この記事の要点
- 計算に使うのは、固定資産評価証明書(または固定資産課税明細書)の「価格」(評価額)の欄です。「課税標準額」の欄ではありません。
- 計算の順番は「各不動産の価格(持分なら価格×持分)を出す → 免税になる土地を除いて合計する → 1,000円未満を切り捨てる → 1000分の4を掛ける → 100円未満を切り捨てる(1,000円に満たなければ1,000円)」です。
- 亡くなった方が持分で持っていた不動産は「価格×持分の割合」で計算し、100万円以下の免税もこの持分の価額で判定するよう法務局は案内しています。
- 100万円以下の土地の免税は、建物には使えず、2027年3月31日までの間に受ける登記が対象で、申請書に根拠の条項を書かないと受けられません。
相続登記の登録免許税は、手順さえ押さえれば電卓で計算できます。結論から言うと、ポイントは「どの数字を使うか」と「どこで端数を切り捨てるか」の2つです。
この記事では、計算の実例に絞って説明します。申請書の「課税価格」「登録免許税」欄の書き方は相続登記申請書の書き方、なぜ固定資産税評価額を使うのかという根拠は登録免許税はなぜ『固定資産税評価額』で計算されるの?、収入印紙などでの納め方は登録免許税は収入印紙で納める?で解説していますので、あわせてご覧ください。
なお、この記事は執筆時点(2026年10月)の法令と、法務局が公開している案内に基づく一般的な解説です。計算例の金額はすべて架空のものです。
計算の前に:使う数字と5つの手順
使うのは「価格(評価額)」の欄
市区町村が発行する固定資産評価証明書や、毎年届く固定資産課税明細書には、金額の欄がいくつも並んでいます。登録免許税の計算に使うのは「価格」または「評価額」と書かれた欄で、「固定資産税課税標準額」ではない、と法務局は注意しています。住宅が建っている土地などでは、固定資産税の課税標準の特例(地方税法349条の3の2。住宅用地は価格の3分の1、200平方メートル以下の小規模住宅用地は6分の1)によって課税標準額のほうが価格より小さくなっていることがあり、その場合に取り違えると、税額を本来より少なく計算してしまいます。
固定資産課税台帳に価格がない不動産(私道などで見られます)は、登記所が認定した価額を使うことになるため、管轄の法務局に問い合わせてください。
また、ここで使う固定資産税の価格は、相続税を計算するときの評価額(路線価などで出す相続税評価額)とは別物です。相続税の申告のために作った資料の金額をそのまま使わないよう注意してください。
計算の5つの手順
| 手順 | やること | 根拠 |
|---|---|---|
| ① | 不動産ごとに価格を書き出す。亡くなった方が持分で持っていた不動産は「価格×持分の割合」にする | 登録免許税法10条2項 |
| ② | 100万円以下の免税になる土地を除く | 租税特別措置法84条の2の2第2項 |
| ③ | 残りを合計し、1,000円未満を切り捨てる(これが「課税価格」) | 国税通則法118条1項 |
| ④ | 課税価格に1000分の4を掛ける | 登録免許税法別表第一第一号(二)イ |
| ⑤ | 100円未満を切り捨てる。1,000円に満たないときは1,000円にする | 国税通則法119条1項、登録免許税法19条 |
1,000円未満の切り捨ては、不動産1つずつではなく、1通の申請書に載せる不動産の価格を合計してから行います。法務局の「登録免許税の計算」でも、複数の不動産を同一の申請書で申請するときは、それぞれの価格の合計額から1,000円に満たない額を切り捨てる、と説明されています。
計算例1:相続した土地の一部が100万円以下の場合
父が単独で持っていた次の4つの不動産を、遺産分割協議で長男が1人で相続したとします(いずれも架空の金額です)。
| 不動産 | 評価証明書の価格 | 免税の対象か |
|---|---|---|
| 宅地(自宅の敷地) | 6,543,210円 | 100万円を超えるので対象外 |
| 建物(自宅) | 1,234,560円 | 建物なので対象外 |
| 畑 | 856,700円 | 100万円以下の土地なので対象 |
| 山林 | 45,300円 | 100万円以下の土地なので対象 |
手順② 免税の土地を除く 畑と山林は100万円以下の土地なので、免税の対象になります。法務局の記載例では、登録免許税が免除される土地の価格は課税価格に合算する必要はない、とされています。
手順③ 合計して1,000円未満を切り捨てる 6,543,210円 + 1,234,560円 = 7,777,770円 → 課税価格 7,777,000円
手順④ 1000分の4を掛ける 7,777,000円 × 4/1000 = 31,108円
手順⑤ 100円未満を切り捨てる 登録免許税 31,100円
申請書には、この税額に加えて、免税になる土地がどれかと根拠の条項(「租税特別措置法第84条の2の2第2項により非課税」)を書きます。この記載がないと免税は受けられない、と法務局は案内しています。
仮に根拠の条項を書かず、4つすべてを課税の対象として計算すると、次のようになります。
