問題:
代理に関する次の記述のうち、民法の規定に照らし正しいものはいくつあるか。
ア. 代理人がその代理権の範囲内の行為について本人のためにすることを示さないで意思表示をした場合において、相手方が、代理人が本人のためにすることを知ることができたときは、その意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。
イ. 権限の定めのない代理人は、保存行為をする権限を有するが、代理の目的である物又は権利の利用又は改良を目的とする行為については、その物又は権利の性質を変えない範囲内のものであっても、本人の許諾を得なければすることができない。
ウ. 委任による代理人は、やむを得ない事由があるときであっても、本人の許諾を得なければ、復代理人を選任することができない。
エ. 法定代理人は、自己の責任で復代理人を選任することができ、この場合において、やむを得ない事由があるときは、本人に対してその選任及び監督についての責任のみを負う。
オ. 復代理人は、代理人によって選任された者であるから、その権限内の行為について代理人を代表し、本人に対して直接に権利を有し、義務を負うことはない。
答え:
正しいものは、ア・エの2つである。
解説:
本問は、本人のためにすることを示さない意思表示(民法100条)、権限の定めのない代理人の権限(同法103条)、任意代理人及び法定代理人による復代理人の選任(同法104条・105条)並びに復代理人の権限等(同法106条)を問うものであり、正しいのはア・エの2つである。
ア 正しい。民法100条は、「代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、自己のためにしたものとみなす。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、又は知ることができたときは、前条第一項の規定を準用する。」と定めている。そして、同法99条1項は、「代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。」と定めている。同法100条ただし書は、相手方が知っていたときだけでなく、知ることができたときにも同法99条1項を準用しているから、代理権の範囲内の行為について本人のためにすることを示さないでした意思表示であっても、相手方が、代理人が本人のためにすることを知ることができたときは、本人に対して直接にその効力を生ずる。本肢は正しい。
イ 誤り。民法103条は、「権限の定めのない代理人は、次に掲げる行為のみをする権限を有する。」と定め、1号で「保存行為」を、2号で「代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為」を掲げている。権限の定めのない代理人は、物又は権利の性質を変えない範囲内であれば、利用又は改良を目的とする行為をする権限を同条2号により有するから、本人の許諾を得なければすることができないとする本肢は誤りである。
ウ 誤り。民法104条は、「委任による代理人は、本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない。」と定めている。委任による代理人は、本人の許諾を得たときのほか、やむを得ない事由があるときも復代理人を選任することができるから、やむを得ない事由があるときであっても本人の許諾を要するとする本肢は誤りである。
エ 正しい。民法105条は、「法定代理人は、自己の責任で復代理人を選任することができる。この場合において、やむを得ない事由があるときは、本人に対してその選任及び監督についての責任のみを負う。」と定めている。本肢は、同条のとおりである。同条は、委任による代理人に関する同法104条と異なり、法定代理人が復代理人を選任することについて、本人の許諾又はやむを得ない事由があることを要件としていない。
オ 誤り。民法106条1項は、「復代理人は、その権限内の行為について、本人を代表する。」と定め、同条2項は、「復代理人は、本人及び第三者に対して、その権限の範囲内において、代理人と同一の権利を有し、義務を負う。」と定めている。復代理人が代表するのは本人であって代理人ではなく、また、復代理人は本人に対して代理人と同一の権利を有し、義務を負うから、本肢は誤りである。
ポイント:代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は自己のためにしたものとみなされるが、相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、又は知ることができたときは、民法99条1項が準用され、本人に対して直接にその効力を生ずる(同法100条・99条1項)。権限の定めのない代理人は、保存行為と、物又は権利の性質を変えない範囲内の利用又は改良を目的とする行為のみをする権限を有する(同法103条)。委任による代理人は、本人の許諾を得たとき又はやむを得ない事由があるときに限り復代理人を選任することができ(同法104条)、法定代理人は自己の責任で復代理人を選任することができ、やむを得ない事由があるときは選任及び監督についての責任のみを負う(同法105条)。復代理人は、その権限内の行為について本人を代表し、本人及び第三者に対して代理人と同一の権利義務を有する(同法106条)。顕名がなくても「知ることができた」相手方には本人に効力、任意代理人の復任は「許諾又はやむを得ない事由のどちらか」、復代理人は「代理人ではなく本人を代表する」と押さえる。
問題:
抵当権と賃貸借及び抵当権の消滅に関する次の記述のうち、民法の規定に照らし誤っているものはいくつあるか。
ア. 登記をした賃貸借は、その登記前に登記をした抵当権を有する者のうち一部の者が同意をし、かつ、その同意の登記があるときは、その同意をした抵当権者に対抗することができる。
イ. 登記をした賃貸借を抵当権者に対抗することができるものとするために抵当権者が民法387条1項の同意をするには、その抵当権を目的とする権利を有する者その他抵当権者の同意によって不利益を受けるべき者の承諾を得なければならない。
ウ. 強制管理又は担保不動産収益執行の管理人が競売手続の開始後にした賃貸借により抵当権の目的である建物の使用又は収益をする者は、その賃貸借が抵当権者に対抗することができないものであっても、その建物の競売における買受人の買受けの時から6箇月を経過するまでは、その建物を買受人に引き渡すことを要しない。
