調査士法28条1項は、「調査士法人の社員は、調査士でなければならない。」と定め、同条2項は、社員となることができない者として、1号で業務の停止の処分を受け、当該業務の停止の期間を経過しない者を、2号で解散又は業務の全部の停止の処分を受けた調査士法人の一定の社員であった者を掲げるとともに、3号で「調査士会の会員でない者」を掲げている。調査士会の会員でない者は調査士法人の社員となることができないから、本肢は誤りである。

イ 誤り。土地家屋調査士法29条1項は、調査士法人は、同法3条1項1号から6号までに規定する業務を行うほか、定款で定めるところにより、1号で「法令等に基づきすべての調査士が行うことができるものとして法務省令で定める業務の全部又は一部」を、2号で「民間紛争解決手続代理関係業務」を行うことができると定め、同条2項は、「民間紛争解決手続代理関係業務は、社員のうちに第三条第二項に規定する調査士がある調査士法人(調査士会の会員であるものに限る。)に限り、行うことができる。」と定めている。民間紛争解決手続代理関係業務を行うことができるのは、社員のうちに同法3条2項に規定する調査士がある調査士法人に限られ、使用人のうちに同項に規定する調査士があることでは足りないから、本肢は誤りである。

ウ 誤り。土地家屋調査士法36条の3第1項は、「調査士法人は、次に掲げる事件については、筆界特定手続代理関係業務を行つてはならない。ただし、第三号に掲げる事件については、受任している事件の依頼者が同意した場合は、この限りでない。」と定め、3号で「筆界特定手続代理関係業務又は民間紛争解決手続代理関係業務に関するものとして受任している事件(第三条第一項第五号に規定する業務として受任している事件を除く。)の相手方からの依頼による他の事件」を掲げている。本肢の事件は同項3号の事件に当たり、受任している事件の依頼者が同意した場合には、調査士法人は筆界特定手続代理関係業務を行うことができるから、本肢は誤りである。なお、「筆界特定手続代理関係業務」とは、同法3条1項4号から6号(4号及び5号に関する部分に限る。)までに規定する業務をいう(同法22条の2第2項)。

エ 正しい。土地家屋調査士法35条の3第4項は、「民間紛争解決手続代理関係業務を行うことを目的とする調査士法人が民間紛争解決手続代理関係業務に関し依頼者に対して負担することとなつた債務を当該調査士法人の財産をもつて完済することができないときは、第一項の規定にかかわらず、特定社員(当該調査士法人を脱退した特定社員を含む。以下この条において同じ。)が、連帯して、その弁済の責任を負う。ただし、当該調査士法人を脱退した特定社員については、当該債務が脱退後の事由により生じた債務であることを証明した場合は、この限りでない。」と定めている。本肢は、同項のとおりである。

オ 正しい。土地家屋調査士法39条1項は、調査士法人の解散事由の一つとして、7号で「社員の欠亡」を掲げ、同法39条の2は、「調査士法人の清算人は、社員の死亡により前条第一項第七号に該当するに至つた場合に限り、当該社員の相続人(第四十一条第三項において準用する会社法第六百七十五条において準用する同法第六百八条第五項の規定により社員の権利を行使する者が定められている場合にはその者)の同意を得て、新たに社員を加入させて調査士法人を継続することができる。」と定めている。本肢は、同条のとおりである。

ポイント:調査士法人の社員は調査士でなければならず、業務の停止の期間を経過しない者などのほか、調査士会の会員でない者も社員となることができない(土地家屋調査士法28条)。調査士法人は、同法3条1項1号から6号までの業務のほか、定款で定めるところにより民間紛争解決手続代理関係業務を行うことができるが、それは社員のうちに同条2項に規定する調査士がある調査士法人(調査士会の会員であるものに限る。)に限られる(同法29条)。受任している事件の相手方からの依頼による他の事件は、受任している事件の依頼者の同意があれば筆界特定手続代理関係業務を行うことができる(同法36条の3第1項3号・ただし書)。民間紛争解決手続代理関係業務に関する依頼者への債務は特定社員(脱退した特定社員を含む。)が連帯して負い、脱退した特定社員は脱退後の事由による債務であることを証明すれば責任を免れる(同法35条の3第4項)。社員の死亡による社員の欠亡で解散したときは、清算人は相続人の同意を得て新たに社員を加入させ、調査士法人を継続することができる(同法39条1項7号、39条の2)。「ADR業務は社員に認定調査士がいる法人だけ、継続できるのは社員の死亡による欠亡のときだけ」と押さえる。