8,679,770円 → 課税価格 8,679,000円 × 4/1000 = 34,716円 → 34,700円
差は3,600円です。金額としては大きくなくても、免税の対象になる土地があれば、それを書き漏らさないことが大切です。どんな土地が免税の対象になるかは、相続登記の登録免許税が『ゼロ』になる土地で詳しく説明しています。
計算例2:亡くなった方が「持分」で持っていた不動産がある場合
亡くなった方が、不動産を他の人と共有していて、その持分(2分の1など)を相続するケースです。持分を取得する登記では、課税標準となる価額は「不動産の価格 × 持分の割合」で計算すると定められています(登録免許税法10条2項)。
母が亡くなり、長女が1人で次の不動産を相続したとします(架空の金額です)。
| 不動産 | 評価証明書の価格 | 母の持分 | 持分の価額 | 免税の対象か |
|---|---|---|---|---|
| 宅地 | 5,432,100円 | 2分の1 | 2,716,050円 | 100万円を超えるので対象外 |
| 雑種地(駐車場) | 3,200,000円 | 4分の1 | 800,000円 | 持分の価額が100万円以下なので対象 |
| 建物 | 876,500円 | 単独所有 | 876,500円 | 建物なので対象外 |
ここで注意したいのは雑種地です。土地全体の価格は320万円で100万円を超えていますが、法務局の案内では、所有権の持分を取得する場合は、不動産全体の価額に持分の割合を掛けた額が「不動産の価額」になるとされています。この例では持分の価額が80万円なので、100万円以下の免税の対象として扱われます。
一方、建物は価格が100万円以下でも、この免税は土地だけが対象なので、課税されます。
計算
- 合計:2,716,050円 + 876,500円 = 3,592,550円 → 課税価格 3,592,000円
- 税額:3,592,000円 × 4/1000 = 14,368円 → 登録免許税 14,300円
なお、相続人が何人かで1つの土地を分け合って相続する場合に100万円の判定をどう行うかについては、法務局の記載例にも注意書きがありますが、ご自身のケースで免税になるかどうかは、申請前に管轄の法務局に確認してください。
計算例3:税額が1,000円に満たない場合
価格が小さい不動産だけを相続した場合は、最低額の決まりに当たることがあります。
たとえば、価格180,000円の古い物置(建物)だけを相続した場合です。建物は100万円以下の免税の対象外なので、課税されます。
180,000円 × 4/1000 = 720円 → 1,000円に満たないので、登録免許税は1,000円
登録免許税法19条は、税率を掛けて計算した金額が1,000円に満たないときは、登録免許税を1,000円とすると定めています。また、同法15条により、課税標準の金額の全体が1,000円に満たないときは1,000円として計算します。
100万円以下の免税で確認しておきたいこと
計算例で使った100万円以下の土地の免税は、租税特別措置法84条の2の2第2項に定められています。条文の要件を整理すると、次のとおりです。
- 個人が受ける登記であること
- 土地についての、相続による所有権の移転の登記(または、表題部所有者の相続人が受ける所有権の保存の登記)であること
- その登記の登録免許税の課税標準となる不動産の価額が100万円以下であること
- 令和9年(2027年)3月31日までの間に受ける登記であること
建物はこの免税の対象になりません。また、免税は自動では適用されず、申請書に根拠の条項を書く必要があります。古い解説や見本では「第84条の2の3」と書かれていることがありますが、執筆時点の条文と法務局の案内(2026年4月1日更新)では「第84条の2の2」です。
なお、価格が100万円以下に見えても、評価証明書の年度や持分の考え方によって判定が変わることがあります。ご自身の土地が対象になるかどうかは、評価証明書の数字と条文の要件を一つずつ照らし合わせ、迷う場合は管轄の法務局に確認してください。
まとめ
相続登記の登録免許税は、評価証明書の「価格」の欄を使い、①持分なら価格×持分にする、②100万円以下の免税になる土地を除く、③合計して1,000円未満を切り捨てる、④1000分の4を掛ける、⑤100円未満を切り捨てる(1,000円に満たなければ1,000円)、という順番で計算します。免税の対象になる土地があるときは、申請書に根拠の条項を書くことを忘れないでください。
計算に迷う不動産が含まれていたり、免税の対象になるか判断がつかなかったりするときは、お近くの司法書士にご相談ください。
よくある質問
Q. 登録免許税はだいたいいくらになりますか? 相続による所有権の移転の登記の税率は1000分の4なので、免税になる土地を除いた価格の合計のおよそ0.4%が目安です。たとえば価格の合計が1,000万円なら4万円です。正確な金額は、1,000円未満と100円未満の切り捨てをしたうえで計算します。
