この記事の要点
- 初回相談で聞いた話は、帰宅後その日のうちに「①期限があること ②自分で集める書類 ③家族と決めること ④次に相談する日までに確認すること」の4区分でメモに書き分けると、行動に変わります
- 各項目に「誰が」「いつまでに」を添え、分からないことは空欄にせず「分からない」と書き残します
- このリストを2回目の相談に持っていくと、前回の説明をなぞり直す時間が減り、話が早く進みます
相続の初回相談を終えて帰宅すると、「いろいろ聞いたけれど、結局まず何をすればいいのか」がぼんやりしている、ということがよくあります。相談で聞いた内容は、そのままでは「情報」であって「行動」ではありません。この記事では、聞いた話を帰宅後に行動の形へ整理する、ごく一般的なメモの作り方を紹介します。同席しなかった家族への伝え方は聞いた話を同席しなかった家族にどう伝える?で扱っていますので、この記事は「自分たちが次に動くためのリスト」に絞ります。
帰宅後すぐに、4つの区分で書き分ける
結論から言うと、「①期限があること ②自分で集める書類 ③家族と決めること ④次に相談する日までに確認すること」の4つの見出しを先に紙に書き、聞いた内容をその下に振り分けるだけで、行動のリストになります。記憶が新しい当日のうちに書くのが理想です。日がたつと、「言われた気がする」と「言われた」の区別があいまいになりやすいからです。
① 期限があること
「いつまでに」が決まっている手続きを、期限の日付ごと書き出します。相続放棄をするかどうかの判断(原則3か月)、亡くなった方の所得税の申告(4か月)、相続税の申告(10か月)、相続登記の申請(3年)などが、相談の場でよく話題に上る期限です。数え始める日が手続きごとに違うため、「相談で聞いた期限の日付」をそのまま書き写しておくのが安全です。なお相続登記の3年には経過措置があり、義務化が始まった2024年4月1日より前に開始していた相続も義務の対象です。この場合の期限は「相続と取得を知った日」か2024年4月1日のいずれか遅い日から3年です(令和3年法律第24号附則5条6項)。すでに相続と取得を知っている方は2024年4月1日が数え始めの基準となり、2027年3月31日(法務省の案内による)が期限です。執筆時点(2026年9月)の制度に基づく一般的な解説であり、期限の全体像は死亡後の手続きスケジュール全体像で整理しています。
② 自分で集める書類
戸籍、通帳のコピー、固定資産税の納税通知書など、「用意してください」と言われた書類を一つずつ書き、隣に「どこで取れるか」(市区町村の窓口・金融機関・自宅の引き出し)を添えます。これだけで、次の休みにどこへ行けばよいかが決まります。
③ 家族と決めること
「相続人全員で話し合ってから決めてください」と言われた事柄は、家族の側で答えを出す必要があります。「実家を誰が引き継ぐか」「相続放棄を検討する人がいるか」「話し合いを誰が呼びかけるか」などです。最も時間がかかる区分なので、他と混ぜずに独立させておくと、手続きの進み具合と話し合いの進み具合を別々に把握できます。
④ 次に相談する日までに確認すること
「亡くなった方に借金があったか」「不動産が他にもあるか」など、相談の場で「分かりません」と答えた事柄がここに入ります。次回の相談日が決まっていれば、その日付を見出しに書いておきます。
「担当」と「期限」を書き、分からないことはそのまま残す
振り分けたら、各項目に「誰がやるか」と「いつまでに」を書き添えます。担当が決まっていない項目は、誰も動かないまま止まりやすいものです。「とりあえず長男が全部」となりがちですが、書類集めは近くに住む人、金融機関への連絡は平日に動ける人、というように分けると現実的に回ります。
もう一つのコツは、分からないことを空欄にしないことです。空欄は後から見返したとき、「書き忘れた」のか「分からなかった」のか判別できません。「分からない」「〇〇に聞く」と文字で書いておくと、そのまま次回の質問リストになります。相談の場で「分からない」と答えてよいこと自体は、相続の初回相談では何を聞かれる?でも触れたとおりです。
2回目の相談に持っていくと話が早い理由
このリストを2回目の相談に持参すると、「集まった書類」「家族で決まったこと」「まだ分からないこと」が一目で共有できるため、前回の説明をなぞり直す時間が減り、次に必要な手続きの説明に時間を使えます。初回相談で結論を急がなくてよいことは相談したら必ず依頼しないといけない?で触れましたが、その「持ち帰って考える」時間を実のあるものにするのが、このやることリストです。
まとめ
- 初回相談で聞いた話は、当日のうちに「期限・書類・家族で決めること・次回までの確認事項」の4区分に振り分ける
- 各項目に担当と期限を添え、分からないことは「分からない」と書き残す
- リストを2回目の相談に持参すると、次の手続きの話に進みやすい
期限の数え方や必要な書類は、家族構成や財産の内容によって変わります。リストに書いた期限や手続きの中身に迷う点があれば、お近くの司法書士にご相談ください。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年9月・いずれも一次情報です)。
- 民法 第915条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- 所得税法 第124条・第125条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033
- 相続税法 第27条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000073
- 不動産登記法 第76条の2・民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)附則第5条第6項(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123
- 法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00565.html