死亡保険金の非課税枠とは──「500万円×法定相続人の数」の意味と、使える人・使えない人

この記事の要点 亡くなった方が保険料を負担していた死亡保険金は、民法上の相続財産ではなくても、相続税では「相続や遺贈で取得したもの」とみなされ、課税の対象になる(相続税法3条1項1号) 非課税枠は「500万円×法定相続人の数」。人数は、相続放棄をした人も放棄がなかったものとして数え、養子は数に入れられる人数に上限がある(同法12条1項6号・15条2項) 枠を使えるのは相続人が受け取った保険金だけ。相続放棄をした人や相続人でない人が受け取った保険金には使えず、相続人どうしでは受け取った額の割合で枠を分ける 結論から言うと、死亡保険金の非課税枠は「人数を数えるときは相続放棄をした人も含めるが、枠を使えるのは相続人が受け取った分だけ」という、少しねじれた仕組みです。順に整理します。 ...

2026年10月17日 · ひぐらしさとし

相続した不動産を売ったときの「取得費加算の特例」とは──納めた相続税の一部を、売却益の計算で差し引ける制度(租税特別措置法39条)

この記事の要点 相続税額がある人が、相続した財産を一定の期間内に売ると、納めた相続税のうちその財産に対応する部分を「取得費」に加えて、売却益(譲渡所得)を計算できる(租税特別措置法39条1項) 期間は「相続開始の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで」。申告期限は原則として相続の開始を知った日の翌日から10か月以内なので、おおむね相続開始から3年10か月が目安 相続税額がない人(基礎控除の範囲内で相続税がかからなかった人など)は対象外。使うには確定申告で特例を受ける旨を書き、計算明細書などを添付するのが原則 相続した不動産を売って利益が出ると、売った相続人に所得税・住民税(譲渡所得の税金)がかかることがあります。一方で、その不動産にはすでに相続税もかかっています。このように「相続税」と「売ったときの税金」の両方がかかる場面で、納めた相続税の一部を売却益の計算で差し引けるのが 相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例 です。以下は、執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年10月13日 · ひぐらしさとし

相続税の未成年者控除・障害者控除とは──相続人が18歳未満や障害のある人のときに、税額から差し引かれる仕組み

この記事の要点 相続人が18歳未満のときは「未成年者控除」、85歳未満の障害者のときは「障害者控除」として、その人の相続税額から一定額が差し引かれる(相続税法19条の3・19条の4) 控除額は、18歳または85歳に達するまでの年数1年につき10万円(特別障害者は20万円)で決まり、本人の税額から引ききれない分は扶養義務者の税額から差し引ける 以前の相続ですでに控除を受けている人は、今回差し引ける額が制限される 相続税には、財産を受け取った人の年齢や障害の有無に着目して、税額を軽くする仕組みがあります。相続人が未成年の場合の「未成年者控除」と、障害のある場合の「障害者控除」です。 ...

2026年10月5日 · ひぐらしさとし

小規模宅地等の特例とは──相続した土地について、相続税の計算に入れる金額が減る制度の基本

この記事の要点 小規模宅地等の特例は、亡くなった方などが住まいや事業に使っていた宅地等について、一定の面積までの部分を、相続税の課税価格に算入する金額の計算上80%または50%減らす制度(租税特別措置法69条の4) 対象は「特定居住用」「特定事業用」「特定同族会社事業用」「貸付事業用」の4区分で、区分ごとに限度面積(330㎡・400㎡・200㎡)と減らす割合が法律で定められている 特例を受けるには相続税の申告書の提出が必要で、申告期限までに遺産分割がまとまっていない宅地等には原則として適用されない(3年以内に分割された場合などの定めあり)。要件は細かく、使えるかどうかは個別の事情で決まる 相続税の計算では、亡くなった方の自宅や事業用の土地について、課税の対象となる金額を減らす制度が設けられています。「小規模宅地等の特例」と呼ばれるもので、租税特別措置法69条の4に定められています。この記事は、執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年10月1日 · ひぐらしさとし

相続税の2割加算とは──対象になる人・ならない人(孫・孫養子・兄弟姉妹・甥姪)

この記事の要点 相続や遺贈で財産を取得した人が、亡くなった方の配偶者・一親等の血族(父母・子)のいずれでもないときは、その人の相続税額に2割が加算される(相続税法18条1項) 孫は原則として対象だが、親(亡くなった方の子)の死亡などにより代襲相続人となった孫は対象外。孫養子は、代襲相続人でもある場合を除いて対象になる(同条2項) 兄弟姉妹、甥・姪(代襲相続人として相続する場合を含む)、遺言で財産を受け取った知人など配偶者・一親等の血族以外の人は対象になる。分かれ目は相続人かどうかではなく続柄 相続税には、財産を受け取った人と亡くなった方(被相続人)との続柄によって、税額が2割増しになる仕組みがあります。「相続税額の2割加算」と呼ばれるもので、相続税法18条に定められています。 ...

