この記事の要点

  • 相続登記(相続による所有権の移転の登記)をオンラインで申請する道具は、パソコンにインストールして使う「申請用総合ソフト」です。ブラウザで使う「かんたん登記・供託申請」で申請できる不動産登記は、建物滅失の登記と登記名義人の表示変更の登記に限られています(2026年10月10日確認)。
  • 戸籍の証明書は電子データでは発行されていないため、相続登記はオンラインだけでは完結しません。申請はオンラインで送り、戸籍などの紙の書類は「特例方式」で法務局に持参するか、書留郵便などで送ります。
  • 紙の書類は、オンライン申請の受付の日から2日以内に法務局に届いている必要があります(初日は数えません。土日祝日が絡むときの数え方は本文で説明します)。
  • 申請する人のマイナンバーカードの電子証明書、ICカードリーダライタ、申請者情報の登録とソフトのインストールが前提になります。
  • 相続人が多い、数次相続がある、遺産分割の内容で迷っているといった場合は、オンラインか書面かを決める前に、お近くの司法書士にご相談ください。

相続登記をオンラインで申請したいとき、まず知っておきたいのは「どの道具を使うか」です。結論から言うと、相続登記の申請そのものは、法務省の登記・供託オンライン申請システムが提供する「申請用総合ソフト」を使います。ブラウザだけで使える「かんたん登記・供託申請」は、2026年10月10日に確認した時点では、相続登記の申請に対応していません。

もう一つのポイントは、オンラインで申請しても、戸籍の証明書などの紙の書類は別に法務局へ届ける必要があることです。この「申請はオンライン、紙の書類は持参か郵送」という組み合わせを、一般に「特例方式」と呼んでいます。

この記事では、一般の方がご自身で相続登記をオンライン申請する場合を想定して、2つの道具の違いと、特例方式で紙の書類を届けるときの決まりを整理します。登記申請の出し方(窓口・郵送・オンライン)の基本は、登記申請は窓口・郵送・オンラインのどれで出す?をご覧ください。

なお、この記事は執筆時点(2026年10月)の法令と、法務省・法務局の公開している案内に基づく一般的な解説です。ソフトの画面や操作手順は更新されることがあるため、実際の操作は登記・供託オンライン申請システムの最新の案内と操作手引書で確認してください。

2つの道具の違い

登記・供託オンライン申請システムには、Webブラウザで使う「かんたん登記・供託申請」と、専用のアプリケーションをパソコンにインストールして使う「申請用総合ソフト」の2つの申請方法があります。同システムの案内をもとに、相続に関係するところを整理すると次のとおりです。

かんたん登記・供託申請 申請用総合ソフト
使い方 Webブラウザから使う(専用アプリは不要) 専用アプリをパソコンにインストールして使う
扱える手続 システムで扱う手続のうち一部 システムで扱う全ての手続
不動産登記の申請 建物滅失の登記と登記名義人の表示変更の登記のみ 全て
相続登記の申請 できない できる
相続に関係して使える主な場面 相続人申告登記の申出、検索用情報の申出、登記事項証明書の交付請求 左の手続も含めて全て

同システムの「手続ごとの申請方法一覧表」と「不動産登記手続」のページでは、不動産登記の申請のうちWebブラウザから申請できるのは「建物滅失の登記申請」と「登記名義人の表示変更の登記申請」であると明記されています。相続による所有権の移転の登記はここに含まれていないため、オンラインで申請するなら申請用総合ソフトを使うことになります。

名前についても補足しておきます。法務局の案内資料には、ブラウザで登記申請ができるサービスを「かんたん登記申請」という名前で説明しているものがあります。現在、登記・供託オンライン申請システムのページでは「かんたん登記・供託申請」と表記されています。インターネットで調べるときは、どちらの名前で書かれている情報か、いつの情報かにも気をつけてください。

