問題:

詐欺又は強迫による意思表示に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものはいくつあるか。

ア. 強迫による意思表示として取り消すことができるためには、表意者が強迫によって畏怖した結果、完全に選択の自由を失ったことを要する。

イ. 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合において、相手方がその事実を知らなかったときは、知ることができたときであっても、表意者は、その意思表示を取り消すことができない。

ウ. AがBの詐欺によりA所有の農地をBに売却し、Bが農地法5条の許可を条件とする所有権移転の仮登記を得た後、その売買契約上の権利をCに譲渡して仮登記の移転の付記登記をした場合において、Cが詐欺の事実を知らず、かつ、知らないことに過失がなかったときは、Aは、その後に詐欺を理由として売買契約を取り消しても、その取消しをCに対抗することができない。

エ. 詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。

オ. 強迫による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

答え:

誤っているものは、ア・イ・オの3つである。

解説:

本問は、強迫による意思表示の成立要件(民法96条1項、最判昭33.7.1民集12巻11号1601頁)、第三者による詐欺(同条2項)、詐欺による取消しと第三者(同条3項、最判昭49.9.26民集28巻6号1213頁)及び取消権者(同法120条2項)を問うものであり、誤っているのはア・イ・オの3つである。

ア 誤り。民法96条1項は、「詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。」と定めている。判例は、強迫による意思表示が成立するためには、表意者が畏怖の結果完全に選択の自由を失ったことを要するものではないとしている(最判昭33.7.1民集12巻11号1601頁)。同判決は、その理由中で、完全に意思の自由を失った場合はむしろその意思表示は当然無効であり、民法96条の適用の余地はないと述べている。完全に選択の自由を失ったことを要するとする本肢は誤りである。

イ 誤り。民法96条2項は、「相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。」と定めている。相手方が第三者による詐欺の事実を知らなかったときでも、知ることができたときは、表意者はその意思表示を取り消すことができるから、本肢は誤りである。なお、民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号。令和2年4月1日施行)による改正前の同項は、「相手方がその事実を知っていたときに限り」と定めていた。

ウ 正しい。民法96条3項は、「前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。」と定めている。判例は、甲を欺罔してその農地を買い受けた乙が、農地法5条の許可を条件とする所有権移転仮登記を得たうえ、その売買契約上の権利を善意の丙に譲渡してその仮登記移転の附記登記をした場合には、丙は同項にいう第三者に当たるとしている(最判昭49.9.26民集28巻6号1213頁)。同判決は、その理由中で、同項の第三者の範囲は、必ずしも、所有権その他の物権の転得者で、かつ、これにつき対抗要件を備えた者に限定しなければならない理由は見出し難いと述べている。本肢のCは同項の第三者に当たり、詐欺の事実を知らず、かつ、知らないことに過失がなかったから、Aは、詐欺による取消しをCに対抗することができない。本肢は正しい。なお、同判決は、取消しの効果を「善意の第三者」との関係において制限する当時の同項について判断したものであり、民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)による改正後の現行の同項は、「善意でかつ過失がない第三者」と定めている。本肢は、Cに過失がなかったことを前提としている。

エ 正しい。民法120条2項は、「錯誤、詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。」と定めている。本肢は、同項のうち詐欺又は強迫に関する部分のとおりである。

オ 誤り。民法96条3項は、「前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。」と定めている。同項が第三者に対抗することができないとしているのは、詐欺による意思表示の取消しであり、強迫による意思表示の取消しは同項の対象とされていない。強迫による意思表示の取消しを善意でかつ過失がない第三者に対抗することができないとする本肢は誤りである。

ポイント:詐欺又は強迫による意思表示は取り消すことができ(民法96条1項)、強迫による意思表示の成立には、表意者が畏怖の結果完全に選択の自由を失ったことを要しない(最判昭33.7.1)。第三者が詐欺を行った場合は、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り取り消すことができる(同条2項)。詐欺による取消しは善意でかつ過失がない第三者に対抗することができず(同条3項)、農地法5条の許可を条件とする仮登記を得た買主から売買契約上の権利を譲り受けて仮登記移転の附記登記をした者も同項の第三者に当たる(最判昭49.9.26)。同項の対象は詐欺による取消しであり、強迫による取消しは含まれない。詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為の取消権者は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人である(同法120条2項)。「第三者の詐欺は相手方が知ることができたときも取消し可、第三者保護(善意無過失)は詐欺だけ」と押さえる。


問題:

占有権に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものはいくつあるか。

ア. 株式会社の代表取締役が会社の代表者として土地を所持する場合には、その土地の直接占有者は会社自身であり、代表取締役は、個人のためにもこれを所持するものと認めるべき特段の事情がない限り、個人として占有者たる地位にあるものとはいえない。

イ. 土地を占有していた者が死亡して相続が開始した場合において、相続人がその土地を現実に所持するに至っていないときは、被相続人のその土地に対する占有は、相続人に承継されない。

ウ. Aが倉庫業者Bに寄託している動産をCに譲渡した場合において、AがBに対して以後Cのためにその動産を占有することを命じ、Bがこれを承諾したときは、Cがこれを承諾していなくても、Cは、その動産の占有権を取得する。

エ. 土地の賃借人としてその土地を占有していた者が、賃貸人からその土地を買い受け、以後所有の意思をもって占有を始めた場合には、賃貸人に対して所有の意思があることを表示していなくても、その占有は、所有の意思をもってする占有となる。

オ. 代理人によって占有をする場合において、本人と代理人との間の代理権が消滅したときは、本人の占有権は、そのことのみによって消滅する。

答え:

正しいものは、ア・エの2つである。

解説:

本問は、法人の代表者による所持と占有(民法180条・181条、最判昭32.2.15民集11巻2号270頁)、占有権の相続(同法180条・896条、最判昭44.10.30民集23巻10号1881頁)、指図による占有移転(同法184条)、占有の性質の変更(同法185条)及び代理占有権の消滅(同法204条2項)を問うものであり、正しいのはア・エの2つである。

