この記事の要点
- 固定資産税は毎年1月1日時点の登記名義人等に課税される「賦課課税」の税金。名義人が亡くなり相続登記がまだの間も、課税自体は続く
- 誰が納税通知書を受け取るかを市区町村に届け出る制度が「相続人代表者指定届」(地方税法9条の2第1項)。すべての相続人またはその相続分のうちに明らかでないものがあり、かつ、相当の期間内に届出がないときは、市区町村長が相続人の一人を職権で指定できる(同条2項)
- この届出はあくまで書類の受取人を決めるものであり、相続登記の代わりにはならず、相続人の納税義務・税額を変えるものでもない
相続で不動産を共有名義にした場合の固定資産税は、すでに相続登記を終えて共有名義になった後、誰が連帯して納めるかという話でした。今回取り上げるのは、それより一歩手前の場面です。親などの名義人が亡くなった直後、相続登記がまだ済んでいない間、市区町村から届く固定資産税の納税通知書は、いったい誰に送られてくるのか、という疑問です。
固定資産税は、納税者自身が税額を計算して申告する税金ではなく、市区町村が毎年1月1日(賦課期日)時点の登記名義人等をもとに税額を計算して通知する「賦課課税」方式の税金です(地方税法343条1項・2項、359条)。名義人が年の途中で亡くなった場合でも、この賦課の仕組み自体が止まるわけではありません。相続登記が済んでいなければ、亡くなった方の名義のまま課税台帳に記録が残り続けることになります。なお、同法343条2項は、所有者として登記されている個人が賦課期日前に亡くなっているときは、その日に現にその土地・家屋を所有している方を「所有者」とすると定めています。台帳上の名義がそのままであっても、納税義務を負うのは相続人ということになります。
名義人本人はもういないため、納税通知書を誰に送るかという実務上の問題が生じます。ここで用いられるのが「相続人代表者指定届」です。地方税法9条の2第1項は、納税者について相続があった場合、相続人が二人以上いるときは、その中から被相続人の地方団体の徴収金(固定資産税を含む)の賦課徴収・還付に関する書類を受け取る代表者を指定することができ、指定をした相続人は市区町村長にその旨を届け出なければならないと定めています。多くの市区町村では、名義人の死亡を把握すると、相続人に対してこの届出を求める案内を送っています。
届出は相続人側の対応が前提ですが、相続人の間で話がまとまらず、相当の期間内に届出がされないこともあります。地方税法9条の2第2項は、すべての相続人またはその相続分のうちに明らかでないものがあり、かつ、相当の期間内に届出がないときは、市区町村長が相続人の一人を指定することができ、その旨を相続人に通知しなければならないと定めています。
ただし、この2項は市区町村長が「指定することができる」と定めた規定であり、届出をしなければ必ず市区町村が代表者を決めてくれる、という性質のものではありません。条文が挙げる要件も、相続人やその相続分に明らかでないものがある場合を前提としています。届出を求める案内が届いたときは、放置せずに早めに対応するのが安全です。
ここで誤解しやすいのが、この届出の効果の範囲です。代表者指定届はあくまで「誰が書類を受け取るか」を決める手続きであり、相続人全員の納税義務そのものをなくすものではなく、相続登記に代わるものでもありません。代表者が納税通知書を受け取り、代表して納付の窓口になったとしても、それは名義変更の手続きとは別物であり、相続登記は改めて行う必要があります。逆に言えば、代表者指定届を出したからといって、他の相続人が固定資産税と無関係になるわけでもありません。
なお、市区町村によっては、この代表者指定届とは別に「現所有者の申告」を求めている場合があります。地方税法384条の3は、登記名義人が亡くなっている土地・家屋について、その市町村の条例で定めるところにより、現に所有している方に住所・氏名などを申告させることができると定めた規定です。代表者指定届が「書類を受け取る人」を決める手続きであるのに対し、こちらは「現在誰が所有しているか」を市区町村に伝える手続きであり、条例に定めのある市区町村では、両方の対応が必要になることがあります。
執筆時点(2026年8月)の制度に基づく一般的な解説です。代表者指定届の具体的な書式・届出先・届出をしない場合の実務上の対応は、お住まいの市区町村の税務担当窓口にご確認ください。個々の税額の計算や納税義務の分担についての判断は、税理士にご相談ください。
まとめ
固定資産税は賦課課税方式のため、名義人が亡くなり相続登記がまだの間も課税は続きます。誰が納税通知書を受け取るかは「相続人代表者指定届」(地方税法9条の2)で決めることができ、届出がない場合も一定の要件のもとで市区町村が代表者を指定できる仕組みになっています。ただし、この届出は書類の受取人を決めるだけで、納税義務の分担や相続登記の要否には影響しません。相続が発生した際は、この届出と相続登記を別々に進める必要があることを踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年8月・いずれも一次情報です)。
- 地方税法 第9条の2・第343条・第359条・第384条の3(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000226