相続登記が「オンラインで完結しない」理由

法務局の「相続の登記をオンライン申請したい方」向けの案内は、オンラインで登記を申請する場合、添付する情報は原則として作成者の電子署名が付いた電子文書であることが必要だとしたうえで、次のように説明しています。

  • 相続登記には、亡くなった方の出生から死亡までの経過がわかる戸籍の証明書などが必要になる
  • 戸籍の証明書などは、現在のところ、市区町村長の電子署名が付いた電子文書では発行されていない
  • そのため、相続の登記をオンラインで完結することはできず、紙の添付書類を後日、法務局に郵送または持参することで手続を進める

登記・供託オンライン申請システムの説明でも、相続登記の申請は、添付すべき情報が電子化されていないためオンラインのみでは完結できない手続の例として挙げられています。

紙の添付書類を別に提出できるのは、不動産登記令の附則に「当分の間」の特例として定められているためです(不動産登記令附則5条1項)。この方法をとる場合は、その旨も申請情報(申請書の内容)に含めます(同条2項)。

申請用総合ソフトで申請するときの流れ

法務局の案内に沿って、相続登記をオンラインで申請する流れの全体像をまとめます。画面の操作方法は、案内が示している操作手引書の該当箇所を見ながら進めることになります。

1. 事前準備

  • 電子証明書:不動産を取得する方が自分で相続登記を申請する場合、マイナンバーカードの電子証明書が必要です。マイナンバーカードで電子署名をするには、別にICカードリーダライタが必要とされています。
  • 申請者情報の登録:初めて使うときは、登記・供託オンライン申請システムのホームページで申請者情報を登録します。同システムの案内によると、最後に利用した日から1年が経過すると申請者情報削除の通知メールが送られ、そのメールの送信日から1か月以内にログインしないと申請者情報が削除されます(削除後は同じIDでの再登録はできず、改めて登録し直すことになります)。
  • 申請用総合ソフトのインストール:初めて使うときは、ソフトをダウンロードしてインストールします。

申請用総合ソフトの推奨環境として、同システムはWindows 11と.NET Framework 4.8.1などを挙げています(2026年10月10日確認)。手元のパソコンで使えるかどうかは、事前に「ご利用環境」のページで確認してください。

2. 申請情報の作成と、添付情報の添付

申請用総合ソフトで申請情報(申請書にあたるもの)を作成します。法務局の案内は、操作手引書(不動産登記申請)【簡易版】の「1-6 申請情報作成例(5)【所有権移転登記・相続(遺産分割協議)編】」を参照するよう示しています。この手引書は、2026年10月10日時点では、登記・供託オンライン申請システムの「操作手引書【想定事例版】のダウンロード」のページに「1-6 申請情報作成例⑤【所有権移転登記・相続(遺産分割協議)編】」として掲載されているもので、PDFの表紙は「申請用総合ソフト利用ガイド 申請情報作成例⑤」(令和8年10月・Ver.1.9)となっています。名称が案内ごとに少しずつ違いますが、同じ文書です。

申請書に何を書くか自体は、書面で申請する場合と同じ考え方です。各欄の意味は相続登記申請書の書き方で解説しています。

3. 電子署名と送信

作成した申請情報に電子署名をして、送信します。送信が完了すると、申請が法務局に到達します。

なお、申請人が公的個人認証サービスの電子証明書(マイナンバーカードの電子証明書がこれにあたります)を提供した場合は、その電子証明書の提供によって、申請人の現在の住所を証する情報(住民票の写しなど)の提供に代えることができるとされています(不動産登記規則44条1項)。

4. 登録免許税の納付

送信が終わったら、登録免許税を納めます。申請用総合ソフトからインターネットバンキング等で電子納付ができるほか、収入印紙等による納付もできると案内されています。利用できる金融機関や納め方の詳細は、法務局・法務省の最新の案内で確認してください。

5. 紙の添付書類を提出する(特例方式)