ア 正しい。民法180条は、「占有権は、自己のためにする意思をもって物を所持することによって取得する。」と定め、同法181条は、「占有権は、代理人によって取得することができる。」と定めている。判例は、株式会社の代表取締役が会社の代表者として土地を所持する場合には、その土地の直接占有者は会社自身であって、代表者は、個人のためにもこれを所持するものと認めるべき特段の事情がない限り、個人として占有者たる地位にあるものとはいえないとしている(最判昭32.2.15民集11巻2号270頁)。本肢は、同判決のとおりである。

イ 誤り。判例は、被相続人の事実的支配の中にあった物は、原則として、当然に、相続人の支配の中に承継されるとみるべきであるから、その結果として占有権も承継され、被相続人が死亡して相続が開始するときは、特別の事情のない限り、従前その占有に属したものは当然相続人の占有に移るとし、土地を占有していた被相続人が死亡し相続が開始した場合には、特別の事情のない限り、被相続人のその土地に対する占有は相続人によって相続されるとしている(最判昭44.10.30民集23巻10号1881頁)。同判決は、特別の事情のない限り、占有が相続人の支配の中に当然に承継されるとしており、相続人がその土地を現実に所持するに至ったことを承継の要件としていないから、相続人がその土地を現実に所持するに至っていないことを理由に占有が承継されないとする本肢は誤りである。

ウ 誤り。民法184条は、「代理人によって占有をする場合において、本人がその代理人に対して以後第三者のためにその物を占有することを命じ、その第三者がこれを承諾したときは、その第三者は、占有権を取得する。」と定めている。指図による占有移転によって第三者が占有権を取得するために同条が求めているのは、本人の代理人に対する命令と、その第三者の承諾であり、代理人の承諾ではない。本肢では、第三者であるCが承諾していないから、Cは同条により占有権を取得しない。本肢は誤りである。

エ 正しい。民法185条は、「権原の性質上占有者に所有の意思がないものとされる場合には、その占有者が、自己に占有をさせた者に対して所有の意思があることを表示し、又は新たな権原により更に所有の意思をもって占有を始めるのでなければ、占有の性質は、変わらない。」と定めている。同条は、所有の意思があることの表示と、新たな権原により更に所有の意思をもって占有を始めることとを「又は」で結んでいるから、いずれか一方があれば占有の性質は変わる。賃借人として土地を占有していた者が、賃貸人からその土地を買い受け、以後所有の意思をもって占有を始めた本肢の場合は、新たな権原により更に所有の意思をもって占有を始めた場合に当たるから、賃貸人に対して所有の意思があることを表示していなくても、その占有は所有の意思をもってする占有となる。本肢は正しい。

オ 誤り。民法204条1項は、代理人によって占有をする場合の占有権の消滅事由として、1号で「本人が代理人に占有をさせる意思を放棄したこと。」を、2号で「代理人が本人に対して以後自己又は第三者のために占有物を所持する意思を表示したこと。」を、3号で「代理人が占有物の所持を失ったこと。」を掲げ、同条2項は、「占有権は、代理権の消滅のみによっては、消滅しない。」と定めている。代理権が消滅したことのみによって本人の占有権が消滅するとする本肢は誤りである。

ポイント:占有権は、自己のためにする意思をもって物を所持することによって取得し(民法180条)、代理人によって取得することもできる(同法181条)。株式会社の代表取締役が会社の代表者として土地を所持する場合の直接占有者は会社自身であり、代表者は、個人のためにも所持すると認めるべき特段の事情がない限り、個人として占有者たる地位にない(最判昭32.2.15)。被相続人の占有は、特別の事情のない限り、相続人に当然に承継される(最判昭44.10.30)。指図による占有移転では、本人が代理人に命じ、第三者が承諾したときに第三者が占有権を取得する(同法184条)。他主占有は、所有の意思の表示又は新たな権原による所有の意思をもってする占有の開始のいずれかがなければ自主占有に変わらない(同法185条)。代理占有権は、本人の意思の放棄、代理人の意思の表示、代理人の所持の喪失によって消滅し、代理権の消滅のみによっては消滅しない(同法204条)。「指図で承諾するのは第三者、性質の変更は表示か新権原のどちらか、代理権が消えても占有は消えない」と押さえる。


問題:

遺言の撤回に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものはいくつあるか。

ア. 公正証書によってした遺言を撤回するには、公正証書による遺言の方式に従わなければならず、自筆証書による遺言の方式に従ってこれを撤回することはできない。

イ. 前の遺言が後の遺言と抵触するときは、前の遺言は、後の遺言と抵触しない部分を含めて、その全部について、後の遺言で撤回したものとみなされる。

ウ. 遺言者が、甲土地をAに遺贈する旨の遺言をした後、生前に甲土地をBに売却したときは、その遺言のうちその売却と抵触する部分については、遺言を撤回したものとみなされる。

エ. 終生扶養を受けることを前提として養子縁組をしたうえ、その所有する不動産の大半を養子に遺贈する旨の遺言をした者が、その後養子に対する不信の念を深くして協議離縁をし、法律上も事実上も扶養を受けないことにした場合には、その遺言は、後にされた協議離縁と抵触するものとして、撤回したものとみなされる。

オ. 遺言者が、遺言をした後に、受遺者に対してその遺言を撤回する権利を放棄する旨の意思表示をしたときは、遺言者は、その遺言を撤回することができない。

答え:

正しいものは、ウ・エの2つである。

解説:

本問は、遺言の撤回の方式(民法1022条)、前の遺言と後の遺言との抵触及び遺言と生前処分との抵触(同法1023条、最判昭56.11.13民集35巻8号1251頁)並びに遺言の撤回権の放棄の禁止(同法1026条)を問うものであり、正しいのはウ・エの2つである。

