この記事の要点

  • 申請書の「不動産の表示」は、登記事項証明書の表題部を、下線の引かれていない最新の記載のとおりに写す欄です。ふだんの住所(住居表示)や固定資産税の通知書から写すのではありません。
  • 亡くなった方が持分(共有の割合)だけを持っていた場合でも、不動産の表示には土地全体の所在・地番・地目・地積を書きます。持分は、登記の目的や相続人の欄など、別の欄で表します。
  • 建物の附属建物(物置・車庫など)、マンションの敷地権、家の前の私道は、書き漏れが起きやすい三大ポイントです。
  • 書き終えたら、登記事項証明書・遺産分割協議書と1か所ずつ突き合わせます。判断に迷う点は、お近くの司法書士にご相談ください。

相続登記の申請書で、いちばん「写し間違い」と「書き漏れ」が起きやすいのが「不動産の表示」の欄です。結論からいうと、この欄は自分で考えて書く欄ではなく、登記事項証明書の表題部を、そのまま写し取る欄です。迷いが生じるのは、どの欄をどこへ写すのか、持分や私道はどう扱うのか、という対応関係が見えにくいためです。

この記事では、その「対応関係」に絞って整理します。申請書全体(登記の目的・原因・相続人・添付情報・登録免許税など)の書き方は、相続登記申請書の書き方──記載例つき・遺産分割協議で相続した場合の各欄の埋め方で説明していますので、あわせてご覧ください。

なお、2026年10月5日以降に申請する場合は、法務局が公開している新しい様式を使います。新しい様式で加わったのは、主に相続人の欄の「国籍等」と、添付情報の「国籍等を証する情報」です。不動産の表示の欄は、10月5日以降の申請用の記載例でも、それまでの記載例と同じ項目・同じ書き方のままで、「登記記録(登記事項証明書)に記録されているとおりに正確に記載」するよう求める注意書きも変わっていません。実際に書くときは、申請する時点の様式と記載例を使ってください。

この記事は、執筆時点(2026年10月)の法令と、法務局が公開している様式・記載例に基づく一般的な解説です。

不動産の表示は、なぜ「登記事項証明書どおり」なのか

申請書に書く不動産の表示の項目は、法令で決まっています。土地なら「所在(市区町村・字)、地番、地目、地積」、建物なら「所在(市区町村・字と、建っている土地の地番)、家屋番号、種類、構造、床面積」などです(不動産登記令3条7号・8号)。

法務局は、申請書に書かれた不動産が、登記記録(登記簿)に記録されている不動産と同じものかどうかを照らし合わせて審査します。そのため、申請書の不動産の表示は、登記記録と一字一句そろっている必要があります。登記記録の内容を紙に打ち出したものが登記事項証明書ですから、「登記事項証明書どおりに写す」のが基本になります。

ここでよくある取り違えが、次の3つです。

  • 住所(住居表示)を書いてしまう:「○丁目○番○号」は郵便などで使う住居表示で、登記上の「地番」とは別のものです。
  • 固定資産税の課税明細書から写してしまう:課税明細書の所在・地番の書き方が、登記記録と完全に一致するとは限りません。課税明細書は課税価格を確認するための書類として使い、不動産の表示は登記事項証明書から写します。
  • 古い登記事項証明書を使ってしまう:地目の変更や分筆などで、表題部の内容が変わっていることがあります。申請の直前に取り直した証明書を使うと安心です。

対応表:登記事項証明書のどこを、申請書のどこへ写すか

土地の場合

登記事項証明書の「表題部(土地の表示)」から、次のように写します。

登記事項証明書(表題部)の欄 申請書の項目 写すときの注意
所在 所在 「○○市○○町一丁目」のように、字(町名)まで。地番は含めません
①地番 地番 「45番6」のように、証明書の表記のまま。住居表示の「○番○号」ではありません
②地目 地目 「宅地」「公衆用道路」「山林」など。今の使い方と違っていても、登記記録どおりに書きます
③地積 地積 証明書の数値をそのまま。小数点以下の桁数も変えません
不動産番号(証明書の上部) 不動産番号(任意) 書いた場合は、所在・地番・地目・地積を省略できます