エ. 抵当権者に対抗することができない賃貸借により抵当権の目的である建物を競売手続の開始前から使用する者は、買受人から、買受人の買受けの時より後にその建物の使用をしたことの対価について、相当の期間を定めてその1箇月分以上の支払の催告を受け、その相当の期間内に履行をしなかったときであっても、買受人の買受けの時から6箇月を経過するまでは、その建物を買受人に引き渡すことを要しない。
オ. 抵当権は、債務者に対しては、その担保する債権と同時でなければ時効によって消滅しないが、債務者以外の者が抵当権設定者である場合には、その抵当権設定者に対しては、その担保する債権とは別に、時効によって消滅することがある。
答え:
誤っているものは、ア・エ・オの3つである。
解説:
本問は、抵当権者の同意の登記がある場合の賃貸借の対抗力(民法387条)、抵当建物使用者の引渡しの猶予(同法395条)及び抵当権の消滅時効(同法396条)を問うものであり、誤っているのはア・エ・オの3つである。
ア 誤り。民法387条1項は、「登記をした賃貸借は、その登記前に登記をした抵当権を有するすべての者が同意をし、かつ、その同意の登記があるときは、その同意をした抵当権者に対抗することができる。」と定めている。同項の対抗力が認められるには、賃貸借の登記前に登記をした抵当権を有するすべての者の同意が必要であるから、一部の者の同意で足りるとする本肢は誤りである。
イ 正しい。民法387条2項は、「抵当権者が前項の同意をするには、その抵当権を目的とする権利を有する者その他抵当権者の同意によって不利益を受けるべき者の承諾を得なければならない。」と定めている。本肢は、同項のとおりである。
ウ 正しい。民法395条1項は、「抵当権者に対抗することができない賃貸借により抵当権の目的である建物の使用又は収益をする者であって次に掲げるもの(次項において「抵当建物使用者」という。)は、その建物の競売における買受人の買受けの時から六箇月を経過するまでは、その建物を買受人に引き渡すことを要しない。」と定め、1号で「競売手続の開始前から使用又は収益をする者」を、2号で「強制管理又は担保不動産収益執行の管理人が競売手続の開始後にした賃貸借により使用又は収益をする者」を掲げている。本肢の者は同項2号に当たるから、買受人の買受けの時から6箇月を経過するまでは、建物を買受人に引き渡すことを要しない。本肢は正しい。
エ 誤り。民法395条2項は、「前項の規定は、買受人の買受けの時より後に同項の建物の使用をしたことの対価について、買受人が抵当建物使用者に対し相当の期間を定めてその一箇月分以上の支払の催告をし、その相当の期間内に履行がない場合には、適用しない。」と定めている。本肢の者は同条1項1号の抵当建物使用者に当たるが、買受人から同条2項の催告を受け、相当の期間内に履行をしなかったときは、同条1項の引渡しの猶予は適用されない。6箇月を経過するまで建物を引き渡すことを要しないとする本肢は誤りである。
オ 誤り。民法396条は、「抵当権は、債務者及び抵当権設定者に対しては、その担保する債権と同時でなければ、時効によって消滅しない。」と定めている。同条は、債務者だけでなく抵当権設定者に対しても、抵当権がその担保する債権と同時でなければ時効によって消滅しないとしているから、債務者以外の者が抵当権設定者である場合であっても、その抵当権設定者に対しては、抵当権は、その担保する債権とは別に時効によって消滅することはない。本肢は誤りである。
ポイント:登記をした賃貸借は、その登記前に登記をした抵当権を有するすべての者が同意をし、かつ、その同意の登記があるときに、同意をした抵当権者に対抗することができ(民法387条1項)、抵当権者が同意をするには、その抵当権を目的とする権利を有する者その他同意によって不利益を受けるべき者の承諾を要する(同条2項)。抵当権者に対抗することができない賃貸借により抵当権の目的である建物を使用又は収益する者のうち、競売手続の開始前から使用又は収益をする者と、強制管理又は担保不動産収益執行の管理人が競売手続の開始後にした賃貸借により使用又は収益をする者は、買受けの時から6箇月を経過するまで建物の引渡しを猶予される(同法395条1項)が、買受け後の使用の対価について1箇月分以上の支払の催告を受け、相当の期間内に履行がないときは猶予されない(同条2項)。抵当権は、債務者及び抵当権設定者に対しては、その担保する債権と同時でなければ時効によって消滅しない(同法396条)。同意は「賃貸借の登記前の抵当権者すべて」、引渡しの猶予は「6箇月・催告して払わなければ猶予なし」と押さえる。
問題:
遺留分に関する次の記述のうち、民法の規定に照らし正しいものはいくつあるか。
ア. 遺留分を算定するための財産の価額を算定するに当たり、条件付きの権利又は存続期間の不確定な権利は、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従って、その価格を定める。
イ. 相続人以外の者に対する贈与は、相続開始前の1年間にしたものに限り、遺留分を算定するための財産の価額に算入され、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときであっても、1年前の日より前にしたものは算入されない。
ウ. 不相当な対価をもってした有償行為は、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってしたものに限り、当該対価を負担の価額とする負担付贈与とみなされ、その目的の価額から負担の価額を控除した額が、遺留分を算定するための財産の価額に加える贈与した財産の価額となる。
エ. 受遺者と受贈者とがあるときは、受遺者が先に遺留分侵害額を負担し、受贈者が複数ある場合において、その贈与が同時にされたものでないときは、前の贈与に係る受贈者から順次後の贈与に係る受贈者が負担する。
オ. 受遺者又は受贈者の無資力によって生じた損失は、遺留分権利者の負担に帰することはなく、他の受遺者又は受贈者が負担する。
答え:
正しいものは、ア・ウの2つである。
解説:
本問は、遺留分を算定するための財産の価額(民法1043条〜1045条)及び受遺者又は受贈者の負担額(同法1047条)を問うものであり、正しいのはア・ウの2つである。
ア 正しい。民法1043条1項は、「遺留分を算定するための財産の価額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除した額とする。」と定め、同条2項は、「条件付きの権利又は存続期間の不確定な権利は、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従って、その価格を定める。」と定めている。本肢は、同条のとおりである。
