この記事の要点

  • 敷地権付きのマンションは、お部屋(専有部分)について相続登記を申請すれば、土地の権利(敷地権)にもその登記の効力が及ぶ。土地について別に申請する必要は原則としてない
  • 申請書の「不動産の表示」は、一棟の建物・専有部分の建物・敷地権の3つを書く三段構え。登記事項証明書の表題部を写し取るのが基本
  • 登録免許税は、建物の評価額と「土地全体の評価額×敷地権の割合」を足した金額に税率0.4%をかけて計算する
  • 敷地権のない古いマンションでは、建物とは別に土地の共有持分についても相続登記を申請する必要がある
  • 必要書類(戸籍・住民票・遺産分割協議書など)は一戸建ての相続登記と同じ。期限は取得を知った日から3年以内

結論:建物の相続登記を申請すれば、土地の持分も一緒に動く

親が住んでいたマンションを相続した方から、「建物だけでなく、土地の持分の登記も別にしなければならないのか」という疑問がよく聞かれます。

結論からいうと、現在の一般的なマンションのほとんどを占める「敷地権付き区分建物」であれば、お部屋(専有部分)について相続登記を1件申請すれば、土地の権利(敷地権)についても登記をしたのと同じ効力が生じます。土地について別の申請書を出す必要は原則としてありません。

ただし、一戸建てとまったく同じ感覚で進めると、次の3か所でつまずきやすくなります。

  1. 申請書の「不動産の表示」の書き方(一棟の建物・専有部分・敷地権の三段構え)
  2. 登録免許税の計算(建物だけでなく、土地の分も課税価格に入る)
  3. 敷地権のない古いマンションの扱い(土地の共有持分を別に申請する)

この記事では、一般的なマンションの相続登記の場面に絞って、この3点を順に整理します。マンションの登記簿の読み方そのもの(区分建物・敷地権とは何か)はマンションの登記簿はなぜ一戸建てと違う?──区分建物と「敷地権」のきほんで解説していますので、初めての方はそちらを先に読んでいただくと理解が早いと思います。また、使う予定のないリゾートマンションや別荘を相続した場合の選択肢はリゾートマンション・別荘を相続したらにまとめています。

「敷地権付き区分建物」を30秒でおさらい

マンションの一室は、登記の世界では「区分建物」と呼ばれます。一棟の建物のうち、壁や床で区切られて独立した所有権の対象になる部分(専有部分)が、それぞれ1つの不動産として登記されているためです。

そして、マンションの土地は区分所有者全員の共有です。専有部分を持つために土地を使う権利を「敷地利用権」といい(建物の区分所有等に関する法律〔区分所有法〕2条6項)、区分所有者は原則として専有部分と敷地利用権を切り離して別々に処分することができません(同法22条1項本文)。この、専有部分と分離して処分できない敷地利用権のうち登記されたものを、不動産登記法では「敷地権」と呼びます(不動産登記法44条1項9号)。

登記事項証明書(登記簿謄本)の表題部に「敷地権の表示」という欄があり、「敷地権の種類 所有権」「敷地権の割合 ○○○○○分の○○○」のように書かれていれば、そのお部屋は敷地権付き区分建物です。この欄があるかどうかが、以下の説明の分かれ道になります。

仕組み:なぜ建物の登記だけで土地の持分も移るのか

敷地権付き区分建物では、土地の登記簿のほうに「この土地の所有権は敷地権である」という登記が登記官の職権で記録されています(不動産登記法46条)。土地の権利関係が、建物側の登記記録に集約されている状態です。

そのうえで、不動産登記法73条1項は、敷地権付き区分建物についてされた所有権や抵当権などの権利に関する登記は、敷地権である旨の登記をした土地の敷地権についてされた登記としての効力をもつと定めています。相続による所有権移転の登記も、この「所有権に係る権利に関する登記」に当たります。

つまり、お部屋の登記記録に「相続を原因として所有権が移転した」と記録されれば、その効力は自動的に土地の敷地権にも及びます。土地の登記簿には相続人の名前が個別に書き込まれるわけではありませんが、法律上はそれで足りる、という建てつけです。「土地の登記簿に自分の名前が載っていないのは登記漏れではないか」と心配される方がいますが、敷地権付きであれば、これが正常な状態です。