地積の小数点以下の桁数は、土地の種類によって違います。宅地や鉱泉地(10平方メートル以下のそのほかの土地も同じ)は1平方メートルの100分の1まで、それ以外の土地で10平方メートルを超えるもの(田・畑・山林・公衆用道路など)は1平方メートル未満を切り捨てて記録されます(不動産登記規則100条)。ですから、宅地は「150・25平方メートル」、公衆用道路は「98平方メートル」のように、桁の付き方が異なって見えるのが正常です。自分で桁をそろえたり、四捨五入したりしないでください。

建物の場合

登記事項証明書の「表題部(主である建物の表示)」から、次のように写します。

登記事項証明書(表題部)の欄 申請書の項目 写すときの注意
所在 所在 「○○市○○町一丁目45番地6」のように、建物が建っている土地の地番まで含みます
家屋番号 家屋番号 地番と同じ数字のことが多いですが、別の番号です。証明書どおりに書きます
①種類 種類 「居宅」「店舗」など
②構造 構造 「木造かわらぶき2階建」など。言い換えずにそのまま
③床面積 床面積 階ごとに書きます
附属建物の表示 附属建物 物置・車庫などが登記されていれば、これも書きます(下で説明)
不動産番号(証明書の上部) 不動産番号(任意) 書いた場合は、所在・家屋番号・種類・構造・床面積などを省略できます

不動産番号を書いた場合に省略できる範囲は、不動産登記令6条1項に定められています。不動産番号は書いても書かなくてもかまいませんが、書くなら13桁を1字も間違えないことが前提です。

「下線」が引かれた記載は写さない

登記事項証明書では、すでに効力がなくなった記載(変更前の地目や、分筆前の地積など)に下線が引かれています。表題部に同じ項目が複数行あるときは、下線のない、いちばん新しい記載を写します。

たとえば、地目の欄に「田」(下線あり)と「宅地」(下線なし)が並んでいれば、申請書には「宅地」と書きます。

市町村合併などで行政区画や字の名前が変わったときは、登記記録の所在も変更されたものとみなされ、登記官が表題部の記録を改めることになっています(不動産登記規則92条)。証明書の所在の表記が今の地名と違って見えるときは、どちらで書くべきか、管轄の法務局に確認してから書くのが確実です。

書き漏れその1:建物の「附属建物」

一戸建ての登記事項証明書を見ると、母屋(主である建物)の下に「附属建物の表示」という欄があり、物置・車庫・離れなどが記録されていることがあります。附属建物は母屋と一体で1個の建物として登記されているもので、申請書にも、附属建物があるときはその所在・種類・構造・床面積を書くことになっています(不動産登記令3条8号ホ)。

母屋の部分だけを写して、附属建物の欄を見落とすのが典型的な書き漏れです。架空の例で示すと、次のような形になります。

不動産の表示
  所   在  ○○市○○町一丁目45番地6
  家屋番号   45番6
  種   類  居宅
  構   造  木造かわらぶき2階建
  床 面 積  1階 60・00平方メートル
         2階 45・00平方メートル
  (附属建物)
  符   号  1
  種   類  物置
  構   造  木造亜鉛メッキ鋼板ぶき平家建
  床 面 積  6・00平方メートル

この例は、附属建物が母屋と同じ土地に建っている前提で、附属建物の所在を母屋の所在とは別に書いていない形です。法務局が公開している相続登記の記載例には、附属建物のある例が載っていません。附属建物の所在の書き表し方や、項目の並べ方・見出しの付け方は、申請前に管轄の法務局の手続案内で確認してください。

反対に、実際には物置や車庫があっても、登記事項証明書に附属建物として記録されていなければ、申請書には書きません。登記されていない建物を登記記録に載せる手続(建物の表題登記など)は、土地家屋調査士の業務です。