イ 誤り。民法1044条1項は、「贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。」と定めている。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、1年前の日より前にした贈与も算入されるから、本肢は誤りである。なお、相続人に対する贈与については、同条3項が、同条1項中「一年」とあるのは「十年」と、「価額」とあるのは「価額(婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額に限る。)」とする旨を定めている。
ウ 正しい。民法1045条1項は、「負担付贈与がされた場合における第千四十三条第一項に規定する贈与した財産の価額は、その目的の価額から負担の価額を控除した額とする。」と定め、同条2項は、「不相当な対価をもってした有償行為は、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってしたものに限り、当該対価を負担の価額とする負担付贈与とみなす。」と定めている。不相当な対価をもってした有償行為は、同条2項により当該対価を負担の価額とする負担付贈与とみなされ、同条1項により、その目的の価額から負担の価額を控除した額が同法1043条1項に規定する贈与した財産の価額となる。本肢は正しい。
エ 誤り。民法1047条1項は、受遺者又は受贈者は、同項各号の定めるところに従い、遺贈又は贈与の目的の価額を限度として遺留分侵害額を負担すると定め、1号で「受遺者と受贈者とがあるときは、受遺者が先に負担する。」と、2号で「受遺者が複数あるとき、又は受贈者が複数ある場合においてその贈与が同時にされたものであるときは、受遺者又は受贈者がその目的の価額の割合に応じて負担する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。」と、3号で「受贈者が複数あるとき(前号に規定する場合を除く。)は、後の贈与に係る受贈者から順次前の贈与に係る受贈者が負担する。」と定めている。受遺者が先に負担するとする前段は同項1号のとおりであるが、贈与が同時にされたものでないときは、後の贈与に係る受贈者から順次前の贈与に係る受贈者が負担するから、前の贈与に係る受贈者から負担するとする後段が誤りであり、本肢は誤りである。
オ 誤り。民法1047条4項は、「受遺者又は受贈者の無資力によって生じた損失は、遺留分権利者の負担に帰する。」と定めている。受遺者又は受贈者の無資力によって生じた損失は遺留分権利者の負担に帰するから、他の受遺者又は受贈者が負担するとする本肢は誤りである。
ポイント:遺留分を算定するための財産の価額は、相続開始時の財産の価額に贈与した財産の価額を加え、債務の全額を控除して算定し、条件付きの権利又は存続期間の不確定な権利は家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従う(民法1043条)。算入される贈与は相続開始前の1年間にしたものが原則であるが、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってしたときは1年前の日より前のものも算入され、相続人に対する贈与は「十年」と読み替えられ、婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額に限られる(同法1044条1項・3項)。負担付贈与は目的の価額から負担の価額を控除した額とし、不相当な対価をもってした有償行為は、当事者双方が損害を加えることを知ってしたものに限り、対価を負担の価額とする負担付贈与とみなす(同法1045条)。遺留分侵害額は受遺者が受贈者より先に負担し、贈与が同時でない受贈者どうしは後の贈与に係る受贈者から順次前の受贈者が負担し、受遺者又は受贈者の無資力による損失は遺留分権利者の負担に帰する(同法1047条1項・4項)。負担の順序は「遺贈が先、贈与は新しいものから」、無資力のリスクは「請求する側(遺留分権利者)がかぶる」と押さえる。
問題:
表示に関する登記を書面を提出する方法により申請する場合(申請情報の全部を記録した磁気ディスクを提出する場合を除く。)における申請書及び委任状への記名押印並びに印鑑に関する証明書(以下「印鑑証明書」という。)に関する次の記述のうち、不動産登記令及び不動産登記規則の規定に照らし誤っているものはいくつあるか。なお、申請人はいずれも自然人であり、申請書及び委任状について公証人又はこれに準ずる者の認証は受けていないものとする。
ア. 区分建物でない建物を新築したAが自ら当該建物の表題登記を申請する場合には、Aは、申請書に署名すれば、申請書に記名押印することを要しない。
イ. 建物の所有権の登記名義人Aが自ら当該建物の滅失の登記を申請する場合には、Aは、所有権の登記名義人であるから、申請書に記名押印し、かつ、印鑑証明書を添付しなければならない。
ウ. 土地の所有権の登記名義人Aが、土地家屋調査士に委任して当該土地の地目に関する変更の登記を申請する場合において、Aが委任状に署名したときは、Aは、委任状に記名押印することを要しない。
エ. 所有権の登記名義人をいずれもAとする甲建物と乙建物が増築工事により合体して一個の建物となった場合において、Aが土地家屋調査士に委任して合体による登記等を申請するときは、Aは、委任状に記名押印し、かつ、委任状に印鑑証明書を添付しなければならない。
オ. 土地家屋調査士が委任による代理人として申請書に記名押印して申請する場合には、当該土地家屋調査士の印鑑証明書を申請書に添付しなければならない。
答え:
誤っているものは、イ・オの2つである。
解説:
本問は、申請書への記名押印と印鑑証明書の添付(不動産登記令16条1項・2項、不動産登記規則47条・48条)及び委任状への記名押印と印鑑証明書の添付(令18条1項・2項、同規則49条)を問うものであり、誤っているのはイ・オの2つである。
ア 正しい。不動産登記令16条1項は、「申請人又はその代表者若しくは代理人は、法務省令で定める場合を除き、申請情報を記載した書面に記名押印しなければならない。」と定めている。これを受けた不動産登記規則47条は、3号で「申請人が次に掲げる者のいずれにも該当せず、かつ、当該申請人又はその代表者若しくは代理人が申請書に署名した場合(前号に掲げる場合を除く。)」を掲げ、イで、所有権の登記名義人であって、(1)から(6)までに掲げる登記((6)は「合筆の登記、合体による登記等又は建物の合併の登記」)を申請するものを、ロからニまでで、登記識別情報を提供することなく一定の登記を申請する登記名義人を、ホで「法第二十一条本文の規定により登記識別情報の通知を受けることとなる申請人」を掲げている。不動産登記法21条本文は、登記識別情報を通知するのは「その登記をすることによって申請人自らが登記名義人となる場合」であると定め、同法2条11号は、登記名義人を「登記記録の権利部に、次条各号に掲げる権利について権利者として記録されている者」と定義している。建物の表題登記をしても、Aは、表題部所有者(同条10号)として表題部に記録されるにとどまり、登記名義人とはならない。Aは同規則47条3号イからホまでのいずれにも該当しないから、申請書に署名すれば記名押印を要しない。本肢は正しい。
