問題:
錯誤に関する次の記述のうち、民法の規定に照らし正しいものはいくつあるか。
ア. 意思表示に対応する意思を欠く錯誤に基づく意思表示は、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、無効である。
イ. 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤に基づく意思表示は、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであれば、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたか否かにかかわらず、取り消すことができる。
ウ. 錯誤によって取り消すことができる行為は、錯誤による意思表示をした者のほか、その代理人又は承継人も、取り消すことができる。
エ. 錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合であっても、相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたときは、表意者は、錯誤を理由としてその意思表示を取り消すことができる。
オ. 代理人が相手方に対してした意思表示の効力が錯誤によって影響を受けるべき場合には、その錯誤の有無は、本人について決する。
答え:
正しいものは、ウ・エの2つである。
解説:
本問は、錯誤による意思表示の取消し(民法95条1項)、基礎事情の錯誤における表示の要件(同条2項)、表意者に重大な過失がある場合とその例外(同条3項)、錯誤による取消しの取消権者(同法120条2項)及び代理行為の瑕疵(同法101条1項)を問うものであり、正しいのはウ・エの2つである。
ア 誤り。民法95条1項は、「意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。」と定め、1号で「意思表示に対応する意思を欠く錯誤」を掲げている。錯誤に基づく意思表示は、同項の要件を満たすときに取り消すことができるのであって、無効となるのではないから、本肢は誤りである。
イ 誤り。民法95条1項2号は、「表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤」を掲げているが、同条2項は、「前項第二号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。」と定めている。基礎事情の錯誤による取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限りすることができるから、表示の有無にかかわらず取り消すことができるとする本肢は誤りである。
ウ 正しい。民法120条2項は、「錯誤、詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。」と定めている。本肢は、この規定のとおりである。なお、同条1項は、行為能力の制限によって取り消すことができる行為については、制限行為能力者(他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為にあっては、当該他の制限行為能力者を含む。)又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができると定めており、取消権者に「同意をすることができる者」が加わる点で同条2項と異なる。
エ 正しい。民法95条3項は、「錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第一項の規定による意思表示の取消しをすることができない。」と定め、1号で「相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。」、2号で「相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。」を掲げている。相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたときは、同項2号により、表意者に重大な過失があることは同条1項の規定による取消しの妨げとならないから、本肢は正しい。なお、同条4項は、「第一項の規定による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。」と定めている。
オ 誤り。民法101条1項は、「代理人が相手方に対してした意思表示の効力が意思の不存在、錯誤、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。」と定めている。錯誤の有無は代理人について決するから、本人について決するとする本肢は誤りである。なお、同条3項は、特定の法律行為をすることを委託された代理人がその行為をしたときは、本人は、自ら知っていた事情について代理人が知らなかったことを主張することができず、本人が過失によって知らなかった事情についても同様とすると定めている。
ポイント:錯誤の効果は「取消し」であって「無効」ではない(民法95条1項)。錯誤には、表示の錯誤(同項1号)と基礎事情の錯誤(同項2号)があり、基礎事情の錯誤による取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限られる(同条2項)。表意者に重大な過失があると原則として取り消せないが、相手方が錯誤を知り又は重大な過失によって知らなかったとき、相手方も同一の錯誤に陥っていたときは取り消せる(同条3項)。取消しは善意無過失の第三者に対抗できない(同条4項)。取消権者は表意者・代理人・承継人(同法120条2項)、代理行為の錯誤の有無は代理人について決する(同法101条1項)。
問題:
共有に関する次の記述のうち、民法の規定に照らし誤っているものはいくつあるか。
ア. 共有物に変更を加える行為であっても、その形状又は効用の著しい変更を伴わないものは、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決することができる。
イ. 共有者が他の共有者の所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、当該他の共有者以外の他の共有者の持分の価格の過半数の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。
ウ. 共有者は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決することにより、共有物である建物について、存続期間が5年を超えない賃借権を設定することができる。
エ. 共有物の管理者が、共有者が共有物の管理に関する事項を決したにもかかわらず、これに違反して行為をしたときは、その行為は、共有者に対してその効力を生じず、共有者は、これをもって善意の第三者にも対抗することができる。