戸籍の証明書や遺産分割協議書などの紙の添付書類は、申請用総合ソフトから印刷する「書面により提出した添付情報の内訳表」と一緒に、申請先の法務局に持参するか、書留郵便等で送ります。期限などの決まりは、次の章で説明します。

6. 補正・手続終了の確認

申請に不備があった場合は、申請用総合ソフトに法務局から「補正」のお知らせが届きます。登記が完了すると「手続終了」のお知らせが届き、登記完了証(電子公文書)をダウンロードできると案内されています。

特例方式で紙の書類を届けるときの決まり

特例方式の決まりは、不動産登記令・不動産登記規則の附則と、法務省の「いわゆる特例方式について」のページに示されています。

申請情報に「特例」であることを書く

各添付情報について、書面を提出する方法によるかどうかを申請情報の内容にします(不動産登記規則附則21条1項)。法務省の案内では、「登記原因証明情報(特例)」のように書く例が示されています。

期限は「受付の日から2日以内」

紙の書類は、申請の受付の日から2日以内に提出するものとされています(同条2項)。法務省の案内によると、この期間は初日を算入せず、期限が土曜・日曜・祝日などの行政機関の休日にあたるときは、その翌日が期限になります。たとえば月曜日にオンライン申請が受け付けられ、その週に祝日がない場合は、水曜日が期限になります。

なお、この期限について、法務局の「相続の登記をオンライン申請したい方」向けの案内は「2日以内(初日、休日等を除く)」、申請用総合ソフトの利用ガイド(相続・遺産分割協議編)は「登記所の2営業日以内(初日を除きます。)」と書いており、法務省のページとは表現が異なります。金曜日や連休の前日に受け付けられた場合などは、どの数え方によるかで期限の日が変わり得るため、早いほうの日までに届くように手配し、迷うときは管轄の法務局に確認してください。

郵送する場合も、受付の日から2日以内に法務局に到着するように送る必要があります。発送した日ではなく、届いた日で判断される点に注意してください。

この「2日以内」は特例方式の書類の提出期限です。相続登記そのものの申請期限(相続登記の義務化による期限)とは別のものです。

内訳表を付ける

紙の書類を提出するときは、受付番号などの申請を特定するのに必要な事項と、特例方式で提供する添付情報の表示を書いた所定の様式(別記第13号様式)の用紙を添付するとされています(同条3項)。法務局の案内では、申請用総合ソフトの処理状況の画面から「書面により提出した添付情報の内訳表」を印刷し、添付情報の原本と一緒に提出する流れが示されています。

法務省の案内によると、登記所で登記識別情報通知書の交付を受けるときは、この様式に押した印が必要になるとされています。どの印鑑を押したかは控えておきましょう。

郵送するときの封筒

郵送で提出するときは、書留郵便か、信書便のうち引受けと配達の記録が残るものによります(同条4項)。封筒の表面には、特例方式で提出する書面が入っている旨を明記します(同条5項)。

登記原因証明情報は、読み取ったデータも送る

特例方式で登記原因証明情報を紙で提出するときは、その書面に書かれた情報を記録した電磁的記録(電子データ)を、申請情報と一緒に送ることとされています(不動産登記令附則5条4項)。このデータは、書面をスキャナで読み取る方法で作成します(不動産登記規則附則22条3項)。

法務省の案内では、このデータはPDFファイルとし、作成者の電子署名は不要で、記録するのは登記原因の内容を明らかにする部分で足りるとされています。法務省民事局の申請用総合ソフト利用ガイド(相続・遺産分割協議編)の例では、登記原因証明情報として相続関係説明図(書面)を読み取ったPDFを申請情報と一緒に送信し、その原本を後日、法務局に持参または書留郵便等で送付する流れが示されています(詳しくは深掘りの章で触れます)。実際にどの書類を読み取って添付するかは、同ガイドの手順と、管轄の法務局の案内で確認してください。