イ 誤り。アで述べたとおり、不動産登記規則47条3号イが掲げるのは、所有権の登記名義人であって同号イ(1)から(6)までの登記を申請するものであり、(1)から(5)までは権利に関する登記等、(6)は「合筆の登記、合体による登記等又は建物の合併の登記」であって、建物の滅失の登記は掲げられていない。建物の滅失の登記によってAが登記名義人となることもないから(同号ホ)、Aは同号イからホまでのいずれにも該当せず、申請書に署名すれば記名押印を要しない。また、同規則48条は、令16条2項の法務省令で定める場合(印鑑証明書の添付を要しない場合)として、5号で「申請人が前条第三号イからニまでに掲げる者のいずれにも該当しない場合(前号に掲げる場合を除く。)」を掲げているから、Aが申請書に記名押印した場合であっても、印鑑証明書の添付を要しない。本肢は誤りである。
ウ 正しい。不動産登記令18条1項前段は、「委任による代理人によって登記を申請する場合には、申請人又はその代表者は、法務省令で定める場合を除き、当該代理人の権限を証する情報を記載した書面に記名押印しなければならない。」と定め、不動産登記規則49条1項は、その法務省令で定める場合として、2号で「申請人が第四十七条第三号イからホまでに掲げる者のいずれにも該当せず、かつ、当該申請人又はその代表者若しくは代理人が委任状に署名した場合」を掲げている。地目に関する変更の登記は同規則47条3号イ(1)から(6)までのいずれにも当たらず、これによってAが登記名義人となることもないから、Aは同号イからホまでのいずれにも該当しない。Aが委任状に署名したときは、委任状に記名押印することを要しないから、本肢は正しい。
エ 正しい。所有権の登記名義人Aが申請する合体による登記等は、不動産登記規則47条3号イ(6)に掲げられているから、同規則49条1項2号は適用されず、問題文のとおり公証人等の認証を受けていないので同項1号も適用されない。したがって、Aは、不動産登記令18条1項により委任状に記名押印しなければならない。次に、令18条2項は、「前項の場合において、代理人(復代理人を含む。)の権限を証する情報を記載した書面には、法務省令で定める場合を除き、同項の規定により記名押印した者(委任による代理人を除く。)の印鑑に関する証明書を添付しなければならない。」と定め、同規則49条2項は、その法務省令で定める場合として、1号(法人の代表者等が記名押印した者である場合において会社法人等番号を申請情報の内容としたとき)、2号(公証人等の認証を受けた場合)、3号(裁判所によって選任された者の印鑑に関する証明書が添付されている場合)、4号(「前条第一項第四号及び第五号に掲げる場合」)及び5号(復代理人によって申請する場合における代理人が記名押印した場合)を掲げている。同規則48条4号は「申請人が前条第三号ホに掲げる者に該当する場合(同号イ(6)に掲げる者に該当する場合を除く。)」を、5号は申請人が同規則47条3号イからニまでに掲げる者のいずれにも該当しない場合を掲げているところ、Aは同号イ(6)に掲げる者に該当するから、同規則48条4号・5号のいずれにも当たらない。その他の各号にも当たらないから、Aは委任状に印鑑証明書を添付しなければならず、本肢は正しい。
オ 誤り。不動産登記令16条2項は、「前項の場合において、申請情報を記載した書面には、法務省令で定める場合を除き、同項の規定により記名押印した者(委任による代理人を除く。)の印鑑に関する証明書(中略)を添付しなければならない。」と定めている。印鑑証明書を添付すべき者からは委任による代理人が除かれているから、委任による代理人である土地家屋調査士の印鑑証明書の添付を要するとする本肢は誤りである。なお、不動産登記規則47条1号は、「委任による代理人が申請書に署名した場合」を、申請書に記名押印を要しない場合として掲げている。
ポイント:書面申請では、申請人等は申請書に記名押印し、記名押印した者(委任による代理人を除く)の印鑑証明書を添付するのが原則である(不動産登記令16条1項・2項)。もっとも、申請人が、合筆の登記、合体による登記等又は建物の合併の登記等を申請する所有権の登記名義人や登記識別情報の通知を受けることとなる者等(不動産登記規則47条3号イからホまで)に該当しなければ、署名により記名押印に代えることができ(同号)、記名押印したとしても印鑑証明書を要しない(同規則48条5号)。委任状についても同様である(令18条、同規則49条1項2号・2項4号)。合筆の登記、合体による登記等又は建物の合併の登記を申請する所有権の登記名義人は、登記識別情報の通知を受けることとなる場合であっても、同規則48条4号による印鑑証明書の添付の免除を受けない(同号括弧書)。委任による代理人の印鑑証明書は要しない(令16条2項括弧書)。「所有権の登記名義人がする合筆・合体・合併は、申請書にも委任状にも記名押印と印鑑証明書が要る」と押さえる。
問題:
地図及び建物所在図に関する次の記述のうち、不動産登記規則の規定に照らし正しいものはいくつあるか。
ア. 地図は、地番区域又はその適宜の一部ごとに作成するものとされているが、地番区域の全部又は一部とこれに接続する区域を一体として地図を作成することを相当とする特段の事由がある場合には、当該接続する区域を含めて地図を作成することができる。
イ. 地図には、各土地の区画及び地番のほか、基本三角点等の位置及び精度区分も記録するものとされている。
ウ. 村落・農耕地域(主に田、畑又は塩田が占める地域及びその周辺の地域をいう。)において地図を作成するための一筆地測量及び地積測定における誤差の限度は、市街地地域と同じく、国土調査法施行令別表第四に掲げる精度区分の甲二までとされている。
エ. 電磁的記録に記録する地図には、地番区域の名称、地図の番号、縮尺等の地図の記録事項のほか、各筆界点の座標値を記録するものとされている。
オ. 建物所在図には、地図と同様に、その全てについて作成年月日を記録するものとされている。
答え:
正しいものは、ア・イ・エの3つである。
解説:
本問は、地図の作成単位及び誤差の限度(不動産登記規則10条1項・4項)、地図の記録事項(同規則13条)並びに建物所在図の記録事項(同規則14条)を問うものであり、正しいのはア・イ・エの3つである。