オ. 不動産の共有者が他の共有者の所在を知ることができない場合において、その所在等不明共有者の持分が相続財産に属するとき(共同相続人間で遺産の分割をすべき場合に限る。)は、相続開始の時から10年を経過していなければ、裁判所は、請求をした共有者に所在等不明共有者の持分を取得させる旨の裁判をすることができない。
答え:
誤っているものは、イ・ウ・エの3つである。
解説:
本問は、共有物の変更(民法251条)、共有物の管理(同法252条)、共有物の管理者(同法252条の2)及び所在等不明共有者の持分の取得(同法262条の2)を問うものであり、誤っているのはイ・ウ・エの3つである。
ア 正しい。民法251条1項は、「各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。」と定め、同法252条1項前段は、「共有物の管理に関する事項(次条第一項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み、共有物に前条第一項に規定する変更を加えるものを除く。次項において同じ。)は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。」と定めている。形状又は効用の著しい変更を伴わない変更は、同法251条1項の「変更」から除かれ、同法252条1項の共有物の管理に関する事項として、持分の価格の過半数で決することになるから、本肢は正しい。なお、同項後段は、「共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。」と定め、同条3項は、同条1項・2項の規定による決定が、共有者間の決定に基づいて共有物を使用する共有者に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならないと定めている。
イ 誤り。民法251条2項は、「共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、当該他の共有者以外の他の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。」と定めている。この裁判の内容は、所在を知ることができない共有者以外の他の共有者の「同意」を得て変更を加えることができるとするものであり、その持分の価格の過半数の同意で足りるとするものではないから、本肢は誤りである。なお、共有物の管理に関する事項については、同法252条2項1号が、裁判所は、当該他の共有者以外の共有者の持分の価格に従い、その過半数で共有物の管理に関する事項を決することができる旨の裁判をすることができると定めている。変更は「同意」、管理は「過半数」という違いに注意する。
ウ 誤り。民法252条4項は、「共有者は、前三項の規定により、共有物に、次の各号に掲げる賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利(以下この項において「賃借権等」という。)であって、当該各号に定める期間を超えないものを設定することができる。」と定め、1号で「樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃借権等 十年」、2号で「前号に掲げる賃借権等以外の土地の賃借権等 五年」、3号で「建物の賃借権等 三年」、4号で「動産の賃借権等 六箇月」を掲げている。建物について持分の価格の過半数で設定することができるのは存続期間が3年を超えない賃借権等であるから、5年を超えないものを設定することができるとする本肢は誤りである。5年は、山林以外の土地の賃借権等の期間である。
エ 誤り。民法252条の2第3項は、「共有物の管理者は、共有者が共有物の管理に関する事項を決した場合には、これに従ってその職務を行わなければならない。」と定め、同条4項は、「前項の規定に違反して行った共有物の管理者の行為は、共有者に対してその効力を生じない。ただし、共有者は、これをもって善意の第三者に対抗することができない。」と定めている。共有者は、管理者の行為が効力を生じないことを善意の第三者に対抗することができないから、本肢は誤りである。なお、同条1項は、「共有物の管理者は、共有物の管理に関する行為をすることができる。ただし、共有者の全員の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。」と定めている。
オ 正しい。民法262条の2第1項前段は、「不動産が数人の共有に属する場合において、共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、その共有者に、当該他の共有者(以下この条において「所在等不明共有者」という。)の持分を取得させる旨の裁判をすることができる。」と定め、同条3項は、「所在等不明共有者の持分が相続財産に属する場合(共同相続人間で遺産の分割をすべき場合に限る。)において、相続開始の時から十年を経過していないときは、裁判所は、第一項の裁判をすることができない。」と定めている。本肢は、これらの規定のとおりである。なお、同条4項は、共有者が所在等不明共有者の持分を取得したときは、所在等不明共有者は、当該共有者に対し、当該共有者が取得した持分の時価相当額の支払を請求することができると定めている。
ポイント:形状又は効用の著しい変更を伴わない変更(いわゆる軽微変更)は、共有物の管理に関する事項として持分の価格の過半数で決する(民法251条1項括弧書・252条1項)。所在等不明の共有者がいる場合の裁判は、変更なら所在等不明の共有者以外の他の共有者の「同意」(同法251条2項)、管理なら所在等不明の共有者以外の共有者の持分の価格に従った「過半数」(同法252条2項1号)である。過半数で設定できる賃借権等の期間は、山林10年・その他の土地5年・建物3年・動産6箇月(同条4項)。管理者が共有者の決定に違反した行為は共有者に対して効力を生じないが、善意の第三者には対抗できない(同法252条の2第4項)。所在等不明共有者の持分が遺産共有の場合は、相続開始から10年を経過しないと持分取得の裁判ができない(同法262条の2第3項)。
問題:
法定相続分に関する次の記述のうち、民法の規定に照らし正しいものはいくつあるか。なお、ア〜ウ及びオの各事例において、記載のない者で相続人となるべき者はおらず、相続の放棄、相続欠格及び廃除はなく、遺言もないものとする。
ア. 夫婦であるH及びIとの特別養子縁組により養子となったAが死亡した。Aには配偶者Bがいるが、子はなく、Aの死亡の当時、養父H、養母I及びAの実母Gが生存していた。この場合において、Bの相続分は3分の2であり、H、I及びGの相続分は各9分の1である。
イ. Aが死亡した。Aには配偶者Bがいるが、子はなく、Aの父FはAより先に死亡しており、Aの死亡の当時、Aの母G及びFの父Kが生存していた。この場合において、Bの相続分は3分の2であり、G及びKの相続分は各6分の1である。
ウ. Aが死亡した。Aには配偶者B並びに子C及びDがいたが、DはAより先に死亡しており、Dには子E及びFがいる。この場合において、Bの相続分は2分の1であり、C、E及びFの相続分は各6分の1である。
