この記事の要点

  • 相続人申告登記の申出は、①戸籍の証明書を集める→②申出書を作る→③不動産の所在地を管轄する法務局に出す→④完了の通知書を受け取る、の4ステップで進みます
  • 申出書に書くのは、亡くなった方の氏名と相続開始の日、申出人の住所・氏名、連絡先、添付書類、不動産の表示などです。押印は不要とされています
  • 添付する戸籍は「申出人が登記上の所有者の相続人であること」が分かる範囲で足りるとされていますが、数次相続(相続が二重三重に重なっている状態)などでは範囲が広がります
  • 登録免許税はかかりません。申出はWebブラウザの「かんたん登記・供託申請」からもできます
  • 戸籍の範囲の判断に迷う、相続人が多い、相続が何代も重なっているといった場合は、お近くの司法書士にご相談ください

相続人申告登記は、法務局に「自分は登記上の所有者の相続人です」と申し出ることで、相続登記の申請義務を果たしたものとみなしてもらう手続です(不動産登記法76条の3第1項・第2項)。結論から言うと、亡くなった方と申出人の関係がシンプルな相続であれば、法務省が公開している申出書の様式と記載例に沿って、ご自身で申し出ることも想定された手続になっています。

ただし、手続が簡単かどうかは、相続の形によって大きく変わります。この記事では、申出書の書き方、添付書類(戸籍の範囲)、登録免許税がかからない理由、オンラインで出せるか、提出先と受け取るものを、法務省の案内と条文に沿って順に整理します。

制度のしくみや「所有権が移るわけではない」といった注意点は相続人申告登記とは何かで、2027年3月31日の経過措置の期限に向けた段取りは相続登記義務化の経過措置、期限まであと半年で解説していますので、ここでは繰り返しません。

なお、この記事は執筆時点(2026年10月)の法令と、法務省・法務局が公開している案内に基づく一般的な解説です。

申出の流れは4ステップ

法務省民事局の「相続人申告登記手続のご案内」(令和8年3月版)は、申出の流れを次の4つのステップで説明しています。

  1. 戸籍の証明書を取得する(自分が相続人であることを証明する)
  2. 申出書を作成する
  3. 申出書を提出する(法務局の窓口に持参するか、郵送する)
  4. 登記の完了(法務局から、登記が完了した旨の通知書が交付される)

同じ案内では、ステップ2〜4はWebブラウザ上でもできるとされています。オンラインでの申出については、後の章で説明します。

申出書の書き方──書く項目と記入例

申出書に書く項目

申出書で明らかにすべき事項は、不動産登記規則に定められています(不動産登記規則158条の3、158条の19)。法務省が公開している申出書の様式と記載例に沿って並べると、主な欄は次のとおりです。

  • 申出の目的:「相続人申告」と書きます
  • 誰の相続人か:登記上の所有者(亡くなった方)の氏名を書き、「○○の相続人」とします
  • 相続開始年月日:亡くなった方が死亡した日(戸籍上の死亡日)を書きます
  • 申出人の住所・氏名:住民票に記載されているとおりに正確に書きます。記載例の解説では、押印は不要とされています
  • 氏名のふりがな・生年月日:住民票上のふりがなと生年月日を書くと、住所を証明する書類(住民票の写し)の提出を省略できるとされています(後で説明します)
  • 連絡先の電話番号:申出書に直すべき点があったときに、法務局から連絡を受けるためのものです。記載例の解説は、平日の日中に連絡がつく番号を書くよう案内しています
  • 添付情報:添付する書類の名前を書きます
  • 申出の年月日と申出先の法務局
  • 不動産の表示:登記事項証明書などに記録されているとおりに、土地なら所在・地番、建物なら所在・家屋番号を書きます。不動産番号を書いた場合は、所在・地番などの記載を省略できます(同規則158条の3第2項)

記入例(架空の内容です)