ア 正しい。不動産登記規則10条1項は、「地図は、地番区域又はその適宜の一部ごとに、正確な測量及び調査の成果に基づき作成するものとする。ただし、地番区域の全部又は一部とこれに接続する区域を一体として地図を作成することを相当とする特段の事由がある場合には、当該接続する区域を含めて地図を作成することができる。」と定めている。本肢は、同項のとおりである。
イ 正しい。不動産登記規則13条1項は、地図に記録する事項として、1号で地番区域の名称、2号で地図の番号、3号で縮尺、4号で平面直角座標系の番号又は記号、5号で図郭線及びその座標値、6号で各土地の区画及び地番、7号で基本三角点等の位置、8号で精度区分、9号で隣接図郭との関係、10号で作成年月日を掲げている。本肢は、同項6号から8号までのとおりである。
ウ 誤り。不動産登記規則10条4項は、「地図を作成するための一筆地測量及び地積測定における誤差の限度は、次によるものとする。」と定め、1号で「市街地地域については、国土調査法施行令(昭和二十七年政令第五十九号)別表第四に掲げる精度区分(以下「精度区分」という。)甲二まで」、2号で「村落・農耕地域については、精度区分乙一まで」、3号で「山林・原野地域については、精度区分乙三まで」としている。村落・農耕地域の誤差の限度は乙一までであり、甲二までとされているのは市街地地域であるから、本肢は誤りである。
エ 正しい。イで述べたとおり、不動産登記規則13条1項は地図に記録する事項として1号から10号までを掲げ、同条2項は、「電磁的記録に記録する地図にあっては、前項各号に掲げるもののほか、各筆界点の座標値を記録するものとする。」と定めている。本肢は、同条のとおりである。
オ 誤り。不動産登記規則14条は、建物所在図に記録する事項として、1号で「地番区域の名称」、2号で「建物所在図の番号」、3号で「縮尺」、4号で「各建物の位置及び家屋番号(区分建物にあっては、当該区分建物が属する一棟の建物の位置)」、5号で「第十一条第二項の建物所在図にあっては、その作成年月日」を掲げている。同条が作成年月日を記録するものとしているのは、同規則11条2項の建物所在図(新住宅市街地開発法等による不動産登記に関する政令6条2項の建物の全部についての所在図その他これに準ずる図面で、建物所在図として備え付けられたもの)に限られるから、本肢は誤りである。イで述べたとおり、地図については、同規則13条1項10号により作成年月日を記録する。
ポイント:地図は地番区域又はその適宜の一部ごとに作成し、特段の事由があるときは接続する区域を含めて作成することができる(不動産登記規則10条1項)。地図を作成するための一筆地測量及び地積測定の誤差の限度は、市街地地域が甲二まで、村落・農耕地域が乙一まで、山林・原野地域が乙三までである(同条4項)。地図には、各土地の区画及び地番、基本三角点等の位置、精度区分、作成年月日等の10項目を記録し、電磁的記録に記録する地図には各筆界点の座標値も記録する(同規則13条)。建物所在図には、区分建物については一棟の建物の位置を記録し、作成年月日は同規則11条2項の建物所在図に限って記録する(同規則14条4号・5号)。「作成年月日は、地図には必ず、建物所在図は11条2項のものだけ」と押さえる。
問題:
共用部分及び敷地利用権に関する次の記述のうち、建物の区分所有等に関する法律(以下「区分所有法」という。)の規定に照らし誤っているものはいくつあるか。
ア. 数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室その他構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき建物の部分は、区分所有権の目的とならない。
イ. 敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合において、区分所有者が数個の専有部分を所有するときは、規約でこれと異なる割合が定められていない限り、各専有部分に係る敷地利用権の割合は専有部分の床面積の割合によるが、この床面積は、壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積による。
ウ. 区分建物から成る一棟の建物を新築したAが、その建物の専有部分の全部を所有し、かつ、その建物の敷地の所有権を単独で有している場合には、敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利ではないから、Aは、規約に別段の定めがあるかどうかにかかわらず、専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができる。
エ. 敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合において、規約に別段の定めがないにもかかわらず、区分所有者がその有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分したときは、その処分の無効を善意の相手方に主張することができないが、不動産登記法の定めるところにより分離して処分することができない専有部分及び敷地利用権であることを登記した後にその処分がされたときは、この限りでない。
オ. 最初に建物の専有部分の全部を所有する者は、公正証書により、区分所有法5条1項の規約(規約による建物の敷地)を設定することができるが、専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができる旨の規約を設定することはできない。
答え:
誤っているものは、イ・ウ・オの3つである。
解説:
本問は、構造上の共用部分(区分所有法4条1項)、敷地利用権の割合と床面積の算定(同法22条2項・14条)、専有部分の全部を所有する者の敷地利用権(同法22条3項)、分離処分の無効の主張の制限(同法23条)及び公正証書による規約の設定(同法32条)を問うものであり、誤っているのはイ・ウ・オの3つである。
ア 正しい。区分所有法4条1項は、「数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室その他構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき建物の部分は、区分所有権の目的とならないものとする。」と定めている。本肢は、同項のとおりである。