エ. 被相続人が遺言で共同相続人の相続分を指定した場合であっても、被相続人が相続開始の時において有した債務の債権者は、各共同相続人に対し、法定相続分に応じてその権利を行使することができるが、その債権者が共同相続人の一人に対してその指定された相続分に応じた債務の承継を承認したときは、この限りでない。
オ. Aが死亡した。Aには配偶者、子及び直系尊属はなく、兄弟姉妹として、父母の双方を同じくする兄C及び父のみを同じくする弟Dがいたが、CはAより先に死亡しており、Cには子Eがいる。この場合において、Eの相続分は3分の2であり、Dの相続分は3分の1である。
答え:
正しいものは、エ・オの2つである。
解説:
本問は、相続人の範囲と順位(民法887条・889条・890条)、法定相続分(同法900条)、代襲相続人の相続分(同法901条)、特別養子縁組による実方との親族関係の終了(同法817条の9)及び相続分の指定がある場合の債権者の権利の行使(同法902条の2)を問うものであり、正しいのはエ・オの2つである。
ア 誤り。民法817条の9本文は、「養子と実方の父母及びその血族との親族関係は、特別養子縁組によって終了する。」と定めている。同条ただし書は、「第八百十七条の三第二項ただし書に規定する他の一方及びその血族との親族関係については、この限りでない。」と定めているが、同法817条の3第2項ただし書は、夫婦の一方が他の一方の嫡出である子(特別養子縁組以外の縁組による養子を除く。)の養親となる場合の規定であり、同ただし書に規定する「他の一方」は、文言上、養親となる者と夫婦である者を指す。本肢では、特別養子縁組の養親は夫婦であるH及びIであり、GはH及びIのいずれでもないから、Gは同ただし書に規定する「他の一方」に当たらない。したがって、AとGとの親族関係は特別養子縁組によって終了し、GはAの直系尊属として相続人となることはない。一方、同法809条は、「養子は、縁組の日から、養親の嫡出子の身分を取得する。」と定め、同法727条は、「養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から、血族間におけるのと同一の親族関係を生ずる。」と定めているから、H及びIはAの直系尊属として相続人となる(同法889条1項1号)。配偶者Bは常に相続人となり(同法890条)、同法900条2号は、「配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。」と定め、同条4号本文は、「子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。」と定めている。よって、Bの相続分は3分の2、H及びIの相続分は各6分の1であり、Gを含めて各9分の1とする本肢は誤りである。
イ 誤り。民法889条1項は、「次に掲げる者は、第八百八十七条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。」と定め、1号で「被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。」を掲げている。母G(1親等)と祖父K(2親等)とでは親等の近いGが先にされるから、Kは相続人とならない。また、代襲相続を定める同法887条2項は被相続人の子について、同法889条2項は同条1項2号の兄弟姉妹について定めるものであり、直系尊属について代襲相続を認める規定はない。したがって、相続人はB及びGであり、同法900条2号により、Bの相続分は3分の2、Gの相続分は3分の1である。Kを相続人とする本肢は誤りである。
ウ 誤り。民法887条2項本文は、「被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。」と定めているから、E及びFはDを代襲して相続人となる。そして、同法901条1項は、「第八百八十七条第二項又は第三項の規定により相続人となる直系卑属の相続分は、その直系尊属が受けるべきであったものと同じとする。ただし、直系卑属が数人あるときは、その各自の直系尊属が受けるべきであった部分について、前条の規定に従ってその相続分を定める。」と定めている。同法900条1号により、Bの相続分は2分の1、子の相続分は2分の1であり、同条4号本文により、C及びDが受けるべきであった相続分は各4分の1となる。E及びFは、Dが受けるべきであった4分の1を等分して各8分の1を受けることになるから、C、E及びFの頭数で等分して各6分の1とする本肢は誤りである。
エ 正しい。民法902条1項は、「被相続人は、前二条の規定にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。」と定め、同法902条の2は、「被相続人が相続開始の時において有した債務の債権者は、前条の規定による相続分の指定がされた場合であっても、各共同相続人に対し、第九百条及び第九百一条の規定により算定した相続分に応じてその権利を行使することができる。ただし、その債権者が共同相続人の一人に対してその指定された相続分に応じた債務の承継を承認したときは、この限りでない。」と定めている。本肢は、これらの規定のとおりである。
オ 正しい。Aには子、直系尊属及び配偶者がないから、兄弟姉妹が相続人となる(民法889条1項2号)。同条2項は、「第八百八十七条第二項の規定は、前項第二号の場合について準用する。」と定めているから、Aより先に死亡したCの子Eは、Cを代襲して相続人となる。同法901条2項は、「前項の規定は、第八百八十九条第二項の規定により兄弟姉妹の子が相続人となる場合について準用する。」と定めているから、Eの相続分はCが受けるべきであったものと同じになる。そして、同法900条4号ただし書は、「父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。」と定めているから、CとDの相続分の比は2対1となり、Cが受けるべきであった相続分は3分の2、Dの相続分は3分の1となる。よって、Eの相続分は3分の2、Dの相続分は3分の1であり、本肢は正しい。
ポイント:直系尊属の間では親等の近い者が先に相続人となり(民法889条1項1号ただし書)、直系尊属には代襲相続がない。特別養子縁組では実方との親族関係が終了する(同法817条の9本文)ので、実父母は直系尊属として相続人にならない。代襲相続人が数人あるときは、被代襲者が受けるべきであった部分を等分する(同法901条1項ただし書)のであって、他の相続人と頭数で割るのではない。兄弟姉妹の代襲にも同条が準用され(同条2項)、半血の兄弟姉妹は全血の2分の1(同法900条4号ただし書)である。相続分の指定があっても、相続債権者は法定相続分に応じて権利行使でき、指定相続分に応じた債務の承継を承認したときに限りこの限りでない(同法902条の2)。図を描き、順位→頭数→代襲の割り振り、の順で数字を確かめる。
問題:
筆界特定の手続に関する次の記述のうち、不動産登記規則の規定に照らし誤っているものはいくつあるか。
ア. 筆界特定の申請をしようとする者が筆界特定申請書を送付するときは、書留郵便又は信書便事業者による信書便の役務であって当該信書便事業者において引受け及び配達の記録を行うものによるものとされ、筆界特定申請書を入れた封筒の表面には、筆界特定申請書が在中する旨を明記するものとされている。