書き漏れその2:共有持分を相続するとき

持分は「不動産の表示」には書かない

亡くなった方が土地や建物を単独で持っていたのではなく、「持分2分の1」のように共有で持っていたケースがあります。このとき迷いやすいのが、「申請書の不動産の表示に、持分を書くのか」という点です。

不動産の表示には、土地(建物)全体の所在・地番・地目・地積(種類・構造・床面積)を、登記事項証明書の表題部どおりに書きます。地積も持分に応じて割り算したりせず、表題部の数値をそのまま写します。

亡くなった方の持分は、表題部ではなく、権利部(甲区)で確認します。甲区に「共有者 持分2分の1 甲野太郎」のように記録されていれば、その割合が亡くなった方の持分です。同じ人が何回かに分けて持分を取得していると、甲区に複数の記録があることもあるので、甲区は最後まで目を通してください。

持分を相続するときに変わる欄

持分を相続する場合に書き方が変わるのは、不動産の表示以外の欄です。

  • 登記の目的:単独で所有していた不動産なら「所有権移転」ですが、持分だけを持っていた場合は「甲野太郎持分全部移転」のように、誰の持分が移るのかを書く形で案内されています。法務局が公開している全国共通の相続登記の記載例には、持分だけを相続する場合の例が載っていないため、正確な書き方は、管轄の法務局の案内で確認してください。
  • 相続人の欄:不動産を取得する相続人が2人以上いるときは、相続人ごとの持分を書きます(不動産登記令3条9号)。もともと持分だった不動産を複数の相続人で分ける場合、その持分を全体に対する割合で書くのか、どう計算するのかは、間違えやすいところです。申請書での表記は、管轄の法務局の案内で確認してください。
  • 課税価格:持分の取得に係る登記の課税価格は、不動産全体の価格に持分の割合を掛けた金額になります(登録免許税法10条2項)。

単独所有の不動産と持分の不動産を1通にまとめられるか

申請書は、原則として1つの不動産ごとに作ります。同じ法務局の管轄内の不動産で、登記の目的と登記原因・その日付が同じときなどは、1通にまとめられます(不動産登記令4条)。

自宅の土地・建物は単独所有、私道は持分、というように、登記の目的の書き方が不動産ごとに違う場合に1通にまとめられるか、まとめるならどう書くかは、ご自身の判断で決めず、管轄の法務局の手続案内で確認するか、お近くの司法書士にご相談ください。

書き漏れその3:私道(共用の土地)

家の前の通路や、分譲地の中の道路が、自宅の土地とは別の地番の土地として登記され、近所の方々との共有になっていることがあります。この私道の持分は、自宅の土地とは別の不動産です。不動産の表示にも、自宅の土地とは別に、1筆の土地として書く必要があります。

架空の例で、自宅の土地と私道を並べると、不動産の表示は次のようになります。

不動産の表示
  所   在  ○○市○○町一丁目
  地   番  45番6
  地   目  宅地
  地   積  150・25平方メートル

  所   在  ○○市○○町一丁目
  地   番  45番20
  地   目  公衆用道路
  地   積  98平方メートル

ここでも、私道について書くのは土地全体の表示です。亡くなった方の持分が「10分の1」であっても、地積を10分の1にして書くことはしません。

私道が漏れやすいのは、自宅の権利証(登記識別情報通知・登記済証)とは別に発行されていたり、固定資産税が課税されていないために毎年の通知書に載ってこなかったりするためです。私道の持分を見つける方法(公図・名寄帳・購入時の重要事項説明書・所有不動産記録証明書など)は、私道の相続登記を忘れずに──宅地だけ登記して私道持分が漏れる典型パターンで詳しく説明しています。