イ 誤り。区分所有法22条2項は、「前項本文の場合において、区分所有者が数個の専有部分を所有するときは、各専有部分に係る敷地利用権の割合は、第十四条第一項から第三項までに定める割合による。ただし、規約でこの割合と異なる割合が定められているときは、その割合による。」と定めている。そして、同法14条1項は、「各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合による。」と定め、同条3項は、「前二項の床面積は、壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積による。」と定めている。敷地利用権の割合の基準となる専有部分の床面積は、壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積によるのであり、中心線で囲まれた部分の水平投影面積によるのではないから、本肢は誤りである。
ウ 誤り。区分所有法22条3項は、「前二項の規定は、建物の専有部分の全部を所有する者の敷地利用権が単独で有する所有権その他の権利である場合に準用する。」と定めている。専有部分の全部を所有するAの敷地利用権が単独で有する所有権である場合にも、同条1項が準用され、規約に別段の定めがない限り、Aは、専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができない。規約に別段の定めがあるかどうかにかかわらず分離して処分することができるとする本肢は誤りである。
エ 正しい。区分所有法22条1項は、「敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合には、区分所有者は、その有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができない。ただし、規約に別段の定めがあるときは、この限りでない。」と定め、同法23条は、「前条第一項本文(同条第三項において準用する場合を含む。)の規定に違反する専有部分又は敷地利用権の処分については、その無効を善意の相手方に主張することができない。ただし、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)の定めるところにより分離して処分することができない専有部分及び敷地利用権であることを登記した後に、その処分がされたときは、この限りでない。」と定めている。本肢は、これらの規定のとおりである。
オ 誤り。区分所有法32条は、「最初に建物の専有部分の全部を所有する者は、公正証書により、第四条第二項、第五条第一項並びに第二十二条第一項ただし書及び第二項ただし書(これらの規定を同条第三項において準用する場合を含む。)の規約を設定することができる。」と定めている。公正証書により設定することができる規約には、同法5条1項の規約(規約による建物の敷地)のほか、同法22条1項ただし書の規約(専有部分と敷地利用権とを分離して処分することができる旨の規約)も含まれるから、本肢は誤りである。
ポイント:数個の専有部分に通ずる廊下や階段室など構造上の共用部分は、区分所有権の目的とならない(区分所有法4条1項)。敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利であるときは、規約に別段の定めがない限り、専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができず(同法22条1項)、専有部分の全部を所有する者の敷地利用権が単独で有する所有権その他の権利である場合も同様である(同条3項)。区分所有者が数個の専有部分を所有するときの各専有部分に係る敷地利用権の割合は、規約で異なる割合が定められていない限り専有部分の床面積の割合により、その床面積は壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積による(同条2項、同法14条1項・3項)。分離処分の禁止に違反する処分の無効は善意の相手方に主張することができないが、分離して処分することができない旨を登記した後の処分は別である(同法23条)。最初に専有部分の全部を所有する者は、公正証書により、規約による建物の敷地の規約や分離処分を可能とする規約等を設定することができる(同法32条)。「分譲前の単独所有でも分離処分は禁止、割合の床面積は内側線」と押さえる。
問題:
甲土地(所有権の登記名義人A)と乙土地(表題登記がない土地であり、Dが所有している。)とは相互に隣接しており、甲土地と乙土地との筆界上の点を含む他の筆界で甲土地と接する土地として、丙土地(所有権の登記名義人E)がある。Aは既に死亡しており、その相続人はB及びCであるが、甲土地について相続による所有権の移転の登記はされていない。また、甲土地には、Fを抵当権者とする抵当権の設定の登記がされている。この事例において、甲土地と乙土地との筆界についての筆界特定に関する次の記述のうち、不動産登記法の規定に照らし正しいものはいくつあるか。
ア. Bは、甲土地について相続による所有権の移転の登記を受けていなくても、筆界特定の申請をすることができる。
イ. 筆界特定の申請においては、対象土地に係る土地の所在する市、区、郡、町、村及び字並びに地番を明らかにしなければならないが、乙土地については、地番を明らかにすることを要しない。
ウ. Fは、甲土地の抵当権者であるから、筆界特定の申請があったときは、関係人として、筆界特定登記官からその旨の通知を受ける。
エ. 筆界特定登記官が、かつてEの代理人であった者であるときは、当該筆界特定登記官は、甲土地と乙土地との筆界について筆界特定を行うことができない。
オ. Bが筆界特定の申請をした場合において、Dは、乙土地について表題登記がされていないから、関係人として筆界特定の申請があった旨の通知を受けることはない。
答え:
正しいものは、ア・イ・エの3つである。
解説:
本問は、所有権登記名義人等・関係土地の意義(不動産登記法123条4号・5号)、筆界特定の申請人と申請の際に明らかにすべき事項(同法131条1項・3項3号)、筆界特定登記官の除斥(同法126条)及び関係人への通知(同法133条1項)を、事例に当てはめて問うものであり、正しいのはア・イ・エの3つである。