なお、専有部分と敷地権をひとまとめにして扱うこの仕組みには、敷地権の登記より前にされていた登記など、いくつかの例外が条文上定められています(不動産登記法73条1項ただし書)。相続登記の場面で例外に当たるケースは多くありませんが、登記簿の記録が複雑な物件では、ここが問題になることもあります。

申請書の「不動産の表示」はこう書く

一戸建ての相続登記では、申請書の「不動産の表示」欄に土地と建物をそれぞれ書きます。敷地権付き区分建物の場合は、書き方が三段構えになります。不動産登記令3条8号が建物の表示として求める事項に加えて、同条11号ヘが、敷地権付き区分建物についての所有権に関する登記を申請するときは「敷地権の目的である土地の所在・地番・地目・地積」と「敷地権の種類及び割合」を申請情報に記載するよう定めているためです。

架空の物件を例にすると、次のような形です(数値はすべて仮のものです)。

不動産の表示
 一棟の建物の表示
  所   在  ○○市○○町一丁目1番地1
  建物の名称  ○○マンション
 専有部分の建物の表示
  家屋番号   ○○町一丁目1番1の305
  建物の名称  305
  種   類  居宅
  構   造  鉄筋コンクリート造1階建
  床 面 積  3階部分 70.00平方メートル
 敷地権の表示
  土地の符号  1
  所在及び地番 ○○市○○町一丁目1番1
  地   目  宅地
  地   積  1500.00平方メートル
  敷地権の種類 所有権
  敷地権の割合 150000分の7000

ポイントは3つです。

  • 登記事項証明書の表題部を、そのまま写し取る。専有部分の「構造」が「鉄筋コンクリート造1階建」のように一見おかしな書き方になっているのは、その部屋自体が1つの階に収まっていることを表す登記上の表記で、これで正しいです。手直ししてはいけません
  • 一棟の建物は、名称があれば「所在」と「建物の名称」で足りる。一棟の建物に名称があるときは、その名称を書けば一棟全体の構造・床面積の記載を省略できる建てつけになっています(不動産登記令3条8号ヘ・ト)。名称のないマンションでは、一棟の建物の構造と床面積を書きます
  • 敷地が複数の土地にまたがる場合は、土地ごとに敷地権の表示を書く。「土地の符号 1」「土地の符号 2」のように、登記事項証明書に並んでいる順に列挙します。1筆でも書き漏らすと補正(法務局からの修正指示)の対象になります

「登記の目的」は「所有権移転」、「原因」は「令和○年○月○日相続」で、一戸建ての場合と変わりません。

登録免許税は「建物+土地×敷地権割合」で計算する

もう一つのつまずきどころが登録免許税です。「土地の申請はしないのだから、土地の分の税金はかからない」と考えてしまいがちですが、これは誤りです。

相続による所有権移転登記の登録免許税は、不動産の価額を課税標準(税額計算のもとになる金額)として、税率1000分の4(0.4%)で計算します(登録免許税法9条・別表第一 一(二)イ)。この「不動産の価額」は、当分の間、固定資産課税台帳に登録された価格(いわゆる固定資産税評価額)を基礎とすることができるとされており(同法附則7条)、実務では毎年の固定資産税の課税明細書や、市区町村が発行する固定資産評価証明書の価格をそのまま使います。

敷地権付き区分建物の場合、課税価格は次の2つを合計した金額になります。

  1. 建物(専有部分)の固定資産税評価額
  2. 敷地となっている土地全体の固定資産税評価額 × 敷地権の割合

土地について「持分の割合を乗じた金額」を課税価格とする考え方は、登録免許税法10条2項(所有権の持分の取得に係る登記は、不動産の価額に持分の割合を乗じて計算する)と同じ発想です。

仮の数値で計算してみます。

項目 仮の数値
建物(専有部分)の評価額 800万円
土地全体の評価額 3億円
敷地権の割合 150000分の7000
土地の按分額 3億円 × 7000 ÷ 150000 = 1,400万円
課税価格 800万円 + 1,400万円 = 2,200万円
登録免許税 2,200万円 × 0.4% = 88,000円