ア 誤り。民法1022条は、「遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。」と定めている。同条は、撤回を「遺言の方式に従って」することを求めているにとどまり、撤回の対象となる遺言と同一の方式によることを求めていない。公正証書によってした遺言を自筆証書による遺言の方式に従って撤回することはできないとする本肢は誤りである。

イ 誤り。民法1023条1項は、「前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。」と定めている。撤回したものとみなされるのは、前の遺言のうち後の遺言と抵触する部分に限られるから、抵触しない部分を含めて全部について撤回したものとみなされるとする本肢は誤りである。

ウ 正しい。民法1023条2項は、「前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。」と定めている。甲土地をAに遺贈する旨の遺言をした遺言者が、その後生前に甲土地をBに売却することは、遺言後の生前処分であり、その遺言と抵触するから、同項が準用する同条1項により、その遺言のうち売却と抵触する部分については、遺言を撤回したものとみなされる。本肢は正しい。

エ 正しい。判例は、民法1023条2項にいう抵触とは、単に、後の生前処分を実現しようとするときには前の遺言の執行が客観的に不能となるような場合にのみにとどまらず、諸般の事情より観察して後の生前処分が前の遺言と両立せしめない趣旨のもとにされたことが明らかである場合をも包含するとしたうえで、終生扶養を受けることを前提として養子縁組をしたうえその所有する不動産の大半を養子に遺贈する旨の遺言をした者が、その後養子に対する不信の念を深くして協議離縁をし、法律上も事実上も扶養を受けないことにした場合には、その遺言は、その後にされた協議離縁と抵触するものとして、同項の規定により取り消されたものとみなすべきであるとしている(最判昭56.11.13民集35巻8号1251頁)。同判決は、当時の同条1項が「後の遺言で前の遺言を取り消したものとみなす旨」を定めていたことを前提に「取り消された」と表現しているが、現行の同条1項は「撤回したものとみなす」と定めており、本肢は現行の文言によっている。本肢は正しい。

オ 誤り。民法1026条は、「遺言者は、その遺言を撤回する権利を放棄することができない。」と定めている。遺言者は遺言の撤回権を放棄することができないから、受遺者に対して撤回権を放棄する旨の意思表示をしたとしても、遺言者は、民法1022条により、いつでも、遺言の方式に従ってその遺言を撤回することができる。本肢は誤りである。

ポイント:遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って遺言の全部又は一部を撤回することができ(民法1022条)、撤回の対象となる遺言と同一の方式による必要はない。前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分について後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなされ(同法1023条1項)、遺言と遺言後の生前処分その他の法律行為とが抵触する場合も同様である(同条2項)。同項の抵触には、後の生前処分が前の遺言と両立させない趣旨のもとにされたことが諸般の事情から明らかである場合も含まれ、終生扶養を前提に養子縁組をして不動産の大半を養子に遺贈する遺言をした者が、その後協議離縁をして扶養を受けないことにした場合は、遺言は協議離縁と抵触する(最判昭56.11.13)。遺言者は遺言の撤回権を放棄することができない(同法1026条)。「撤回の方式は遺言の方式なら何でもよい、みなし撤回は抵触する部分だけ、撤回権は放棄できない」と押さえる。


問題:

表示に関する登記の申請義務及び過料に関する次の記述のうち、不動産登記法の規定に照らし正しいものはいくつあるか。

ア. 表題登記がない土地の所有権を売買により取得した者は、その所有権の取得の日から1月以内に、当該土地の表題登記を申請しなければならず、正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、10万円以下の過料に処せられる。

イ. Aが区分建物以外の建物を新築し、その表題登記を申請しないまま、新築の日から20日後に当該建物をBに売却した場合には、Bは、Aが当該建物を新築した日から1月以内に、当該建物の表題登記を申請しなければならない。

ウ. 共用部分である旨の登記がある建物について共用部分である旨を定めた規約を廃止した後に当該建物の所有権を取得した者は、当該規約の廃止の日から1月以内に、当該建物の表題登記を申請しなければならない。

エ. 土地の地目について変更があった後に、表題部所有者についての更正の登記によって当該土地の表題部所有者となった者は、当該更正の登記があった日から1月以内に、当該地目に関する変更の登記を申請しなければならない。

オ. 地目又は地積に関する変更の登記の申請を正当な理由がないのに怠った者は10万円以下の過料に処せられるが、建物の表題部の変更の登記については、申請義務は定められているものの、その申請を怠っても過料に処せられることはない。

答え:

正しいものは、ア・エの2つである。

解説:

本問は、土地の表題登記の申請義務(不動産登記法36条)、地目又は地積の変更の登記の申請義務(同法37条)、建物の表題登記の申請義務(同法47条1項)、共用部分である旨を定めた規約を廃止した場合の表題登記の申請義務(同法58条6項・7項)及び申請義務の懈怠に対する過料(同法164条1項)を問うものであり、正しいのはア・エの2つである。

ア 正しい。不動産登記法36条は、「新たに生じた土地又は表題登記がない土地の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から一月以内に、表題登記を申請しなければならない。」と定めている。そして、同法164条1項は、「第三十六条、第三十七条第一項若しくは第二項、第四十二条、第四十七条第一項(第四十九条第二項において準用する場合を含む。)、第四十九条第一項、第三項若しくは第四項、第五十一条第一項から第四項まで、第五十七条、第五十八条第六項若しくは第七項(中略)の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、十万円以下の過料に処する。」と定めている。表題登記がない土地の所有権を売買により取得した者は、同法36条により所有権の取得の日から1月以内に表題登記を申請しなければならず、その懈怠は同法164条1項の過料の対象となる。本肢は正しい。

イ 誤り。不動産登記法47条1項は、「新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から一月以内に、表題登記を申請しなければならない。」と定めている。Bは、区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者に当たるから、同項により表題登記の申請義務を負うが、その期間の起算点は、B自身の「その所有権の取得の日」であって、Aが建物を新築した日ではない。本肢は誤りである。