2026年10月5日からの新しい申請書との関係

2026年10月5日以降の相続登記の申請では、申請書に「国籍等」の欄が加わった新しい様式が使われています(前に紹介した「相続登記申請書の書き方」の記事を参照)。これは、所有権の移転の登記などを申請するときに申し出る「検索用情報」に国籍等を加える不動産登記規則の改正(令和8年法務省令第23号)が、同日に施行されたためです(不動産登記規則158条の39第1項6号)。あわせて、国籍等を証する情報も添付情報に加わっています(同条2項。ただし、申し出た国籍等がその方の国籍等であることを登記官が確認できる事項を申請情報に含めたときは、この情報の添付は不要とされています〔同項ただし書〕)。日本国籍の方の添付の扱いは、前記の「相続登記申請書の書き方」の記事をご覧ください。

登記・供託オンライン申請システムのお知らせによると、申請用総合ソフトは2026年10月3日夜以降に新しいバージョン(9.4A)に更新でき、不動産登記に関する主な改修として「国籍等を入力可能とする対応」が挙げられています。また、更新前に作成・保存していた申請書を使って申請するときは、ソフトを更新した後に、保存していた申請書を「編集」または「再利用」して様式を最新にしてから作成・送信するよう案内されています。以前に途中まで作っていた申請書がある方は、この点に注意してください。

「かんたん登記・供託申請」が役に立つ場面

相続登記の申請には使えない「かんたん登記・供託申請」ですが、相続に関係する手続で使える場面もあります。

  • 相続人申告登記の申出:法務省の案内では、相続人申告登記の申出は、押印・電子署名が不要で、専用のソフトウェアを使わずにWebブラウザ上(かんたん登記・供託申請)で手続ができるとされています。ただし、相続人申告登記は不動産の権利関係を公示するものではなく、遺産分割に基づく相続登記の申請義務を果たすこともできないと説明されています。売却などをするときには、別に相続登記が必要です。制度の詳細は相続人申告登記とは何かをご覧ください。
  • 登記事項証明書の交付請求:相続する不動産の登記事項証明書の請求にも使えます。

オンラインにするか、書面にするか

相続登記は、オンラインで申請しても紙の書類の提出が残ります。オンラインの手順(事前準備・電子署名・特例方式の期限)と、書面申請の手順(申請書の印刷・押印・窓口持参か郵送)のどちらが手間が少ないかは、手元の環境や書類の状況によって変わります。

なお、申請用総合ソフトの案内では、電子証明書を持っていない方でもソフトを使って登記申請書を作成できるとして、QRコード(二次元バーコード)付きの書面申請書が紹介されています。これはソフトに申請に必要な情報を入力してあらかじめシステムで送信したうえで、QRコード付きの申請書を印刷し、添付書面と一緒に法務局の窓口に提出(持参または郵送)する方法で、同システムの案内資料(2026年〔令和8年〕10月版)でも「書面申請」として説明されています。データを送信する手順はありますが、オンライン申請ではなく、書面による申請です。

まとめ

  • 相続登記をオンラインで申請する道具は「申請用総合ソフト」です。ブラウザの「かんたん登記・供託申請」は、2026年10月10日時点で相続登記の申請に対応していません。
  • 戸籍の証明書などは紙でしか出ないため、相続登記はオンラインで完結しません。紙の書類は特例方式で、受付の日から2日以内(初日は数えません)に法務局へ届くように、内訳表を付けて持参または書留郵便等で送ります。金曜日や連休の前日に受け付けられた場合は、数え方によって期限の日が変わり得るため、早めに届くように手配してください。
  • 申請情報には「(特例)」である旨を書き、登記原因証明情報は読み取ったデータ(PDF)もあわせて送ります。
  • 事前に、マイナンバーカードの電子証明書、ICカードリーダライタ、申請者情報の登録、ソフトのインストールと最新版への更新が必要です。