このように、建物だけで計算した場合(800万円 × 0.4% = 32,000円)と比べると、税額は大きく変わります。なお、課税価格は1,000円未満を切り捨て(国税通則法118条1項)、税額は100円未満を切り捨てる(同法119条1項)などの端数処理の決まりがあり、計算した税額が1,000円に満たないときは1,000円になります(登録免許税法19条)。

実務上の注意点を2つ挙げます。

  • 土地の評価証明書は「敷地全体」の価格で出ることがある。この場合、ご自身で敷地権の割合を掛けて按分します。市区町村によっては、あらかじめ持分に応じた額が記載された証明書が出ることもあるので、どちらの額なのかを確認してから計算してください
  • 敷地が複数の土地にまたがるときは、土地ごとに按分してから合計する。敷地権の割合が土地ごとに異なることもあります

登録免許税の計算は、登記手続きの一部として司法書士が案内できる範囲です。一方、相続税など他の税金の具体的な計算や申告は税理士の業務ですので、そちらはお近くの税理士にご相談ください。

敷地権のない古いマンションは、土地を別に申請する

敷地権の制度ができる前に建てられた古いマンションや、規約で専有部分と敷地利用権を分離して処分できると定めているマンションでは、敷地権の登記がされていないことがあります。登記事項証明書の表題部に「敷地権の表示」欄がなければ、このタイプです。

この場合、土地の登記簿には区分所有者それぞれの共有持分が個別に登記されており、建物の登記をしても土地には効力が及びません。したがって、建物(専有部分)の相続登記とは別に、土地の共有持分についても相続登記を申請する必要があります。同じ法務局の管轄内にあり、登記の目的と、登記原因およびその日付が同じであれば、建物と土地の持分を1通の申請書にまとめて申請できます(不動産登記令4条ただし書)。

見落としが起きやすいのは、建物の登記だけを済ませて安心してしまい、土地の持分が亡くなった方の名義のまま残ってしまうケースです。何年も経ってから売却しようとしたときに発覚し、あらためて相続人全員の協力を得なければならなくなる、という事態につながります。古いマンションを相続したときは、建物の登記事項証明書に加えて、土地の登記事項証明書も取り寄せて、亡くなった方の持分が登記されていないかを確認することが出発点になります。2026年(令和8年)2月2日からは、相続人が法務局に対して、亡くなった方が所有権の登記名義人として記録されている不動産を一覧にした「所有不動産記録証明書」の交付を請求できる制度も始まっています(不動産登記法119条の2第2項)。登記漏れの土地がないかを確かめる手がかりとして使えます。

なお、敷地権のないマンションでは、敷地の土地が複数の筆に分かれていて、筆ごとに持分の割合が異なることも珍しくありません。土地ごとに持分を確認し、それぞれについて課税価格を計算します。

必要書類は一戸建ての相続登記と同じ

「マンションだから特別な書類がいるのでは」と心配される方もいますが、敷地権付きであるかどうかにかかわらず、相続登記に必要な書類は一戸建ての場合と変わりません。亡くなった方の出生から死亡までの戸籍、相続人の戸籍と住民票、遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明書(協議による場合)、固定資産評価証明書などです。書類の集め方から申請後の登記識別情報の受け取りまでの流れは、亡くなった父名義の家、どうやって名義変更する?相続登記の流れを最初から最後までやさしく解説で7ステップに分けて解説しています。

マンション特有の注意があるとすれば、固定資産評価証明書を建物と土地の両方について取ることです。土地の評価額は登録免許税の計算に必要ですから、建物分だけ取って申請すると、法務局から追加提出を求められます。

また、相続登記には期限があります。相続によって所有権を取得したことを知った日から3年以内に申請しなければならず(不動産登記法76条の2第1項)、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になり得ます(同法164条1項)。マンションであっても同じです。

まとめ

マンション(敷地権付き区分建物)の相続登記は、専有部分について1件申請すれば土地の敷地権にも効力が及び、土地を別に申請する必要はありません。ただし、申請書の「不動産の表示」は一棟の建物・専有部分・敷地権の三段構えで登記事項証明書どおりに書くこと、登録免許税は建物の評価額に「土地全体の評価額×敷地権の割合」を足した金額をもとに計算すること、敷地権のない古いマンションでは土地の共有持分を別に申請すること、の3点が一戸建てとの違いです。