ウ 誤り。不動産登記法58条6項は、「共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記がある建物について共用部分である旨又は団地共用部分である旨を定めた規約を廃止した場合には、当該建物の所有者は、当該規約の廃止の日から一月以内に、当該建物の表題登記を申請しなければならない。」と定め、同条7項は、「前項の規約を廃止した後に当該建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から一月以内に、当該建物の表題登記を申請しなければならない。」と定めている。規約の廃止の日を起算点とするのは、規約を廃止した時の所有者についての同条6項であり、規約の廃止後に所有権を取得した者の申請期間は、同条7項により、その所有権の取得の日から起算する。本肢は誤りである。

エ 正しい。不動産登記法37条1項は、「地目又は地積について変更があったときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人は、その変更があった日から一月以内に、当該地目又は地積に関する変更の登記を申請しなければならない。」と定め、同条2項は、「地目又は地積について変更があった後に表題部所有者又は所有権の登記名義人となった者は、その者に係る表題部所有者についての更正の登記又は所有権の登記があった日から一月以内に、当該地目又は地積に関する変更の登記を申請しなければならない。」と定めている。地目の変更後に表題部所有者についての更正の登記によって表題部所有者となった者は、同条2項により、当該更正の登記があった日から1月以内に地目に関する変更の登記を申請しなければならない。本肢は正しい。

オ 誤り。アで引用したとおり、不動産登記法164条1項は、過料の対象となる申請義務として、同法37条1項・2項(地目又は地積の変更の登記)とともに、同法51条1項から4項まで(建物の表題部の変更の登記)を掲げている。建物の表題部の変更の登記の申請を正当な理由がないのに怠った者も10万円以下の過料に処せられるから、本肢は誤りである。

ポイント:表示に関する登記の申請義務の期間はいずれも1月であり、起算点は、土地の表題登記では所有権の取得の日(不動産登記法36条)、建物の表題登記では新築した者・区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者のそれぞれの所有権の取得の日(同法47条1項)、地目又は地積の変更の登記では変更があった日(同法37条1項)、変更後に表題部所有者又は所有権の登記名義人となった者では表題部所有者についての更正の登記又は所有権の登記があった日(同条2項)である。共用部分である旨等を定めた規約の廃止による表題登記は、廃止時の所有者は廃止の日から、廃止後の取得者はその取得の日から1月以内に申請する(同法58条6項・7項)。これらの申請義務の懈怠は、建物の表題部の変更の登記(同法51条1項〜4項)を含め、10万円以下の過料の対象となる(同法164条1項)。「起算点は、その人が義務を負うことになった日」と押さえる。


問題:

登記事項証明書の交付等及び地図の写しの交付等に関する次の記述のうち、不動産登記法の規定に照らし誤っているものはいくつあるか。

ア. 登記記録に記録されている事項の概要を記載した書面の交付の請求は、登記事項証明書の交付の請求と同様に、請求に係る不動産の所在地を管轄する登記所以外の登記所の登記官に対してもすることができる。

イ. 地図に準ずる図面の閲覧を請求するには、請求人は、当該図面に記録されている土地について利害関係を有することを明らかにしなければならない。

ウ. 地図が電磁的記録に記録されているときは、地図の写しの交付の請求に対しては、当該記録された情報の内容を証明した書面が交付される。

エ. 登記記録に記録されている自然人の住所が明らかにされることにより、人の生命若しくは身体に危害を及ぼすおそれがある場合等として法務省令で定める場合において、その者からの申出があったときに、登記官が当該住所に代わるものとして法務省令で定める事項を記載しなければならないのは、登記事項証明書に限られ、登記記録に記録されている事項の概要を記載した書面には及ばない。

オ. 登記事項証明書の交付の請求の手数料の納付は、収入印紙をもってするのが原則であるが、法務省令で定める方法で登記事項証明書の交付を請求するときは、法務省令で定めるところにより、現金をもってすることができる。

答え:

誤っているものは、ア・イ・エの3つである。

解説:

本問は、登記事項証明書及び登記記録に記録されている事項の概要を記載した書面の交付(不動産登記法119条)並びに地図等の写しの交付及び閲覧(同法120条)を問うものであり、誤っているのはア・イ・エの3つである。

ア 誤り。不動産登記法119条1項は、「何人も、登記官に対し、手数料を納付して、登記記録に記録されている事項の全部又は一部を証明した書面(以下「登記事項証明書」という。)の交付を請求することができる。」と定め、同条2項は、「何人も、登記官に対し、手数料を納付して、登記記録に記録されている事項の概要を記載した書面の交付を請求することができる。」と定めている。そして、同条5項は、「第一項の交付の請求は、法務省令で定める場合を除き、請求に係る不動産の所在地を管轄する登記所以外の登記所の登記官に対してもすることができる。」と定めている。管轄登記所以外の登記所に対してもすることができるとされているのは、同条1項の登記事項証明書の交付の請求であり、同条2項の書面の交付の請求は同条5項の対象とされていないから、本肢は誤りである。

イ 誤り。不動産登記法120条2項は、「何人も、登記官に対し、手数料を納付して、地図等(地図等が電磁的記録に記録されているときは、当該記録された情報の内容を法務省令で定める方法により表示したもの)の閲覧を請求することができる。」と定め、同条1項は、「地図等」を「地図、建物所在図又は地図に準ずる図面」としている。地図に準ずる図面の閲覧は、何人も請求することができ、利害関係を有することを明らかにすることは要件とされていないから、本肢は誤りである。

ウ 正しい。不動産登記法120条1項は、「何人も、登記官に対し、手数料を納付して、地図、建物所在図又は地図に準ずる図面(以下この条において「地図等」という。)の全部又は一部の写し(地図等が電磁的記録に記録されているときは、当該記録された情報の内容を証明した書面)の交付を請求することができる。」と定めている。本肢は、同項の括弧書のとおりである。