ア 正しい。不動産登記法131条1項は、「土地の所有権登記名義人等は、筆界特定登記官に対し、当該土地とこれに隣接する他の土地との筆界について、筆界特定の申請をすることができる。」と定め、同法123条5号は、所有権登記名義人等を「所有権の登記がある一筆の土地にあっては所有権の登記名義人、所有権の登記がない一筆の土地にあっては表題部所有者、表題登記がない土地にあっては所有者をいい、所有権の登記名義人又は表題部所有者の相続人その他の一般承継人を含む。」と定義している。Bは甲土地の所有権の登記名義人Aの相続人であるから、相続による所有権の移転の登記を受けていなくても所有権登記名義人等に当たり、筆界特定の申請をすることができる。本肢は正しい。なお、Bのように所有権の登記名義人の相続人が申請するときは、その旨並びに所有権の登記名義人の氏名及び住所を筆界特定申請情報の内容とし(不動産登記規則207条2項3号)、相続があったことを証する市町村長、登記官その他の公務員が職務上作成した情報を筆界特定添付情報として提供する(同規則209条1項3号)。
イ 正しい。不動産登記法131条3項は、筆界特定の申請において明らかにしなければならない事項として、3号で「対象土地に係る第三十四条第一項第一号及び第二号に掲げる事項(表題登記がない土地にあっては、同項第一号に掲げる事項)」を掲げている。同法34条1項は、土地の表示に関する登記の登記事項として、1号で「土地の所在する市、区、郡、町、村及び字」を、2号で「地番」を掲げている。表題登記がない乙土地については、同項1号の事項を明らかにすれば足り、地番を明らかにすることを要しないから、本肢は正しい。
ウ 誤り。不動産登記法133条1項は、「筆界特定の申請があったときは、筆界特定登記官は、遅滞なく、法務省令で定めるところにより、その旨を公告し、かつ、その旨を次に掲げる者(以下「関係人」という。)に通知しなければならない。」と定め、1号で「対象土地の所有権登記名義人等であって筆界特定の申請人以外のもの」を、2号で「関係土地の所有権登記名義人等」を掲げている。抵当権者Fは、甲土地の所有権登記名義人等(同法123条5号)に当たらないから、関係人に当たらず、同項による通知の対象ではない。本肢は誤りである。
エ 正しい。不動産登記法123条4号は、関係土地を「対象土地以外の土地(表題登記がない土地を含む。)であって、筆界特定の対象となる筆界上の点を含む他の筆界で対象土地の一方又は双方と接するもの」と定義しており、丙土地は関係土地に当たる。そして、同法126条は、筆界特定登記官が同条各号のいずれかに該当する者であるときは、当該筆界特定登記官は、対象土地について筆界特定を行うことができないと定め、1号で「対象土地又は関係土地のうちいずれかの土地の所有権の登記名義人(仮登記の登記名義人を含む。以下この号において同じ。)、表題部所有者若しくは所有者又は所有権以外の権利の登記名義人若しくは当該権利を有する者」を、3号で「第一号に掲げる者の代理人若しくは代表者(代理人又は代表者であった者を含む。)又はその配偶者若しくは四親等内の親族」を掲げている。Eは関係土地である丙土地の所有権の登記名義人であるから同条1号に掲げる者に当たり、その代理人であった者は同条3号に該当する。本肢は正しい。
オ 誤り。ウで引用した不動産登記法133条1項1号は、「対象土地の所有権登記名義人等であって筆界特定の申請人以外のもの」を関係人としている。アで引用した同法123条5号により、表題登記がない土地にあってはその所有者が所有権登記名義人等に当たるから、乙土地の所有者Dは、対象土地の所有権登記名義人等であって筆界特定の申請人以外のものとして関係人に当たり、筆界特定の申請があった旨の通知を受ける。本肢は誤りである。
ポイント:所有権登記名義人等は、所有権の登記がある土地では所有権の登記名義人、所有権の登記がない土地では表題部所有者、表題登記がない土地では所有者をいい、所有権の登記名義人又は表題部所有者の相続人その他の一般承継人を含む(不動産登記法123条5号)。所有権登記名義人等は筆界特定の申請をすることができ(同法131条1項)、申請では対象土地の所在と地番を明らかにするが、表題登記がない土地は所在だけで足りる(同条3項3号、同法34条1項1号・2号)。関係人として通知を受けるのは、申請人以外の対象土地の所有権登記名義人等と関係土地の所有権登記名義人等であり(同法133条1項)、抵当権者は含まれない。筆界特定登記官は、対象土地又は関係土地の所有権の登記名義人、所有権以外の権利の登記名義人等や、その代理人であった者等に当たるときは、筆界特定を行うことができない(同法126条)。「申請も通知も所有権登記名義人等が基準、除斥は所有権以外の権利者や代理人であった者まで広がる」と押さえる。
問題:
土地家屋調査士(以下「調査士」という。)の業務等に関する次の記述のうち、土地家屋調査士法の規定に照らし正しいものはいくつあるか。
ア. 調査士は、他人の依頼を受けて、筆界特定の手続について法務局又は地方法務局に提供する電磁的記録の作成を行うことを業とする。
イ. 法務局又は地方法務局において不動産の表示に関する登記の事務に従事した期間が通算して10年以上になる者であって、法務大臣が必要な知識及び技能を有すると認めたことにより調査士となる資格を取得した者であっても、民間紛争解決手続代理関係業務を行うには、法務大臣が指定する研修の課程の修了、法務大臣による民間紛争解決手続代理関係業務を行うのに必要な能力を有する旨の認定及び土地家屋調査士会の会員であることの各要件を満たさなければならない。
ウ. 調査士は、民間紛争解決手続代理関係業務を行うのに必要な能力を有する旨の法務大臣の認定を受けようとするときであっても、手数料を納めることを要しない。
エ. 民間紛争解決手続代理関係業務を行うことができる調査士は、土地の筆界が現地において明らかでないことを原因とする民事に関する紛争に係る民間紛争解決手続であれば、法務大臣が指定する団体以外の民間事業者が行うものについても、弁護士が同一の依頼者から受任している事件に限り、代理することができる。
オ. 民間紛争解決手続代理関係業務を行うことができる調査士が行う土地家屋調査士法3条1項8号の相談の業務は、弁護士が同一の依頼者から受任している事件に限り、行うことができる。
答え:
正しいものは、ア・イの2つである。
解説:
本問は、調査士の業務(土地家屋調査士法3条1項)、民間紛争解決手続代理関係業務の要件及び認定の手数料(同条2項・5項)並びに調査士となる資格(同法4条2号)を問うものであり、正しいのはア・イの2つである。
ア 正しい。土地家屋調査士法3条1項は、柱書で「調査士は、他人の依頼を受けて、次に掲げる事務を行うことを業とする。」と定め、5号で「筆界特定の手続について法務局又は地方法務局に提出し、又は提供する書類又は電磁的記録の作成」を掲げている。本肢は、同項5号のとおりである。
