この記事の要点

  • 相次相続控除とは、10年以内に二回目の相続が起きたとき、二回目の相続税の負担を調整する制度(相続税法20条)
  • 対象になるかどうか、実際にいくら軽くなるかは個々の事情で変わり、税理士でなければ正確に判断できない
  • 相続登記の場面でよく出てくる「数次相続」とは視点が異なる、税務上の制度
  • 司法書士が担うのは相続登記・戸籍収集などの手続き面。税額の計算・申告は税理士の領分
  • 心当たりがあれば、早めに税理士やお近くの司法書士へ相談を

祖父が亡くなり、その相続の手続きが終わらないうちに父も亡くなった——このように、短い間隔で相続が二回続くと、相続税の負担が二重にのしかかるのではと心配になる方は少なくありません。

こうした「相続が続いたとき」の税負担を調整するために設けられているのが、相次相続控除(そうじそうぞくこうじょ) という仕組みです(相続税法20条)。10年以内に二回目の相続が発生した場合に、二回目の相続税から一定額を差し引く制度で、対象になれば税負担が軽くなる可能性があります。

この記事では、相次相続控除がどのような制度か、どこまでが司法書士の相談範囲でどこからが税理士の領分かを整理します。控除額の具体的な計算方法や試算はこの記事の範囲外です。個々の事情で金額が大きく変わるため、必ず税理士にご確認ください。

相次相続控除とはどんな制度か

相次相続控除は、一回目の相続(一次相続)で相続税を納めた人が、その後10年以内に亡くなり二回目の相続(二次相続)が発生した場合に、二次相続の相続税を計算する際に一定額を控除できる制度です(相続税法20条)。

短い期間に相続税の負担が重なることへの調整という趣旨の制度で、一次相続から二次相続までの期間や、一次相続で納めた税額などによって、対象になるかどうか、実際の控除額が変わってきます。この記事では計算方法や具体例には触れません。対象になりそうかどうかも含めて、税理士に確認することが必要です。

「数次相続」とは違う制度

数次相続は、最初の相続の遺産分割や相続登記が終わらないうちに次の相続が発生し、相続人が増えて手続きが複雑になる状態を指す、主に登記・相続人確定の場面で使われる言葉です。

一方、相次相続控除は、相続が短期間に続いたときの相続税の負担調整という、税務の場面の制度です。どちらも「相続が続けて起きる」という共通点はありますが、片方は手続きの複雑さの話、もう片方は税額の話で、視点が異なります。数次相続が起きているからといって自動的に相次相続控除が適用されるわけではなく、逆に数次相続に至っていなくても(一次相続の分割協議や登記を終えていても)、相次相続控除の対象になり得ます。

司法書士が担う範囲、税理士が担う範囲

相続が短期間に続いた場合、司法書士が担うのは主に次の手続きです。

  • 戸籍の収集と相続人の確定
  • 遺産分割協議書の作成支援
  • 不動産の相続登記

一方、相次相続控除の対象になるかどうかの判定、控除額の計算、相続税申告そのものは税理士の業務です(税理士法52条)。司法書士が税額を試算したり申告書を作成したりすることはできません。

相続が続いた場合には、登記の手続きは司法書士へ、税負担の見通しは税理士へ、それぞれ早めに相談することが遠回りを避ける近道です。

まとめ

  • 相次相続控除は、10年以内に相続が二回続いたときに、二回目の相続税の負担を調整する制度(相続税法20条)
  • 数次相続(登記・相続人確定が複雑になる状態)とは視点が異なる、税務上の制度
  • 対象になるかどうか、実際の控除額は個々の事情で変わるため、税理士でなければ正確に判断できない
  • 司法書士が担うのは相続登記・戸籍収集などの手続き面

相続が短期間に続いて不安を感じている方は、登記や書類の面についてはお近くの司法書士にご相談ください。税負担の見通しについては、税理士への相談をおすすめします。

よくある質問

Q. 相次相続控除を利用する場合、費用はどのくらいかかりますか? 相次相続控除そのものは相続税申告の中で適用される制度のため、別途の申請費用は発生しません。ただし、対象になるかどうかの判定や控除額の計算は税理士による申告作業の一部となるため、税理士への相談・申告代行の費用が別途必要になります。具体的な費用は税理士にご確認ください。

Q. 期限はありますか?放置するとどうなりますか? 相次相続控除は相続税の申告の中で適用を受ける制度です。相続税の申告自体には期限(相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内)があり、申告を放置すると、加算税・延滞税など別のペナルティにつながるおそれがあります。期限を過ぎたときにこの控除がどのように扱われるかは個々の事情によりますので、心当たりがあれば早めに税理士へご相談ください。

Q. 自分で手続きできますか? 相続登記や戸籍収集は自分で進めることも可能ですが、相次相続控除の対象判定や税額計算は税務の専門知識が必要な領域です。誤った判断で控除を受け損なう、あるいは誤った申告をしてしまうリスクもあるため、税理士に確認することをおすすめします。登記や書類の整理でお困りの場合は、お近くの司法書士にご相談ください


【さらに深掘り】相次相続控除の適用要件と数次相続との関係

ご注意 以下は執筆時点(2026年8月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。

相続税額の計算は、課税対象となる財産の総額を確定させ、そこに税率を適用したうえで、いくつかの税額控除を順に差し引いて最終的な納付税額に至る、という段階を踏みます。相次相続控除は、この「税額控除」の一つとして位置づけられる制度です(相続税法20条)。配偶者に対する軽減や未成年者に関する控除など、他の税額控除と並んで、最終段階で適用の可否が検討される項目の一つにすぎず、単独で完結する手続きではありません。

相次相続控除の対象になるかどうかを見極めるには、一次相続(先に発生した相続)の申告内容——誰が財産を取得し、その際どれだけの相続税を負担したか——を把握したうえで、二次相続(今回発生した相続)の遺産の内容と突き合わせる必要があります。つまり判定には二つの相続にまたがる資料の確認が前提となり、一般的な制度紹介だけでは「このケースで対象になるか」までは答えが出ません。

この判定・金額の算定が司法書士の業務にならないのは、税理士法52条が、税理士でない者が税理士業務——税務代理・税務書類の作成・税務相談(同法2条1項)——を行うことを禁じているためです。相次相続控除への該当性を個別の事案に当てはめて判断すること、控除される金額を算出することは、この税務相談・税務書類の作成に当たり得る行為であり、司法書士が行うことはできません。この点に関して、国税庁の税理士法基本通達2-6は、税務相談にいう「相談に応ずる」とは「具体的な質問に対して答弁し、指示し又は意見を表明することをいう」と定めています。制度の存在や大まかな位置づけを一般的な情報として紹介する段階では、まだ個別の事案への当てはめには至っていません。もっとも、どこからが個別の当てはめかは一律に線を引けるものではなく、「自分のケースは対象になるか」「どのくらい軽減されるか」といった問いに答えようとすれば、税理士の領域に入ります。

司法書士の立場からこの制度に意味があるのは、相続登記や戸籍収集の相談を受ける中で「先の相続から間もなく次の相続が起きている」という事情に気づいたときに、税務上検討すべき論点が別途存在することをご案内できる点にあります。制度の入口を示し、早い段階で税理士につなぐことが、司法書士としてできる最大限の役割です。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年8月・いずれも一次情報です)。

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