この記事の要点

  • 遺言書の中で不動産を書くときは、「自宅」や住所(住居表示)だけで済ませず、登記事項証明書の表題部に書かれているとおりに書くのが基本です。土地は所在・地番・地目・地積、建物は所在・家屋番号・種類・構造・床面積です。
  • ふだん使う住所と、登記で使う「地番」は別の番号です。自宅の敷地が何筆にも分かれていたり、私道の持分があったりすると、住所だけでは書き漏れが起きやすくなります。
  • 持分だけを持っている不動産、マンション(敷地権付きの区分建物)、登記されていない建物は、それぞれ書き方に注意点があります。
  • 「その他一切の財産」と書く条項は書き漏れへの備えにはなりますが、個々の不動産をきちんと書くことの代わりにはなりません。
  • 書いた遺言書で実際に登記ができるかどうかは、法務局の判断と個別の事情によります。書く前・書き直す前に、最新の登記事項証明書を取り寄せて照らし合わせるところから始めましょう。

遺言書に「自宅は長男に相続させる」と書いておけば、家族には気持ちが伝わります。けれども、亡くなった後に名義を変える手続き(相続登記)では、遺言書に書かれた内容からどの土地・どの建物なのかを読み取れるかが問われます。

結論から言うと、遺言書の中の不動産は、登記事項証明書(登記簿)に書かれているとおりに書くのがいちばん確実です。この記事では、遺言書の中での不動産の書き方に絞って、基本の形と、つまずきやすい場面を整理します。

なぜ「登記事項証明書どおり」に書くのか

不動産の名義を変える登記を申請するときは、その登記の原因を証明する書類(登記原因証明情報)を一緒に出す必要があります(不動産登記法61条)。遺言による相続登記では、遺言書そのものがこの書類の中心になります。

法務局は、申請書に書かれた不動産が登記記録と合っているか、申請書の内容が登記原因を証明する書類の内容と合っているかを確認します。合っていない場合は、申請が却下される理由になると定められています(不動産登記法25条6号・8号。ただし、補正できる不備を期間内に直したときは却下されません)。

つまり、遺言書の書き方があいまいだと、「遺言書に書かれた不動産」と「登記記録上の不動産」が同じものだと示せず、手続きが止まるおそれがあります。登記記録と同じ言葉で書いておけば、この照らし合わせがスムーズになります。

土地の書き方:所在・地番・地目・地積

土地の登記記録には、所在(市区町村と字)、地番、地目(宅地・田・山林などの土地の種類)、地積(面積)が記録されます(不動産登記法34条1項)。遺言書でも、この4つを登記事項証明書の表題部から写すのが基本です。

(架空の例)

所在 ○○市○○町一丁目 地番 23番4 地目 宅地 地積 150.25平方メートル

建物の書き方:所在・家屋番号・種類・構造・床面積

建物の登記記録には、所在(建物が建っている土地の地番まで含む)、家屋番号、種類(居宅・店舗など)、構造、床面積が記録されます(不動産登記法44条1項)。物置や車庫などの附属建物が登記されていれば、それも登記記録に載っています。

(架空の例)

所在 ○○市○○町一丁目23番地4 家屋番号 23番4 種類 居宅 構造 木造かわらぶき2階建 床面積 1階 60.00平方メートル 2階 45.00平方メートル

建物の「所在」に書かれるのは、ふだんの住所ではなく、建物が建っている土地の地番です。また、家屋番号は、原則として建物の敷地の地番と同じ番号で定められますが、1筆の土地に2つ以上の建物があるときや、1つの建物が2筆以上の土地にまたがっているときなどは、地番と同じ番号に支号(枝番)を付けるなど別の付け方になります(不動産登記規則112条1項)。思い込みで書かず、登記事項証明書で確かめることが大切です。

登記事項証明書の中で下線が引かれている記載は、すでに変更・抹消された古い内容です。写すのは下線のない最新の記載です。表題部の読み方は相続登記の「不動産の表示」の書き方で、欄ごとの対応表とあわせて詳しく扱っています。

住所(住居表示)と地番は別の番号

「○○市○○町一丁目2番3号」のような、郵便物が届く住所は、市区町村が建物に付けている住居表示です。これに対して、登記で使う地番は、法務局が土地1筆(ひとつの区画)ごとに付けている番号で、住居表示とは一致しないことがよくあります。違いの詳しい説明は「地番」と「住居表示」はどう違う?をご覧ください。