イ 正しい。土地家屋調査士法4条2号は、調査士となる資格を有する者として、「法務局又は地方法務局において不動産の表示に関する登記の事務に従事した期間が通算して十年以上になる者であつて、法務大臣が前条第一項第一号から第六号までに規定する業務を行うのに必要な知識及び技能を有すると認めたもの」を掲げている。同号において法務大臣が認めるのは、同法3条1項1号から6号までに規定する業務を行うのに必要な知識及び技能であり、同項7号・8号の業務に関するものではない。そして、同条2項前段は、「前項第七号及び第八号に規定する業務(以下「民間紛争解決手続代理関係業務」という。)は、次のいずれにも該当する調査士に限り、行うことができる。」と定め、1号で「民間紛争解決手続代理関係業務について法務省令で定める法人が実施する研修であつて法務大臣が指定するものの課程を修了した者であること。」を、2号で「前号に規定する者の申請に基づき法務大臣が民間紛争解決手続代理関係業務を行うのに必要な能力を有すると認定した者であること。」を、3号で「土地家屋調査士会(以下「調査士会」という。)の会員であること。」を掲げている。同項は、調査士となる資格の取得の経緯によって要件を区別していないから、同法4条2号により資格を取得した者も、同法3条2項各号のいずれにも該当しなければ民間紛争解決手続代理関係業務を行うことができない。本肢は正しい。
ウ 誤り。土地家屋調査士法3条5項は、「調査士は、第二項第二号の規定による認定を受けようとするときは、政令で定めるところにより、手数料を納めなければならない。」と定めている。手数料を納めることを要しないとする本肢は誤りである。
エ 誤り。土地家屋調査士法3条1項7号は、「土地の筆界が現地において明らかでないことを原因とする民事に関する紛争に係る民間紛争解決手続(中略)であつて当該紛争の解決の業務を公正かつ適確に行うことができると認められる団体として法務大臣が指定するものが行うものについての代理」を掲げている。代理の対象となるのは、法務大臣が指定する団体が行う民間紛争解決手続に限られるから、法務大臣が指定する団体以外の民間事業者が行うものについても代理することができるとする本肢は誤りである。
オ 誤り。土地家屋調査士法3条2項後段は、「この場合において、同項第七号に規定する業務は、弁護士が同一の依頼者から受任している事件に限り、行うことができる。」と定めている。弁護士が同一の依頼者から受任している事件に限られるのは、同条1項7号の代理の業務であり、同項8号の「前号に掲げる事務についての相談」の業務には、この限定は付されていない。本肢は誤りである。なお、同号の相談の業務も民間紛争解決手続代理関係業務に含まれるから、これを行うには、同条2項各号のいずれにも該当することを要する。
ポイント:調査士の業務は、表示に関する登記に必要な調査・測量、表示に関する登記の申請手続・審査請求の手続の代理、これらの手続の書類・電磁的記録の作成、筆界特定の手続の代理とその書類・電磁的記録の作成、これらの相談、民間紛争解決手続の代理とその相談である(土地家屋調査士法3条1項)。7号の代理と8号の相談(民間紛争解決手続代理関係業務)は、法務大臣が指定する研修の修了、法務大臣の認定、調査士会の会員であることのいずれにも該当する調査士に限り行うことができ、7号の代理は、さらに弁護士が同一の依頼者から受任している事件に限られる(同条2項)。7号の代理の対象は、法務大臣が指定する団体が行う民間紛争解決手続であり(同条1項7号)、認定を受けようとする調査士は手数料を納める(同条5項)。登記事務の従事者が調査士となる資格を得る場合に法務大臣が認めるのは、1号から6号までの業務を行うのに必要な知識及び技能である(同法4条2号)。「弁護士の共同受任が要るのは7号の代理だけで、8号の相談には要らない」と押さえる。
出題分野の振り分け
| 問 | 分野 | 主な論点 | 主な根拠条文 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 民法(総則・代理) | 本人のためにすることを示さない意思表示(相手方が知ることができた場合)、権限の定めのない代理人の権限、任意代理人・法定代理人による復代理人の選任と責任、復代理人の権限 | 民法99条1項、100条、103条、104条、105条、106条 |
| 第2問 | 民法(物権・抵当権と賃貸借) | 抵当権者の同意の登記がある賃貸借の対抗力とすべての先順位抵当権者の同意・同意に必要な承諾、抵当建物使用者の引渡しの猶予(6箇月・管理人がした賃貸借・1箇月分以上の対価の催告)、抵当権の消滅時効 | 民法387条、395条、396条 |
| 第3問 | 民法(相続・遺留分) | 条件付きの権利等の鑑定人による評価、算入される贈与の範囲(損害を加えることを知ってした贈与・相続人に対する贈与)、不相当な対価をもってした有償行為、受遺者・受贈者の負担の順序と無資力による損失の負担 | 民法1043条、1044条1項・3項、1045条、1047条1項・4項 |
| 第4問 | 不動産登記令・不動産登記規則(書面申請の記名押印と印鑑証明書) | 申請書・委任状への記名押印に代わる署名、印鑑証明書の添付を要しない場合、合筆・合体・合併を申請する所有権の登記名義人の扱い、委任による代理人の印鑑証明書 | 不動産登記法2条10号・11号・21条、不動産登記令16条1項・2項・18条1項・2項、不動産登記規則47条1号・3号・48条4号・5号・49条1項2号・2項 |
| 第5問 | 不動産登記規則(地図・建物所在図) | 地図の作成単位、一筆地測量及び地積測定の誤差の限度、地図の記録事項(基本三角点等の位置・精度区分)と電磁的記録の地図の筆界点の座標値、建物所在図の記録事項と作成年月日 | 不動産登記規則10条1項・4項、11条2項、13条、14条 |
| 第6問 | 区分所有法(共用部分・敷地利用権) | 構造上の共用部分、敷地利用権の割合と床面積の算定(内側線)、専有部分の全部を所有する者の敷地利用権と分離処分の禁止、分離処分の無効の主張の制限、公正証書による規約の設定 | 区分所有法4条1項・14条1項・3項・22条1項〜3項・23条・32条 |
| 第7問 | 不動産登記法(筆界特定・事例) | 相続人による筆界特定の申請、表題登記がない土地についての申請事項(地番を要しないこと)、関係人の範囲(抵当権者・表題登記がない土地の所有者)、関係土地の所有権の登記名義人の代理人であった者と筆界特定登記官の除斥 | 不動産登記法34条1項1号・2号・123条4号・5号・126条1号・3号・131条1項・3項3号・133条1項、不動産登記規則207条2項3号・209条1項3号 |
| 第8問 | 土地家屋調査士法(業務範囲) | 筆界特定の手続に係る電磁的記録の作成、登記事務従事者として資格を取得した者と民間紛争解決手続代理関係業務の要件、認定の手数料、代理の対象となる民間紛争解決手続、弁護士の共同受任が要件となる業務の範囲 | 土地家屋調査士法3条1項5号・7号・8号・2項・5項、4条2号 |