イ. 申請人が筆界特定添付書面(磁気ディスクを除く。)の原本の還付を請求した場合には、筆界特定登記官は、筆界特定書を作成した後でなければ、当該請求に係る書面の原本を還付することができない。
ウ. 筆界特定登記官は、筆界特定の申請の補正をすることができる期間を定めたときは、当該期間内は、当該補正すべき事項に係る不備を理由に当該申請を却下することができない。
エ. 申請人又は関係人は、不動産登記法139条1項の規定による意見又は資料の提出を書面でするときは、当該書面の写し二部を提出しなければならない。
オ. 申請人又は関係人が不動産登記法141条1項の規定により筆界特定の手続において作成された調書又は提出された資料の閲覧を請求した場合には、その閲覧は筆界特定登記官(その指定する職員を含む。)の面前でさせるものとされており、請求人から別段の申出があっても、映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話することができる方法によって閲覧をさせることはできない。
答え:
誤っているものは、イ・エ・オの3つである。
解説:
本問は、筆界特定申請書等の送付方法(不動産登記規則212条)、筆界特定添付書面の原本の還付(同規則213条)、補正(同規則216条)、意見又は資料の書面による提出(同規則220条)及び調書等の閲覧の方法(同規則228条)を問うものであり、誤っているのはイ・エ・オの3つである。
ア 正しい。不動産登記規則212条1項は、「筆界特定の申請をしようとする者が筆界特定申請書又は筆界特定添付書面を送付するときは、書留郵便又は信書便事業者による信書便の役務であって当該信書便事業者において引受け及び配達の記録を行うものによるものとする。」と定め、同条2項は、「前項の場合には、筆界特定申請書又は筆界特定添付書面を入れた封筒の表面に筆界特定申請書又は筆界特定添付書面が在中する旨を明記するものとする。」と定めている。本肢は、これらの規定のとおりである。
イ 誤り。不動産登記規則213条1項は、「申請人は、筆界特定添付書面(磁気ディスクを除く。)の原本の還付を請求することができる。ただし、当該筆界特定の申請のためにのみ作成された委任状その他の書面については、この限りでない。」と定め、同条3項前段は、「筆界特定登記官は、第一項本文の規定による請求があった場合には、却下事由の有無についての調査完了後、当該請求に係る書面の原本を還付しなければならない。」と定めている。原本の還付は却下事由の有無についての調査完了後にしなければならないものとされており、筆界特定書を作成した後でなければ還付することができないとする本肢は誤りである。なお、同条2項は、原本の還付を請求する申請人は原本と相違ない旨を記載した謄本を提出しなければならないと定め、同条4項は、同条3項前段の規定にかかわらず、偽造された書面その他の不正な筆界特定の申請のために用いられた疑いがある書面については還付することができないと定めている。
ウ 正しい。不動産登記規則216条は、「筆界特定登記官は、筆界特定の申請の補正をすることができる期間を定めたときは、当該期間内は、当該補正すべき事項に係る不備を理由に当該申請を却下することができない。」と定めている。本肢は、同条のとおりである。
エ 誤り。不動産登記法139条1項前段は、「筆界特定の申請があったときは、筆界特定の申請人及び関係人は、筆界特定登記官に対し、対象土地の筆界について、意見又は資料を提出することができる。」と定めている。そして、不動産登記規則220条1項は、「申請人又は関係人は、法第百三十九条第一項の規定による意見又は資料の提出を書面でするときは、当該書面の写し三部を提出しなければならない。」と定めている。提出すべき写しは三部であるから、二部とする本肢は誤りである。なお、同条2項は、筆界特定登記官は、必要と認めるときは、書面の写しを提出した申請人又は関係人に対し、その原本の提示を求めることができると定めている。
オ 誤り。不動産登記法141条1項前段は、筆界特定の申請人及び関係人は、同法133条1項本文の規定による公告があった時から同法144条1項の規定により筆界特定の申請人に対する通知がされるまでの間、筆界特定登記官に対し、当該筆界特定の手続において作成された調書及び提出された資料の閲覧を請求することができると定めている。不動産登記規則228条1項は、「法第百四十一条第一項の規定による調書又は資料の閲覧は、筆界特定登記官(その指定する職員を含む。第三項において同じ。)の面前でさせるものとする。」と定めているが、同条3項は、「筆界特定登記官は、法第百四十一条第一項の規定による調書又は資料の閲覧をさせる場合において、請求人から別段の申出があり、かつ、当該申出を相当と認めるときは、第一項の規定にかかわらず、電子計算機を使用して筆界特定登記官及び請求人が映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話することができる方法によって閲覧をさせることができる。」と定めている。請求人から別段の申出があり、筆界特定登記官がこれを相当と認めるときは、映像と音声の送受信による方法によって閲覧をさせることができるから、本肢は誤りである。
ポイント:筆界特定申請書等を送付するときは、引受け及び配達の記録が残る書留郵便等により、封筒に在中の旨を明記する(不動産登記規則212条)。添付書面の原本還付は、却下事由の有無についての調査完了後にされ、その申請のためにのみ作成された委任状等は対象外である(同規則213条)。補正期間を定めたときは、その期間内は当該不備を理由に却下できない(同規則216条)。意見・資料を書面で提出するときは写し三部(同規則220条1項)。調書等の閲覧は筆界特定登記官の面前が原則で、申出があり相当と認めるときは映像と音声の送受信による方法も可能である(同規則228条1項・3項)。部数と「原則と例外」の組合せを条文の文言で押さえる。
問題:
建物の区分所有等に関する法律(以下「区分所有法」という。)に関する次の記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア. 一棟の建物に構造上区分された数個の部分があるときは、その各部分が独立して建物としての用途に供することができるものでなくても、その各部分は、区分所有法の定めるところにより、それぞれ所有権の目的とすることができる。
イ. 区分所有者が建物及び建物が所在する土地と一体として管理又は使用をする庭、通路その他の土地は、規約により建物の敷地とすることができ、区分所有法上の「建物の敷地」には、建物が所在する土地のほか、このように規約により建物の敷地とされた土地が含まれる。
ウ. 建物が所在する土地の一部が分割により建物が所在する土地以外の土地となったときは、その土地は、規約で建物の敷地と定めない限り、区分所有法上の建物の敷地とはならない。
エ. 共用部分は区分所有者全員の共有に属するのが原則であり、共用部分の共有持分の得喪は、民法177条の規定により、登記をしなければ第三者に対抗することができない。
