この記事の要点

  • 相続や遺贈で財産を取得しても、その取得自体に所得税はかからない(所得税法9条1項17号)。代わりに相続税の枠組みで扱われる
  • ただし「亡くなった方のその年の所得」「相続した財産を売ったとき」「相続した後に生まれる収入」の3つの場面では、所得税が関係する
  • 具体的な税額や申告の要否は税理士へ、相続した不動産の名義変更(相続登記)はお近くの司法書士へ

結論から言うと、相続や遺贈(遺言で財産をもらうこと)で財産を取得したこと自体に、所得税はかかりません。所得税法9条1項17号は、「相続、遺贈又は個人からの贈与により取得するもの」を非課税所得(所得税を課さない所得)として定めています。もらった財産が現金でも不動産でも株式でも、この点は同じです。

なぜ非課税なのかというと、同じ財産の移転に所得税と相続税を二重にかけないためだと一般に説明されています。相続や遺贈で財産が移るときは、相続税の側で課税の要否を判断する仕組みになっています。つまり、所得税がかからないからといって税金が一切かからないわけではなく、「所得税ではなく相続税の話になる」という整理です。相続税がかかるかどうかの入口となる考え方は、相続税の基礎控除の記事で扱っています。

ここで注意したいのは、「相続でもらった財産に所得税はかからない」という結論を絶対視しないことです。非課税になるのは「相続や遺贈による取得」という場面に限られ、その前後には所得税が関係する場面が残っています。代表的なものは次の3つです。

場面1:亡くなった方の、その年の所得(準確定申告)

亡くなった方が生前に得ていた所得(事業の収入、家賃、年金など)は、亡くなった方自身の所得として所得税の対象です。亡くなった方はもう申告できないので、確定申告が必要な所得があった場合には、相続人が代わりに申告します。これが「準確定申告」で、期限は原則として、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内です(所得税法124条・125条)。相続税とは別の税目・別の期限ですので、準確定申告の手続きの記事もあわせてご覧ください。

場面2:相続した不動産や株式を売ったとき(譲渡所得)

相続で受け取った時点では非課税でも、その財産を後で売ったときの利益は、売った相続人自身の「譲渡所得」として所得税の対象になります。このとき、利益を計算する基礎となる「取得費」(もともと買ったときの値段など)と「取得時期」は、相続人が新たに買ったものとは扱われず、相続人が亡くなった方の取得の時から引き続き所有していたものとみなされます(所得税法60条1項)。亡くなった方が何十年も前に買った土地なら、その当時の価格や時期を基準に考える、というのが原則です(限定承認をした相続などは、この原則とは別のルールになります)。相続した実家を売るときの流れは、相続した実家を売りたいときの記事で整理しています。

場面3:相続した後に生まれる収入(家賃など)

アパートや駐車場を相続した場合、相続が始まった後に生じた家賃は、相続人自身の「不動産所得」(所得税法26条)として所得税の対象です。財産そのものは非課税で受け取れても、その財産が生み出す収入は通常どおり課税されます。相続開始の日を境に、それより前の家賃は亡くなった方の所得(場面1)、それより後は相続人の所得と分かれるのが基本です。なお、遺産の分け方が決まるまでの間の家賃を誰の所得として扱うかは、別に整理が必要な論点です。

この記事は、執筆時点(2026年9月)の制度に基づく一般的な解説です。「どの場面に当たるか」「申告が必要か」「税額はいくらか」は個別の事情で変わりますので、判断と計算は税理士へご相談ください。

まとめ

相続や遺贈で財産をもらうこと自体には所得税がかからず(所得税法9条1項17号)、相続税の枠組みで扱われます。ただし、①亡くなった方のその年の所得(準確定申告・4か月)、②相続した財産を売ったときの譲渡所得(取得費・取得時期は亡くなった方から引継ぎ)、③相続後に生じる家賃などの収入、の3つの場面では所得税が関係します。「かからない」を絶対視せず、場面ごとに確認することが大切です。具体的な税額や申告については税理士へ、相続した不動産の名義変更(相続登記)はお近くの司法書士にご相談ください。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年9月・いずれも一次情報です)。

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