遺言書を住所だけで書くと、次のような問題が起きやすくなります。

  • 敷地が2筆以上に分かれている:自宅の敷地が「23番4」と「23番5」のように複数の地番に分かれていると、住所からは何筆あるのかがわかりません。
  • 私道の持分がある:家の前の私道を近所の人と共有していると、その私道は自宅とは別の地番で登記されています。住所だけの書き方では、私道の持分が書き漏れやすくなります。
  • 土地も含むのかがはっきりしない:「○番○号の家」とだけ書くと、建物だけなのか、敷地も含むのかが読み手によって分かれるおそれがあります。

住所を書き添えること自体は、家族が場所をイメージしやすくなるという意味で役に立ちます。ただ、それだけで済ませず、地番・家屋番号での特定を必ず入れることが基本です。

持分だけを持っている場合

夫婦で2分の1ずつ持っている自宅のように、不動産の一部(持分)だけを持っていることがあります。この場合も、土地や建物の表示は不動産全体の所在・地番・地目・地積などを書き、そのうえで「遺言者の持分2分の1」のように、自分が持っている持分を書き添えます。

持分の割合は、登記事項証明書の権利部(甲区)に記録されています。遺言書に書く持分が実際の持分と違っていると、登記の手続きで食い違いが問題になることがあるため、ここも登記事項証明書で確かめてから書きます。

マンション(敷地権付きの区分建物)の場合

マンションの部屋は、登記の上では「区分建物」と呼ばれ、登記事項証明書の表題部に次の3つが並んでいるのが一般的です。

  1. 一棟の建物の表示(マンション全体の所在・構造・床面積など)
  2. 専有部分の建物の表示(自分の部屋の家屋番号・種類・構造・床面積など)
  3. 敷地権の表示(マンションの敷地に対する権利とその割合)

マンションの部屋と、その敷地に対する権利(敷地利用権)は、原則として切り離して処分できないとされています(区分所有法22条1項。規約に別の定めがある場合を除きます)。こうした権利が「敷地権」として登記されている場合は、表題部に敷地権の表示が記録されます(不動産登記法44条1項9号)。遺言書でも、この3つの表示を登記事項証明書どおりに書いておくと、どの部屋のことかがはっきりします。

なお、古いマンションなどで、表題部に敷地権の表示がない場合があります。この場合は、敷地の持分が土地の登記記録に別に記録されていることがあります。土地の登記事項証明書も取り寄せて確かめ、そこに持分が記録されていれば、部屋(建物)だけでなく、敷地の土地の持分も別に書いておくのが確実です。

登記されていない建物の場合

建て増しした部分や古い離れなど、登記されていない建物(未登記建物)もあります。未登記の建物には登記事項証明書がないため、固定資産税の課税明細書などに載っている所在地・種類・構造・床面積などを手がかりに、どの建物かがわかるように書くことになります。

ただし、遺言で受け取った人がその建物の名義を登記するには、まず建物の表題登記(建物の所在や構造などを初めて登記すること)が必要になります。表題登記は土地家屋調査士の業務分野です。未登記の建物があるとわかったら、遺言書を書くこととあわせて、登記をどうするかも早めに確認しておくと安心です。

「その他一切の財産」という書き方の位置づけ

遺言書の最後に「遺言者は、本遺言書に記載のない財産を含め、その他一切の財産を妻○○に相続させる」のような条項を置く書き方があります。書き漏れた財産があった場合の受け皿になるため、あると安心な条項です。

ただし、この条項は個々の不動産をきちんと書くことの代わりにはなりません。たとえば、自宅を長男に渡すつもりで書いたのに、私道の持分を書き漏らしていた場合、その私道の持分は「その他一切の財産」として別の人に渡る内容になってしまうおそれがあります。受け皿の条項があるからこそ、渡したい相手が決まっている不動産は、1筆ずつ漏れなく書くことが大切です。