オンライン申請は、書面申請にはない電子署名や期限管理の手順が加わります。相続人が多い、数次相続がある、遺産分割の内容が決まりきっていないなど、ご自身で進めてよいか迷うときは、お近くの司法書士にご相談ください。

よくある質問

Q. オンラインで相続登記を申請すると、費用はどのくらいかかりますか?

主な費用は登録免許税で、相続による所有権の移転の登記は、不動産の価額の1000分の4です(登録免許税法別表第一第一号(二)イ)。このほか、戸籍の証明書などの取得手数料、紙の書類を郵送する場合の書留郵便等の料金がかかります。ICカードリーダライタを持っていない場合は、その用意も必要です。司法書士に依頼する場合は別に報酬がかかり、金額は事務所ごとに異なります。

Q. 相続登記には期限がありますか? 放っておくとどうなりますか?

相続の開始があったことを知り、かつ、不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請することが義務になっています(不動産登記法76条の2第1項)。義務化が始まった2024年4月1日より前に相続が始まっていた場合は、知った日と2024年4月1日のいずれか遅い日から3年以内です(民法等の一部を改正する法律〔令和3年法律第24号〕附則5条6項)。正当な理由がないのに申請を怠ると、10万円以下の過料の対象になります(不動産登記法164条1項)。オンライン申請の「受付から2日以内」は紙の書類の提出期限で、この申請期限とは別のものです。

Q. 自分でオンライン申請できますか? わからないときはどこに相談すればいいですか?

法務局は、ご自身で申請する方向けに、申請書の作成方法についての登記手続案内(事前予約制)を行っていると案内しています。ただし、法務局では、遺産分割をどう進めるか、どういう内容にするかといった相談には応じられないとされています。数次相続や相続人が多い場合、遺産分割の内容で迷う場合など、ご自身で進めてよいか判断がつかないときは、お近くの司法書士にご相談ください。


【さらに深掘り】相続登記のオンライン申請における添付情報と登記識別情報の扱い

ご注意 以下は執筆時点(2026年10月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。

特例方式で送るPDFと、紙で出す書類を減らす仕組み

相続による所有権の移転の登記では、相続を証する市町村長、登記官その他の公務員が職務上作成した情報と、その他の登記原因を証する情報を添付情報として提供します(不動産登記令別表22項)。法務省民事局の「申請用総合ソフト利用ガイド 申請情報作成例⑤【所有権移転登記・相続(遺産分割協議)編】」(令和8年10月 Ver.1.9)の例では、戸籍の証明書等とあわせて、遺産分割協議書もこの登記原因証明情報として提出するものとされています。

特例方式で登記原因証明情報を書面で出すときに、申請情報と併せて送る電磁的記録(不動産登記令附則5条4項)について、法務省の「いわゆる特例方式について」のページが具体例として示しているのは売買契約の場合です。相続登記については、前記の利用ガイドが、オンライン申請をする場合には、登記原因証明情報として相続関係説明図(書面)をスキャナで読み取った情報(PDF形式に限り、電子署名は不要)を申請情報と共に送信し、その書面の原本を後日、管轄登記所に持参するか書留郵便等で送付する必要があると説明しています。同ガイドの例では、戸籍の証明書等や遺産分割協議書は書面で登記所に提出する扱いです。また、相続関係説明図を戸籍の証明書等と共に提出した場合には、登記の完了後に戸籍の証明書等が返却されるとも説明されています。