登記事項証明書に「敷地権の表示」欄があるかどうかを確かめるところから始めてみてください。表示の転記や課税価格の計算に不安があるとき、敷地が複数の土地にまたがっているとき、敷地権のない古いマンションのときは、お近くの司法書士にご相談ください。

よくある質問

Q. マンションの相続登記の費用はどれくらいかかりますか?

登録免許税は、建物の固定資産税評価額と土地全体の評価額に敷地権の割合を掛けた額の合計に0.4%を掛けた金額です。たとえば合計2,200万円なら88,000円になります(数値は仮のものです)。土地の按分額が100万円以下のときは、土地分の登録免許税が免除される特例(租税特別措置法84条の2の2第2項・2027年3月31日まで)の対象になる場合があります(敷地権への適用の取扱いは ※要確認)。このほかに戸籍などの取得費用と、司法書士に依頼する場合はその報酬がかかります。

Q. 相続登記をしないまま放置するとどうなりますか?

相続で取得したことを知った日から3年以内の申請が義務で、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になり得ます。加えて、登記をしないままでは売却や住宅ローンの担保設定ができず、次の相続が起きると相続人が増えて協議が難しくなります。敷地権のない古いマンションでは、土地の持分の登記漏れが後から発覚するケースもあるため、早めに登記簿を確認しておくことをおすすめします。

Q. マンションの相続登記は自分でできますか?

敷地権付き区分建物の相続登記も、ご自身で申請することはできます。ただし、不動産の表示の転記ミスや、土地分を含めた課税価格の計算誤りは補正の原因になりやすいところです。敷地が複数の土地にまたがる物件、敷地権のない古いマンション、相続人が多い場合などは手続きが複雑になりますので、お近くの司法書士にご相談ください。

【さらに深掘り】敷地権付き区分建物の相続登記における申請実務の着眼点

ご注意 以下は執筆時点(2026年9月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。

1. 建物の登記が敷地権に及ぶ範囲と、その例外の読み方

本文で触れたとおり、敷地権付き区分建物についての所有権に係る権利に関する登記は、敷地権である旨の登記(不動産登記法46条)をした土地の敷地権についてされた登記としての効力を有します(同法73条1項本文)。相続を原因とする所有権移転登記はこの「所有権に係る権利に関する登記」に当たり、建物側に1件登記すれば足りるというのが原則です。

登記審査の観点から押さえておくべきなのは、同項ただし書が列挙する例外です。条文上は次の4類型が挙げられています。

  • 敷地権の登記をする前に登記されたもの(1号)。敷地権の登記より前にされた所有権の登記などは、建物側にあっても敷地権には及びません(担保権の登記については、同号のかっこ書に除外があります)
  • 敷地権の登記後にされた所有権の仮登記で、登記原因が敷地権の発生前に生じたもの(2号)
  • 敷地権の登記後にされた質権・抵当権の登記で、登記原因が敷地権の発生前に生じたもの(3号)
  • 敷地権の登記後にされた所有権・質権・抵当権の登記で、登記原因が敷地権の発生後に生じたもののうち、専有部分と敷地利用権を分離して処分できる場合(4号。規約で分離処分を許している場合が典型で、通常の分譲マンションのように分離処分が禁止されている場合は除かれます)

このほか、敷地権である旨の登記をした土地には、原則として敷地権の移転登記や敷地権を目的とする担保権の登記をすることができず(同条2項本文)、建物側にも「建物のみ」の所有権移転や「建物のみ」を目的とする担保権の登記は原則として認められません(同条3項本文)。いずれも、登記原因が生じた時期と、分離処分禁止に当たるかどうかに応じて、ただし書で例外が置かれています(同条2項ただし書・3項ただし書)。

相続登記の実務で登記記録の前後関係の確認が必要になるのは、主に次のような場面です。

  • 被相続人名義の所有権登記そのものが敷地権の登記より前にされており(上記1号)、土地の登記記録に被相続人の共有持分が別途残っている場合
  • 敷地権の登記が後から追加された物件(当初は敷地権のない区分建物として分譲され、のちに表題部の変更で敷地権が記録されたもの)で、相続の開始(登記原因の日付)が敷地権の登記より前にある場合。敷地権の登記後に申請する所有権移転の本登記は、文言のうえでは上記1号から4号のいずれにも当てはまらず、条文だけでは扱いが定まりません