エ 誤り。不動産登記法119条6項は、「登記官は、第一項及び第二項の規定にかかわらず、登記記録に記録されている者(自然人であるものに限る。)の住所が明らかにされることにより、人の生命若しくは身体に危害を及ぼすおそれがある場合又はこれに準ずる程度に心身に有害な影響を及ぼすおそれがあるものとして法務省令で定める場合において、その者からの申出があったときは、法務省令で定めるところにより、第一項及び第二項に規定する各書面に当該住所に代わるものとして法務省令で定める事項を記載しなければならない。」と定めている。住所に代わる事項を記載しなければならないのは、同条1項の登記事項証明書と同条2項の書面の「各書面」であるから、登記事項証明書に限られるとする本肢は誤りである。

オ 正しい。不動産登記法119条4項は、「第一項及び第二項の手数料の納付は、収入印紙をもってしなければならない。ただし、法務省令で定める方法で登記事項証明書の交付を請求するときは、法務省令で定めるところにより、現金をもってすることができる。」と定めている。本肢は、同項のとおりである。

ポイント:登記事項証明書と登記記録に記録されている事項の概要を記載した書面は、いずれも何人も手数料を納付して交付を請求することができ(不動産登記法119条1項・2項)、手数料は収入印紙で納付するのが原則で、法務省令で定める方法で登記事項証明書を請求するときは現金で納付できる(同条4項)。管轄登記所以外の登記所に請求できるのは登記事項証明書(同条1項の交付の請求)であり(同条5項)、概要を記載した書面は含まれない。住所に代わる事項の記載は、自然人からの申出によるもので、両方の書面に及ぶ(同条6項)。地図、建物所在図及び地図に準ずる図面は、何人も写しの交付と閲覧を請求でき、電磁的記録に記録されているときは記録された情報の内容を証明した書面が交付される(同法120条1項・2項)。「管轄外で取れるのは証明書だけ、住所の代替記載は両方の書面に」と押さえる。


問題:

筆界特定の手続費用、申請の却下及び筆界特定手続記録等に関する次の記述のうち、不動産登記法の規定に照らし正しいものはいくつあるか。なお、「所有権登記名義人等」とは、不動産登記法123条5号に規定する所有権登記名義人等をいう。

ア. 筆界特定の申請人が二人ある場合において、その一人が対象土地の一方の土地の所有権登記名義人等であり、他の一人が他方の土地の所有権登記名義人等であるときは、各筆界特定の申請人は、等しい割合で手続費用を負担する。

イ. 甲土地の所有権の登記名義人がA(持分3分の2)及びB(持分3分の1)であり、甲土地に隣接する乙土地の所有権の登記名義人がCである場合において、A、B及びCが共同して甲土地と乙土地との筆界について筆界特定の申請をしたときは、A、B及びCは、それぞれ手続費用の3分の1ずつを負担する。

ウ. 筆界特定登記官は、筆界特定の申請人に手続費用の概算額を予納させなければならず、予納を命じた場合においてその予納がないことは、筆界特定の申請の却下事由とされている。

エ. 筆界特定の事務は、対象土地の所在地を管轄する法務局又は地方法務局がつかさどるが、筆界特定の申請人に対し筆界特定書の内容の通知がされた場合における筆界特定手続記録は、対象土地の所在地を管轄する登記所において保管する。

オ. 筆界特定登記官は、筆界調査委員の意見が提出されたときは、その意見のみに基づいて対象土地の筆界特定をしなければならず、対象土地及び関係土地の地形や工作物、囲障又は境界標の有無その他の状況を考慮することはできない。

答え:

正しいものは、ア・ウ・エの3つである。

解説:

本問は、筆界特定の事務をつかさどる機関(不動産登記法124条1項)、筆界特定の申請の却下(同法132条1項9号)、筆界特定の方法(同法143条1項)、筆界特定手続記録の保管(同法145条)及び手続費用の負担と予納(同法146条)を問うものであり、正しいのはア・ウ・エの3つである。

ア 正しい。不動産登記法146条1項は、「筆界特定の手続における測量に要する費用その他の法務省令で定める費用(以下この条において「手続費用」という。)は、筆界特定の申請人の負担とする。」と定め、同条2項は、「筆界特定の申請人が二人ある場合において、その一人が対象土地の一方の土地の所有権登記名義人等であり、他の一人が他方の土地の所有権登記名義人等であるときは、各筆界特定の申請人は、等しい割合で手続費用を負担する。」と定めている。本肢は、同条2項のとおりである。

イ 誤り。不動産登記法146条4項は、「筆界特定の申請人が三人以上ある場合において、その一人又は二人以上が対象土地の一方の土地の所有権登記名義人等であり、他の一人又は二人以上が他方の土地の所有権登記名義人等であるときは、対象土地のいずれかの土地の一人の所有権登記名義人等である筆界特定の申請人は、手続費用の二分の一に相当する額を負担し、対象土地のいずれかの土地の二人以上の所有権登記名義人等である各筆界特定の申請人は、手続費用の二分の一に相当する額についてその持分の割合に応じてこれを負担する。」と定め、同条3項は、筆界特定の申請人が二人以上ある場合においてその全員が対象土地の一方の土地の所有権登記名義人等であるときは、各筆界特定の申請人がその持分の割合に応じて手続費用を負担すると定め、ここにいう持分を、所有権の登記がある一筆の土地にあっては同法59条4号の持分、所有権の登記がない一筆の土地にあっては同法27条3号の持分とし、同条4項においても同じとしている。乙土地の一人の所有権登記名義人等であるCは手続費用の2分の1を負担し、甲土地の二人の所有権登記名義人等であるA及びBは、残りの2分の1をその持分の割合に応じて負担するから、Aは3分の1(2分の1×3分の2)、Bは6分の1(2分の1×3分の1)を負担する。それぞれ3分の1ずつを負担するとする本肢は誤りである。