2026年9月27日 · ひぐらしさとし

相続と税金の入口まとめ──税目別に見る、司法書士が答えられる範囲と税理士に聞くこと

この記事の要点 相続にかかわる税金は「相続税」だけではない。亡くなった方の所得税(準確定申告)、生前の贈与税、相続した不動産を持ち続ける・売る・名義を変えるときの税金など、場面ごとに別々の税目が関係してくる 期限がある申告の代表は、準確定申告(原則として相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内)と相続税の申告(同じく10か月以内) 税金がかかるかどうか、申告が必要かどうか、税額がいくらになるかは、個別の事情によって変わるため税理士に確認する 相続の場面で司法書士が登記手続きの一環として税額を計算して案内できるのは、登記を受けるときにかかる「登録免許税」だけ 下の一覧表で自分の状況に近い行を探し、詳しくはそれぞれの記事へ進んでください 相続のあとに「どんな税金がかかるのか」を考えるときは、まず「どの場面の税金か」を一つ決めて、その税目の記事から読むのが近道です。相続の税金というと相続税が思い浮かびますが、実際には、亡くなった方のその年の所得、生前に受けた贈与、相続した不動産の保有・売却・名義変更など、場面ごとにかかわる税目が違います。 ...

2026年9月27日 · ひぐらしさとし

相続税は金銭一括納付が原則──延納・物納という2つの例外のしくみ

この記事の要点 相続税は、申告書を提出した人が申告期限までに金銭で一括して納めるのが原則(相続税法33条・国税通則法34条) 一括納付が難しい一定の事情があるときに限り、分割で納める「延納」が認められる(同法38条) 延納によっても金銭で納めることが難しいときに限り、不動産などの財産そのもので納める「物納」が認められる(同法41条) 本文 相続税と聞くと「現金で払うもの」というイメージを持たれる方が多いと思いますが、これは制度上の原則です。相続税法33条は、申告書を提出した人はその相続税を、申告期限(10か月)までに納付しなければならないと定めており、国税は金銭で一括して納めるのが原則とされています(国税通則法34条、国税庁タックスアンサーNo.4211)。 ...

2026年9月19日 · ひぐらしさとし

相続税の『連帯納付義務』とは──自分の分を払っても、他の相続人の分の責任が残ることがある仕組み

この記事の要点 同じ被相続人から相続・遺贈で財産を取得した人は全員、自分が受け取った財産の価額を限度に、互いに他の相続人の相続税を連帯して納付する責任を負う(相続税法34条1項) 自分の申告・納税を済ませても、他の相続人が滞納すれば、この連帯納付義務にもとづいて税務署から納付を求められることがある ただし無期限の責任ではなく、申告期限から5年を経過する日までに税務署長から納付通知書による通知が発せられていなければ、その相続税については連帯納付義務が及ばなくなる(平成24年度税制改正) 相続人が複数いる相続では、「自分に割り当てられた相続税を、自分の申告期限までに納めれば、それで自分の責任は終わり」と考えている方が少なくありません。しかし相続税法には、これとは別に「連帯納付義務」という仕組みがあります。 ...

2026年9月15日 · ひぐらしさとし

相続税の申告期限『10か月』──何を、いつまでに済ませておく必要があるか

この記事の要点 相続税の申告が必要になる場合、その申告・納付期限は「相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内」(申告期限は相続税法27条1項、納付期限は同法33条) 10か月は申告書を作成するための期間ではなく、財産調査・遺産分割協議・申告書作成という性質の異なる工程を配分すべき期間 相続放棄(3か月)・準確定申告(4か月)と時期が重なるため、単独の期限として捉えず全体の時系列の中に位置づける必要がある 本文 相続税の申告が必要になる場合、その申告・納付期限は「相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内」と定められています(申告期限は相続税法27条1項、納付期限は同法33条)。起算点が死亡日そのものではなく「相続の開始があったことを知った日」を基準にしている点は、相続放棄の3か月や準確定申告の4か月と共通する考え方です。 ...

2026年9月14日 · ひぐらしさとし

司法書士と税理士の役割分担──相続で「登記の人」と「税金の人」

この記事の要点 相続の手続きでは、不動産の名義変更(相続登記)は司法書士、相続税の申告・税額相談は税理士と、法律で担当する業務が分かれている 相続の場面で司法書士が案内できる税金は、登記を受けるためにかかる「登録免許税」に限られるという例外がある 相続税がかかるかどうか、いくらになるかという個別の税務相談・申告代理は税理士の業務であり、司法書士は扱えない どちらに相談すればよいか迷ったときは、まず窓口となった専門家に聞けば、必要に応じてもう一方につないでもらえる 相続の手続きを進めていると、「この件は司法書士と税理士のどちらに聞けばよいのか」と迷う場面が出てきます。結論から言うと、相続の場面では大きく分けて「登記の人(司法書士)」と「税金の人(税理士)」に役割が分かれており、それぞれが法律で担当できる業務の範囲を定められています。この記事では、その役割分担の考え方を整理します。 ...

2026年9月9日 · ひぐらしさとし