オ. 敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合において、区分所有者が数個の専有部分を所有するときは、各専有部分に係る敷地利用権の割合は、規約でこれと異なる割合が定められていない限り、区分所有法14条1項から3項までに定める割合によるものとされ、同条3項は、その床面積を、壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積によるものとしている。
答え:
正しいものは、イ・オの2つである。
解説:
本問は、区分所有権の目的となる建物の部分(区分所有法1条)、建物の敷地と規約による建物の敷地(同法2条5項・5条)、共用部分の共有関係(同法11条)並びに共用部分の持分の割合と敷地利用権の割合(同法14条・22条)を問うものであり、正しいのはイ・オの2つである。
ア 誤り。区分所有法1条は、「一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものがあるときは、その各部分は、この法律の定めるところにより、それぞれ所有権の目的とすることができる。」と定めている。所有権の目的とすることができるのは、構造上区分された部分であって、かつ、独立して建物としての用途に供することができるものであるから、独立して建物としての用途に供することができるものでなくても所有権の目的とすることができるとする本肢は誤りである。
イ 正しい。区分所有法5条1項は、「区分所有者が建物及び建物が所在する土地と一体として管理又は使用をする庭、通路その他の土地は、規約により建物の敷地とすることができる。」と定め、同法2条5項は、「この法律において「建物の敷地」とは、建物が所在する土地及び第五条第一項の規定により建物の敷地とされた土地をいう。」と定めている。本肢は、これらの規定のとおりである。
ウ 誤り。区分所有法5条2項は、「建物が所在する土地が建物の一部の滅失により建物が所在する土地以外の土地となつたときは、その土地は、前項の規定により規約で建物の敷地と定められたものとみなす。建物が所在する土地の一部が分割により建物が所在する土地以外の土地となつたときも、同様とする。」と定めている。分割により建物が所在する土地以外の土地となった土地は、規約で建物の敷地と定められたものとみなされるから、規約で建物の敷地と定めない限り建物の敷地とはならないとする本肢は誤りである。
エ 誤り。区分所有法11条1項は、「共用部分は、区分所有者全員の共有に属する。ただし、一部共用部分は、これを共用すべき区分所有者の共有に属する。」と定めており、本肢の前半はこの規定のとおりである。しかし、同条3項は、「民法第百七十七条の規定は、共用部分には適用しない。」と定めている。共用部分には民法177条の規定は適用されないから、同条の規定により登記をしなければ第三者に対抗することができないとする本肢は誤りである。
オ 正しい。区分所有法22条1項本文は、「敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合には、区分所有者は、その有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができない。」と定め、同条2項は、「前項本文の場合において、区分所有者が数個の専有部分を所有するときは、各専有部分に係る敷地利用権の割合は、第十四条第一項から第三項までに定める割合による。ただし、規約でこの割合と異なる割合が定められているときは、その割合による。」と定めている。そして、同法14条1項は、「各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合による。」と定め、同条3項は、「前二項の床面積は、壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積による。」と定めている。本肢は、これらの規定のとおりである。
ポイント:区分所有権の目的となるのは、構造上区分され、かつ、独立して建物としての用途に供することができる部分である(区分所有法1条)。「建物の敷地」には、建物が所在する土地のほか規約により建物の敷地とされた土地が含まれ(同法2条5項・5条1項)、建物の一部の滅失や土地の分割により建物が所在する土地以外の土地となった土地は、規約で建物の敷地と定められたものとみなされる(同法5条2項)。共用部分には民法177条が適用されない(同法11条3項)。数個の専有部分を所有する区分所有者の各専有部分に係る敷地利用権の割合は、規約に別段の定めがなければ同法14条1項から3項までに定める割合により、その床面積は内側線で囲まれた部分の水平投影面積による(同法22条2項・14条3項)。
問題:
登記完了証及び登記が完了した旨の通知に関する次の記述のうち、不動産登記規則の規定に照らし誤っているものはいくつあるか。
ア. A及びBを表題部所有者とする建物の表題登記がA及びBの申請に基づいて完了したときは、登記官は、A及びBの双方に対し、登記完了証を交付しなければならない。
イ. 書面申請をした申請人が送付の方法により登記完了証の交付を求める場合には、申請人は、その旨及び送付先の住所を申請情報の内容としなければならない。
ウ. 所有権の登記名義人をAとする甲土地について、Aの債権者Bが民法423条の規定によりAに代わって地目の変更の登記を申請し、その登記が完了したときは、登記官は、申請人であるBに対し登記完了証を交付することにより登記が完了した旨を通知するほか、Aに対しても、登記が完了した旨を通知しなければならない。
エ. 区分建物である建物について、その建物が属する一棟の建物の構造に関する変更の登記がされたことにより、登記官が不動産登記法51条6項の規定により職権で同じ一棟の建物に属する他の区分建物について当該登記事項に関する変更の登記をしたときは、登記官は、当該他の区分建物の表題部所有者又は所有権の登記名義人に対し、登記が完了した旨を通知しなければならない。
オ. 登記官は、表題登記がない不動産について嘱託による所有権の処分の制限の登記をしたときは、当該不動産の所有者に対し、登記が完了した旨を通知しなければならない。
答え:
誤っているものは、ア・エの2つである。
解説:
本問は、登記完了証による通知(不動産登記規則181条)、登記完了証の交付の方法(同規則182条)、申請人以外の者に対する通知(同規則183条)及び処分の制限の登記における通知(同規則184条)を問うものであり、誤っているのはア・エの2つである。
ア 誤り。不動産登記規則181条1項は、「登記官は、登記の申請に基づいて登記を完了したときは、申請人に対し、登記完了証を交付することにより、登記が完了した旨を通知しなければならない。この場合において、申請人が二人以上あるときは、その一人(登記権利者及び登記義務者が申請人であるときは、登記権利者及び登記義務者の各一人)に通知すれば足りる。」と定めている。本肢の建物の表題登記はA及びBの申請に基づくものであり、申請人が二人以上あるときはその一人に通知すれば足りるから、A及びBの双方に登記完了証を交付しなければならないとする本肢は誤りである。なお、同規則183条1項1号による表示に関する登記を完了した場合の表題部所有者に対する通知は、申請人以外の者に限られている。
