この記事の要点
- 亡くなった方が保険料を負担していた死亡保険金は、民法上の相続財産ではなくても、相続税では「相続や遺贈で取得したもの」とみなされ、課税の対象になる(相続税法3条1項1号)
- 非課税枠は「500万円×法定相続人の数」。人数は、相続放棄をした人も放棄がなかったものとして数え、養子は数に入れられる人数に上限がある(同法12条1項6号・15条2項)
- 枠を使えるのは相続人が受け取った保険金だけ。相続放棄をした人や相続人でない人が受け取った保険金には使えず、相続人どうしでは受け取った額の割合で枠を分ける
結論から言うと、死亡保険金の非課税枠は「人数を数えるときは相続放棄をした人も含めるが、枠を使えるのは相続人が受け取った分だけ」という、少しねじれた仕組みです。順に整理します。
死亡保険金は「みなし相続財産」
受取人が指定された生命保険金は、民法上は受取人自身の財産で、相続財産には含まれないとされています(相続放棄をしても生命保険金は受け取れる?)。しかし相続税では、被相続人(亡くなった方)の死亡によって受け取った生命保険金や、偶然な事故による死亡に伴って支払われる損害保険金のうち、被相続人が負担した保険料に対応する部分は、相続または遺贈で取得したものとみなされます(相続税法3条1項1号)。これを一般に「みなし相続財産」と呼びます。
保険料を負担していたのが受取人自身や別の人である場合は、相続税ではなく所得税や贈与税の対象になることがあり、この記事の非課税枠とは別の話になります。
非課税枠の計算式と「法定相続人の数」
相続人が受け取った死亡保険金には、「500万円×法定相続人の数」までの部分を相続税の計算に入れない、という非課税枠があります(相続税法12条1項6号)。ここでいう人数は、条文上は基礎控除と同じ「15条2項に規定する相続人の数」で、数え方も相続税の基礎控除と共通です。
- 相続放棄をした人がいても、放棄がなかったものとした場合の人数で数える(同法15条2項)
- 養子は、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までしか数に入れられない(同項)。特別養子縁組による養子など一定の人は実子とみなされる(同条3項)
枠を使えるのは「相続人が受け取った分」だけ
人数の数え方とは逆に、枠を使えるのは相続人が受け取った保険金に限られます。相続税法3条1項は、ここでいう「相続人」から、相続を放棄した人と相続権を失った人(相続欠格や相続人の廃除にあたる人)を除いています。そのため、相続放棄をした人や、もともと相続人でない人(たとえば子が健在で相続人にならない孫)が受取人として受け取った保険金には、非課税枠は使えません。
また、相続人が複数で受け取り、その合計が枠を超えるときは、枠を各相続人が受け取った額の割合で分けます(同法12条1項6号ロ)。
架空の数字で仕組みだけを示すと、次のとおりです。法定相続人が配偶者と子2人の3人で、子の一人(子B)が相続放棄をしたとします。保険料はすべて亡くなった方が負担しており、3人がそれぞれ受取人として保険金を受け取ったものとします。
- 枠:500万円×3人=1,500万円(放棄した子Bも人数に入る)
- 受取額:配偶者1,200万円、子A600万円、子B300万円
- 相続人が受け取った合計:配偶者と子Aの1,800万円(相続放棄をした子Bは、枠を使える「相続人」には当たらないので入らない)
- 枠の分け方:配偶者は1,500万円×1,200/1,800=1,000万円、子Aは1,500万円×600/1,800=500万円
- 子Bの300万円には枠が使えない
これは仕組みを示すための例です。枠を超えた部分(配偶者200万円、子A100万円)や、枠が使えない子Bの300万円は、相続税の計算に含める財産になるという意味で、その金額にそのまま相続税がかかるわけではありません。相続税がかかるかどうかは、ほかの財産や基礎控除なども合わせて計算して初めて分かります。
なお、死亡退職金にも同じ形の「500万円×法定相続人の数」の枠が、保険金の枠とは別に設けられています(同法12条1項7号)。
執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です。
まとめ
死亡保険金は相続税ではみなし相続財産として扱われ、相続人が受け取った分には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があります。人数は相続放棄をした人も含めて数え、養子は数に入れられる人数に上限がある一方、枠を使えるのは相続人が受け取った保険金だけで、複数の相続人の間では受け取った額の割合で分けます。ここまでは制度の枠組みの話ですので、具体的な税額や申告が必要かどうかは税理士にご確認ください。相続放棄や相続登記などの手続きについては、お近くの司法書士にご相談ください。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年10月・いずれも一次情報です)。
- 相続税法 第3条・第5条・第12条・第15条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000073
- 国税庁「相続税法基本通達 第3条《相続又は遺贈により取得したものとみなす場合》関係」(3-1・3-2・3-16): https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/sozoku2/01/02.htm
- 国税庁「相続税法基本通達 第12条《相続税の非課税財産》関係」(12-7・12-8): https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/sozoku2/02/02.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.4114「相続税の課税対象になる死亡保険金」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4114.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.1750「死亡保険金を受け取ったとき」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1750.htm
- 財務省「令和6年度 税制改正の解説」租税特別措置法等(相続税・贈与税関係)の改正(公益信託に係る改正・相続税法12条の号の繰下げ): https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2024/explanation/PDF/p0595-0609.pdf