ウ 正しい。不動産登記法146条5項は、「筆界特定登記官は、筆界特定の申請人に手続費用の概算額を予納させなければならない。」と定めている。そして、同法132条1項は、筆界特定登記官は、同項各号に掲げる場合には、理由を付した決定で、筆界特定の申請を却下しなければならないと定め、9号で「第百四十六条第五項の規定により予納を命じた場合においてその予納がないとき。」を掲げている。本肢は、これらの規定のとおりである。

エ 正しい。不動産登記法124条1項は、「筆界特定の事務は、対象土地の所在地を管轄する法務局又は地方法務局がつかさどる。」と定め、同法145条は、「前条第一項の規定により筆界特定の申請人に対する通知がされた場合における筆界特定の手続の記録(以下「筆界特定手続記録」という。)は、対象土地の所在地を管轄する登記所において保管する。」と定めている。本肢は、これらの規定のとおりである。

オ 誤り。不動産登記法143条1項は、「筆界特定登記官は、前条の規定により筆界調査委員の意見が提出されたときは、その意見を踏まえ、登記記録、地図又は地図に準ずる図面及び登記簿の附属書類の内容、対象土地及び関係土地の地形、地目、面積及び形状並びに工作物、囲障又は境界標の有無その他の状況及びこれらの設置の経緯その他の事情を総合的に考慮して、対象土地の筆界特定をし、その結論及び理由の要旨を記載した筆界特定書を作成しなければならない。」と定めている。筆界特定登記官は、筆界調査委員の意見を踏まえつつ、同項に掲げる事情を総合的に考慮して筆界特定をするのであるから、意見のみに基づいて筆界特定をしなければならず、地形や工作物等の状況を考慮することはできないとする本肢は誤りである。

ポイント:手続費用は筆界特定の申請人の負担であり(不動産登記法146条1項)、対象土地の両側から一人ずつ申請したときは等しい割合で、一方の土地の所有権登記名義人等だけが複数で申請したときは持分の割合に応じて、三人以上が両側から申請したときは、一方の土地の一人の申請人が2分の1を、二人以上の側の各申請人が残りの2分の1を持分の割合に応じて負担する(同条2項〜4項)。筆界特定登記官は手続費用の概算額を予納させなければならず(同条5項)、予納を命じたのに予納がないことは却下事由である(同法132条1項9号)。筆界特定の事務は対象土地の所在地を管轄する法務局又は地方法務局がつかさどるが(同法124条1項)、筆界特定手続記録は対象土地の所在地を管轄する登記所で保管する(同法145条)。筆界特定は、筆界調査委員の意見を踏まえ、登記記録・地図等の内容や現地の状況等を総合的に考慮して行う(同法143条1項)。「三人以上で両側から申請したら、まず土地の側ごとに半分ずつ」と押さえる。


問題:

土地家屋調査士(以下「調査士」という。)の義務及びその違反に対する罰則に関する次の記述のうち、土地家屋調査士法の規定に照らし正しいものはいくつあるか。なお、「調査士法人」とは、同法26条に規定する土地家屋調査士法人をいう。

ア. 調査士は、正当な事由がある場合でなければ、筆界特定の手続について法務局又は地方法務局に提出する書類の作成の依頼を拒んではならない。

イ. 調査士は、不動産の表示に関する登記の申請手続についての代理の依頼は正当な事由がある場合でなければ拒んではならないが、当該申請手続についての相談の依頼は、正当な事由がなくても拒むことができる。

ウ. 調査士法人が正当な事由なく依頼を拒んだときは、その違反行為をした調査士法人の社員又は使用人が100万円以下の罰金に処せられるほか、当該調査士法人に対しても罰金刑が科される。

エ. 調査士であった者は、調査士の登録を取り消された後は、業務上取り扱った事件について知ることのできた秘密を正当な事由なく他に漏らしたとしても、土地家屋調査士法による刑事罰を科されることはない。

オ. 調査士は、仲裁手続により仲裁人として取り扱った事件については、筆界特定の手続についての代理の業務を行ってはならないが、当該事件に係る土地の表示に関する登記について必要な調査又は測量の業務は行うことができる。

答え:

正しいものは、ア・ウの2つである。

解説:

本問は、依頼に応ずる義務(土地家屋調査士法22条)、業務を行い得ない事件(同法22条の2第1項)、秘密保持の義務(同法24条の2)及びこれらに関する罰則(同法70条・71条の2・75条)を問うものであり、正しいのはア・ウの2つである。

ア 正しい。土地家屋調査士法22条は、「調査士は、正当な事由がある場合でなければ、依頼(第三条第一項第四号及び第六号(第四号に関する部分に限る。)に規定する業務並びに民間紛争解決手続代理関係業務に関するものを除く。)を拒んではならない。」と定めている。同法3条1項は、4号で「筆界特定の手続(中略)についての代理」を、5号で「筆界特定の手続について法務局又は地方法務局に提出し、又は提供する書類又は電磁的記録の作成」を掲げている。同法22条括弧書が依頼に応ずる義務の対象から除いているのは、同法3条1項4号の代理、同項6号の相談のうち4号に関する部分及び民間紛争解決手続代理関係業務に関する依頼であり、同項5号の書類の作成に関する依頼は除かれていない。したがって、調査士は、正当な事由がある場合でなければ、筆界特定の手続について法務局又は地方法務局に提出する書類の作成の依頼を拒んではならない。本肢は正しい。

イ 誤り。土地家屋調査士法3条1項は、2号で「不動産の表示に関する登記の申請手続又はこれに関する審査請求の手続についての代理」を、6号で「前各号に掲げる事務についての相談」を掲げている。アで引用したとおり、同法22条括弧書が依頼に応ずる義務の対象から除いている相談の業務は、同法3条1項6号のうち4号(筆界特定の手続についての代理)に関する部分に限られる。不動産の表示に関する登記の申請手続についての相談は、同項6号のうち2号に関する部分であって除外されていないから、調査士は、正当な事由がある場合でなければ、その依頼を拒んではならない。本肢は誤りである。