このような物件では、建物の表題部に記録された敷地権の登記の日付と、相続開始日・被相続人の所有権取得の登記の受付日との前後関係を、登記事項証明書で確認するのが出発点になります。前後関係によっては、土地の持分について別に登記を要することがあり、申請の組み立てが変わります。登記記録の経過が複雑な物件は、申請前に管轄の法務局へ確認するのが安全です。

2. 「不動産の表示」の記載要件と省略できる範囲

申請情報の内容は不動産登記令3条に定められており、区分建物については、一棟の建物の所在・地番(同条8号イ)、家屋番号(同号ロ)、種類・構造・床面積(同号ハ)、建物の名称(同号ニ)に加え、一棟の建物の構造・床面積(同号ヘ)または一棟の建物の名称(同号ト)を記載します。一棟の建物に名称があるときは、名称を記載すれば一棟の構造・床面積の記載は不要とされています(同号ヘのかっこ書)。

敷地権付き区分建物について所有権に関する登記を申請するときは、これに加えて、敷地権の目的となる土地の所在・地番・地目・地積(同条11号ヘ(1))と、敷地権の種類および割合(同号ヘ(2))を記載します。敷地権の登記事項は不動産登記規則118条に定められており、登記記録には土地の符号・不動産所在事項・地目・地積・敷地権の種類・敷地権の割合が記録されていますから、申請書には登記事項証明書の「敷地権の表示」欄をそのまま転記することになります。

実務上の留意点を3つ挙げます。

  • 不動産番号を記載した場合の省略の範囲。不動産番号を申請情報の内容としたときは、一棟の建物・専有部分の表示(令3条8号の事項)と、敷地権の目的となる土地の所在・地番・地目・地積(令3条11号ヘ(1))の記載を省略できます(不動産登記令6条1項2号・3号)。ただし、敷地権の種類と割合(令3条11号ヘ(2))は省略の対象に含まれていません。法務局が公開している相続登記の手続案内でも、分譲マンションについて「不動産番号を記載した場合は、『敷地権の種類』及び『敷地権の割合』以外の記載を省略することができます」と説明されています。不動産番号を使って簡略化する場合でも、敷地権の種類・割合だけは必ず書く、と覚えておくと補正を避けられます
  • 敷地が複数の土地にまたがる場合。登記記録に「土地の符号1」「土地の符号2」と並んでいれば、土地ごとに所在・地番・地目・地積・敷地権の種類・割合を記載します。敷地権の割合が土地ごとに異なることがあり、後述の課税価格の計算にも影響しますので、符号ごとに割合を確認します
  • 敷地権の種類が「所有権」以外の場合。敷地権の種類には所有権のほか地上権・賃借権があります。種類が所有権以外のときは、申請書の記載は同じ要領ですが、登録免許税の課税価格の扱いが所有権の場合と異なり得ますので、申請前に管轄の法務局で確認してください

3. 登録免許税の課税価格の根拠と、評価証明書の読み方

登録免許税の課税標準となる不動産の価額は、登記の時における不動産の価額であり(登録免許税法10条1項)、所有権の持分の取得に係る登記では、不動産の価額に持分の割合を乗じた金額とされています(同条2項)。不動産の登記についてはこの価額を、当分の間、固定資産課税台帳に登録された価格を基礎として政令で定める価額によることができるとされており(同法附則7条)、これが実務で固定資産税評価額を使う根拠です。

敷地権付き区分建物の相続登記では、専有部分の建物の価額に、敷地権の目的である土地の価額に敷地権の割合を乗じた額を加えたものを課税価格とするのが実務の取扱いです。土地部分の計算は、同法10条2項の「持分の割合を乗じる」考え方と同じ構造になっています。法務局が公開している登録免許税の計算案内では、複数の不動産を同一の申請書で申請するときは、それぞれの固定資産課税台帳の価格の合計額から1,000円未満を切り捨てるとされており、建物の価額と土地の按分額を足した後に1,000円未満を切り捨てる、という順序になります。