私道を不動産の表示に加えるときは、次の点もあわせて確認します。

  • 遺産分割協議書にも私道を書く:申請書の不動産の表示と、遺産分割協議書に書かれた不動産がそろっていることが前提です。協議書に私道が書かれていないと、私道について誰が相続したかを示せないおそれがあります。
  • 課税価格:私道は固定資産課税台帳に価格がないことがあり、その場合は法務局が価格を認定するため、管轄の法務局に問い合わせるよう案内されています。
  • 登録免許税の免税:価格が100万円以下の土地について、2027年3月31日までの相続登記の登録免許税が免税になる措置があります(租税特別措置法84条の2の2第2項)。持分を相続する場合は、法務局の案内では、その土地全体の価格に持分の割合を掛けた額が100万円以下かどうかで判断するとされています。私道の持分が対象になるかどうかは、申請前に法務局の案内で確認してください。

私道の持分が漏れているかどうか、漏れていた場合にどう申請するか(自宅と同じ申請書に入れるか、別にするか)は、登記記録の内容によって判断が分かれます。迷ったときは、お近くの司法書士にご相談ください。

マンション(敷地権付き区分建物)は「三段構え」

分譲マンションの多くは「敷地権付き区分建物」として登記されており、不動産の表示は、一戸建てとは形がまったく異なります。

  • 一棟の建物の表示(マンション全体の所在・建物の名称など)
  • 専有部分の建物の表示(お部屋の家屋番号・種類・構造・床面積など)
  • 敷地権の表示(土地の所在・地番・地目・地積と、敷地権の種類・割合)

の三段構えで書きます(不動産登記令3条8号・11号ヘ)。登記事項証明書の表題部に、この3つがすべて記録されていますので、それぞれをそのまま写します。

落とし穴は、不動産番号を書いた場合でも、敷地権の種類と割合は省略できないことです。不動産番号で省略できるのは、建物の表示と敷地権の目的である土地の所在・地番・地目・地積までで、敷地権の種類・割合は省略の対象に含まれていません(不動産登記令6条1項)。

敷地が複数の土地にまたがる場合の書き方や、敷地権の登記がない古いマンションで土地の持分を別に申請する必要がある場合など、マンション特有の注意点はマンションを相続したときの登記──敷地権付き区分建物は何が違う?で解説しています。

書き終えたら確認したい5つのポイント

不動産の表示を書き終えたら、登記事項証明書を横に置いて、次の5点を1か所ずつ確認します。

  1. 最新の記載を写したか:下線の引かれた古い記載を写していないか。
  2. 一字一句そろっているか:地番の「番」と「番地」、漢数字と算用数字、地積の小数点以下の桁数まで、証明書どおりか。
  3. 附属建物を落としていないか:建物の証明書に「附属建物の表示」がないか。
  4. 私道など別の地番の土地を落としていないか:自宅の周りに、亡くなった方が持分を持つ土地がないか。
  5. 遺産分割協議書と一致しているか:申請書に書いた不動産と、協議書に書いた不動産が同じか。

法務局は、申請前に確認するためのチェックリストも公開しています。あわせて使うと、提出前の見落としを減らせます。

まとめ

  • 申請書の「不動産の表示」は、登記事項証明書の表題部を、下線のない最新の記載どおりに写す欄です。住居表示や課税明細書から写さないようにします。
  • 土地は所在・地番・地目・地積、建物は所在・家屋番号・種類・構造・床面積を写し、附属建物があればそれも書きます。
  • 亡くなった方が持分だけを持っていた場合も、不動産の表示には全体の表示を書き、持分は登記の目的・相続人の欄・課税価格の計算で表します。
  • 私道は別の地番の別の不動産です。不動産の表示にも遺産分割協議書にも、1筆の土地として書き加えます。
  • マンションは三段構えで、不動産番号を書いても敷地権の種類・割合は省略できません。

持分の書き方や、私道・敷地権の扱いなど、登記記録の内容によって判断が分かれる点で迷ったときは、お近くの司法書士にご相談ください。

よくある質問

Q. 不動産の表示を正しく書くために、費用はかかりますか?

写す元になる登記事項証明書の取得に、法務局の手数料がかかります。不動産ごとに取得するため、私道の分も含めて、相続する土地・建物の数だけ必要になります(附属建物は、母屋と同じ証明書に記録されています)。登記そのものには、課税価格の1000分の4の登録免許税がかかり、持分を相続する場合は、不動産全体の価格に持分の割合を掛けた金額が課税価格になります(登録免許税法10条2項)。司法書士に依頼する場合は、別に報酬がかかります。

