この記事の要点
- 特別養子縁組は家庭裁判所の審判で成立し、戸籍には「縁組日」ではなく裁判の確定日が記載される。法令の記載例では、養親の戸籍の養子の欄に【民法817条の2による裁判確定日】という項目で記載される
- 戸籍は「実方の戸籍 → 養子ひとりの新戸籍 → 養親の戸籍」とつながる。出生までさかのぼるときは、間にはさまる新戸籍を抜かさない
- 実親の相続では、特別養子縁組の記載がある子は原則として相続人にならない(民法817条の9)。ただし、夫婦の一方が配偶者の嫡出子(連れ子)を特別養子とした場合の例外と、離縁による親族関係の回復に注意する
結論から言うと、特別養子縁組は、ひとつの戸籍だけを見ても全体がつかめません。養親の戸籍、養子について一度だけ作られる新しい戸籍、縁組前の実方(じっかた=生みの親の側)の戸籍の3か所に、それぞれ違う形で記載が残るためです。ここでは、相続手続きのために集めた戸籍の中でこの記載に行き当たったときの読み方に絞って、法令に定められた記載例に沿って整理します。
縁組は「裁判の確定」を経て戸籍に載る
特別養子縁組は、養親となる人の請求により、家庭裁判所が成立させる縁組です(民法817条の2第1項。手続きは家事事件手続法164条の「特別養子縁組の成立の審判事件」)。当事者の届出によって成立する普通養子縁組とは違い、戸籍への届出は裁判が確定した後に、確定した日から10日以内に裁判の謄本を添えて行うものとされています(戸籍法68条の2による63条1項の準用)。そのため戸籍には、普通養子縁組のような【縁組日】の項目ではなく、裁判の確定日が記載されます。
3つの戸籍に何が書かれるか
戸籍の全部事項証明書などの事項欄の書き方は、戸籍法施行規則の付録第25号の記載例に従うこととされています(同規則73条)。そこに示された「夫婦が戸籍を異にする者を特別養子とした」例では、記載は次のようになっています。
- 養親の戸籍:養子の身分事項欄に「民法817条の2」の見出しで、【民法817条の2による裁判確定日】【届出日】【届出人】【従前戸籍】が記載されます
- 養子の新戸籍:戸籍法20条の3は、特別養子縁組の届出があったときは「まず養子について新戸籍を編製する」と定めています(養子がすでに養親の戸籍にいる場合を除く)。記載例では、この新戸籍は編製日と消除日が同じ日で、養子の欄に【特別養子縁組の裁判確定日】【養父氏名】【養母氏名】のほか、【従前戸籍】(実方の戸籍)と【入籍戸籍】(養親の戸籍)が記載されています
- 実方の戸籍:縁組前の戸籍の養子の欄に、【特別養子縁組の裁判確定日】【新本籍】【縁組後の氏】などが記載され、その戸籍から除かれます。記載例では、ここには養親の氏名の項目がありません
読むときの要点は、養親の戸籍の【従前戸籍】に書かれているのが実方の戸籍ではなく、間にはさまる養子の新戸籍だという点です。特別養子だった人が亡くなり、その人の戸籍を出生までさかのぼるときは、養親の戸籍 → 新戸籍(すでに除籍) → 実方の戸籍とたどります。戸籍が別の帳簿へ切り替わる仕組みは、養子縁組で戸籍が動く仕組みと同じ考え方です。なお、記載例はコンピュータ化された戸籍の見本なので、紙の時代の戸籍(改製原戸籍など)では見た目が異なることがあります。
相続人を確定するときの読み方
亡くなった人が養親であれば、養子は縁組の日から養親の嫡出子の身分を取得するので(民法809条)、子として相続人になります(民法887条1項)。ただし、養親が亡くなるより前に離縁が成立していた場合は、養子と養親及びその血族との親族関係は離縁によって終了しているので(民法729条)、養親の相続人にはなりません。
亡くなった人が実親の場合は逆です。養子と実方の父母及びその血族との親族関係は、特別養子縁組によって終了します(民法817条の9本文)。実親の戸籍を出生から死亡まで集めると、子の欄に特別養子縁組の記載が出てきますが、その子は原則として実親の相続人として数えません。実方の血族との関係も終了するので、実方のきょうだいなどの相続でも同じです。普通養子との違いは養子縁組と相続で整理しています。
ただし、例外が2つあります。1つは、夫婦の一方が他方の嫡出子(いわゆる連れ子。他方が普通養子縁組で迎えた養子は含みません)を特別養子とした場合で、その他方(連れ子の親である配偶者)とその血族との親族関係は終了しません(民法817条の9ただし書・817条の3第2項ただし書)。この場合も、もう一方の実親(たとえば、連れ子の親と離婚した元配偶者)とその血族との親族関係は、原則どおり終了します。
もう1つは離縁です。特別養子縁組は家庭裁判所の裁判によってのみ離縁でき(民法817条の10)、離縁の日から実方との親族関係が回復します(民法817条の11)。実親の死亡が離縁の後であれば、相続人になりうることになります。反対に、離縁より前に亡くなった実親については、関係が生じるのは「離縁の日から」とされているため、離縁によってさかのぼって相続人になるわけではありません。特別養子縁組の記載を見つけたら、それだけで一律に除外せず、縁組の当事者と、その後の戸籍に離縁の記載がないかを確かめることが大切です。
執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です。
まとめ
特別養子縁組は、養親の戸籍・養子の新戸籍・実方の戸籍の3か所に記載が残り、養親の戸籍には裁判の確定日が【民法817条の2による裁判確定日】として記載されます。実親の相続では原則として相続人になりませんが、連れ子を特別養子とした場合や離縁があった場合の例外があります。集めた戸籍の読み方や相続人の範囲に迷ったときは、お近くの司法書士にご相談ください。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年10月・いずれも一次情報です)。
- 民法 第729条・第809条・第817条の2・第817条の3・第817条の9・第817条の10・第817条の11・第887条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- 戸籍法 第20条の3・第63条・第68条の2(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000224
- 戸籍法施行規則 第73条・付録第25号記載例(記載例31〜34)(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40000010094
- 家事事件手続法 第164条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/423AC0000000052