イ 正しい。不動産登記規則182条1項は、登記完了証の交付は、法務大臣が別に定める場合を除き、申請の区分に応じた方法によるとし、書面申請については「登記完了証を書面により交付する方法」(同項2号)を定めている。そして、同条2項は、「送付の方法により登記完了証の交付を求める場合には、申請人は、その旨及び送付先の住所を申請情報の内容としなければならない。」と定めている。本肢は、これらの規定のとおりである。
ウ 正しい。不動産登記規則181条1項により、登記官は、申請人であるBに対し、登記完了証を交付することにより登記が完了した旨を通知しなければならない。また、同規則183条1項は、「登記官は、次の各号に掲げる場合には、当該各号(第一号に掲げる場合にあっては、申請人以外の者に限る。)に定める者に対し、登記が完了した旨を通知しなければならない。」と定め、1号で、表示に関する登記を完了した場合には表題部所有者又は所有権の登記名義人を、2号で、「民法第四百二十三条その他の法令の規定により他人に代わってする申請に基づく登記を完了した場合」には「当該他人」を、それぞれ通知の相手方として掲げている。地目の変更の登記は表示に関する登記であり、Aは申請人以外の所有権の登記名義人であるとともに、Bが代わって申請をした「当該他人」でもあるから、登記官は、Aに対しても登記が完了した旨を通知しなければならない。本肢は、これらの規定のとおりである。
エ 誤り。不動産登記法51条5項は、建物が区分建物である場合において、同法44条1項1号(区分建物である建物に係るものに限る。)又は7号から9号までに掲げる登記事項(一棟の建物の所在、構造及び床面積等。9号に掲げる登記事項にあっては法務省令で定めるものに限る。)に関する変更の登記は、当該登記に係る区分建物と同じ一棟の建物に属する他の区分建物についてされた変更の登記としての効力を有すると定め、同条6項は、「前項の場合において、同項に規定する登記事項に関する変更の登記がされたときは、登記官は、職権で、当該一棟の建物に属する他の区分建物について、当該登記事項に関する変更の登記をしなければならない。」と定めている。そして、不動産登記規則183条3項は、「第一項第一号の規定は、法第五十一条第六項(法第五十三条第二項において準用する場合を含む。)の規定による登記には、適用しない。」と定めている。法51条6項の規定により職権でされた他の区分建物についての変更の登記には、表示に関する登記を完了した場合の通知を定める同規則183条1項1号の規定が適用されないから、本肢は誤りである。
オ 正しい。不動産登記規則184条1項は、「登記官は、表題登記がない不動産又は所有権の登記がない不動産について嘱託による所有権の処分の制限の登記をしたときは、当該不動産の所有者に対し、登記が完了した旨を通知しなければならない。」と定めている。本肢は、同項のとおりである。なお、同条2項は、この通知は、不動産所在事項及び不動産番号、登記の目的、登記原因及びその日付並びに登記名義人の氏名又は名称及び住所を明らかにしてしなければならないと定めている。
ポイント:登記完了証は申請人に交付して通知し、申請人が二人以上あるときはその一人(登記権利者及び登記義務者が申請人であるときは各一人)で足りる(不動産登記規則181条1項)。書面申請で送付による交付を求めるときは、その旨と送付先の住所を申請情報の内容とする(同規則182条2項)。表示に関する登記を完了したときは申請人以外の表題部所有者又は所有権の登記名義人に、代位による申請に基づく登記を完了したときは被代位者に通知するが(同規則183条1項)、法51条6項による職権の変更の登記には同項1号は適用されない(同条3項)。表題登記又は所有権の登記がない不動産に嘱託による所有権の処分の制限の登記をしたときは、所有者に通知する(同規則184条1項)。「誰に」「どの場合に」通知するかを条文の文言で区別する。
問題:
土地家屋調査士(以下「調査士」という。)の使命、業務及び義務等に関する次の記述のうち、土地家屋調査士法の規定に照らし正しいものはいくつあるか。
ア. 調査士は、不動産の表示に関する登記及び土地の筆界を明らかにする業務の専門家として、不動産に関する権利の明確化に寄与し、もって国民生活の安定と向上に資することを使命とするとされており、ここにいう土地の筆界は、不動産登記法123条1号に規定する筆界をいう。
イ. 調査士は、他人の依頼を受けて、筆界特定の申請の却下に関する審査請求の手続についての代理を業とすることができる。
ウ. 調査士は、他人の依頼を受けて、筆界特定の手続についての相談を業とすることができるが、この相談を業として行うことができるのは、法務大臣が指定する研修の課程を修了し、法務大臣の認定を受けた調査士であって、土地家屋調査士会の会員であるものに限られる。
エ. 調査士は、その所属する土地家屋調査士会及び日本土地家屋調査士会連合会が実施する研修を受け、その資質の向上を図るように努めなければならないほか、その業務を行う地域における土地の筆界を明らかにするための方法に関する慣習その他の調査士の業務についての知識を深めるよう努めなければならない。
オ. 調査士がその業務に関して虚偽の調査又は測量をした罪は、調査士又は調査士であった者が正当な事由なく業務上取り扱った事件について知ることのできた秘密を他に漏らした罪と同様に、告訴がなければ公訴を提起することができない。
答え:
正しいものは、ア・イ・エの3つである。
解説:
本問は、調査士の使命(土地家屋調査士法1条)、業務(同法3条1項・2項)、研修(同法25条)並びに虚偽の調査、測量の禁止及び秘密保持の義務に違反した場合の罰則(同法23条・24条の2・71条・71条の2)を問うものであり、正しいのはア・イ・エの3つである。
ア 正しい。土地家屋調査士法1条は、「土地家屋調査士(以下「調査士」という。)は、不動産の表示に関する登記及び土地の筆界(不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)第百二十三条第一号に規定する筆界をいう。第三条第一項第七号及び第二十五条第二項において同じ。)を明らかにする業務の専門家として、不動産に関する権利の明確化に寄与し、もつて国民生活の安定と向上に資することを使命とする。」と定めている。本肢は、同条のとおりである。
イ 正しい。土地家屋調査士法3条1項は、調査士が他人の依頼を受けて行うことを業とする事務として、4号で「筆界特定の手続(不動産登記法第六章第二節の規定による筆界特定の手続又は筆界特定の申請の却下に関する審査請求の手続をいう。次号において同じ。)についての代理」を掲げている。筆界特定の申請の却下に関する審査請求の手続についての代理は、同号に掲げる筆界特定の手続についての代理に含まれるから、本肢は正しい。
ウ 誤り。土地家屋調査士法3条1項は、5号で「筆界特定の手続について法務局又は地方法務局に提出し、又は提供する書類又は電磁的記録の作成」を、6号で「前各号に掲げる事務についての相談」を掲げており、筆界特定の手続についての相談は、同項6号の相談に当たる。そして、同条2項前段は、「前項第七号及び第八号に規定する業務(以下「民間紛争解決手続代理関係業務」という。)は、次のいずれにも該当する調査士に限り、行うことができる。」と定め、1号で法務大臣が指定する研修の課程を修了した者であること、2号で法務大臣が民間紛争解決手続代理関係業務を行うのに必要な能力を有すると認定した者であること、3号で「土地家屋調査士会(以下「調査士会」という。)の会員であること。」を掲げている。研修の修了及び法務大臣の認定等が要件とされているのは、同条1項7号・8号の民間紛争解決手続代理関係業務であり、同項6号の相談はこれに当たらないから、本肢は誤りである。