亡くなった父の名義の土地について、子が一人で申し出る場合を想定した記入例です。人名・住所・地番はすべて架空のもので、実在の人物や土地とは関係ありません。

欄 記入例
申出の目的 相続人申告
誰の相続人か (例)甲野太郎の相続人
相続開始年月日 (例)令和○年○月○日
申出人 (例)○○県○○市○○町一丁目○番○号 甲野花子
氏名ふりがな・生年月日 (例)こうの はなこ/昭和○年○月○日
連絡先の電話番号 (例)○○-○○○○-○○○○
添付情報 申出人が登記名義人の相続人であることを証する情報/住所証明情報
申出の年月日・申出先 (例)令和○年○月○日申出 ○○地方法務局○○支局
不動産の表示 (例)不動産番号 ○○○○○○○○○○○○○

実際に作るときは、法務省のページ「相続人申告登記について」から、申出書の様式(Word・PDF等)と、亡くなった方との関係(子・配偶者・親・兄弟姉妹など)ごとの記載例をダウンロードできます。ご自身のケースに合った記載例を選んで、それに沿って書くのが確実です。

1通にまとめられる場合

申出書は、原則として不動産ごと・申出人ごとに作りますが、同じ法務局の管轄内にある不動産で、相続人である旨や相続開始の日などの内容が同じであれば、1通の申出書にまとめることができます(不動産登記規則158条の5第1号)。また法務省の案内では、複数の相続人が連名で1通の申出書を作って出すこともでき、その場合は委任状は不要とされています。

添付書類──どこまでの戸籍が必要か

基本の添付書類

法務省の案内が挙げている基本の添付書類は、次のとおりです。

  1. 申出人が登記上の所有者の相続人であることが分かる戸籍の証明書(戸籍謄本・除籍謄本など)
  2. 申出人の住所を証する書類(住民票の写し。ただし、省略できる場合があります)
  3. 委任状(代理人が手続をする場合のみ)

通常の相続登記では、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍をそろえて相続人全員を確定させる必要がありますが、相続人申告登記では、法定相続人の範囲や法定相続分を確定させる必要はないとされています(法務省「相続人申告登記について」)。必要になるのは、「申出人が相続人であること」を示す範囲の戸籍です。

亡くなった方との関係ごとの戸籍の範囲

法務省の案内は、亡くなった方と申出人の関係ごとに、一般的に必要となる戸籍を次のように示しています。

  • 子が申し出る場合:①亡くなった方の死亡した日が分かる戸籍、②申出人が亡くなった方の子であることが分かる戸籍、③亡くなった方の死亡日以後に発行された申出人の戸籍。1通の証明書で①〜③がそろえば、その1通で足ります。たとえば、亡くなる前に申出人が結婚して親の戸籍から出ている場合は、親の死亡が書かれた戸籍に申出人が載っていないため、過去の戸籍と申出人の現在の戸籍が追加で必要になります
  • 配偶者が申し出る場合:亡くなった方の死亡した日と、申出人が配偶者であることが分かる戸籍
  • 親が申し出る場合:申出人が親であることと、亡くなった方に子がいないことが分かる戸籍(亡くなった方の出生から死亡までのすべての戸籍)に加え、亡くなった方の死亡日以後に発行された申出人の戸籍が必要になります
  • 兄弟姉妹が申し出る場合:亡くなった方に子がいないことに加え、亡くなった方の父母・祖父母などが先に亡くなっていることが分かる戸籍も必要になります

このように、子や配偶者が申し出る場合に比べて、親や兄弟姉妹が申し出る場合は、集める戸籍の範囲がぐっと広がります。また法務省の案内は、どの戸籍が必要か判断が難しい場合には、亡くなった方の出生から死亡までのすべての戸籍と申出人の現在の戸籍を出してもかまわないとしています。

亡くなった方の本籍と登記上の住所が違うとき

亡くなった方の本籍が、登記簿に記録された住所と異なる場合は、登記上の所有者と亡くなった方が同じ人であることを示すために、本籍の記載のある住民票の除票、または戸籍の表示の記載のある戸籍の附票の写しなどが必要になるとされています(法務省「相続人申告登記について」)。

戸籍の提出に代えられるもの

次のものを出すと、戸籍の証明書の提出に代えることができます(不動産登記規則158条の20第1項)。

  • 法定相続情報一覧図の写し、またはその法定相続情報番号(一覧図の写しの右上に記載された番号)
  • 戸籍電子証明書提供用識別符号・除籍電子証明書提供用識別符号(戸籍の電子証明書を提供するための符号)