ウ 正しい。土地家屋調査士法41条1項は、「第一条、第二条、第二十条から第二十二条まで及び第二十四条の規定は、調査士法人について準用する。」と定め、同法70条2項は、「調査士法人が第四十一条第一項において準用する第二十二条の規定に違反したときは、その違反行為をした調査士法人の社員又は使用人は、百万円以下の罰金に処する。」と定めている。そして、同法75条は、「法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第七十条第二項若しくは第三項又は第七十二条から前条までの違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。」と定めている。調査士法人が依頼に応ずる義務に違反したときは、違反行為をした社員又は使用人が100万円以下の罰金に処せられるほか、その違反行為が当該調査士法人の業務に関するものであるときは、同条により当該調査士法人にも罰金刑が科される。本肢は正しい。なお、調査士が同法22条の規定に違反した場合の罰則は、同法70条1項の「百万円以下の罰金」である。

エ 誤り。土地家屋調査士法24条の2は、「調査士又は調査士であつた者は、正当な事由がある場合でなければ、業務上取り扱つた事件について知ることのできた秘密を他に漏らしてはならない。」と定め、同法71条の2第1項は、「第二十四条の二の規定に違反した者は、六月以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。」と定めている。秘密保持の義務は「調査士であつた者」も負い、その違反は同項の罰則の対象となるから、本肢は誤りである。なお、同条2項は、「前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。」と定めている。

オ 誤り。土地家屋調査士法22条の2第1項は、「調査士は、公務員として職務上取り扱つた事件及び仲裁手続により仲裁人として取り扱つた事件については、その業務を行つてはならない。」と定めている。同項は、業務を行ってはならない範囲を、筆界特定手続代理関係業務(同条2項)のような特定の業務に限定しておらず、「その業務」を行ってはならないとしているから、仲裁人として取り扱った事件について、土地の表示に関する登記について必要な調査又は測量の業務(同法3条1項1号)は行うことができるとする本肢は誤りである。

ポイント:調査士は、正当な事由がある場合でなければ依頼を拒んではならないが、筆界特定の手続についての代理(土地家屋調査士法3条1項4号)とその相談、民間紛争解決手続代理関係業務に関する依頼はこの義務の対象から除かれ、筆界特定の手続の書類の作成(同項5号)や表示に関する登記の申請手続についての相談は除かれていない(同法22条)。違反した調査士は100万円以下の罰金に処せられ、調査士法人が違反したときは違反行為をした社員又は使用人が罰せられ、法人にも罰金刑が科される(同法70条1項・2項、41条1項、75条)。公務員として職務上取り扱った事件及び仲裁人として取り扱った事件は、業務の種類を問わず行うことができない(同法22条の2第1項)。秘密保持の義務は調査士であった者も負い、違反は6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金で、告訴がなければ公訴を提起できない(同法24条の2、71条の2)。「依頼に応ずる義務から外れるのは、筆界特定の『代理』とその相談、民間紛争解決手続代理関係業務だけ」と押さえる。


問題:

地積測量図及び土地所在図に関する次の記述のうち、不動産登記規則の規定に照らし誤っているものはいくつあるか。

ア. 地積測量図には、地番区域の名称、方位、縮尺及び測量の年月日のほか、地番として当該土地の地番だけでなく隣接地の地番も記録しなければならず、また、国土調査法施行令2条1項1号に規定する平面直角座標系の番号又は記号も記録しなければならない。

イ. 地積測量図は、近傍類似の土地についての不動産登記法14条1項の地図と同一の縮尺により作成するものとされ、土地所在図は、原則として250分の1の縮尺により作成するものとされている。

ウ. 近傍に基本三角点等が存しない場合その他の基本三角点等に基づく測量ができない特別の事情がある場合には、地積測量図には、筆界点の座標値を記録することを要せず、筆界点間の距離を記録すれば足りる。

エ. 分筆の登記を申請する場合において提供する分筆後の土地の地積測量図は、分筆後の土地ごとに作成しなければならない。

オ. 地積測量図に記録する境界標とは、筆界点にある永続性のある石杭又は金属標その他これに類する標識をいい、その表示は、境界標の存する筆界点に符号を付し、適宜の箇所にその符号及び境界標の種類を記録する方法その他これに準ずる方法によってするものとされている。

答え:

誤っているものは、イ・ウ・エの3つである。

解説:

本問は、土地所在図及び地積測量図の作成単位(不動産登記規則75条)、土地所在図の内容(同規則76条)及び地積測量図の内容(同規則77条)を問うものであり、誤っているのはイ・ウ・エの3つである。

ア 正しい。不動産登記規則77条1項は、地積測量図に記録しなければならない事項として、1号で「地番区域の名称」、2号で「方位」、3号で「縮尺」、4号で「地番(隣接地の地番を含む。)」、5号で「地積及びその求積方法」、6号で「筆界点間の距離」、7号で「国土調査法施行令第二条第一項第一号に規定する平面直角座標系の番号又は記号」、8号で「基本三角点等に基づく測量の成果による筆界点の座標値」、9号で境界標があるときの当該境界標の表示、10号で「測量の年月日」を掲げている。本肢は、同項1号から4号まで、7号及び10号のとおりである。

イ 誤り。不動産登記規則77条4項は、「地積測量図は、二百五十分の一の縮尺により作成するものとする。ただし、土地の状況その他の事情により当該縮尺によることが適当でないときは、この限りでない。」と定め、同規則76条2項は、「土地所在図は、近傍類似の土地についての法第十四条第一項の地図と同一の縮尺により作成するものとする。」と定めている。本肢は、地積測量図と土地所在図の縮尺の定めを入れ替えたものであるから、誤りである。

