この記事の要点
- 不動産取得税がかかるかどうかは、名義変更の理由(登記原因)によって決まる
- 相続による取得は原則非課税だが、相続人以外の人が受け取る「特定遺贈」は原則課税になる
- 死因贈与は民法上「贈与契約」と整理され、不動産取得税では非課税規定にいう「相続」に当たらないものとして、原則課税として扱われている
不動産の名義を変えるとき、その理由(登記原因)が相続なのか、遺贈なのか、贈与なのかによって、不動産取得税がかかるかどうかが変わります。同じ「亡くなった方から不動産を受け継ぐ」場面でも、扱いが分かれる点に注意が必要です。※執筆時点(2026年09月)の制度に基づく一般的な解説です。
不動産取得税とは
不動産取得税は、土地や建物を取得したときに都道府県が課す税金です(地方税法73条の2)。売買・贈与・新築・交換など、有償・無償を問わず「不動産の取得」があった場合に、原則として課税対象になります。
相続による取得は原則非課税
地方税法73条の7第1号は、相続による不動産の取得を不動産取得税の非課税としています。ここでいう「相続」には、包括遺贈(財産の全部または割合的な部分を受け継ぐ遺贈)と、被相続人から相続人に対してなされた遺贈(相続人が遺言で特定の不動産を受け取る場合)も含まれると整理されています。つまり、遺言があっても受け取る人が「相続人」であれば、相続と同じく非課税として扱われるのが一般的な取扱いです。
相続人以外への特定遺贈は原則課税
一方、相続人ではない人(内縁の配偶者、お世話になった知人など)が遺言によって特定の不動産だけを受け取る「特定遺贈」は、上記の非課税規定にいう「相続」に含まれません。そのため、原則として不動産取得税の課税対象になります。「遺言で不動産を受け継いだ」という点は同じでも、受け取る人が相続人かどうかで扱いが変わる点は見落とされやすいところです。
死因贈与も原則課税──相続税とは別の話
「贈与者が亡くなったときに効力が生じる贈与契約(死因贈与)」は、民法上は贈与契約の一種と整理されており、遺言による一方的な行為である遺贈とは性質が異なります(両者の違いは死因贈与と遺贈はどう違う?もご参照ください)。もっとも民法554条は、死因贈与について「その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する」と定めているため、どの規定がどこまで準用されるのか(遺言の方式に関する規定、撤回に関する規定など)については、学説上も議論のあるところです。
そのうえで不動産取得税の場面では、非課税規定が「相続」に含めているのは包括遺贈と、被相続人から相続人に対してなされた遺贈であって、贈与契約である死因贈与はそこに挙げられていません。そのため死因贈与による取得は、原則として課税対象になるものとして扱われています。他方、相続税の計算では死因贈与は「遺贈」に含めて扱われる(相続税法1条の3第1項)ため、税金の種類によって扱いが違うことが混同されがちですが、不動産取得税は相続税とは別の地方税であり、判断の基準も異なります。
売買・生前贈与はもちろん課税対象
売買や、生きている間に行う贈与(生前贈与)による不動産の取得は、相続に関する非課税規定の対象外であり、原則どおり不動産取得税がかかります。
実際の課税・非課税の判定は都道府県税事務所へ
以上は一般的な制度の仕組みであり、個別の事案でどの登記原因に当たるか、実際に課税・非課税のどちらになるかの最終判断や、税額の計算・申告は、不動産の所在地を管轄する都道府県税事務所または税理士にご確認ください。登記の相談を受ける中で、登記原因によって不動産取得税の扱いが変わりうることをあらかじめ知っておくと、思わぬ納税通知に戸惑わずに済みます。なお、登記の際にかかる登録免許税は不動産取得税とは別の国税で、司法書士が登記の場面で扱う税金です。
まとめ
不動産取得税は「相続かどうか」だけでなく「誰が」「どの原因で」不動産を受け継ぐかによって課税・非課税が分かれます。ご自身のケースでどの登記原因に当たるか迷ったときは、登記の相談とあわせてお近くの司法書士にご相談ください。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年09月・いずれも一次情報です)。
- 地方税法 第73条の2・第73条の7(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000226
- 民法 第554条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- 相続税法 第1条の3(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000073
- 東京都主税局「不動産取得税|不動産と税金(よくあるご質問)」Q21〜Q23: https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/shitsumon/real_estate/f
- 岐阜県「不動産取得税Q&A(令和8年度)」Q5: https://www.pref.gifu.lg.jp/page/8676.html