エ 正しい。土地家屋調査士法25条1項は、「調査士は、その所属する調査士会及び調査士会連合会が実施する研修を受け、その資質の向上を図るように努めなければならない。」と定め、同条2項は、「調査士は、その業務を行う地域における土地の筆界を明らかにするための方法に関する慣習その他の調査士の業務についての知識を深めるよう努めなければならない。」と定めている。本肢は、これらの規定のとおりである。なお、「調査士会連合会」は、同法8条において、日本土地家屋調査士会連合会をいうものとされている。
オ 誤り。土地家屋調査士法23条は、「調査士は、その業務に関して虚偽の調査又は測量をしてはならない。」と定め、同法71条は、「第二十三条の規定に違反した者は、一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。」と定めている。これに対し、同法24条の2は、「調査士又は調査士であつた者は、正当な事由がある場合でなければ、業務上取り扱つた事件について知ることのできた秘密を他に漏らしてはならない。」と定め、同法71条の2第1項は、「第二十四条の二の規定に違反した者は、六月以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。」と定め、同条2項は、「前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。」と定めている。告訴がなければ公訴を提起することができないとされているのは秘密保持の義務に違反した罪であり、同法71条にはこのような定めはないから、本肢は誤りである。
ポイント:調査士の使命は、不動産の表示に関する登記及び土地の筆界を明らかにする業務の専門家として不動産に関する権利の明確化に寄与することであり、ここでの筆界は不動産登記法123条1号の筆界である(土地家屋調査士法1条)。筆界特定の手続には筆界特定の申請の却下に関する審査請求の手続が含まれ(同法3条1項4号)、研修の修了・法務大臣の認定・調査士会の会員であることを要するのは民間紛争解決手続代理関係業務(同項7号・8号)に限られる(同条2項)。研修の受講と業務地域の筆界に関する慣習等の知識の習得は、いずれも努力義務である(同法25条)。虚偽の調査・測量の罪(1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金)と秘密漏示の罪(6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金・親告罪)を区別する(同法71条・71条の2)。
問題:
不動産登記法の罰則及び過料に関する次の記述のうち、同法の規定に照らし正しいものはいくつあるか。
ア. 登記の申請の代理を業とすることができる代理人が不動産登記法23条4項1号の規定による情報の提供をする場合において虚偽の情報を提供したときは、当該代理人は2年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処せられ、当該代理人が法人の従業者としてその法人の業務に関しこの違反行為をしたときは、その法人に対しても50万円以下の罰金刑が科される。
イ. 登記簿に不実の記録をさせることとなる登記の申請の用に供する目的で登記識別情報を取得した者は処罰されるが、不正に取得された登記識別情報を同様の目的で保管したにとどまる者は処罰されない。
ウ. 登記官が表示に関する登記について不動産登記法29条2項の規定により不動産を検査しようとした場合において、当該不動産の所有者がその検査を拒んだときは、当該所有者は、30万円以下の罰金に処せられる。
エ. 法務局又は地方法務局の長が不動産登記法137条1項の規定により筆界調査委員を他人の土地に立ち入らせようとした場合において、当該土地の占有者が正当な理由がないのにその立入りを拒んだときは、当該占有者は、10万円以下の過料に処せられる。
オ. 建物の滅失の登記の申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは10万円以下の過料に処せられ、所有権の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記の申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは5万円以下の過料に処せられる。
答え:
正しいものは、ア・ウ・オの3つである。
解説:
本問は、不動産登記法の罰則(同法159条〜163条)及び過料(同法164条)を問うものであり、正しいのはア・ウ・オの3つである。
ア 正しい。不動産登記法23条4項1号は、事前通知を要しない場合として、「当該申請が登記の申請の代理を業とすることができる代理人によってされた場合であって、登記官が当該代理人から法務省令で定めるところにより当該申請人が第一項の登記義務者であることを確認するために必要な情報の提供を受け、かつ、その内容を相当と認めるとき。」を掲げている。同法160条は、「第二十三条第四項第一号(第十六条第二項において準用する場合を含む。)の規定による情報の提供をする場合において、虚偽の情報を提供したときは、当該違反行為をした者は、二年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。」と定め、同法163条は、「法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第百六十条又は前条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。」と定めている。本肢は、これらの規定のとおりである。なお、同条の両罰規定の対象は同法160条及び162条の違反行為であり、同法159条及び161条の罪は掲げられていない。
イ 誤り。不動産登記法161条1項は、「登記簿に不実の記録をさせることとなる登記の申請又は嘱託の用に供する目的で、登記識別情報を取得した者は、二年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。情を知って、その情報を提供した者も、同様とする。」と定め、同条2項は、「不正に取得された登記識別情報を、前項の目的で保管した者も、同項と同様とする。」と定めている。不正に取得された登記識別情報を同様の目的で保管した者も処罰されるから、本肢は誤りである。なお、同法159条は、同法152条2項の規定に違反して登記識別情報の作成又は管理に関する秘密を漏らした者を二年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処すると定めている。