特定が足りないと何が起こりうるか

遺言書の記載から不動産を特定できるかどうかは、最終的には個々の遺言書の書き方と事情によります。一般論としては、次のようなことが起こりえます。

  • 法務局で手続きが止まる:遺言書から対象の不動産を読み取れないと判断されると、補正を求められたり、その遺言書だけでは登記ができなかったりすることがあります。登記の手続きは提出された書類をもとに進むため、遺言書の外の事情まで読み取ってもらえるとは限りません。
  • 遺言の解釈が争いになる:最高裁は、遺言を解釈するときは文言を形式的に判断するだけでなく、遺言書の全体の記載との関連、遺言書を作った当時の事情、遺言者の置かれていた状況などを考えて、遺言者の真意を探るべきだとしています(最高裁平成17年7月22日判決)。ただ、真意をどう読むかで相続人の意見が分かれれば、話し合いや裁判で決めることになり、時間も負担もかかります。
  • 相続人どうしの話し合いが必要になる:遺言書でその不動産を誰に渡すのかが定まっていないと扱われ、「その他一切の財産」のような受け皿の条項もなければ、その不動産については、相続人全員の話し合い(遺産分割協議)で取得する人を決める必要が出てくることがあります。

遺言書の有効性や解釈について相続人の間で争いがある場合は、登記の手続きとは別の問題として、弁護士にご相談ください。

書く前・書き直す前に確認したいこと

  • 最新の登記事項証明書を取り寄せる:手元の古い権利証や固定資産税の通知だけで書かず、最新の登記記録で確かめます。
  • 自分名義の不動産を漏れなく洗い出す:自宅のほかに私道や山林、遠方の土地がないかを確認します。自分が所有権の登記名義人として記録されている不動産を一覧にできる所有不動産記録証明制度(不動産登記法119条の2)も手がかりになります。
  • 自筆証書遺言なら財産目録を使う方法もある:自筆証書遺言では、財産目録は手書きでなくてもよく、登記事項証明書のコピーなどを添付する方法も認められています(民法968条2項。目録の各ページに署名・押印が必要とされています。押印を不要にする改正法〔令和8年法律第45号〕が2026年6月に公布されていますが、2026年10月の執筆時点では施行されていないため、今書くなら押印が必要です)。作り方は財産目録の作り方で扱っています。
  • 公正証書遺言なら公証人と相談できる:日本公証人連合会の案内では、不動産を相続させる場合の資料として、登記事項証明書と固定資産評価証明書(または固定資産税・都市計画税納税通知書の中の課税明細書)が挙げられています。
  • 分筆・合筆・建て替えの後は見直す:遺言を書いた後に土地を分けたり、まとめたり、家を建て替えたりすると、地番や家屋番号が変わることがあります。登記記録が変わったら、遺言書の書き方も見直しておくと安心です。

まとめ

遺言書の中の不動産は、「自宅」や住所だけで済ませず、登記事項証明書の表題部どおりに、土地は所在・地番・地目・地積、建物は所在・家屋番号・種類・構造・床面積で書くのが基本です。持分だけを持っている不動産、マンション、登記されていない建物は、それぞれ書き方に注意が必要です。「その他一切の財産」という条項は書き漏れへの備えになりますが、個々の不動産を書く代わりにはなりません。

書いた遺言書で実際に登記ができるかどうかは、法務局の判断と個別の事情によります。書き方に不安があるときは、お近くの司法書士にご相談ください。

よくある質問

Q. 遺言書の不動産をきちんと書くのに、費用はかかりますか?

自分で書く場合にかかるのは、主に登記事項証明書の取得手数料です。手数料は1通ごとにかかるため、土地と建物、私道などの数だけ必要になります。公正証書遺言にする場合は公証人の手数料がかかり、金額は財産の価額などで変わるため、公証役場で確認してください。専門家に書き方の確認を頼む場合の報酬は、事務所ごとに異なります。

Q. 期限はありますか?書き方があいまいなまま放っておくとどうなりますか?

遺言を書き直すことに期限はありません。ただ、書き方があいまいなまま相続が始まると、法務局で手続きが止まったり、相続人の間で解釈が分かれたりするおそれがあります。また、遺言で不動産を受け取った相続人には、相続の開始と取得を知った日から3年以内に相続登記を申請する義務があり(不動産登記法76条の2第1項)、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります(同法164条1項)。元気なうちに書き方を整えておくことが、残される家族の手間を減らします。