番号や符号を書く方法による場合は、登記官がその内容を確認できるときに限られます(同項ただし書)。

住民票の写しを省略できる場合

申出書に、住民票上の氏名のふりがなと生年月日を書いた場合は、住民票の写しの提出を省略できます(不動産登記規則158条の21)。法務局が住民基本台帳ネットワークに照会して、住所が合っているかを確認するしくみです。ただし、住民票に記載のない方(国内に住所のない方)は省略できないとされています。住民票の写しを出す場合は、マイナンバーの記載のないものを取得するよう案内されています。

戸籍の原本を返してもらうには

提出した戸籍などの原本は、還付(返却)を請求できます(不動産登記規則158条の13)。法務省の案内では、亡くなった方と申出人の関係を書いた「相続関係説明図」を一緒に出せば、戸籍の証明書や住民票の写しのコピーを作らなくても、法務局での調査が終わった後に返してもらえるとされています。相続関係説明図の書き方のイメージは、同じ手続案内に掲載されています。

登録免許税がかからない理由

相続人申告登記には、登録免許税がかかりません。法務省の「相続人申告登記について」のページや前記の手続案内で、「登録免許税がかからない」と明記されています。

ただし、法務省の案内は、非課税であることを示すにとどまり、どの条文によるかまでは示していません。条文との関係は、この登記の仕組みから次のように整理できます。

  • 相続人申告登記は、相続人が「申請」する登記ではありません。相続人の「申出」があったときに、登記官が職権で(法務局の側の権限で)、申出があった旨と申出人の氏名・住所などを所有権の登記に付記することができる、と定められている登記です(不動産登記法76条の3第3項)
  • 法務省の「相続登記の申請義務化の施行に向けたマスタープラン」(令和5年3月22日)も、申出があった場合には登記官が職権で登記するとしたうえで、「申出に係る登録免許税は、非課税」と記載しています
  • 登録免許税法は、登記官が職権に基づいてする登記のうち政令で定めるものに登録免許税を課さないとしています(登録免許税法5条2号)。政令は、同法の別表第一の第1号から第32号までに掲げる登記(不動産の登記は第1号に掲げられています)のうち、登記を受ける者の申請に基づかないで登記官が職権でするものを、これに当たると定めています(登録免許税法施行令2条)
  • 不動産登記法は、相続人の「申出」(76条の3)と、相続登記の「申請」(76条の2)を書き分けています。このため、相続人申告登記は、文言上はこの「申請に基づかないで職権でする登記」に当たると考えられます。ただし、この当てはめは法務省の案内には示されておらず、ここでの整理は条文の文言によるものです

いずれにしても、法務省が非課税と明記しているとおり、申出そのものに登録免許税の負担は生じません。

かかる費用としては、戸籍の証明書や住民票の写しの取得手数料、郵送で出す場合の書留郵便の料金、完了の通知書を郵送で受け取る場合の返信用の切手代などがあります。

一方、後日、遺産分割をして本来の相続登記(所有権の移転の登記)をするときは、通常どおり登録免許税がかかります。

オンライン(かんたん登記・供託申請)で出せるか

Webブラウザから申し出ることができる

相続人申告登記の申出は、オンラインでもできます。登記・供託オンライン申請システムの案内では、不動産登記の申出のうちWebブラウザ(かんたん登記・供託申請)から手続できるのは「相続人申告登記の申出」と「検索用情報の申出」とされています。法務省の案内では、申出手続(オンラインを含む)では押印・電子署名は不要で、専用のソフトウェアを使わずにWebブラウザ上で手続できるとされています(同システムの案内では、電子署名が必須とされているのは資格者が代理で申し出る場合のみです)。

この点は、相続登記のオンライン申請の記事で触れたとおり、相続登記そのもの(所有権の移転の登記)の申請が「かんたん登記・供託申請」に対応していないのとは扱いが異なります。

紙の戸籍をどう出すか

オンラインで申し出る場合でも、紙で発行された戸籍の証明書などを、別に法務局に提出する方法が認められています(不動産登記規則158条の8第1項ただし書)。この場合は、書面で提出する旨を申出の内容に含め、所定の様式の用紙を付けて、申出の受付の日から2日以内に提出するものとされています(同規則158条の9)。日数の数え方や、具体的な送り方・用紙の出し方は、画面の案内と管轄の法務局で確認してください。