実務上の分かれ目は、固定資産評価証明書に記載される土地の価額です。

  • 土地全体の価額で証明書が出る自治体では、申請人側で敷地権の割合を乗じて按分します。この場合、申請書の課税価格欄の内訳を「建物○円、土地○円(土地全体の価額○円×敷地権の割合)」のように別紙などで示しておくと、審査の際に計算過程が追えます
  • 敷地権の割合を乗じた後の価額が記載された証明書が出る自治体もあります。この場合に重ねて割合を掛けると、課税価格を過少に計算してしまい、補正や追納の原因になります

どちらの様式かは証明書の記載(「持分」「敷地権割合」欄の有無や、地積と価額の対応関係)から判断できますが、判別しにくいときは、証明書を発行した市区町村の窓口で「マンション敷地の按分後の価額か、土地全体の価額か」を確認してから計算するのが確実です。

4. 敷地権のない区分建物と土地の共有持分の一括申請

敷地権の登記がない区分建物(敷地権の制度ができる前に分譲されたもの、または規約で専有部分と敷地利用権を分離して処分できると定めているもの=建物の区分所有等に関する法律22条1項ただし書)では、土地の共有持分について独立した権利の登記が存在します。したがって、専有部分の相続登記とは別に、土地の持分についても相続登記が必要です。

申請情報は原則として一の不動産ごとに作成しますが、同一の登記所の管轄区域内にある二以上の不動産について、登記の目的ならびに登記原因およびその日付が同一であるときは、一の申請情報で申請できます(不動産登記令4条ただし書)。専有部分と土地の持分について、いずれも「所有権移転」「令和○年○月○日相続」で申請するのであれば、この要件を満たし、1通の申請書にまとめられます。

一括申請する場合の留意点は次のとおりです。

  • 課税価格は不動産ごとに計算して合算する。建物の価額と、土地の価額に被相続人の共有持分の割合を乗じた額(登録免許税法10条2項)を合計し、1,000円未満を切り捨てます。土地が複数筆あり筆ごとに持分割合が異なるときは、筆ごとに按分します
  • 土地の登記事項証明書は「共有者」の記載を必ず確認する。敷地権のない古いマンションの土地の登記記録は共有者が多数に上り、被相続人の持分が複数回に分けて登記されていることもあります。持分の合計を確認し、申請書の「不動産の表示」に土地の表示を、申請人欄に移転する持分を正確に記載します
  • 登記原因やその日付が異なる場合は一括申請できない。たとえば土地の持分が数次相続で先代名義のまま残っており、建物と相続開始日(登記原因の日付)が異なるときは、不動産登記令4条ただし書の要件を満たさないため、別の申請になります

5. 100万円以下の土地の免税措置と敷地権

租税特別措置法84条の2の2第2項は、個人が令和9年(2027年)3月31日までに土地について相続による所有権の移転登記を受ける場合において、当該登記に係る登録免許税法10条1項の課税標準たる不動産の価額が100万円以下であるときは、登録免許税を課さないと定めています。条文の対象は「土地」であり、専有部分の建物には適用がありません。

持分の取得についての取扱いは、法務局の案内で「不動産の所有権の持分の取得に係るものである場合は、当該不動産全体の価額に持分の割合を乗じて計算した額が不動産の価額となります」と明示されています。土地の共有持分を相続する場合(第4節の敷地権のない区分建物の土地の持分がこれに当たります)は、持分を乗じた後の額で100万円以下かどうかを判断することになります。

一方、敷地権付き区分建物の敷地権について、この免税措置の適用の可否を明示した法務局・国税庁の公的な案内は、執筆時点で確認できていません。敷地権の目的である土地の価額に敷地権の割合を乗じた額で判断する取扱いが実務上紹介されていますが、公的資料での裏付けが取れていないため、本文のよくある質問に記載した「※要確認」はそのままにしています。免税措置の適用を受けるには、申請書の登録免許税欄に「租税特別措置法第84条の2の2第2項により非課税」と記載することが必要で(法務局の申請書記載例による)、この記載がなければ免税を受けられないとされています。敷地権について免税措置の適用を求める場合は、申請前に管轄の法務局へ適用の可否と記載方法を確認してください。

なお、免税措置の対象となる土地とならない建物を同一の申請書で申請する場合の記載方法は、法務局が公開している「申請書の記載例(一部の土地が免税対象の場合)」(課税価格には免税される土地の価額を合算せず、対象不動産の表示に非課税である旨を付記する形式)が参考になります。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年9月・いずれも一次情報です)。

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