Q. 自分で書けますか?どこに相談すればよいですか?

登記事項証明書を取り寄せて、表題部のとおりに書き写すこと自体は、ご自身でも取り組めます。手元の遺言書の書き方で登記ができるかは個別の判断になるため、確認したいときはお近くの司法書士にご相談ください。公正証書遺言にする場合は公証人と相談でき、遺言の有効性や解釈について相続人の間で争いがある場合は弁護士が相談先です。

【さらに深掘り】遺言の解釈と、特定が不十分なときの登記実務

ご注意 以下は執筆時点(2026年10月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。

遺言の解釈についての最高裁の一般論

最高裁平成17年7月22日第二小法廷判決(集民217号581頁)は、遺言を解釈するにあたっては、遺言書の文言を形式的に判断するだけでなく、遺言者の真意を探究すべきだとしています。そのうえで、遺言書が複数の条項から成る場合に特定の条項を解釈するときも、その条項だけを切り離して文言を形式的に解釈するのでは足りず、遺言書の全記載との関連、遺言書作成当時の事情、遺言者の置かれていた状況などを考慮して、その条項の趣旨を確定すべきだとしています。この部分は、最高裁昭和58年3月18日第二小法廷判決(裁判集民事138号277頁)を参照して述べられています。

なお、平成17年判決の判示事項は、遺言書の記載のみに依拠して条項の文言を形式的に解釈した原審の判断に違法があるとされた「事例」として整理されています。上の一般論は、個々の遺言書の不動産の書き方が足りるかどうかを直接決める基準ではなく、最終的には個別の遺言書と事情ごとの判断になる点に注意が必要です。

判例の「真意の探究」と登記の審査は場面が違う

判例のいう真意の探究は、遺言を解釈するときの考え方で、遺言書の全記載との関連に加えて、作成当時の事情や遺言者の置かれていた状況といった遺言書の外の事情も考慮するものです。こうした事情まで踏まえた判断が問題になるのは、主に遺言の解釈が争われて裁判で決める場面です。これに対して、登記の申請では、登記官は提出された申請情報・添付情報と登記記録をもとに審査し、不動産が登記記録と合致しないときや、申請情報の内容が登記原因を証する情報の内容と合致しないときは、申請を却下しなければならないとされています(不動産登記法25条6号・8号)。

このため、「裁判になれば遺言者の真意からこの土地も含むと読める余地がある」ことと、「その遺言書を登記原因証明情報(同法61条)として、そのまま登記ができる」ことは、別の問題として考える必要があります。遺言書の記載だけでは対象が読み取れない場合に、どのような資料を添えれば足りるか、あるいは足りないかは、法務局の判断と個別事情によります。解釈について相続人の間で争いがある場合は、登記の手続きとは別に、弁護士への相談が必要です。

「相続させる」と「遺贈する」で変わる書き方の前提

遺産の分割の方法の指定として、遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人または数人に承継させる旨の遺言は、「特定財産承継遺言」と呼ばれます(民法1014条2項)。条文上、承継させる相手は共同相続人に限られているため、子の配偶者や、相続人にならない孫など、相続人でない人に不動産を渡す場合は、遺贈として書くのが基本です。

どちらの形で書くかによって、登記の申請の形も変わります。相続による権利の移転の登記と、相続人に対する遺贈による所有権の移転の登記は、受け取る人が単独で申請できますが(不動産登記法63条2項・3項)、相続人でない人への遺贈は、原則どおり登記権利者と登記義務者の共同申請になります(同法60条)。遺言執行者がいる場合、遺贈の履行は遺言執行者だけが行うことができます(民法1012条2項)。申請書と添付書類の違いは遺言書で相続登記をするとき、両者の違いの全体像は「相続させる」と「遺贈する」はどう違う?で扱っています。

不動産の特定という観点からは、次の2点を押さえておくと整理しやすくなります。

  • 言葉の選び方も特定の一部になる:「譲る」「与える」のような言葉だと、特定財産承継遺言として書いたのか遺贈として書いたのかが解釈の問題になりえます。どちらと読むかで登記の原因や申請の形が変わるため、不動産の表示とあわせて、渡し方の言葉もはっきりさせておくことが大切です。読み方が分かれる記載の扱いは、法務局の判断と個別事情によります。
  • 特定が足りず登記が遅れること自体がリスクになる:相続による権利の承継は、法定相続分を超える部分については、登記などの対抗要件を備えなければ第三者に対抗できません(民法899条の2第1項)。特定が足りないために登記ができない、あるいは遅れる状態が続くと、その間このリスクが残ります。