出題分野の振り分け

問 分野 主な論点 主な根拠条文
第1問 民法(総則・自己契約及び双方代理等) 登記申請の双方代理、自己契約と本人のあらかじめの許諾、代理人の債務を担保するための本人所有地への抵当権設定と利益相反行為、利益相反行為の除外は本人のあらかじめの許諾のみ(債務の履行の除外なし)、双方代理による契約の追認と遡及効 民法108条1項・2項、113条1項、116条、最判昭43.3.8
第2問 民法(物権・混同と抵当権の目的である地上権の放棄) 所有権と地上権の混同、抵当権の目的となっている地上権と混同、1番抵当権者が所有権を取得した場合と後順位抵当権、対抗要件を具備した賃借権とその後に設定された抵当権(179条1項ただし書の準用)、抵当権の目的とした地上権の放棄 民法179条1項、398条、605条、最判昭46.10.14
第3問 民法(相続・相続の開始後に認知された者の価額の支払請求) 価額のみによる支払請求と既にされた分割の効力、認知の訴えの期間(死亡の日から3年)、価額算定の基礎(積極財産・相続債務を控除しない)、価額算定の基準時と遅滞の時期、母の相続と784条ただし書・910条の類推適用の否定 民法784条、787条、910条、最判平28.2.26、最判令元.8.27、最判昭54.3.23
第4問 不動産登記法・不動産登記規則(分筆の登記・合筆の登記) 一般承継人による分筆の登記の申請、分筆後の甲土地について抵当権が消滅した旨の登記の記録方法、抵当証券が発行されている抵当権と抵当証券の提供、要役地についてする地役権の消滅の登記、合筆における同一の承役地の地役権の登記の記録方法 不動産登記法30条、39条1項、40条、不動産登記規則104条1項・3項・6項、107条3項・4項
第5問 不動産登記法・不動産登記令(区分建物の表題登記の申請) 区分建物の新築者の一般承継人が申請する表題登記の表題部所有者、一般承継人による申請の申請情報と添付情報、一棟の建物の名称と一棟の建物の構造及び床面積の申請情報、敷地権である旨の登記(職権)、共有者の持分の申請情報 不動産登記法46条、47条2項、不動産登記令3条8号・9号、別表12の項
第6問 不動産登記規則(建物図面・各階平面図) 書面である図面の申請人の記名と作成者の署名等、附属建物がある場合の作成単位、建物の区分の登記の図面の符号、変更の登記による図面の閉鎖の要件、表題部の抹消による図面の閉鎖 不動産登記規則74条1項・2項、81条、84条、85条2項1号・2号
第7問 不動産登記法・不動産登記規則(筆界特定の効果・筆界特定後の取扱い) 筆界確定訴訟の判決と抵触する範囲での失効、訴え却下判決の確定と再度の筆界特定の申請の却下、筆界特定手続記録の保存期間、筆界特定をした旨の関係人への通知と掲示、筆界特定書の図面の記録事項 不動産登記法132条1項6号・7号、133条2項、143条2項、144条、148条、不動産登記規則77条1項5号、231条4項、235条1項
第8問 土地家屋調査士法(土地家屋調査士法人) 社員の資格(調査士会の会員であること)、民間紛争解決手続代理関係業務を行うことができる調査士法人、受任事件の相手方からの依頼による他の事件と依頼者の同意、脱退した特定社員の責任、社員の死亡による欠亡と調査士法人の継続 土地家屋調査士法3条2項、22条の2第2項、28条、29条、35条の3第4項、36条の3第1項3号、39条1項7号、39条の2