Q. 私道の持分を書き漏らしたまま登記が終わったら、どうなりますか?

書き漏らした私道は、亡くなった方の名義のまま残ります。相続登記は、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請する義務があり(不動産登記法76条の2第1項)、私道の持分もその対象です。2024年4月1日より前に取得を知った不動産は、2027年3月31日が期限です(民法等の一部を改正する法律〔令和3年法律第24号〕附則5条6項)。正当な理由なく申請を怠ると、10万円以下の過料の対象になります(不動産登記法164条1項)。漏れに気づいたら、その土地について改めて申請します。

Q. 自分で書けますか? わからないときはどこに相談すればいいですか?

不動産の表示は、登記事項証明書を正確に写せば、ご自身で書くこともできます。法務局は様式と記載例を公開しており、申請書類の作成でわからない点は、管轄の法務局の手続案内で相談できます。持分を相続する場合の登記の目的の書き方、私道や敷地権がからむ場合の申請書の分け方など、判断が分かれる点については、お近くの司法書士にご相談ください。

【さらに深掘り】持分・申請書の単位・所在の変更・附属建物をめぐる登記上の論点

ご注意 以下は執筆時点(2026年10月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。

本文で「確認が必要」とした点のうち、条文の構造から整理できる部分と、条文だけでは決まらず法務局の取扱いに委ねられている部分を分けて見ていきます。

1. 持分だけを相続するときの「登記の目的」と「移転する持分」

登記の目的は、申請情報として必ず書く事項の一つです(不動産登記令3条5号)。亡くなった方が所有権の全部を持っていた場合は「所有権移転」ですが、持分だけを持っていた場合の書き方について、佐賀地方法務局が公表している「不動産登記申請書提出前のチェックリスト(所有権移転(相続))」は、「○○持分全部移転」(○○は持分を持っていた方の氏名)と記載するよう案内し、あわせて「持分移転の場合は、移転する持分を申請書に記載」するよう求めています。

これに対し、法務局のホームページの「不動産登記の申請書様式について」で公開されている相続登記の記載例(法定相続・遺産分割・数次相続・遺言の各記載例。2026年10月5日以降の申請用を含む)には、持分だけを相続する場合の例は載っていません。全国共通の記載例として確認できるものがない以上、実際の表記は管轄の法務局の案内に合わせるのが確実です。

相続人が2人以上いる場合は、相続人ごとの持分を書きます(同令3条9号)。登記記録の甲区に記録されている持分は、不動産全体に対する割合です。たとえば亡くなった方の持分2分の1を相続人2人で等しく分ければ、一人あたりは不動産全体の4分の1に相当します。ただし、申請書にこの割合をどの形で書くかを示した全国共通の記載例は確認できていません。申請書での表記は、管轄の法務局の案内で確認してください。

2. 単独所有の不動産と持分の不動産を1通にまとめる場合

申請情報は「登記の目的及び登記原因に応じ、一の不動産ごとに」作るのが原則です(同令4条本文)。例外として1通にまとめられるのは、同じ登記所の管轄内にある2つ以上の不動産で「登記の目的並びに登記原因及びその日付が同一」であるときと、法務省令で定めるときです(同条ただし書)。法務省令にあたる不動産登記規則35条は、分筆と合筆を同時にする場合や、同じ不動産について複数の登記をする場合などを10項目挙げていますが、別々の不動産の相続による移転をまとめる場面を直接取り上げた項目はありません。