前に説明した法定相続情報番号や戸籍電子証明書提供用識別符号を使い、ふりがなと生年月日を書いて住民票の写しも省略し、ほかに出すべき書類(たとえば、亡くなった方の本籍と登記上の住所が違うときの住民票の除票や戸籍の附票の写し)もない場合は、紙の書類を別に出す必要がなくなる場面もあると考えられます。ただし、番号や符号は登記官が内容を確認できるときに限って使えるものなので、ご自身のケースで使えるかは事前に確認が必要です。

Webブラウザではできない手続

法務省の案内によると、申出が完了した後に、申出人の住所や氏名が変わったことを登記に反映させる「変更の申出」は、オンラインですることはできるものの、Webブラウザ上(かんたん登記・供託申請)での手続はできないとされています。

提出先と、終わったあとに受け取るもの

提出先は「不動産の所在地を管轄する法務局」

申出は、対象の不動産の所在地を管轄する法務局(登記所)にします。管轄外の法務局に出した申出は却下の対象になります(不動産登記規則158条の16第1項1号)。管轄は、法務局ホームページの「管轄のご案内」で調べられます。

窓口に持参するほか、郵送でも出せます。郵送する場合は、書留郵便などの記録が残る方法で送り、封筒の表面に「相続人申出書在中」と書くよう案内されています(同規則158条の11)。

受け取るのは「登記が完了した旨の通知書」

申出に問題がなければ、法務局は、登記簿の所有権の登記に「相続人申告」の付記登記をします。法務省の案内に示された登記の例では、申出の日や相続開始年月日とともに、「○○の相続人として申出があった者」として申出人の住所・氏名が記録されます。

申出人には、登記官から、職権による登記が完了した旨の通知がされます(不動産登記規則158条の18第1項。申出人が2人以上いるときは、そのうち1人への通知で足りるとされています)。書面で申し出た場合は通知書が交付され、受け取り方は次の2つです(法務省「相続人申告登記手続のご案内」)。

  • 窓口で受け取る:運転免許証などの本人確認書類を持参します。登記完了後3か月を過ぎても受け取りに来ない場合は、通知書を廃棄するとされています
  • 郵送で受け取る:宛名を書いた返信用封筒と、書留郵便に必要な切手を申出書と一緒に出します

廃棄された通知書は再発行できませんが、登記事項証明書や登記情報提供サービスで、付記登記がされていることは確認できると案内されています。

オンラインで申し出た場合は、通知は書面ではなく、電子的に送信される方法によります。送信を受けられる状態になった時から30日を過ぎても申出人側で受け取らない(自分の端末に記録しない)ときは、登記官は通知をすることを要しないとされています(不動産登記規則158条の18第3項1号・6項1号)。受け取り方の詳細は、かんたん登記・供託申請の画面の案内で確認してください。

なお、法務省の案内が、完了後に申出人へ交付されるものとして示しているのはこの通知書です。相続人申告登記は申出人を所有者として登記するものではないため、相続登記の申請によって自ら所有者として登記された人に通知される登記識別情報(いわゆる権利証にあたるもの。不動産登記法21条)を受け取る手続ではありません。

自分で進めるのが難しい場面

相続人申告登記は、通常の相続登記に比べて手続の負担が軽くなるように作られた制度ですが、次のような場合は、ご自身で進めるのが難しくなります。

  • 数次相続がある場合:登記上の所有者が亡くなった後、その相続人も亡くなっている場合(たとえば祖父名義のまま父も亡くなった場合)は、途中の相続人(中間相続人)の氏名・最後の住所なども申出書に書き、それを証明する書類も必要になります(不動産登記規則158条の19第1項3号・第2項3号)。法務省の案内でも、このケースでは、登記上の所有者の死亡が分かる戸籍に加えて、途中の相続人がその相続人であることや、途中の相続人の死亡が分かる戸籍まで必要とされています
  • 親や兄弟姉妹が申し出る場合:前に見たとおり、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍や、父母・祖父母の死亡が分かる戸籍が必要になり、範囲の判断が難しくなります
  • 戸籍が一部そろわない場合:古い戸籍が焼失・廃棄されているなど、必要な証明書が取れないときは、何で代えるかを個別に判断する必要があります
  • 相続人が多い場合や、申出の前に遺産分割がまとまっている場合:相続人申告登記で義務を果たしたことになるのは、申し出た本人の分だけです。また、申出の前にすでに遺産分割が成立していると、その分割で取得した分については、申出をしても義務を果たしたことにはなりません(不動産登記法76条の3第2項かっこ書)。そもそも相続人申告登記を選ぶべきか、本来の相続登記に進むべきかの判断が必要になります