Q. 100万円以下の免税には期限がありますか? 執筆時点(2026年10月)の条文では、令和9年(2027年)3月31日までの間に受ける登記が対象とされています。その後の扱いは、その時点の法令で確認する必要があります。対象になりそうな土地がある場合は、期限を意識して早めに準備を進めてください。
Q. 自分で計算して申請しても大丈夫ですか?どこに相談すればいいですか? 法務局は「登録免許税の計算」という案内で計算方法と計算例を公開しており、ご自身で計算して申請することもできます。私道で価格がない土地がある、持分の判定に迷うなど、法務局ごとに確認が必要な点があれば管轄の法務局に問い合わせてください。手続き全体に不安がある場合は、お近くの司法書士にご相談ください。
【さらに深掘り】計算の前提が変わる場面──基準となる価格・認定価額・持分の分け合い・数次相続
ご注意 以下は執筆時点(2026年10月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。
本文の計算例は、評価証明書の価格がそろっていて、相続登記が1件で済む場面でした。ここでは、不動産登記実務の観点から、計算の前提そのものが変わる場面を整理します。
1. どの時点の価格を使うか──「申請の日」で基準が切り替わる
登録免許税法附則7条は、不動産の登記の課税標準となる価額について、当分の間、固定資産課税台帳に登録された価格を基礎として政令で定める価額によることができるとしています。その政令(登録免許税法施行令附則3項)は、登記の申請の日によって、基準となる価格を次のように分けています。
| 登記の申請の日 | 基準となる価格 |
|---|---|
| その年の1月1日から3月31日まで | その年の前年12月31日現在で固定資産課税台帳に登録されている価格 |
| その年の4月1日から12月31日まで | その年の1月1日現在で固定資産課税台帳に登録されている価格 |
区切りになるのは、評価証明書を取った日ではなく「申請の日」です。3月に取った証明書のまま4月以降に申請するなど、申請の日が区切りをまたぐと、基準となる価格が替わります。価格が替わっていれば、課税価格も、100万円以下かどうかの判定も、替わった価格で計算し直すことになります。
また、同令附則4項は、増築・改築・損壊・地目の変換などの特別の事情があり、台帳の価格をそのまま使うのが適当でないと登記官が認めるときは、その事情を考慮して登記官が認定した価額によるとしています。建物を増築した、土地の地目が変わったといった事情がある場合は、評価証明書の金額をそのまま使えるかを管轄の法務局に確認してください。
2. 価格のない土地が混ざるとき──認定価額が決まらないと計算が確定しない
台帳に価格のない不動産について、同令附則3項は、申請の日においてその不動産に類似する不動産で台帳に価格のあるものの価格を基礎として、登記機関が認定した価額によると定めています。国税庁のリーフレット(令和8年4月)も、100万円以下の免税で使う「不動産の価額」について、台帳に価格がない場合は登記官が認定した価額になるとして、管轄の登記所への問い合わせを案内しています。
そのため、価格のない土地が混ざる申請では、その土地の認定価額が決まるまで、①その土地が100万円以下の免税に当たるか、②課税される不動産の合計(課税価格)がいくらか、のどちらも確定しません。計算の順番は本文の5つの手順と同じですが、手順①に入る前に、管轄の法務局で認定価額を確認しておく必要があります。
3. 相続人どうしで持分を分け合う場合の注記
本文の計算例2は、亡くなった方が持っていた持分を、1人の相続人が取得する例でした。これとは別に、亡くなった方が単独で持っていた土地を、複数の相続人が持分を定めて取得する場合があります。
法務局の「申請書の記載例(一部の土地が免税対象の場合)」は、妻と子2人が法定相続分(妻2分の1、子は各4分の1)で相続する例です。その注3には、相続する持分に不動産の課税価額を掛けた額が100万円以下である場合も免税措置を受けることができる、という趣旨の注記があります。
この注記をご自身のケースに当てはめるときは、申請書を作る前に、土地の価格と各相続人の持分を示して、管轄の法務局に確認してください。
4. 数次相続では「どの登記に、どの項を書くか」を分ける
祖父Aの名義の土地を子Bが相続したものの、登記をしないままBが亡くなり、孫Cが相続した、という数次相続では、「A→B」と「B→C」の2つの相続登記を申請するのが基本の形です。中間の相続(AからBへの相続)が、遺産分割や相続放棄の結果によるものを含めてBの単独相続である場合に限り、AからCへ直接1件で登記できる取扱いがあります(法務局の数次相続の記載例の解説と、東京ブロック管内の法務局のQ&Aが示す取扱いです。詳しくは数次相続の登記申請書の書き方をご覧ください)。ただし、その形で申請するときに免税をどう考えるかは、条文と法務局・国税庁の案内からは読み取れないため、申請前に管轄の法務局に確認してください。以下は、2つの登記を申請する場合の整理です。