遺言を書いた後に分筆・合筆・建て替えがあったとき

遺言は遺言者の死亡の時から効力を生じます(民法985条1項)。そのため、遺言書に書いた不動産の表示が、亡くなった時点の登記記録とどう対応するかが問題になります。遺言を書いた後に登記記録が変わる典型的な場面と、そこで生じる問題は次のとおりです。

  • 分筆:遺言書に書いた1筆の土地が、その後2筆以上に分かれた場合、遺言書の地番が残っている土地だけでなく、分かれた土地も含める趣旨だったのかが問題になります。分筆の経緯は登記記録からたどれますが、分かれた土地全体を渡す趣旨だったかどうかは遺言の解釈の問題であり、登記でどう扱われるかは法務局の判断と個別事情によります。
  • 合筆:別々の人に渡すと書いた2筆が、その後1筆にまとめられた場合、遺言書の内容と登記記録が合わない状態になります。この場合にどう扱うかも、遺言の解釈と個別事情によります。
  • 建て替え:古い建物を家屋番号などで特定して書いていた場合、取り壊した古い建物は滅失の登記をし(不動産登記法57条)、新築した建物は新たに表題登記をする(同法47条1項)ため、建て替えた新しい建物は、古い建物とは別の建物として登記されます。古い建物を特定した条項が、そのまま新しい建物に及ぶとは限りません。なお、遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したときは、その部分について遺言を撤回したものとみなす規定もあります(民法1024条後段)。建て替えの場面にどう当てはまるかは、遺言の書き方と個別事情によります。「その他一切の財産」の条項の受取人が別の人になっていると、新しい建物はそちらに渡る内容と読まれるおそれもあります。
  • 地目・地積の変更:所在・地番は同じで、地目の変更や地積の更正の登記がされた場合も、遺言書の表示と登記記録の一部が食い違います。どの程度の食い違いであれば同じ土地と認められるかは、法務局の判断によります。
  • 売却などの処分:遺言を書いた後に、遺言者がその不動産を売却した場合のように、遺言と抵触する生前処分があったときは、抵触する部分については遺言を撤回したものとみなされます(民法1023条2項による同条1項の準用)。

いずれの場面でも、確実なのは、登記記録が変わった時点で遺言を見直すことです。遺言の撤回や書き直しは、遺言の方式に従って行う必要があります(民法1022条)。

「その他一切の財産」条項の役割と限界

「その他一切の財産」の条項には、主に次の役割があります。

  • 書き漏れの受け皿:個別の条項に含まれないと読まれる不動産は、その条項の受取人に渡る内容になります。
  • 遺言を書いた後に取得した財産の受け皿:遺言は死亡の時から効力を生じるため(民法985条1項)、遺言を書いた後に取得した不動産についても、この条項で受取人を定めておく意味があります。

一方で、限界もあります。

  • 個別の条項の範囲が争点になる:個別の条項と包括的な条項がある遺言では、ある不動産が個別の条項に含まれるかどうかが、そのまま「どちらの受取人が取得するか」の対立になります。平成17年判決が示すとおり、特定の条項は遺言書の全記載との関連の中で解釈されるため、個別の条項の書き方があいまいだと、受け皿の条項があることでかえって解釈が分かれる場面もありえます。
  • 登記の場面での読み取り:包括的な条項にもとづいて登記を申請する場合も、その不動産が他の条項に含まれていないことを遺言書から読み取れるかが問われえます。読み取り方に疑義がある場合の扱いは、法務局の判断と個別事情によります。
  • 予定した人に渡すための条項ではない:受け皿の条項は、書き漏れがあった場合の行き先を決めるものであり、渡したい相手が決まっている不動産を、その人に確実に渡すための手段にはなりません。

書き方の一般的な考え方は以上のとおりですが、手元の遺言書の記載で登記ができるかどうかは、個々の遺言書と登記記録を照らし合わせて判断することになります。遺言の有効性や解釈について相続人の間で争いがある場合は、弁護士にご相談ください。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年10月・いずれも一次情報です)。

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