ウ 正しい。不動産登記法29条1項は、登記官は、表示に関する登記について申請があった場合及び職権で登記しようとする場合において、必要があると認めるときは、当該不動産の表示に関する事項を調査することができると定め、同条2項前段は、「登記官は、前項の調査をする場合において、必要があると認めるときは、日出から日没までの間に限り、当該不動産を検査し、又は当該不動産の所有者その他の関係者に対し、文書若しくは電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの提示を求め、若しくは質問をすることができる。」と定めている。そして、同法162条は、同条各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は三十万円以下の罰金に処するとし、1号で「第二十九条第二項(第十六条第二項において準用する場合を含む。次号において同じ。)の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避したとき。」を掲げている。本肢は、これらの規定のとおりである。
エ 誤り。不動産登記法137条1項は、法務局又は地方法務局の長は、筆界調査委員が対象土地又は関係土地その他の土地の測量又は実地調査を行う場合において、必要があると認めるときは、その必要の限度において、筆界調査委員等に他人の土地に立ち入らせることができると定め、同条5項は、「土地の占有者は、正当な理由がない限り、第一項の規定による立入りを拒み、又は妨げてはならない。」と定めている。そして、同法162条3号は、「第百三十七条第五項の規定に違反して、同条第一項の規定による立入りを拒み、又は妨げたとき。」を掲げており、この場合には、当該違反行為をした者は三十万円以下の罰金に処せられる。立入りを拒んだ占有者に科されるのは三十万円以下の罰金であり、十万円以下の過料ではないから、本肢は誤りである。
オ 正しい。不動産登記法57条は、「建物が滅失したときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人(共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記がある建物の場合にあっては、所有者)は、その滅失の日から一月以内に、当該建物の滅失の登記を申請しなければならない。」と定め、同法76条の5は、「所有権の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所について変更があったときは、当該所有権の登記名義人は、その変更があった日から二年以内に、氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記を申請しなければならない。」と定めている。同法164条1項は、同法57条等の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは十万円以下の過料に処すると定め、同条2項は、「第七十六条の五の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、五万円以下の過料に処する。」と定めている。本肢は、これらの規定のとおりである。
ポイント:不動産登記法の罰則は、登記識別情報に関する秘密の漏示(159条・2年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金)、虚偽の本人確認情報の提供(160条)、不実の登記に用いる目的での登記識別情報の取得・提供・保管(161条。いずれも2年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金)、登記官の検査や筆界調査委員等の立入りの拒否等(162条・30万円以下の罰金)であり、両罰規定は160条と162条に限られる(163条)。表示に関する登記等の申請義務違反は10万円以下の過料、住所等の変更の登記の申請義務違反は5万円以下の過料である(164条)。刑罰(罰金)と過料、金額の違いを条文番号とともに整理する。
出題分野の振り分け
| 問 | 分野 | 主な論点 | 主な根拠条文 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 民法(総則・錯誤) | 錯誤の効果(取消し)、基礎事情の錯誤における表示の要件、表意者に重大な過失がある場合と共通錯誤の例外、錯誤による取消しの取消権者、代理行為の錯誤の有無の判断主体 | 民法95条、101条、120条 |
| 第2問 | 民法(物権・共有) | 形状又は効用の著しい変更を伴わない変更と過半数決定、所在等不明共有者がいる場合の変更の裁判、過半数で設定できる賃借権等の期間、共有物の管理者の違反行為と善意の第三者、所在等不明共有者の持分取得と遺産共有の10年 | 民法251条、252条、252条の2、262条の2 |
| 第3問 | 民法(相続・法定相続分) | 特別養子縁組と実方の直系尊属、直系尊属間の親等の優先、代襲相続人の相続分、相続分の指定と相続債権者の権利行使、兄弟姉妹の代襲と半血の兄弟姉妹の相続分 | 民法727条、809条、817条の3、817条の9、887条、889条、890条、900条〜902条の2 |
| 第4問 | 筆界特定(不動産登記規則) | 筆界特定申請書等の送付方法、添付書面の原本還付の時期と対象外の書面、補正期間中の却下の制限、意見又は資料を書面で提出する場合の写しの部数、調書等の閲覧の方法(面前での閲覧と映像・音声の送受信による閲覧) | 不動産登記法139条1項、141条1項、不動産登記規則212条、213条、216条、220条、228条 |
| 第5問 | 区分所有法(建物の敷地・共用部分) | 区分所有権の目的となる建物の部分、規約による建物の敷地とみなし規約敷地、共用部分の共有関係と民法177条の不適用、敷地利用権の割合と床面積の算定(内側線) | 区分所有法1条、2条5項、5条、11条、14条、22条 |
| 第6問 | 不動産登記規則(登記完了証・登記が完了した旨の通知) | 申請人が二人以上ある場合の登記完了証、送付による交付を求める場合の申請情報、表示に関する登記・代位による申請に基づく登記の完了の通知、職権による他の区分建物の変更の登記と通知の不適用、処分の制限の登記における所有者への通知 | 不動産登記法51条5項・6項、不動産登記規則181条、182条、183条、184条 |
| 第7問 | 土地家屋調査士法(使命・業務・義務) | 調査士の使命と筆界の意義、筆界特定の申請の却下に関する審査請求の手続の代理、筆界特定の手続についての相談と民間紛争解決手続代理関係業務の要件、研修と筆界に関する慣習等の知識の努力義務、虚偽の調査・測量の罪と秘密漏示の罪(告訴の要否) | 土地家屋調査士法1条、3条1項・2項、8条、23条、24条の2、25条、71条、71条の2 |
| 第8問 | 不動産登記法(罰則・過料) | 虚偽の本人確認情報の提供と両罰規定、登記識別情報の不正取得・保管、登記官の検査の拒否、筆界調査委員等の立入りの拒否、建物の滅失の登記・住所等の変更の登記の申請義務違反と過料 | 不動産登記法23条4項1号、29条、57条、76条の5、137条、152条2項、159条〜164条 |