こうした場合は、申出書を作り始める前に、お近くの司法書士にご相談ください。

まとめ

相続人申告登記の申出は、戸籍の証明書を集め、申出書を作り、不動産の所在地を管轄する法務局に出し、完了の通知書を受け取るという流れで進みます。申出書は法務省の様式と記載例に沿って作ることができ、押印は不要、登録免許税もかかりません。Webブラウザの「かんたん登記・供託申請」からも申し出られます。

ただし、添付する戸籍の範囲は、亡くなった方との関係や、相続が重なっているかどうかで大きく変わります。また、相続人申告登記は義務を果たすための手続で、所有権を相続人に移すものではありません。ご自身のケースで戸籍の範囲や進め方に迷うときは、お近くの司法書士にご相談ください。

よくある質問

Q. 相続人申告登記の申出に費用はかかりますか?

登録免許税はかかりません(法務省「相続人申告登記について」)。かかるのは、戸籍の証明書や住民票の写しの取得手数料、郵送で出す場合の書留郵便の料金、通知書を郵送で受け取る場合の返信用の切手代などの実費です。司法書士に依頼する場合は別に報酬がかかり、金額は事務所ごとに異なります。

Q. いつまでに申し出ればいいですか? 放っておくとどうなりますか?

相続登記の申請義務と同じ期間内(相続の開始と所有権の取得を知った日から3年以内)に申し出ることで、義務を果たしたものとみなされます(不動産登記法76条の2第1項・76条の3第2項)。2024年4月1日より前に始まった相続は、原則として2027年3月31日までです(民法等の一部を改正する法律〔令和3年法律第24号〕附則5条6項)。正当な理由がないのに義務を怠ると、10万円以下の過料の対象になります(不動産登記法164条1項)。申出の後、遺産分割で不動産を取得したときは、原則として、分割の日から3年以内に相続登記を申請する必要があります(同法76条の3第4項)。

Q. 自分で申し出られますか? どこに相談すればいいですか?

亡くなった方と申出人の関係が子や配偶者などシンプルな場合は、法務省の手続案内と記載例を参考に、ご自身で申し出ることも想定されています。法務省の案内では、戸籍の証明書の集め方が分からないときは本籍地または最寄りの市区町村役場に、原本の還付など手続の詳細は法務局(登記所)に問い合わせるよう案内されています。数次相続がある、相続人が多い、戸籍がそろわない、本来の相続登記と迷っているといった場合は、お近くの司法書士にご相談ください。


【さらに深掘り】申出後の記録の変更・抹消と、添付情報を減らせる場面

ご注意 以下は執筆時点(2026年10月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。

相続人申告登記は、付記登記がされた後も、住所の変更や相続放棄などによって記録の扱いが問題になることがあります。ここでは、申出の後に付記された内容を変更・更正する手続、付記を抹消する手続、申出の際に添付情報を減らせる場面を、不動産登記規則の定めに沿って整理します。なお、申出の後に遺産分割が成立したときの申請義務(不動産登記法76条の3第4項)は、相続登記義務化の経過措置、期限まであと半年の深掘りで整理しているため、ここでは扱いません。