紙で提出する書類を減らす仕組みとしては、次の2つがあります。

  • 法定相続情報番号:法定相続情報一覧図の写し、または法定相続情報番号(一覧図を識別するために登記官が付した11桁の番号)を提供したときは、相続があったことを証する公務員作成の情報(戸籍の証明書等)の提供に代えることができます。番号による場合は、登記官が法定相続情報を確認できるときに限られます(不動産登記規則37条の3第1項)。一覧図に相続人の住所が記載されていれば、登記名義人となる者の住所を証する情報にも代えられます(同条2項)。オンライン申請で番号をどのように提供するかは、管轄の法務局の案内で確認してください。
  • 遺産分割協議書の電子データ化:オンライン申請で添付情報を電子データとして提供する場合、その添付情報には作成者による電子署名が必要です(不動産登記令12条2項)。前記の利用ガイドは、電子証明書付きのマイナンバーカード等を持っている方は、遺産分割協議書等のPDFファイルに申請用総合ソフトの機能で電子署名を付してオンラインで提供できるとしたうえで、作成者全員の電子署名が必要になると説明しています。協議書の作成者である相続人全員がそれぞれ電子署名をできるかどうかで、協議書を書面で出すか電子データで出すかの選択肢が変わります。

相続人が複数いるときの申請人と登記識別情報

相続による権利の移転の登記は、登記権利者が単独で申請できます(不動産登記法63条2項)。法務省民事局の「登記申請手続のご案内(相続登記②/法定相続編)」(令和8年4月)は、法定相続分で相続登記をする場合について、複数の相続人のうちの一人が申請人となって申請することもできるが、その場合、申請人とならなかった相続人には登記識別情報は通知されないと説明しています。登記識別情報は、その登記によって申請人自らが登記名義人となる場合に、その申請人に通知されるものだからです(不動産登記法21条本文)。

オンライン申請では、申請人またはその代理人が申請情報に電子署名を行わなければなりません(不動産登記令12条1項)。そのため、誰を申請人とするか(代理人を立てるかどうかを含みます)は、申請情報に電子署名をする人、つまり電子署名の準備が必要になる人の範囲に関わります。また、誰を申請人とするかは、前記のとおり、登記識別情報の通知を受ける人の範囲にも関わってきます。相続人の間で申請を委任する場合には、代理人の権限を証する情報の作成・添付が必要になると、前記のご案内は説明しています。

なお、登記完了証は、申請人が2人以上いるときは、その一人に通知すれば足りるとされています(不動産登記規則181条1項)。

申請後の補正・取下げと、登記識別情報の受け取り方

法務省の「不動産登記の電子申請(オンライン申請)について」のページによると、オンラインで申請した場合、補正は登録免許税の追加納付をする場合を除いて全てオンラインで、取下げも全てオンラインでする必要があり、補正情報や取下情報にも電子署名を行うとされています。そのため、申請を送信した後も、登記が完了するまでは、補正や取下げに備えて電子署名ができる環境を手元に残しておくことになります。

登記識別情報は、電子申請の場合、オンラインで送信して通知するのが原則です(不動産登記規則63条1項1号)。ただし、法務省の「登記識別情報の通知の方法について」のページは、同項の法務大臣が定める場合として、電子申請をした場合でも当面、登記識別情報通知書(書面)の交付を申し出ることができるとしています。申出は申請情報のその他の事項欄に記録して行い、登記所の窓口で受け取るときは、受付番号と身分証明書等の文書で、交付を受けることができる者かどうかが確認されます。送付を求める場合、個人である申請人が自分の住所あてに送ってもらうときは本人限定受取郵便などの方法によります(同条3項・4項1号)。特例方式による申請では、送付費用の郵便切手は別記第13号様式の書面と一緒に提出するとされています。

オンラインで受け取る場合は、申請の段階で、登記名義人が電子署名をした所定の届出様式などを申請情報と共に提供する必要があると、前記の「電子申請(オンライン申請)について」のページは案内しています。また、登記識別情報が送信できる状態になった時から30日以内に取得しない場合は、登記識別情報の通知を要しない場合にあたります(不動産登記規則64条1項2号)。書面で交付を受ける方法による場合も、登記完了の時から3か月以内に受領しないときは同様です(同項3号)。前記の法定相続編のご案内は、登記完了証と登記識別情報通知書は再発行・再交付ができないとしています。登記識別情報をどの方法で受け取るかは、申請の時点で決めておく事項です。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年10月・いずれも一次情報です)。

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