この記事の要点
- 面談で聞いた「まだ条件付きの話」は、伝言を重ねるうちに「もう決まったこと」に変わってしまいやすい
- メモは「聞いた要点」「今後すべきこと」「まだ未確定の点」の3つを分けて書き留めると、伝えるときの誤解を減らせる
- 口頭だけに頼らず資料をそのまま見せる、その場で答えを作らずに持ち帰る、という2つの姿勢が役に立つ
相続の相談に、家族の代表者だけで、あるいは一部の家族だけで行くことは珍しくありません。誰と一緒に行くかを決めた後、実は同じくらい大事なのが、聞いてきた内容を同席しなかった家族へどう伝えるかです。結論から言うと、ここで工夫をしておかないと、「言った」「言っていない」という行き違いが起きやすくなります。この記事では、紛争になったときの言い分の話ではなく、あくまで正確に情報を共有するためのコツとして整理します。
なぜ伝達の途中で話が変わってしまうのか
面談では、専門家が「〜という制度がある」「状況によっては〜という進め方も考えられる」というように、前提や条件を添えて説明することが多くあります。ところが、これを聞いた家族が持ち帰って別の家族に伝える段階になると、前提や条件の部分が抜け落ち、「〜になるらしい」「〜と言われた」という結論の部分だけが独り歩きしてしまうことがあります。多くの場合、誰かが意図的に話を歪めているというよりも、口頭で人から人へ伝わる過程で、条件や可能性を示す言葉ほど削られやすい、という伝わり方の性質によるものです。伝える人が増えるほど、この圧縮は進みやすくなります。
相談中のメモは3つに分けて取る
この行き違いを防ぐ第一歩は、面談中のメモの取り方にあります。すべてを一続きの文章で書き留めるのではなく、次の3種類を意識して分けて書くと、後で家族に伝えるときに迷いにくくなります。
- 聞いた要点:説明してもらった制度や一般的な考え方
- 今後すべきこと:次回までに用意する書類や、確認しておくこと
- まだ未確定の点:条件によって変わる話、これから決めていく話
この3つを混ぜて書いてしまうと、後から読み返したときに「これは決まった話だったか、まだの話だったか」を自分自身も思い出せなくなります。分けて書いておけば、家族に伝える際にも「ここまでは聞いた話」「ここから先はまだ」という区切りをそのまま伝えられます。
家族に伝えるときの工夫
伝える段階では、次のような工夫が役立ちます。
- 口頭だけに頼らず、事務所から渡された資料やもらったメモをそのまま見せる
- 「これはまだ確定していない話」という言葉を、該当する部分には必ず添えて伝える
- 自分の解釈や感想を混ぜず、聞いたことをできるだけそのまま伝えることを意識する
とくに資料をそのまま見せることは効果的です。人づての説明よりも、実際に渡された紙面のほうが、条件や前提の部分まで含めて伝わりやすいためです。
家族から質問が出たときは、その場で答えを作らない
資料や話を共有すると、同席しなかった家族から「それなら自分たちはどうなるのか」といった質問が出ることがあります。ここで自分なりの答えをその場で作ってしまうと、後になって「そんな話は聞いていない」という新たな行き違いのもとになりかねません。答えに迷う質問が出たときは、無理に答えを作らず、「次回一緒に確認しましょう」と持ち帰る姿勢をおすすめします。
意見が分かれそうな気配があるときは
伝える過程で、家族の間で意見が分かれそうな気配を感じることもあるかもしれません。そうしたときに、代表者が間に立って意見をまとめたり、説得したりしようとすると、かえって負担が大きくなることがあります。気になる点が出てきたら、無理に家庭内で決着をつけようとせず、気になる家族が専門家に直接質問できる場を設ける、という方向で考えておくと進めやすくなります。
まとめ
初回相談で聞いた話を同席しなかった家族に伝える際は、「聞いた要点」「今後すべきこと」「まだ未確定の点」を分けてメモを取り、口頭だけでなく資料をそのまま見せながら、条件付きの部分には「まだ確定していない」と添えて伝えることが、言った言わないの行き違いを防ぐ助けになります。答えに迷う質問が出たときは、その場で答えを作らず持ち帰る姿勢も大切です。伝え方に迷ったときは、お近くの司法書士にご相談ください。
参考資料
本記事は一般的な実務上の留意点を整理したものであり、特定の法令・文献を参照していません。