100万円以下の免税(租税特別措置法84条の2の2第2項)とは別に、同じ条の第1項にも免税の定めがあり、どちらの項を使うかは登記ごとに分けて考えます。
- A→Bの登記(中間の相続人Bを名義人とするための登記):第1項の対象です。平成30年4月1日から令和9年(2027年)3月31日までの間に受ける登記が対象で、条文に不動産の価額の要件は置かれていません。申請書には「租税特別措置法第84条の2の2第1項により非課税」と書く、と法務局は案内しています。
- B→Cの登記:国税庁のリーフレットは、この登記は第1項の免税措置の対象とはならないと注記しています。B→Cの登記については、土地の価格が100万円以下であれば、第2項の要件に当てはまるかを別に確かめることになり、当てはまる場合に書くのは「第2項により非課税」です。
第1項も第2項も、対象は土地だけで、建物は含まれません。また、法務局の案内では、Bが生前にその土地を第三者に売却していた場合でも、A→Bの相続登記は第1項の免税の対象になるとされています。
課税価格と税額は、申請書ごとに計算します。A→BとB→Cを別々の申請書で登記する場合、土地と一緒に建物も相続されていれば、建物は第1項・第2項のどちらの免税の対象にもならないので、それぞれの申請書で、本文の手順に沿って建物の税額を計算することになります。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年10月・いずれも一次情報です)。
- 登録免許税法 第10条・第15条・第19条・別表第一・附則第7条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/342AC0000000035
- 登録免許税法施行令 附則第3項・第4項(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/342CO0000000146
- 国税通則法 第118条・第119条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000066
- 租税特別措置法 第84条の2の2(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/332AC0000000026
- 地方税法 第349条の3の2(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000226
- 法務局「登録免許税の計算」: https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001467400.pdf
- 法務局「相続登記の登録免許税の免税措置について」(2026年4月1日更新): https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000017.html
- 法務局「申請書の記載例(一部の土地が免税対象の場合)」: https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001470845.docx
- 法務局 記載例「所有権移転登記申請書(相続・遺産分割)(数次相続)」(令和8年10月5日以降申請用): https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001470098.pdf
- 東京ブロック管内法務局・地方法務局 相続登記促進プロジェクト「相続登記ガイドブック 相続登記の手続について(詳細編)Q&A編」問28: https://houmukyoku.moj.go.jp/tokyo/content/001396090.pdf
- 国税庁「相続による土地の所有権の移転登記等に対する登録免許税の免税措置について」(令和8年4月): https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/0018003-081-01.pdf
- 法務省 平成30年11月15日民二第611号通知「租税特別措置法第84条の2の3第2項の規定の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて」: https://www.moj.go.jp/content/001377518.pdf
- 法務省 令和4年3月31日民二第513号通知「所得税法等の一部を改正する法律の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて(租税特別措置法第84条の2の3関係)」: https://www.moj.go.jp/content/001377516.pdf
- 財務省「令和9年度税制改正要望事項(法務省民事局民事第二課)」: https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2027/request/moj/09y_moj_k.pdf