条文の文言だけを見ると、「所有権移転」と「○○持分全部移転」は登記の目的の表記が異なります。一方で、前記の佐賀地方法務局のチェックリストは、「複数の不動産で、所有権全部を移転するものと持分を移転するものがある場合」は「所有権移転及び○○持分全部移転」と記載するよう案内しており、1通にまとめる申請を前提とした扱いを示しています。全国で同じ扱いになることを定めた先例・通達の原文は、本記事では確認できていません。

条文から確実にいえるのは、まとめられるための前提として、次の2点が必要だということです。

  • 同じ登記所(法務局)の管轄内の不動産であること
  • 登記原因とその日付が同じであること(同じ方の相続であれば、原因は「相続」、日付は亡くなった日で共通します)

管轄が違う不動産や、相続の日付が違う不動産(数次相続で、相続ごとに原因の日付が分かれる場合を含む)は、この前提を満たしません。前提を満たす場合でも、まとめるかどうか、まとめるときに登記の目的をどう書くかは、管轄の法務局の案内を確認して決めることになります。

3. 所在の表記が今の地名と違って見えるとき

不動産登記規則92条1項は、行政区画やその名称が変わった場合、登記記録に記録された行政区画・名称について「変更の登記があったものとみなす」と定め、字やその名称が変わった場合も同じとしています。同条2項は、この場合に登記官が速やかに表題部の記録を変更しなければならないとしています。

この仕組みから、次の2点が読み取れます。

  • 市町村合併などによる所在の変更は、所有者が表示の変更の登記を申請しなくても、登記記録上は変更があったものとして扱われる
  • 表題部の書き換えは登記官が行う。表題部の登記事項を変更するとき、登記官は変更前の事項に「抹消する記号」を記録することになっており(同規則91条)、登記事項証明書ではこれが下線で表示される(証明書の末尾に「下線のあるものは抹消事項であることを示す。」と注記がある)。書き換えが済んでいれば、古い所在に下線が引かれ、新しい所在が記録されている

証明書を取り直しても古い表記のままだった場合に、申請書を新旧どちらの表記で書くかをはっきり示した先例の原文は、本記事では確認できていません。本文のとおり、管轄の法務局に確認してから書くのが確実です。

なお、住居表示の実施で変わるのは住所の表し方であり、地番は変わりません。亡くなった方の登記記録上の住所が住居表示の実施などで今の住所と違っている場合、それは不動産の表示の問題ではなく、登記名義人と亡くなった方が同じ人であることの証明の問題です。法務局の記載例は、亡くなった方の最後の住所が登記記録上の住所と異なる場合には、本籍の記載のある住民票の除票や戸籍の附票の写しなどが必要になると案内しています。また、土地区画整理などで地番そのものが変わる場合は、92条の行政区画・字の変更とは別の仕組みによるものです。

4. 附属建物の記載

建物の申請情報について、不動産登記令3条8号ホは、附属建物があるときは「その所在する市、区、郡、町、村、字及び土地の地番」と「種類、構造及び床面積」を書くと定めています。附属建物の所在も書く事項に含まれているため、物置や車庫が主である建物とは別の地番の土地に建っている場合は、その土地の地番を書くことになります。

あわせて不動産登記規則34条1項4号は、附属建物があるときは「主である建物及び附属建物の別」と、附属建物に付けられた符号(同規則112条2項)を申請情報の内容とすると定めています。本文の例で「(附属建物)」と区別し、「符号 1」と書いているのは、この規定に対応したものです。項目の並べ方や見出しの付け方そのものを定めた条文はないため、体裁は法務局の様式・記載例に合わせます。

不動産番号を書いた場合に省略できる事項には、不動産登記令3条8号に掲げる事項が含まれ(同令6条1項2号)、附属建物の所在・種類・構造・床面積を定めた同号ホもこれに含まれます。不動産番号を使う場合も、番号が登記事項証明書と一致していることの確認が前提です。

ここで扱ったのは条文と公表資料から読み取れる一般的な枠組みです。具体的な不動産についてどの書き方・どの申請の単位になるかは、登記記録の内容と管轄の法務局の取扱いによって変わります。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年10月・いずれも一次情報です)。

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