ウ 誤り。不動産登記規則77条2項は、「近傍に基本三角点等が存しない場合その他の基本三角点等に基づく測量ができない特別の事情がある場合には、前項第七号及び第八号に掲げる事項に代えて、近傍の恒久的な地物に基づく測量の成果による筆界点の座標値を記録しなければならない。」と定めている。基本三角点等に基づく測量ができない特別の事情がある場合であっても、同条1項7号(平面直角座標系の番号又は記号)及び8号(基本三角点等に基づく測量の成果による筆界点の座標値)に代えて、近傍の恒久的な地物に基づく測量の成果による筆界点の座標値を記録しなければならず、筆界点の座標値の記録を要しないわけではない。本肢は誤りである。なお、筆界点間の距離(同項6号)は、同条2項によって代えられる事項ではない。

エ 誤り。不動産登記規則75条1項は、「土地所在図及び地積測量図は、一筆の土地ごとに作成しなければならない。」と定め、同条2項は、「分筆の登記を申請する場合において提供する分筆後の土地の地積測量図は、分筆前の土地ごとに作成するものとする。」と定めている。分筆後の土地の地積測量図は、分筆前の土地ごとに作成するものであり、分筆後の土地ごとに作成しなければならないとする本肢は誤りである。

オ 正しい。不動産登記規則77条1項9号は、「境界標(筆界点にある永続性のある石杭又は金属標その他これに類する標識をいう。以下同じ。)があるときは、当該境界標の表示」と定め、同条3項は、「第一項第九号の境界標の表示を記録するには、境界標の存する筆界点に符号を付し、適宜の箇所にその符号及び境界標の種類を記録する方法その他これに準ずる方法によってするものとする。」と定めている。本肢は、これらの規定のとおりである。

ポイント:地積測量図には、地番区域の名称、方位、縮尺、地番(隣接地の地番を含む)、地積及びその求積方法、筆界点間の距離、平面直角座標系の番号又は記号、基本三角点等に基づく測量の成果による筆界点の座標値、境界標があるときはその表示、測量の年月日の10項目を記録する(不動産登記規則77条1項)。基本三角点等に基づく測量ができない特別の事情があるときは、平面直角座標系の番号又は記号と基本三角点等に基づく筆界点の座標値に代えて、近傍の恒久的な地物に基づく測量の成果による筆界点の座標値を記録する(同条2項)。境界標の表示は、筆界点に符号を付し、その符号と境界標の種類を記録する方法等による(同条3項)。縮尺は、地積測量図が原則250分の1(同条4項)、土地所在図が近傍類似の土地についての地図と同一の縮尺である(同規則76条2項)。土地所在図及び地積測量図は一筆の土地ごとに作成するが、分筆後の土地の地積測量図は分筆前の土地ごとに作成する(同規則75条)。「地積測量図は250分の1、所在図は地図に合わせる」「分筆の測量図は分筆前の1筆で1枚」と押さえる。


出題分野の振り分け

問 分野 主な論点 主な根拠条文
第1問 民法(総則・詐欺又は強迫) 強迫による意思表示と選択の自由、第三者による詐欺(相手方が知ることができた場合)、農地の仮登記上の権利の譲受人と詐欺取消しの第三者、取消権者、強迫による取消しと第三者 民法96条1項〜3項、120条2項
第2問 民法(物権・占有権の取得と消滅) 代表取締役による所持と会社の占有、占有権の相続、指図による占有移転と第三者の承諾、新たな権原による占有の性質の変更、代理権の消滅と代理占有権 民法180条、181条、184条、185条、204条、896条
第3問 民法(相続・遺言の撤回) 撤回の方式(同一方式を要しない)、前の遺言と後の遺言との抵触(抵触部分のみ)、遺言後の生前処分との抵触、協議離縁と遺贈の抵触、撤回権の放棄の禁止 民法1022条、1023条1項・2項、1026条
第4問 不動産登記法(表示に関する登記の申請義務・過料) 土地の表題登記の申請義務と過料、区分建物以外の建物の転得者の申請期間の起算点、共用部分である旨を定めた規約の廃止後の所有権取得者の申請期間、地目の変更後に表題部所有者の更正の登記により表題部所有者となった者の申請期間、建物の表題部の変更の登記の懈怠と過料 不動産登記法36条、37条1項・2項、47条1項、51条1項〜4項、58条6項・7項、164条1項
第5問 不動産登記法(登記事項証明書・地図の写しの交付等) 管轄登記所以外の登記所に請求できる書面(登記事項証明書に限ること)、地図に準ずる図面の閲覧の請求権者、電磁的記録に記録された地図の写しに代わる書面、住所に代わる事項の記載が及ぶ書面、手数料の納付方法(収入印紙・現金) 不動産登記法119条1項・2項・4項〜6項、120条1項・2項
第6問 不動産登記法(筆界特定の手続費用・却下・手続記録) 対象土地の両側から一人ずつ申請した場合の手続費用の負担、三人以上が両側から申請した場合の負担割合と持分、手続費用の予納と予納がない場合の却下、筆界特定の事務をつかさどる機関と筆界特定手続記録の保管登記所、筆界特定における総合考慮 不動産登記法124条1項、132条1項9号、143条1項、145条、146条1項〜5項
第7問 土地家屋調査士法(調査士の義務と罰則) 依頼に応ずる義務の対象(筆界特定の書類作成・表示に関する登記の申請手続の相談)、調査士法人の依頼に応ずる義務違反と両罰規定、調査士であった者の秘密保持の義務と罰則、仲裁人として取り扱った事件と業務の制限 土地家屋調査士法3条1項1号・2号・4号〜6号、22条、22条の2第1項、24条の2、41条1項、70条1項・2項、71条の2、75条
第8問 不動産登記規則(地積測量図・土地所在図) 地積測量図の記録事項(隣接地の地番・平面直角座標系の番号又は記号・測量の年月日)、地積測量図と土地所在図の縮尺、基本三角点等に基づく測量ができない場合の筆界点の座標値、分筆後の土地の地積測量図の作成単位、境界標の意義と表示の方法 不動産登記規則75条1項・2項、76条2項、77条1項〜4項