この記事の要点
- 相続税は、申告書を提出した人が申告期限までに金銭で一括して納めるのが原則(相続税法33条・国税通則法34条)
- 一括納付が難しい一定の事情があるときに限り、分割で納める「延納」が認められる(同法38条)
- 延納によっても金銭で納めることが難しいときに限り、不動産などの財産そのもので納める「物納」が認められる(同法41条)
本文
相続税と聞くと「現金で払うもの」というイメージを持たれる方が多いと思いますが、これは制度上の原則です。相続税法33条は、申告書を提出した人はその相続税を、申告期限(10か月)までに納付しなければならないと定めており、国税は金銭で一括して納めるのが原則とされています(国税通則法34条、国税庁タックスアンサーNo.4211)。
もっとも、相続財産の中身が不動産や自社株式など、すぐには現金化しにくい財産に偏っている場合、基礎控除を超える相続税額を一括で現金で用意することが難しい相続人も少なくありません。そこで相続税法は、原則の例外として、段階を踏んだ2つの制度を用意しています。
延納──分割払いという例外
1つ目が「延納」です(相続税法38条)。相続税額が10万円を超え、金銭で一括納付することが困難な事情がある場合に、その困難な金額の範囲内で、原則として5年から最長20年(相続財産に占める不動産等の割合によって年数が変わります)にわたって分割して納める方法です。ただし延納は無利子ではなく、原則として利子税が別途かかります。また、延納税額や期間に応じて、不動産などの担保を提供することが原則として必要です(延納税額が100万円以下かつ延納期間が3年以下の場合は、担保の提供は不要とされています)。延納を利用するには、申告期限までに「延納申請書」を提出し、税務署長の許可を受けなければなりません。
物納──不動産等で納めるという例外
延納によっても金銭で納付することが困難な事情がある場合に限り、さらに例外として認められるのが「物納」です(相続税法41条)。相続税を現金ではなく、不動産や上場株式など法令で定められた種類の財産そのもので納付する制度です。物納できる財産にはあらかじめ優先順位が定められているほか、担保権が設定されている不動産のように物納に充てられない財産もあり、税務署長の許可を受けて初めて認められます。
延納・物納とも、「一括納付が難しければ誰でも選べる」という制度ではなく、金銭納付が困難な事情の程度に応じて段階的に検討される例外的な制度である、という位置づけを押さえておくことが大切です。
司法書士との接点
延納の担保として不動産に抵当権を設定する場合や、物納によって不動産の所有権が国に移転する場合には、登記の手続きが関わってきます。このうち抵当権の設定や国への所有権移転の登記そのものは、税務署など官公署の側からの嘱託(しょくたく)という方法で行われ、納税者が自分で申請するものではありません(国税通則法施行令16条、不動産登記法116条)。一方、その不動産の名義が亡くなった方のままになっている場合の相続登記など、登記の状況を整える部分は司法書士が関わる場面です。延納・物納を選ぶかどうか、要件を満たすかどうかといった税務上の判断そのものは税理士の分野です。
執筆時点(2026年9月)の制度に基づく一般的な解説です。延納・物納の具体的な許可要件の当てはめや、ご自身のケースでどちらを選ぶべきかといった判断は、税理士にご相談ください。
まとめ
相続税は金銭による一括納付が原則ですが、それが困難な事情があるときは分割払いの「延納」、延納でも難しいときはさらに不動産等で納める「物納」という2段階の例外が用意されています。いずれも税務署長の許可が必要な制度で、具体的な要件への当てはめや税額の計算は税理士の専門分野です。延納の担保や物納に充てる不動産の相続登記など、登記に関わる部分は、お近くの司法書士にご相談ください。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年09月・いずれも一次情報です)。
- 相続税法 第33条(相続税の納付)(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000073
- 国税通則法 第34条(納付の手続。金銭による納付)(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000066
- 相続税法 第38条(延納)(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000073
- 相続税法 第41条(物納)(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000073
- 国税通則法施行令 第16条(担保の提供手続。抵当権設定登記の嘱託)(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/337CO0000000135
- 不動産登記法 第116条(官庁又は公署の嘱託による登記)(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123
- 国税庁 タックスアンサー No.4211「相続税の延納」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4211.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.4214「相続税の物納」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4214.htm