1. 住所・氏名が変わったとき、付記に誤りがあったとき

  • 付記された事項(規則では「相続人申告事項」と呼びます)に変更、錯誤(誤り)または遺漏(漏れ)があったときは、付記された者(相続人申告名義人)またはその相続人は、登記官に対し、変更または更正を申し出ることができるとされています(不動産登記規則158条の24第1項)。
  • この申出では、登記原因とその日付、変更後・更正後の事項を明らかにし(同条2項)、変更・誤り・漏れがあったことを証する公務員が職務上作成した情報を提供します(同条3項)。
  • 申出人の住所の変更などについては、生年月日と氏名のふりがなを提供し、登記官が住民基本台帳ネットワークで確認できる場合には、その証明情報の提供に代えることができます(同規則158条の25)。最初の申出で住民票の写しを省略できるしくみ(同規則158条の21)と同じ考え方です。
  • 申出があったときは、登記官が職権で、変更の登記または更正の登記をすることができるとされています(同規則158条の26第1項)。
  • 本文で触れたとおり、この変更の申出は、Webブラウザ上(かんたん登記・供託申請)ではできないと案内されています。
  • 登記官の過誤による誤りが登記の完了後に見つかった場合は、登記官が申出人に通知し、監督する法務局または地方法務局の長の許可を得て更正をするものとされています(同規則158条の27)。

2. 相続放棄などで相続人でなくなったとき──抹消の申出

  • 付記された者は、次のいずれかに当たるときは、相続人申告登記の抹消を申し出ることができるとされています(同規則158条の28第1項)。
    • 申出の却下事由のうち、管轄違い、1個の不動産の一部についての申出、申出に係る登記がすでにされていること、申出の権限がないこと、のいずれかがあること(1号。同規則158条の16第1項1号〜4号)
    • 相続放棄をし、または相続欠格(民法891条)や廃除によって相続権を失ったため、相続登記の申請義務を負う者(不動産登記法76条の2第1項に規定する者)に当たらなくなったこと(2号)
  • この申出では、いずれかに当たることを証する情報を提供します(同条2項)。申出があったときは、登記官が職権で抹消をすることができるとされています(同規則158条の29第1項)。
  • 相続放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなされます(民法939条)。相続放棄を検討している間に申出をし、その後に放棄をした場合、登記簿に残った付記を消すための手続として規則に定められているのが、この抹消の申出です。
  • これとは別に、登記官が登記の完了後に、却下事由のうち1号〜3号(管轄違い、不動産の一部についての申出、すでに登記がされていること)に当たることを見つけたときは、申出人に1か月以内の期間を定めて、異議がなければ抹消する旨を通知し、異議が出なかったとき、または異議が却下されたときは、職権で抹消するものとされています(同規則158条の30第1項・4項)。この職権による抹消の事由として挙げられているのは却下事由の1号〜3号で、相続放棄などは挙げられていません。

3. 添付情報を減らせる場面──法定相続情報一覧図の住所記載と、中間相続人の付記

  • 本文では、法定相続情報一覧図の写しなどで戸籍の証明書に代えられることを紹介しました(同規則158条の20第1項)。これに加えて、一覧図に申出人の住所(数次相続では中間相続人の最後の住所)が記載されていれば、一覧図の写しまたは法定相続情報番号の提供で、住所を証する情報にも代えることができます(同条2項)。番号による場合は、登記官が法定相続情報を確認できるときに限られます(同項ただし書)。
  • 一覧図に記載する法定相続情報(同規則247条1項各号)には相続人の住所は含まれておらず、一覧図に相続人の住所を記載したときは、その住所を証する書面を一覧図の保管等の申出書に添付することとされています(同条4項)。相続人申告登記に一覧図を使う予定があるなら、一覧図を作る段階で住所を記載しておくと、申出の際に住所を証する書類を別に用意する手間を減らせる場合があります。
  • 数次相続で中間相続人がいる場合、申出では中間相続人の氏名・最後の住所などを明らかにし(同規則158条の19第1項3号)、それを証する情報を提供します(同条2項3号)。ただし、これらの事項がすでに所有権の登記に付記されているときは、申出で明らかにする事項から除かれています(同条1項3号かっこ書)。また、中間相続人に係る部分がすでに登記されていることは、申出の却下事由から除かれています(同規則158条の16第1項3号かっこ書)。
  • たとえば、同じ中間相続人の相続人である兄弟姉妹のうち1人が先に申出をして中間相続人の事項が付記されていれば、後から申し出る人は、その部分を重ねて明らかにする必要がなく、それを証する情報(同規則158条の19第2項3号)も求められません。申出の前に登記事項証明書などで、すでにどのような付記がされているかを確かめておくと、集める書類の範囲を絞り込めます。
  • なお、2回以上の相続についての事項を付記するときは、相続ごとに付記するものとされています(同規則158条の23第2項)。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年10月・いずれも一次情報です)。

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